犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(157)君が行き

2012年11月28日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十一月二日】放映分

君が行き 長くなりぬ 山たづね むかへか行かむ ちにか待たむ
《あんたはん 行って仕舞しもうて なごうなる うちから行こか それともとか》
                          ―磐姫皇后いわのひめのおおきさき―(巻二・八五)


【万葉歌みじかものがたり】わが 黒髪に》

磐姫いわのひめは 深く 仁徳にんとくを おもっていた
葛城かつらぎ襲津彦そつひこ勢力 うしだてとは言え 
熾烈しれつな 皇位継承争い勝ち抜き 
大王だいおうの地位得たは 仁徳にんとくの 知力と勇気
 は この世で 一番と言ってよい男の妻なのだ
でも  でも でも でも
これ だけは 許せない
私の 留守をいいことに あの手弱たおやかな 
あやつ 八田皇女やたのひめみこを きさきにするなんて

「姫さま そねみ心も 程々ほどほどが 良うございます」
とつぐ時からの 老女が言う
「熊野もうでの帰途 難波の宮に寄らず 山城の この筒城宮つづきのみやはいられては 大王だいおうの顔が立ちませぬ」 
「お迎えの 使いが 再三さいさん られたでは ありませぬか」

ついに 仁徳みずからのむかえが来る
平身低頭 諄々じゅんじゅんと説く 仁徳 
手を着かんばかりの 
磐姫いわのひめ 自尊じそんが 許さない
 もう いい 帰って!」

 なぜ ついて行かなかったのだろう
 いいえ  行くものですか
 どうして  わたしは こうも・・・)
君が行き 長くなりぬ 山たづね むかへか行かむ ちにか待たむ
《あんたはん 行って仕舞しもうて なごうなる うちから行こか それともとか》
                          ―磐姫皇后いわのひめのおおきさき―(巻二・八五)
かくばかり ひつつあらずは 高山の 磐根いはねきて 死なましもの
《いっそ死の こんな恋焦こがれて 苦しなら 奥山行って 岩枕して》
                          ―磐姫皇后いわのひめのおおきさき―(巻二・八六)
ありつつも 君をばたむ 打ちなびく わが黒髪に しもくまでに
《死ぬもんか 生き続けたる あんた待ち うちの黒髪 しろなるまでも》
                          ―磐姫皇后いわのひめのおおきさき―(巻二・八七)
秋の田の 穂のらふ 朝がすみ 何処辺いつへかたに わがこひまむ
《穂の上に 漂う霧や この恋焦こがれ 何時いつになったら 消えるんやろか》
                          ―磐姫皇后いわのひめのおおきさき―(巻二・八八)

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 或る本】
居明かして 君をばたむ ぬばたまの 我が黒髪に しもは降るとも
《立ち続け うち待ってるで 寒うても この黒髪に 霜りたかて》
                          ―磐姫皇后いわのひめのおおきさき―(巻二・八九)

 関連歌】
一日ひとひこそ 人も待ちよき 長きを かくのみ待たば 有りかつましじ
《待つのんは せめて一日 そやうに ご待たされて もう死にやで》
                          ―難波天皇妹(八田皇女やたのひめみこ?)―(巻四・四八四)



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【古事記ものがたり】への誘い
古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
こちらを ご覧下さい。
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■日めくり万葉集Vol・2(156)冬ごもり

2012年11月03日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十一月一日】放映分
冬こもり 春さりれば 鳴かざりし 鳥も鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど
山をしげみ 入りても取らず 草ふかみ 取りても見ず
秋山の の葉を見ては 黄葉もみちをば 取りてぞしのふ 青きをば 置きてぞなげく 
そこしうらめし秋山我れは

                            ―額田王ぬかたのおおきみ―(巻一・一六)


【万葉歌みじかものがたり】秋山 われは》

 は 色めきたった
中大兄皇子なかのおおえのおうじが 額田王ぬかたのおおきみを呼べ と命じたのだ

先刻から 続けられている 「歌競うたきそい」
一方が 春をはやせば
他方が 秋をてる
春組が 花のはなやぎをでれば
秋組が 黄葉もみじいろどりたたええる

集うは 「漢詩」読みの上手じょうずばかり
勝ち負けの いずれは さすがに つけがた
判定は 額田王おおきみの「やまとうた」でとの
皇太子の いきな はからいである

ざわめきの おさまりを待ち 額田王が ゆっくりとうたいだす

冬こもり 春さりれば 鳴かざりし 鳥も鳴きぬ 咲かざりし 花も咲け・・・
春組は みのうなずきをかさねる

・・・咲けれど 山をしげみ 入りても取らず 草ふかみ 取りても見ず・・・
肩落とす春組 秋組「たり」と手を打つ

秋山の の葉を見ては 黄葉もみちをば 取りてぞしのふ・・・ 
秋組 から「おおっ」の声

・・・青きをば 置きてぞなげく そこしうらめし
一転  天仰ぐ秋組 「やった」と叫ぶ春組

息を詰め 固唾かたずを飲む うたげの場
場のしずまりを 静かに待った 額田王おおきみ
おもむろ 
・・・・・・秋山我れは 
                            ―額田王ぬかたのおおきみ―(巻一・一六)

一瞬静まり返った 宴席は やがて 万雷ばんらいの拍手に包まれた

《冬って仕舞て 春来たら
   鳴けへんかった 鳥も鳴く 
    咲かへんかった 花も咲く 
そや けども
 山茂ってて はいられん
  草深いから 取られへん

秋山はいって 葉ぁ見たら
 黄葉いろづきした葉 え思う
けど青いは も一つや
そこが かなんな

 うう~ん・・・)秋やな うちは》



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