犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(102)難波人

2012年04月21日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【八月十六日】放映分
難波なにはひと 葦火あしひの してあれど おのが妻こそ つねめづらしき
葦火あしびく 小屋すすけてる わしの妻 すすけ古いが まだ若々し》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五一)


【万葉歌みじかものがたり】童言わらはごとする》

糟糠そうこう妻が いとして可愛い
ながの年月 過ごしはしたが
こぼす笑顔が 初々ういういしいて
わし の人生 満足限り

くれなゐの 八入やしほころも あさな 馴れはすれども いやめづらしも
あかいろの かさね染めふく 朝晩に れたけども まだ新しで》
(朝晩に したしんだ お前やが 変わりんとに 初々ういういしいで)【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六二三)
  
難波なにはひと 葦火あしひの してあれど おのが妻こそ つねめづらしき
葦火あしびく 小屋すすけてる わしの妻 すすけ古いが まだ若々し》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五一)

老いて 恋する 恥ずかし言うが
成るか成らんか 二の次いて
気持ち 若うて 元気な証拠
あやかりしたい うらやましいで

あづきなく 何の狂言たはこと 今さらに 童言わらはごとする 老人おいひとにして
《この老齢としで 子供じみてる 戯言たわごとを 今更いまさらうか ええあほらしい》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八二)
  
朝露の やすきが身 老いぬとも またちかへり 君をし待たむ
いくばくの のこいのちか わからんが わこもどって あんたとかな》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六八九)
  
昔に待った あの人んわ
共寝ともねした人 もう逢われへん
一緒共寝る夜が うなり久し
別れしたのか うなったのか

ゆふされば 君まさむと 待ちしの なごりぞ今も ねかてにする
日暮ひぐれには あんた来るかと 待ったんが 今もくせなり 寝付ねつけんままや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五八八)
  
今さらに 君が手枕たまくら まきめや 我がひもの けつつもとな
《もうあんた ともすること いのんに うちの下紐 ほどけてならん》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一一)
  
敷栲しきたへの 枕をまきて いもれと はなくて 年ぞにける
《おまえわし 一緒いっしょ寝るが いままに 年月ごに って仕舞しもたで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一五)


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■日めくり万葉集Vol・2(101)高円の

2012年04月14日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【八月十五日】放映分

高円たかまとの 野辺のへ容花かほばな 面影に 見えつつ妹は 忘れかねつも
《高円の 昼顔ひるがお見たら お前顔 ちらつき浮かび 忘れられんわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六三〇)

【万葉歌みじかものがたり】《かくぞ黄変もみてる》

何につけても 思われるのは大嬢おおいらつめがこと
天候 不順がもたらす 花時期のずれ
これ すら こころ通わせの手立てとなる

我がやどの 時じき藤の めづらしく 今も見てしか 妹がまひを
あいらしに 時節じせつ外れの 藤咲いた お前の笑顔 見となったがな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六二七)
我がやどの 萩の下葉したばは 秋風も いまだ吹かねば かくぞ黄変もみてる
《庭の萩 まだ秋風も 吹かんのに 下の葉ほれ見 こなっとるで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六二八)

こころ 落ち着いた 妻問い
歌のり取り
じょうが 濃くなるにつれ
新たな 憂悶ゆうもんが 頭もたげる
(世の習いとはえ いつまでの妻問い 
 ともまいの おとずれが待ち遠しい)

ねもころに 物を思へば 言はむすべ すべも無し 
《しみじみと 恋しおもたら 言いない 晴らす方法ほうほも 見当たらん》
妹とれと 手たづさはりて あしたには 庭にで立ち ゆふへには とこうちはらひ 白栲しろたへの 袖さしへて さし夜や 常にありける 
《手ぇをつないで お前わし 朝が来たなら 庭に出て 夕暮れなると 床べて 互いに袖を わし合い 一緒寝たよる 一寸ちょっとだけ》
あしひきの 山鳥こそば むかひに 妻問つまどひすといへ 現世うつせみの 人にある我れや 何すとか 一日ひとひ一夜ひとよも さかり居て 嘆き恋ふらむ ここへば 胸こそ痛き 
《山む鳥は 連れうに 峰越すだけで えのんに この世生まれた このわしは  なんで毎日 毎晩も 離れ暮らして 嘆くんか それを思たら 胸痛い》 
そこゆゑに 心ぐやと 高円たかまとの 山にも野にも うち行きて 遊びあるけど 花のみし にほひてあれば 見るごとに ましてしのはゆ いかにして 忘れむものぞ 恋といふものを 
仕様しょう無いよって なぐさみに 高円山の 山や野に 出かけて行って 遊んだら 花が綺麗きれえに 咲いてたが それ見るたんびに 益々ますますに お前のことが 偲ばれる どしたらんや 忘れんの 思うならん 恋んは》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六二九)
高円たかまとの 野辺のへ容花かほばな 面影に 見えつつ妹は 忘れかねつも
《高円の 昼顔ひるがお見たら お前顔 ちらつき浮かび 忘れられんわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六三〇)

家持の憂悶ゆうもん
やがてに かれる日が 近づき 現実のものとなる




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■日めくり万葉集Vol・2(100)落ち激(たぎ)ち

2012年04月07日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【八月十二日】放映分

落ちたぎち 流るる水の いはれ よどめる淀に 月のかげ見ゆ

 《ほとばしり 流れる水が いわ当たり 作ったよどみ 月うつってる》
                           ―作者未詳―(巻九・一七一四)


【万葉歌みじかものがたり】ねもころ 見れど》

旅に出たなら 日暮れがさみ
月がせめても なぐさの友か
吉野川水かわみず たぎちて澄みて
常時いつもも見飽きん うた旅心

 筑波山に登りて月を詠む】
あまはら 雲なきよひに ぬばたまの 渡る月の らまくしも
《見上げたら 雲い空が 広がるに 月しずむがな しいでほんま》
                           ―作者未詳―(巻九・一七一二)
 吉野離宮行幸時の歌】
たぎうへの 三船みふねの山ゆ 秋津あきづに 鳴き渡るは 呼子鳥よぶこどり
三船山みふねやま 秋津あきつこうて 飛ぶ鳥は だれ呼ぶんやろ あの呼子鳥よぶこどり
                           ―作者未詳―(巻九・一七一三)
落ちたぎち 流るる水の いはれ よどめる淀に 月のかげ見ゆ
ほとばしり 流れる水が いわ当たり 作ったよどみ 月うつってる》
                           ―作者未詳―(巻九・一七一四)
 近江の川?】
三川みつかはの ふちもおちず 小網さでさすに 衣手ころもで濡れぬ す児はしに
みつかわの ふちにもにも 叉手網あみ張って 袖らしたで す児らんに》
                          ―春日蔵首老かすがのくらおびとおゆ―(巻九・一七一七)
 近江?】
照る月を 雲なかくしそ 島陰しまかげに 我が舟てむ とまり知らずも
《照る月を 雲かくしなや 島陰しまかげに 船めるんに 場所わからんぞ》
                          ―春日蔵首老かすがのくらおびとおゆ―(巻九・一七一九)
 吉野の歌】
めて うちれ越え 今日けふ見つる 吉野の川を 何時いつかへり見む
《馬ならべ みなて いま見てる この吉野川かわ見るん 次ぎ何時いつやろか》
                             ―元仁がんにん―(巻九・一七二〇)
苦しくも れゆく日かも 吉野川 清き川原かはらを 見れどかなくに
《ああ今日きょうが れて仕舞しまうで 吉野川 んだ川原かわはら まだ見飽みあきんに》
                             ―元仁がんにん―(巻九・一七二一)
吉野川 川波高み たぎの浦を 見ずかなりなむ 恋しけまくに
《吉野川 波高いんで 滝の浦 見られへんがな くやしいことに》
                             ―元仁がんにん―(巻九・一七二二)
かはづ鳴く 六田むつたの川の かはやなぎの ねもころ見れど かぬ川かも
河鹿かじか鳴く 六田むつたの川の 川柳やなぎの (ねんごろ見ても)なんぼ見てても けへん川や》
                              ―きぬ―(巻九・一七二三)
見まくり しくもしるく 吉野川 おとさやけさ 見るにともしく
是非ぜひ見とて たらほんまや 吉野川 瀬音せおとよらや 見て見飽みあきんわ》
                             ―嶋足しまたり―(巻九・一七二四)
いにしへの さかしき人の 遊びけむ 吉野の川原かはら 見れどかぬかも
《そのむかし えらいおかたが 遊ばれた 吉野川原かわらは なんと見事みごとや》
                             ―麻呂まろ―(巻九・一七二五)



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■日めくり万葉集Vol・2(099)生ける者(ひと)

2012年04月04日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【八月十一日】放映分

けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな

《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)

【万葉歌みじかものがたり】《猿にかもる》

 まあ どう なされたのですか」
散らばる短冊たんざくに あきれかえる 郎女いらつめ
頭をかかえる旅人たびとを 覗きこむ
 こんな 朝早くに 珍しいこと
  おや 朝酒ですか?」
 ・・・いや 酒ではない 水じゃ
 たまには 徳利とくり酒坏さかづきから
 酒気さかけを抜いてやろうと 思うたまでじゃ」

あなみにく さかしらをすと 酒飲まぬ 人をよく見れば 猿にかも
《ああいやや 酒も飲まんと 偉そうに う顔見たら 猿そっくりや》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四四)
 あれ
 これは まさか 筑前ちくぜんさまのことでしょうか
  お気の毒に 猿だなんて
 あのお方 わたしは 好きですよ
 真面目まじめでいらっしゃる
  お酒飲みの あなたよりもね」
にこりと 微笑ほほえ郎女いらつめに 思わず苦笑した旅人
「では わしも 酒気さかけを抜かねば なるまいて」

あたひ無き たからといふとも 一つきの にごれる酒に あにさめやも
《値けさえ 出ん高値の 宝より 酒一杯が わしにはえで》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四五)
よるひかる 玉といふとも さけ飲みて 心をるに あにかめやも
夜光やこうだま そんなもんより 酒飲んで さ晴らすが え決まってる》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四六)
世間よのなかの みやびの道に すすしきは ゑひなきするに あるべかるらし
《風流の 道を極めて 澄ますより 酔うて泣くが えのんちゃうか》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四七)
この世にし 楽しくあらばには 虫に烏にも 我れはなりなむ
《この世さえ 楽し出たら 次の世は 虫とか鳥に 成ってもえで》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四八)
けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあら
《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)
黙然もだをりて さかしらするは 酒飲みて 酔泣ゑひなきするに なほかずけり
《澄まし込み かしこるより 酒飲んで 泣いてる方が まだ増しちゃうか》
                           ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三五〇)

郎女いらつめ やはり 酒じゃ 酒を持て
 徳利とくり酒坏さかづきも しょんぼりしてる」 
笑いをこらえて 酒を運ぶ 郎女いらつめ
そこには 剛毅ごうき旅人たびとが 
あごひげを撫でて 待っていた


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