犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(137)天地と

2012年08月29日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十月五日】放映分

天地あめつちと 久しきまでに 万代よろづよに 仕へまつらむ 黒酒くろき白酒しろき
《天と地が 続く限りの おつかえを 黒酒白酒くろしろざけを ささげて祈ろ》
                        ―文屋智努真人ふんやのちぬのまひと―(巻十九・四二七五)
【万葉歌みじかものがたり】 をしのはむ》

平穏無事な中にも 政情不安の影がぎる
諸所しょしょで持たれる うたげ
全て が 政争がらみ でないも
気疲れうたげとなる
同席 すれば したで
不参 は 不参なりに
うわさ 憶測おくそくが 飛び交う

そう した中
秋の宮中行事 新嘗祭にいなめさい
今年の収穫を 神にそなえ 実りの感謝を捧げる日
天皇おおきみ 直々じきじきの うたげ
お召しにこたえ それぞれがうた
さすがに この場 憶測おくそくなく 慶賀けいが気分が満ちる

【十一月二十五日】新嘗にいなめ祭での天皇えん
天地あめつちと 相栄あひさかえむと 大宮を 仕へまつれば たふとく嬉しき
新嘗にいなめの 祭りにつかえ 天と地の さかえ祈れば 貴く嬉し》
                      ―巨勢奈弖麻呂こせのなてまろ―(巻十九・四二七三)

あめにはも 五百いほつなふ 万代よろづよに 国知らさむと 五百いほつな
《空の上 綱張巡めぐらせる 国おさめ 永遠とわに続けと 綱張巡めぐらせる》
                        ―石川年足いしかわのとしたり―(巻十九・四二七四)

天地あめつちと 久しきまでに 万代よろづよに 仕へまつらむ 黒酒くろき白酒しろき
《天と地が 続く限りの おつかえを 黒酒白酒くろしろざけを ささげて祈ろ》
                        ―文屋智努真人ふんやのちぬのまひと―(巻十九・四二七五)

島山に 照れるたちばな 髻華うずし 仕へまつるは 卿大夫まへつきみたち
庭山にわやまに えるたちばな 髪挿かみさして せきに連なる 側仕そばつかびと
                        ―藤原八束ふじわらのやつか―(巻十九・四二七六)

れて いざ我がそのに うぐひすの 木伝こづたひ散らす 梅の花見に
くつろいで うちその行こ 鶯が 枝散らしする 梅花うめはな見いに》
                        ―藤原永手ふじわらのながて―(巻十九・四二七七)
新嘗にいなめの うたげこれ無事 済ませたら うち梅花うめはな 見に来ませんか―こんな季節に 梅花ないが 梅見気分で みなしてどうぞ)

あしひきの 山下日蔭ひかげ かづらける 上にやさらに 梅をしのはむ
《行きましょや 日陰かずらを 髪挿かみさして 気分そのまま 梅花うめはなめに》
                        ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十九・四二七八)



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■日めくり万葉集Vol・2(136)家にあらば

2012年08月25日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【十月四日】放映分

家にあらば 妹が手巻かむ 草枕 旅にやせる この旅人たびとあはれ
可哀想かわいそに 妻の手枕てまくら するはずが 草まくらして てるやなんて》
                            ―聖徳太子しょうとくたいし―(巻三・四一五)


【万葉歌みじかものがたり】国忘れ たる》

人麻呂 は 夢を見ていた
みんな  礼を言ってくれる
手向たむけ歌への礼だ

(これは 狭岑さみね島の野伏のぶせ人
  ヨメナ また咲いてますかな)

(あれに 来るのは 香久山かぐやまのごじんではないか
 そなえの歌は たしか・・・)
草枕くさまくら 旅の宿やどりに つまか 国忘れたる 家待たまくに
 誰やろか こんなとこ来て 死んではる 国はどこやろ 家待つやろに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二六)

(次なるは 出雲娘子いずものおとめ
 おぉ 土形娘子ひじかたのおとめと連れどうて 二人とも 火葬かそうに付されたので あったな あわれなことに)
隠口こもりくの 泊瀬はつせの山の 山のに いさよふ雲は 妹にかもあらむ
《泊瀬山 山の狭間はざまに ただようて たゆとう雲は あの児やろうか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二八)
八雲やくもさす 出雲いづもの子らが 黒髪くろかみは 吉野の川の おきになづさふ
《出雲から 出て来た児ぉの 黒髪が 川底そこらめき 漂うとおる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四三〇)
山のゆ 出雲いづもらは きりなれや 吉野の山の みねにたなびく
 出雲の児 霧になったか 山の上 雲と一緒に 棚引いとおる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・四二九)

 次のお方・・・
  これは 人麻呂さまでは ありませぬか
  人麻呂さまは まだ ご存命のはず
 よって 手向けの歌は ご用意致しておりませぬ いのでございます 無いといったら 無い!)

 ご主人さま! ご主人さまぁ! しっかり なさいませ うなされておりますぞ」
ともに 揺り動かされ ぼんやりと 目を覚ます人麻呂

先日来の 高熱 流行はやりの熱病か
石見いわみへと向かう 国境くにざかいの山の奥

朦朧もうろうとした意識の中 人麻呂の口が かすかに動く
 もう い か ん お迎え じゃ
 山中さんちゅう亡骸なきがらは 見苦しい 引き取りは 石見国庁の 丹比笠麿たじひのかさまろ殿に・・・
依羅娘子よさみのをとめには 歌を託す 筆 筆を・・・」

当代きっての 歌人うたびと 柿本人麻呂
うつろろな目は 嶺の雲を 追っている


 四二六番 類歌】
家にあらば 妹が手巻かむ 草枕 旅にやせる この旅人たびとあはれ
可哀想かわいそに 妻の手枕てまくら するはずが 草まくらして てるやなんて》
                            ―聖徳太子しょうとくたいし―(巻三・四一五)



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朝日新聞に掲載されました

2012年08月22日 | メッセージ
平成24年7月22日(日)

今日の 朝日新聞に 「万葉歌みじかものがたり」が 掲載されました。
読書欄『著者に会いたい』です。

☆☆ 大朝日 全国版に 載ったから 今日がわたしの みじか記念日 ☆☆


記事記載のように
これからも 犬養万葉学の精神を若い世代に伝えるため 頑張ろうと思います。
みなさんの 応援をお願い致します。
●第一巻(歴史編):刊行中
●第二巻(人麻呂・黒人・旅人・憶良編):8月中旬刊行予定

なお 書籍の購入は 最寄りの書店を通じて お取り寄せの注文を お願いします。
ネット書店での注文も可能です。
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よろしくお願いします。

■日めくり万葉集Vol・2(135)秋の田の

2012年08月22日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【十月三日】放映分

秋の田の 穂田ほだの刈りばか か寄りあはば そこもか人の ことさむ
《秋の田の 稲刈りどきに そば寄ると もうそれだけで うわさなるかな》
                           ―草嬢くさのおとめ―(巻四・五一二)


【万葉歌みじかものがたり】そこ もか人の》

恋の様相ようそう 様々あるよ
初心うぶな乙女は 恥じらうばかり
鳴く鹿声と 恋焦こがれの競い
年増としま女を かまうやないで

 近く来たなら 胸ときめくよ
 その声聞くと もうたまらんわ)

秋の田の 穂田ほだの刈りばか か寄りあはば そこもか人の ことさむ
《秋の田の 稲刈りどきに そば寄ると もうそれだけで うわさなるかな》
                           ―草嬢くさのおとめ―(巻四・五一二)
佐保渡り 我家わぎへうへに 鳴く鳥の 声なつかしき しき妻の子
《お前声 あいくるしいで 佐保山さほ越えて 家の上て 鳴く鳥みたい》
                          ―安都年足あとのとしたり―(巻四・六六三)

逢瀬おうせ叶うて まだ日が浅い
  ぎこちないのが これまた嬉し)

須磨すま海女あまの しほきぬの ふぢころも どほにしあれば いまだ着なれず
須磨すま海女あまの 塩焼しおやふくは ふじごろも 隙間すきまいんで 着慣きなれがせんわ》
(付きうて うてから まだあの児 わしにれんが まあ仕様しょがないか) 
                          ―大網人主おおあみのひとぬし―(巻三・四一三)

いとしあんたを 慕うてると
 鹿 が鳴いてる 逢いたい見たい)

宇陀うだの野の 秋萩しのぎ 鳴く鹿も 妻に恋ふらく 我れにはさじ
宇陀うだの野で 秋萩はぎ踏み分けて 鳴く鹿も 妻にわしほど 恋焦こがれはせんで》
                         ―丹比真人たじひのまひと―(巻八・一六〇九)
あしひきの 山下とよめ 鳴く鹿の ことともしかも 我が心つま
《鹿の声 ふもとひびいて 聞こえてる うち聞きたいで あの人の声》
                         ―笠縫女王かさぬいのおおきみ―(巻八・一六一一)

(恋するのんに 年齢としあるかいな
 思うてみるが 気になるじわ

かむさぶと 不許いなにはあらず 秋草の 結びしひもを くは悲しも
年増としやから 遠慮えんりょするわけ ちゃうんやで (独り寝の)決心ちかいやぶるん 悲しいだけや》 
                       ―石川賀係女郎いしかわのかけのいらつめ―(巻八・一六一二)
今のごと 心を常に おもへらば まづ咲く花の つちに落ちめやも
《今みたい 分別ふんべつ心 持ってたら 咲いたうめはな 散らさんかった》
                         (若気わかげいたりで 恋しくじった) 
                        ―縣犬養娘子あがたいぬかいのおとめ―(巻八・一六五三)





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■日めくり万葉集Vol・2(134)北山に

2012年08月18日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【九月三十日】放映分

北山きたやまに 棚引たなびく雲の 青雲あをくもの 星はなれ行き 月をはなれて
《北山に 棚引く雲は あんたかな 身内の星や 月からはなれ》
                          ―持統天皇じとうてんのう―(巻二・一六一)

【万葉歌みじかものがたり】 し給はまし》

あぁ  なんという 人であったろう
これ ほど 強い人が あったであろうか
沈着 豪気ごうき
それでいて 女人おみなの気も らさない
ここ 飛鳥淨御原宮あすかきよみはらのみやに 大殿おおとのを築き
「神にしあれば」と たたえられ
天皇おおきみ中心の 治世を開き 
自らを 天皇すめらみこととされた方

思えば 始まりは 吉野こう であったか
父天智との 確執かくしつ 亀裂きれつ
われは 夫大海人おおあまを 選んだ
雪降り  寒風吹きすさぶ 道々
手を携えての 逃避とうひであった
東国 での挙兵を目指し 伊勢 美濃への移動
背を越す夏草 襲い来る驟雨しゅうう
信じる 夫に 付き従うての 行軍

共にめた辛苦しんく それがきずなを強くした

やすみしし わが大君の 夕されば し給ふらし 明けくれば 問ひ給ふらし 神岳かむおかの 山の黄葉もみぢを 
《(御霊みたまなられた)天皇おおきみは 夕暮れなると 見てはるで 朝になったら きはるで かみおかもみじ どやろかと》
今日もかも 問ひ給はまし 明日もかも し給はまし その山を ふりさけ見つつ 夕されば あやに悲しみ 明けくれば うらさび暮し 荒栲あらたへの 衣の袖は る時もなし
《今日もきはる 決まってる 明日あすも見はるに 違いない その山仰ぎ 見るたんび 夕暮れなると 悲しいて 明け方なると さみしゅうて 涙流れて 止まらへん》
                          ―持統天皇じとうてんのう―(巻二・一五九)
燃ゆる火も 取りてつつみて ふくろには 入ると言はずや 面智男雲(くもなったひと)
《燃える火も つかふくろに れるた そんなあんたが 雲なったんか》
                          ―持統天皇じとうてんのう―(巻二・一六〇)
北山きたやまに 棚引たなびく雲の 青雲あをくもの 星はなれ行き 月をはなれて
《北山に 棚引く雲は あんたかな 身内の星や 月からはなれ》
                          ―持統天皇じとうてんのう―(巻二・一六一)

そうも してれぬ
われが 皇后となり 内助しての施政しせい
草壁 の手に 天下が 渡るまで
われが 支えねば

時に 朱鳥あかみとり元年(686)九月
天武崩御ほうぎょ 鵜野讃良うのさらら感懐かんかいは 複雑
 ――――――――――――――
崩御ほうぎょ八年後 供養くよう法要ほうようの夜 持統帝夢中ゆめなかでの作歌】
明日香あすかの 清御原きよみはらみやに あめの下 知らしめしし やすみしし 我が大君 たからす 日の御子みこ 
明日香あすかの里の 清御原きよみはら そこを都と 定められ おおさめされた 天皇すめらみこ 天上てんじょう照らす 神の御子みこ
いかさまに 思ほしめせか 神風かむかぜの 伊勢の国は 沖つ藻も みたる波に しほのみ かをれる国に 味凝うまこり あやにともしき 高照らす 日の御子
《何を思われ 伊勢の国 沖の藻なびく 波の上 潮のかおりの けぶる国 おましなされ 戻られん 天上てんじょう照らす 神の御子みこ》 
                           ―持統天皇じとうてんのう―(巻二・一六二)



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■日めくり万葉集Vol・2(133)我がやどの

2012年08月15日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【九月二十九日】放映分

我がやどの 萩花はぎはな咲けり 見に来ませ いま二日ふつかだみ あらば散りなむ
《庭先の 萩咲いたんで 見においで 二日もしたら 散って仕舞しまうで》
                       ―巫部麻蘇娘子かんなぎべのまそおとめ―(巻八・一六二一)

【万葉歌みじかものがたり】《いま二日ふつかだみ》

場数 踏んだ 家持
少し 駆け引きを覚えた
掛け持ち恋に 浮き身をやつ

我が背子せこを あひ見しその日 今日けふまでに 衣手ころもでは る時も無し
《お逢いした 日から今日まで ご無沙汰ぶさたや うちは涙で 袖ぐしょ濡れや》
                        ―巫部麻蘇娘子かんなぎべのまそおとめ―(巻四・七〇三)
栲縄たくなはの ながき命を りしくは 絶えずて人を 見まく欲りこそ
永遠とわまでの 命欲しいと おもたんは ずっとあんたと てたいからや》
                        ―巫部麻蘇娘子かんなぎべのまそおとめ―(巻四・七〇四)

我がやどの 萩花はぎはな咲けり 見に来ませ いま二日ふつかだみ あらば散りなむ
《庭先の 萩咲いたんで 見においで 二日もしたら 散って仕舞しまうで》
                        ―巫部麻蘇娘子かんなぎべのまそおとめ―(巻八・一六二一)

たれ聞きつ 此処ゆ鳴き渡る 雁がねの つま呼ぶ声の ともしくもあるか
《連れ呼んで 此処ここ鳴き飛んだ 雁ええな 何処どこかの誰か お聞きや無いか》
                        ―巫部麻蘇娘子かんなぎべのまそおとめ―(巻八・一五六二)

聞きつやと 妹が問はせる かりは まことも遠く 雲隠くもがくるなり
《聞いたかと あんたたずねる 雁の声 雲に隠れて 聞こえんかった》
                        ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一五六三)

秋づけば 尾花が上に 置く露の ぬべくもは 思ほゆるかも
《秋来たら すすき置く露 消えるに うちの命も もう消えやで》
                         ―日置長枝娘子へきのながえのおとめ―(巻八・一五六四)

我がやどの 一群ひとむら萩を 思ふ児に 見せずほとほと 散らしつるかも
《庭先の れ咲く萩の 殆皆おおかたを あの児見せんと 散らして仕舞しもた》
                        ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一五六五)

つれない 心の 返し歌
家持 は 自信を深めていた
 これこれ これぞ恋遊び
 我ながら 巧妙うまくなったものだ)

坂上郎女の 苛々いらいらは募る
大伴家いえを思う 私の心
  わからぬ家持であるまいに
 分不相応 な 娘相手に 手当たり次第)

坂上郎女から 謎めいたふみが届く
《家持殿 今少し 美味びみを食すと 思うたが 如何物いかもの食いとは 恐れ入る》



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■日めくり万葉集Vol・2(132)語り継ぐ

2012年08月11日 | 日めくり万葉集
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【九月二十八日】放映分

語りぐ からにも幾許ここだ 恋しきを ただに見けむ いにしへ壮士をとこ
《語りぐ だけでもこんな つらいのに とうの本人 どんなやろうか》
                       ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻九・一八〇三)

【万葉歌みじかものがたり】妻問つまどひしけむ》

やっとの いとま得た 家待
田辺福麻呂たなべのさきまろが残し置いた 歌集を
 これは これは
 田辺福麻呂さきまろ殿
 諸兄もろえ様お付きの歌人と 思いしが
 いろいろとの巡り さってったか
 おお 菟原うない処女おとめじゃ
 高橋蟲麻呂むしまろ殿での歌 名高いが)

いにしへへの ますら壮士をとこの 相きほひ 妻問つまどひしけむ 葦屋あしのやの 菟原うなひ処女をとめの 奥津城おくつきを 我が立ち見れば  
《その昔 雄々おおし男が 二人して 妻争いで 競いた 菟原うない処女おとめの 墓処はかどこを 見よと思うて やって来た 
永き世の 語りにしつつ 後人のちひとの しのひにせむと 玉桙たまほこの 道の近く 磐構いはかまへ 造れる塚を 天雲あまくもの そくへのきはみ この道を 行く人ごとに 行き寄りて い立ち嘆かひ ある人は にも泣きつつ 
後々のちのちまでの 語り草 後の世ひとの しのび草 仕様しょうみちに 石積んで 造り築いた はかづかを この国住まう 人だれも 此処ここを 通るとき 立ち寄りたずね 嘆きする 人によっては 泣きむせぶ》
語りぎ しのぎくる 処女をとめらが 奥津おくつ城処きどころ 我れさへに 見れば悲しも いにしへ思へば
《語り伝えて しのぐ 処女おとめまつる 墓処はかどころ 見るに悲しい 昔の話》
                       ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻九・一八〇一)

いにしへの 信太しのだ壮士をとこの 妻問つまどひし 菟原うなひ処女をとめの 奥津城おくつきぞこれ
《その昔 信太しのだ壮士おとこが 妻問つまどうた 菟原うない処女おとめの 墓処はかやで此処ここが》
                       ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻九・一八〇二)
語りぐ からにも幾許ここだ 恋しきを ただに見けむ いにしへ壮士をとこ
《語りぐ だけでもこんな つらいのに とうの本人 どんなやろうか》
                       ―田辺福麻呂たなべのさきまろ歌集―(巻九・一八〇三)




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■日めくり万葉集Vol・2(131)夢にだに

2012年08月08日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【九月二十七日】放映分

いめにだに 見えばこそあらめ かくばかり 見えずしあるは 恋ひて死ねとか
《せめてもに 夢に出んかと 待ってても 出てえへんの 恋死ね云うことか》
                          ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四九)

【万葉歌みじかものがたり】千引ちびきいはを》

逢えぬ 苦しみ
朝明け と共に 相手を思い
日中ひなか一日 逢わんとの手立てあれこれ
 破れての 落ち込み
日の暮れが さらなる傷心いたみを誘う
延べるとこやみ 浮かぶ面影のらめき
  
いめあひは 苦しかりけり おどろきて き探れども 手にも触れねば
《目ぇまし 手探てさぐりしても さわられん 夢でうんは もどかしこっちゃ》
                        ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四一)
いめにだに 見えばこそあらめ かくばかり 見えずしあるは 恋ひて死ねとか
《せめてもに 夢に出んかと 待ってても 出てえへんの 恋死ね云うことか》
                          ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四九)
かくばかり 面影おもかげのみに 思ほえば いかにかもせむ 人目しげくて
《面影が 浮かび浮かんで 仕様しょうないで どしたらんや 人目いのに》
                          ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七五二)
一重ひとへのみ 妹が結ばむ 帯をすら 三重みへ結ぶべく 我が身はなりぬ
てくれる 帯は一重で ったのに 三重結ぶほど 恋せしたで》
                          ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四二)

人間  追い詰められれば
覚悟 が決まる
 こうなれば もう 逢うしかない
  逢っても逢わなくても 世間は 許さない
 腹をくくるが 上策)
開き直り に 活路を見い出そうとする 家持

恋死こひしなむ そこも同じぞ 何せむに 人目ひとめ他言ひとごと 言痛こちたがせむ
恋死やで 他人ひと非難うわさを 逃れと 逢うんめても おんなじこっちゃ》
                          ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四八)
わが恋は 千引ちびきいはを ななばかり 首にけむも 神のまにまに
かまへんで 千人引きの 石七つ 首掛けるな 苦し恋でも》
                          ―大伴家持おおとものやかもち―(巻四・七四三)



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■日めくり万葉集Vol・2(130)上野の

2012年08月04日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【九月二十六日】放映分

かみ 安蘇あそ真麻群まそむら かきむだき 寝れど飽かぬを あどがせむ
麻束あさたばを かかえるように お前抱き 寝たけど足らん どしたらんや》
                          ―東 歌―(巻十四・三四〇四)

【万葉歌みじかものがたり】八尺やさか堰塞ゐでに》

激しい 恋は 火花散る
         抱きに抱いても 尽きはせん

東男あずまおとこに あずまの女
 の炎に 火がつきゃ激し
共寝ともねしとうて あの児の許へ
共寝 するため あんたを待つよ

空も飛んでく かどわかせ言い
春から秋まで 共寝たいと言うよ
挙句の果てに まだ共寝らんと
負けてなるかよ 恋敵こいかたきめが

しも 安蘇あその川原よ 石まず 空ゆとぬよ が心
いとうて の川原の 空の上 わし飛んで来た お前どやねん》
                          ―東 歌―(巻十四・三四二五)
足柄の 可鶏山かけやまの かづの木の かづさねも かづさかずとも
可鶏山かけやまの カズの木ちゃうが うちのこと かどわかしてや 門めてても》
                          ―東 歌―(巻十四・三四三二)
奥山の 真木まき板戸いたどを とどとして 我が開かむに 入りさね
《奥山の 丈夫な木の戸 ごとごとと うち開けるから はいり早よ共寝よ》
                          ―東 歌―(巻十四・三四六七)
伊香保いかほろの 八尺やさか堰塞ゐでに 立つのじの あらはろまでも さをさてば
《伊香保ある せきに立つ虹 くっきりや 表立つほど 寝続けたいで》
                          ―東 歌―(巻十四・三四一四)
子持山こもちやま 若鶏冠木わかかへるでの 黄葉もみつまで もとふ あど
かえでの葉 若葉黄葉いろづき するまでも ずっと共寝てたい どないやお前》
                          ―東 歌―(巻十四・三四九四)
かみ 安蘇あそ真麻群まそむら かきむだき 寝れど飽かぬを あどがせむ
麻束あさたばを かかえるように お前抱き 寝たけど足らん どしたらんや》
                          ―東 歌―(巻十四・三四〇四)
高麗錦こまにしき 紐解きけて るがに ろとかも あやにかなしき
綺麗きれえ帯 いて共寝といて その上に どないんや この可愛かわい児は》
                          ―東 歌―(巻十四・三四六五)
かないもを 弓束ゆづかべ巻き 如己男もころをの こととし言はば いや片増かたましに
《お前抱き 恋敵やつと変わらん うんなら もっと抱き締め ちからしたる》
                                              ―東 歌―(巻十四・三四八六)



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■日めくり万葉集Vol・2(129)こもりくの

2012年08月01日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【九月二十三日】放映分
隠口こもりくの 泊瀬はつせの川の かみつ瀬に を八つかづけ しもつ瀬に を八つかづけ かみつ瀬の あゆはしめ 下つ瀬の あゆはしめ・・・
泊瀬川はつせがわ 上流かみ多数よけ もぐらして 下流しもでも多数ようけ もぐらして 上流かみあゆうお 食捕わさして 下流しもあゆうお 食捕わさせる・・・》

【万葉歌みじかものがたり】あゆはしめ》

ふくや玉なら つくろいするが
人間ひと生命いのちは つくろい出来ん
  
隠口こもりくの 泊瀬はつせの川の かみつ瀬に を八つかづけ しもつ瀬に を八つかづけ かみつ瀬の あゆはしめ 下つ瀬の あゆはしめ
泊瀬川はつせがわ 上流かみ多数よけ もぐらして 下流しもでも多数ようけ もぐらして 上流かみあゆうお 食捕わさして 下流しもあゆうお 食捕わさせる》
くはし妹に あゆしみ ぐるさの とほざかりて 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに
《そのくわし児が しがった あゆわすすら けんに 矢ぁ投げるに って仕舞て 思う心は 苦しいて 嘆く心は せつうて》
きぬこそば それれぬれば ぎつつも またもふといへ 玉こそば えぬれば くくりつつ またもふといへ またもはぬものは 妻にしありけり
ふくであったら やぶれても つくろうたなら ちゃんとなる 玉であったら 千切ちぎれても つなぎ付けたら もと戻る もとに戻らん もんんは ほんにわしの児 やったな》
                          ―作者未詳―(巻十三・三三三〇)
   
忍坂おさかの山は うるわし山や
こんな立派ええ山 荒れるんしで

隠口こもりくの 泊瀬はつせの山 あをはたの 忍坂おさかの山は 走出はしりでの よろしき山の 出立いでたちの くはしき山ぞ あたらしき山の 荒れまくしも
泊瀬はつせの国に ある山の 青々茂る 忍坂おさかやま 突き出た形 え山や 立ってる姿 え山や よてうるわし 立派ええ山の (ずっとってと 思うのに) 荒れて行くのん しい思うで》
                          ―作者未詳―(巻十三・三三三一)
                         (亡くした人を忍坂山になぞらえたか)
                          (忍坂山での葬送の後人が居なくなるのを「荒れまく」と言ったか)

高山たかやまと 海とこそば 山ながら かくもうつしく 海ながら しかまことならめ 人ははなものぞ うつせみのひと
高山やまと海とは 永久とこしえや 高山やまは高々 ここにある 海は広々 そこにある けど人間ひとんは 花かいな この世にあって 散っていく 
                          ―作者未詳―(巻十三・三三三二)


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