犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(068)生ける人

2011年11月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【六月二十九日】放映分

けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな

 《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)



【万葉歌みじかものがたり】《猿にかもる》

 まあ どう なされたのですか」
散らばる短冊たんざくに あきれかえる 郎女いらつめ
頭を抱える旅人たびとを 覗きこむ
 こんな 朝早くに 珍しいこと
  おや 朝酒ですか?」
 ・・・いや 酒ではない 水じゃ
 たまには 徳利とくり酒坏さかづきから
 酒気さかけを抜いてやろうと 思うたまでじゃ」

あなみにく さかしらをすと酒飲まぬ 人をよく見れば 猿にかも
《ああいやや 酒も飲まんと 偉そうに 言う顔見たら 猿そっくりや》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四四)
 あれ
 これは まさか 筑前ちくぜんさまのことでしょうか
  お気の毒に 猿だなんて
 あのお方 わたくしは 好きですよ
 真面目まじめでいらっしゃる
  お酒飲みの あなたよりもね」
にこりと 微笑ほほえ郎女いらつめに 思わず苦笑した旅人
「では わしも 酒気さかけを抜かねば なるまいて」

あたひ無き たからといふとも 一つきの にごれる酒に あにさめやも
《値付けさえ 出けん高値の 宝より 酒一杯が わしにはえで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四五)
よるひかる 玉といふとも さけ飲みて 心をるに あにかめやも
夜光やこうだま そんなもんより 酒飲んで さ晴らすが え決まってる》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四六)
世間よのなかの みやびの道に すすしきは ゑひなきするに あるべかるらし
《風流の 道を極めて 澄ますより 酔うて泣くが えのんちゃうか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四七)
この世にし 楽しくあらば には 虫に烏にも 我れはなりなむ
《この世さえ 楽し出たら 次の世は 虫とか鳥に 成ってもえで》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四八)
けるひと つひにも死ぬる ものにあれば この世なるは 楽しくをあらな
《人何時いつか 死ぬと決まった もんやから 生きてるうちは 楽しゅう過ごそ》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三四九)
黙然もだをりて さかしらするは 酒飲みて 酔泣ゑひなきするに なほかずけり
《澄まし込み かしこるより 酒飲んで 泣いてる方が まだ増しちゃうか》
                         ―大伴旅人おおとものたびと―(巻三・三五〇)

郎女いらつめ やはり 酒じゃ 酒を持て
徳利とくり酒坏さかづきも しょんぼりしてる」 
笑いをこらえて 酒を運ぶ 郎女いらつめ
そこには 剛毅ごうき旅人たびとが 
あごひげを撫でて 待っていた


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■日めくり万葉集Vol・2(067)我妹子が

2011年11月26日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【六月二十八日】放映分

我妹子わぎもこが 形見の合歓木ねぶは 花のみに 咲きてけだしく にならじかも

 《合歓ねむの花 いとしあんたに 似てる花 はなやかやけど (恋の)らへんわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一四六三)



【万葉歌みじかものがたり】戯奴わけは恋ふらし》

安貴王あきのおおきみ ああ どうして 
 あんな 年寄りにとついだのかしら 
 でっぷり  太った
 当初は 世間知った たくましい人だった
 あの 当時 若い男は 頼りなかったわ
  は 違うの 細身の 若いのが いい
 そう あの 貴公子然の 家持やかもちなんか 抜群
 あの 人 すごく 恋人 多いの
  には 若すぎて 恋人は 無理だけど
 小母おばさま いえ お姉さま でのお付き合い
 ちょっと  からかって みようかしら)
紀郎女きのいらつめは 侍女じじょを 花みに やらせた
(「茅花ちばな合歓ねむ」この 取り合わせが いいわ
 これに 歌をえて と)

戯奴わけがため 我が手もすまに 春の野に 抜ける茅花ちばなぞ してえませ
《ぼんちをば おもうてった 茅花ちばな食べ ちょっとえてや 痩せ身のぼんち》
                         ―紀郎女きのいらつめ―(巻八・一四六〇)
昼は咲き よるは恋ひる 合歓木ねぶの花 君のみ見めや 戯奴わけさへに見よ
《昼咲いて 夜は恋見る 合歓ねむの花 ねえさま見たで ぼんちも見てね》
                         ―紀郎女きのいらつめ―(巻八・一四六一)

ほど なく 家持からの 返歌が 届く
(まあ 早速さっそく
  家持坊や まんざらでもないのね)

が君に 戯奴わけは恋ふらし たばりたる 茅花ちばなめど いやせに
ねえさまに ぼんち恋した ろた茅花はな たけどせる またまた痩せる》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一四六二)
我妹子わぎもこが 形見の合歓木ねぶは 花のみに 咲きてけだしく にならじかも
合歓ねむの花 いとしあんたに 似てる花 はなやかやけど (恋の)らへんわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一四六三)
 ふむ ふむ 
  魅力的だけど 恋はしません だって
 照れて いるのね あの坊や
  男ごころ って 複雑なんだ)

春のおぼろ 
かりに 梅の花 かそけく にお
家持のもとに 清らかな 歌が

ひさかたの 月夜つくよきよみ 梅の花 心ひらけて おもへる君
清々すがすがし つき光に 梅咲いた うちの心も あんたに咲いた》
                         ―紀小鹿郎女きのおしかのいらつめ―(巻八・一六六一)

(あの 小鹿おしかのばあさん 取り違えたか)
家持 は 苦笑するしかない

まさか 妻問いは なかろうと思いつつ
 待ちの月を 眺めやる 紀郎女

闇夜やみならば うべも来まさじ 梅の花 咲ける月夜に 出でまさじとや
闇夜やみよなら えへのんは 仕様しょうないが 梅花はな咲く月夜 なんでんのや》
                         ―紀郎女きのいらつめ―(巻八・一四五二)


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■日めくり万葉集Vol・2(066)我が盛り

2011年11月23日 | 日めくり万葉集
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【六月二十七日】放映分

我がさかり また変若をちめやも ほとほとに 奈良ならみやこを 見ずかなりなむ

 《も一遍いっぺん 若返りたい そやないと 奈良ならみやこを 見られへんがな》
                         ―大伴旅人おおとものたびと(巻三・三三一)



【万葉歌みじかものがたり】 にはならずて》

 亀五年(728)春
大宰だざいのそち 旅人たびとからの回状
赴任早々の 小野老おののおゆ歓迎うたげの誘い

「先ずはおゆどの
  貴殿の歌がなくては始まらぬ」 
旅人 が促す
あをよし 奈良ならみやこは 咲く花の にほふがごとく 今さかりなり
《賑やかな 奈良ならみやこは 色えて 花咲くみたい 今真っ盛り》
                         ―小野老をののおゆ―(巻三・三二八)
「おお 早速に みやこ恋しの歌か いやいや 我らへの みやこ伝えの手土産歌と見た」
やすみしし 我が大君おほきみの きませる 国のうちには みやこおもほゆ
大君おおきみの 治めてなさる この国で やっぱりみやこ えなと思う》
藤波ふぢなみの 花は盛りに なりにけり 奈良ならみやこを 思ほすや君
《ここ筑紫 ふじはな盛り それやのに みやこ恋しか 小野老あんたもやはり》
                         ―大伴四綱おおとものよつな―(巻三・三二九、三三〇)

四綱よつな殿も みやこか ほんに わしもじゃが」
我がさかり また変若をちめやも ほとほとに 奈良ならみやこを 見ずかなりなむ
《も一遍いっぺん 若返りたい そやないと 奈良ならみやこを 見られへんがな》
我がいのちも つねにあらぬか 昔見し きさ小川をがはを 行きて見むため
《この命 もうちょっとだけ べへんか きさの小川を また見たいんで》
浅茅あさぢはら つばらつばらに ものへば りにしさとし 思ほゆるかも
《何やかや つらつらつらと 思うたび 明日香の故郷さとが 懐かしのんや》
わすれくさ 我がひもに付く 香具かぐ山の りにしさとを 忘れむがため
《忘れ草 身に付けるんは 香具山の 故郷さと忘れよと 思うためやで》
我が行きは ひさにはあらじ いめのわだ にはならずて ふちにあらぬかも
《筑紫には ごうはらん 夢のわだ 浅瀬ならんと ふちってや》
                         ―大伴旅人おおとものたびと(巻三・三三一~三三五)

みやこみやこと 女々めめしいぞ わしは筑紫の歌じゃ」
しらぬひ 筑紫つくし綿わたは 身につけて いまだはねど あたたかに見ゆ
《珍しい 筑紫の真綿まわた わしはまだ とらんけども ぬくそに見える》
                         ―満誓まんせい―(巻三・三三六)
「どこの女のことじゃ 相変わらず」おゆはや
満誓の比喩ひゆうたで 座は一挙に盛り上がる

末席 きょうに加わらないおくがいる
旅人が はるか主座しゅざから 声をかける
 憶良殿 酒も進まぬようじゃが
どうじゃ 一首されぬか」
億良おくららは 今はまからむ 子くらむ そのかの母も を待つらむぞ
《憶良めは もう帰らして もらいます 子供も女房よめも 待ってますんで》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻三・三三七)
 身内奉仕か 喰えぬ男じゃ)
渋い顔の旅人たびと 杯をあおる



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■日めくり万葉集Vol・2(065)我がやどの

2011年11月19日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【六月二十四日】放映分

我がやどの 時じき藤の めづらしく 今も見てしか 妹がまひを

あいらしに 時節じせつ外れの 藤咲いた お前の笑顔 見となったがな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六二七)



【万葉歌みじかものがたり】《かくぞ黄変もみてる》

何につけても 思われるのは大嬢おおいらつめがこと
天候 不順がもたらす 花時期のずれ
これ すら こころ通わせの手立てとなる

我がやどの 時じき藤の めづらしく 今も見てしか 妹がまひを
あいらしに 時節じせつ外れの 藤咲いた お前の笑顔 見となったがな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六二七)
我がやどの 萩の下葉したばは 秋風も いまだ吹かねば かくぞ黄変もみてる
《庭の萩 まだ秋風も 吹かんのに 下の葉ほれ見 こなっとるで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六二八)

こころ 落ち着いた 妻問い
歌のり取り
じょうが 濃くなるにつれ
新たな 憂悶ゆうもんが 頭もたげる
(世の習いとはえ いつまでの妻問い 
 ともまいの おとずれが待ち遠しい)

ねもころに 物を思へば 言はむすべ すべも無し 
《しみじみと 恋しおもたら 言いない 晴らす方法ほうほも 見当たらん》
妹とれと 手たづさはりて あしたには 庭にで立ち ゆふへには とこうちはらひ 白栲しろたへの 袖さしへて さし夜や 常にありける  
《手ぇをつないで お前わし 朝が来たなら 庭に出て 夕暮れなると 床べて 互いに袖を わし合い 一緒寝たよる 一寸ちょっとだけ》
あしひきの 山鳥こそば むかひに 妻問つまどひすといへ 現世うつせみの 人にある我れや 何すとか 一日ひとひ一夜ひとよも さかり居て 嘆き恋ふらむ ここへば 胸こそ痛き 
《山む鳥は 連れうに 峰越すだけで えのんに この世生まれた このわしは なんで毎日 毎晩も 離れ暮らして 嘆くんか それを思たら 胸痛い》 
そこゆゑに 心ぐやと 高円たかまとの 山にも野にも うち行きて 遊びあるけど 花のみし にほひてあれば 見るごとに ましてしのはゆ いかにして 忘れむものぞ 恋といふものを
仕様しょう無いよって なぐさみに 高円山の 山や野に 出かけて行って 遊んだら 花が綺麗きれえに 咲いてたが それ見るたんびに 益々ますますに お前のことが 偲ばれる どしたらんや 忘れんの 思うならん 恋んは》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六二九)
高円たかまとの 野辺のへ容花かほばな 面影に 見えつつ妹は 忘れかねつも
《高円の 昼顔ひるがお見たら お前顔 ちらつき浮かび 忘られんのや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻八・一六三〇)

家持の憂悶ゆうもん
やがてに かれる日が 近づき 現実のものとなる


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■日めくり万葉集Vol・2(064)天地の

2011年11月16日 | 日めくり万葉集
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【六月二十三日】放映分

全文に付、下記を記参照ください



【万葉歌みじかものがたり】田児 の浦ゆ》

 うわぁ 富士のお山だ!」
赤人あかひとは 思わず声を上げた

駿河の国 庵原郡いばらのこおり由比ゆい
狭隘きょうあいな 崖にかる海沿いのみち
足元 に気を集め 歩を運ぶ赤人
やっと険路けんろはずれ 崖のふちめぐる平坦道に
ふと 仰ぐ目に 富士が飛びこむ
 突く 霊峰
まぶしい  雪
威容 に虚を突かれ 立ちつくす赤人
やがて 
胸深く 思いがあふれ 調べとなる

 田児の浦ゆ うち出でて見れば ま白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける
《田子の浦 回って見たら パッと富士 山上やまうえ白う 雪降ってるで》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻三・三一八)

生まれたばかりの歌を 反芻はんすうする赤人
 思わず出来てしまった歌だ
この歌を生かすには たたえる長歌が欲しい)

天地あめつちの わかれし時ゆ 
かむさびて 高くたふとき 
駿河 なる 富士の高嶺を 
あまの原 振りけ見れば 
渡る日の 影もかくらひ 
照る 月の 光も見えず 
白雲 も い行きはばかり 
 じくぞ 雪は降りける 
語り つぎ 言ひつぎ行かむ 
富士 の高嶺は

天地てんちのできた その昔 
 が作った その山は
駿河 の国の 富士の山
振り仰いで も 高過ぎて
  日ぃ隠されて よう見えん 
 の光も 届かへん
白雲なずみ よう行かん
雪は常時いっつも 降っとおる
語り伝えて  言い継ごう
富士 の高嶺の この尊さを》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻三・三一七)

赤人をうた上手じょうずとする 長・短歌の誕生であった


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■日めくり万葉集Vol・2(063)君が行く

2011年11月12日 | 日めくり万葉集
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【六月二十二日】放映分

君が行く 海辺うみへの宿に 霧立たば が立ち嘆く いきと知りませ

 《あんた行く 海辺の宿に 霧出たら うち嘆いてる 息やとおもて》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八〇)



【万葉歌みじかものがたり】 ぐくみ持ちて》

新羅行く船 出航る日は近い
 に帰れる 旅とは云えど
妻との別れ 切無せつなさ募る
異国つかいの いさおしよりも

武庫むこうらの 入江のどり 羽ぐくもる 君を離れて こひに死ぬべし
雛鳥ひなどりは 羽根に包まれ 守られる うち離れたら 恋死こいじにするで》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五七八)
大船おほぶねに 妹乗るものに あらませば 羽ぐくみ持ちて かましものを
《行く船に 乗せてまへん うんなら お前包んで 持って行くのに》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五七九)

君が行く 海辺うみへの宿に 霧立たば が立ち嘆く いきと知りませ
《あんた行く 海辺の宿に 霧出たら うち嘆いてる 息やとおもて》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八〇)
秋さらば 相見あひみむものを 何しかも 霧に立つべく 嘆きしまさむ
 秋来たら また逢えるのに なんでまた 霧立つみたい 嘆くんやいな》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八一)

大船おほぶねを 荒海あるみいだし います君 つつむこと無く 早帰りませ
《大船を 荒海あらうみ出して 行くあんた つつが無事に 帰って来てや》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八二)
さきくて 妹がいははば 沖つ波 千重ちへに立つとも さはりあらめやも
 無事ねでと お前が願い 祈るなら 波が立っても わし気にせんで》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八三)

別れなば うら悲しけむ ころも したにをませ ただふまでに
《行ったなら 悲しいやろな うちのふく 逢える時まで 身ぃ着けといて》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八四)
我妹子わぎもこが 下にも着よと 贈りたる ころもひもを かめやも
ふくひも お前れたん 身につけて わしずううっと ほどかんとくわ》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八五)

我がゆゑに 思ひなせそ 秋風の 吹かむその月 はむものゆゑ
《わしのこと 思うてせな 秋風が 吹く時来たら 逢えるやないか》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八六)

栲衾たくぶすま 新羅しらきへいます 君が目を 今日か明日かと いはひて待たむ
 新羅行く あんた逢える日 見られる日 今日か明日かと 祈って待つわ》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八七)
はろはろに おもほゆるかも しかれども しき心を は無くに
《はるばると 遠く離れて 仕舞しまうけど お前の気持ち わしにせんで》
                          ―遣新羅使人―(巻十五・三五八八)


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■日めくり万葉集Vol・2(062)大橋の

2011年11月09日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【六月二十一日】放映分

大橋の つめあらば まがなしく 独り行く児に 宿やど貸さましを

《橋のそば 家があったら さみな あの児誘うて 泊まりも仕様しょうに》
                         ―高橋蟲麻呂歌集たかはしのむしまろがかしゅう―(巻九・一七四三)



【万葉歌みじかものがたり】片足羽川かたしはがはの》

あっ あれは 桜児さくらこ様!
一瞬 目をうたがう 蟲麻呂
あのあか あい色の服 
まさしく  桜児様!
その昔 垣間見た 桜児の容姿すがた 
長い年月としつき 忘れようとて 忘れえぬ容姿すがた
そっくり  そのままな児が来る
 の抜けた 蟲麻呂の前
娘子おとめは 通り過ぎる

難波の宮造営ぞうえい工事は 完成が近付いていた
報告 の 道すがら
いつも いつも 通る 片足羽川かたしわがわの 大橋
これ まで 何度 往復したことか
でも  一度も 見ることは なかった
 あれは 桜児様の 生まれ変わりに 違いない
  幻ではない
  こうして 去っていく後ろ姿が 見えている
  桜児様は 生きている!)
うつろな 蟲麻呂のたたずみをよそに 
娘子おとめの姿は 人陰に まぎれる

小半時ばかりののち
大橋の 欄干らんかんの脇
流れ を見つめる 蟲麻呂の 口から
 が 漏れる
   
しなる 片足羽川かたしはがはの さ丹塗にぬりの 大橋の上ゆ くれなゐの あか裾引き 山藍やまあゐもち れるきぬ着て ただ独り い渡らす児は 
片足羽川かたしはの 塗り綺麗きれえな 橋の上 あか穿いて あいの服 とおって来る児 可愛かいらしな》 
若草の つまかあるらむ 橿かしの実の 独りからむ はまくの しき我妹わぎもが 家の知らなく
《旦那るんか ひとり身か 口説くどきたいけど 伝手つてないな》
                         ―高橋蟲麻呂歌集たかはしのむしまろがかしゅう―(巻九・一七四二)
大橋の つめあらば まがなしく 独り行く児に 宿やど貸さましを
《橋のそば 家があったら さみな あの児誘うて 泊まりも仕様しょうに》
                         ―高橋蟲麻呂歌集たかはしのむしまろがかしゅう―(巻九・一七四三)

いつもの 諧謔かいぎゃくを帯びた 歌だ
げんに おこないはしないが 思いだけを つづ
まこととも そらごととも つかない 恋の歌

蟲麻呂は おのが心を のぞいていた
そこは もはや 桜児の住処すみかではなかった 


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■日めくり万葉集Vol・2(061)穴師川

2011年11月05日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【六月二十日】放映分

穴師あなしがは 川波立ちぬ まきむくの つきたけに くも立てるらし

 《穴師川 波立ってるで ざわざわと つきたけに 雲出てるがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇八七)



【万葉歌みじかものがたり】川音かはと高しも》

人麻呂 は 馬を急がせていた
ここしばらく 吉野行幸みゆきの はからい事で
つまいが 遠ざかっていた
昨日 降った 春の雪
ぬかるみ  
 の足取りが もどかしい

新妻にいづまを待たせて仕舞しもうた 巻向郎女まきむくのいらつめ
  待ち焦がれているじゃろう 急がねば)
三輪山 を 右手に見ながら
馬は 三輪の大社おおやしろを過ぎた 
泥道 が続く
霧の立ち込める中 檜原ひばらもりが見える

巻向まきむくの 檜原ひばらに立てる 春霞 おぼにしおもはば なづみめやも
《すぐ消える 霞みたいな 思いちゃう そんな気ぃなら 無理してんわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一三)
夕闇の 訪れに 湿しめの広がり
穴師あなし川の 橋を渡り 川上に 馬首ばしゅめぐらす
 川に 波 立ってきたぞ)
穴師あなしがは 川波立ちぬ まきむくの つきたけに くも立てるらし
《穴師川 波立ってるで ざわざわと つきたけに 雲出てるがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇八七)
 おお 瀬が 鳴っとおる)
あしひきの 山川やまがはの瀬の 鳴るなへに 弓月ゆつきたけに 雲立ち渡る
《山筋の 川瀬鳴ってる やっぱりな つきたけに 雨雲あめぐも出てる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇八八)

 今 戻った」
 を 飛び降り 門前から 呼びかける
まろぶが如き 出迎えの 巻向郎女いらつめ
 雨には 合わずに済んだぞ」
微笑ほほえみ おも伏せる 巻向郎女いらつめ

夕餉ゆうげを 済ませ
くつろぎ の ひと時
山間やまあい静寂せいじゃくに 川音かわおとが 高い
ぬばたまの 夜さりれば 巻向まきむくの 川音かはと高しも 嵐かも
よるけた 川の水音 こなった 今に一荒ひとあれ じき来るみたい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一一〇一)

至福しふくの一夜
激しかった雨脚あまあし 次第に 遠のく


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■日めくり万葉集Vol・2(060)くへ越に

2011年11月02日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【六月十七日】放映分

柵越くへごしに 麦小馬こうまの はつはつに 相見し子らし あやにかなしも

柵越さくごしに 仔馬食う麦 一寸ちょっとだけ 一寸ちょっと逢うた児 可愛かわいてならん》
                          ―東 歌―(巻十四・三五三七)



【万葉歌みじかものがたり】真間ままつぎはし

 眺めるだけの 時過ごし やっと逢うまで 漕ぎつけた

案ずるよりも 生む方がやす
手にしたあの児 可愛かわいい限り

柵越くへごしに 麦小馬こうまの はつはつに 相見し子らし あやにかなしも
柵越さくごしに 仔馬食う麦 一寸ちょっとだけ 一寸ちょっと逢うた児 可愛かわいてならん》
                          ―東 歌―(巻十四・三五三七)
柵越せごし 麦む駒の はつはつに 新肌にひはだ触れし 児ろしかなしも
柵越さくごしに 仔馬食う麦 一寸ちょっとだけ 一寸ちょっと肌触れた児 可愛かわいてならん》
                          ―東 歌―(巻十四・三五三七 或る本)
かみ毛野けの まぐはしまとに 朝日さし まきらはしもな ありつつ見れば
まとに射す 朝日みたい まぶしいな お前まっすぐ 見続けとると》
                          ―東 歌―(巻十四・三四〇七)
あしひきの 山沢やまさは人の 人さはに まなと言ふ子が あやにかなしさ
山沢やまさわの 村人むらびとみんな 手出すなと 言うて守る児 えろ可愛かいらしで》
                          ―東 歌―(巻十四・三四六二)

可愛いさこうじ 逢いたさ募る
自分 一人を 見ていて欲しい

おとせず 行かむ駒もが 葛飾の 真間の継橋つぎはし やまずかよはむ
《足音の てへん馬が 無いもんか 真間の継橋 ずっと来るのに》
                          ―東 歌―(巻十四・三三八七)
しも毛野けの 三毳みかもの山の 小楢こならのす まぐはし児ろは か持たむ
三毳山みかもやま 小楢こならみたいに 可愛かいらし児 誰のめし盛る そらワシやんか》
                          ―東 歌―(巻十四・三四二四)

待つはつらいが 逢うのは嬉し
逢えばうたで 別れがつら

遅速おそはやも をこそ待ため むかの しひ小枝こやでの 逢ひはたがはじ
おそうても わし待ってるで しいの枝 かさなるみたい 逢えるんやから》
                          ―東 歌―(巻十四・三四九三)
逢はずして 行かば惜しけむ 麻久良我あくらがの 許我こが漕ぐ船に 君も逢はぬかも
《逢わんまま 別れて仕舞たら 名残なごり惜し 許我こがの渡しで 逢われんもんか》
                          ―東 歌―(巻十四・三五五八)
伊香保ろの 沿ひの榛原はりはら 我がきぬに きよらしもよ 一重ひたへと思へば
《伊香保山 ふもとはん う染まる わしに染まりや 一途いちずな気ぃで》
                          ―東 歌―(巻十四・三四三五)
白遠しらとほふ 小新田山をにひたやまの る山の うらなな 常葉とこはにもがも
小新田山おにいたで 守り育てる 木やあの児 枯らすことう 緑のままに》
                          ―東 歌―(巻十四・三四三六)

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■日めくり万葉集Vol・2(069)すべもなく

2011年11月02日 | 日めくり万葉集
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【六月三十日】放映分

すべも無く 苦しくあれば で走り ななと思へど 児らにさやりぬ

 《苦しいて あの世行こかと おもうても 子供邪魔して 死ぬこと出来でけん》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九九)



【万葉歌みじかものがたり】うちかぎりは》

天平 五年(733)
老身ろうしん憶良は やまいとこにあった 数えて七十四

たまきはる うちかぎりは たひらけく 安くもあらむを 事も無く くあらむを よのなかの けくつらけく
《生きてるうちは 病気せず 楽に死にたい おもうても 世の中つろて 苦しいわ》
いとのきて 痛ききずには 辛塩からしほそそくちふが如く ますますも 重き馬荷うまにに 表荷うはに打つと いふことのごと 老いにてある が身の上に 病をと 加へてあれば
《塩を生傷なまきず 塗るみたい 追い荷重荷おもにに 積むみたい 老い身に病気 重なって》
昼はも 嘆かひ暮し よるはも 息衝いきづき明かし 年長く 病みし渡れば つきかさね うれさまよひ 
《夜は溜息 昼嘆き 長患ながわずらいの 続くうち》
ことことは 死ななと思へど 五月蝿さばへなす さわどもを てては しには知らず 見つつあれば 心はえぬ 
《いっそ死のかと おもたけど 餓鬼がきどもって 死なれへん 子供見てると 胸痛む》
かにかくに 思ひわづらひ のみし泣かゆ
 あれこれ思い 悩みして 考えあぐね 泣くばかり》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九七)
慰むる 心はなしに 雲がくり 鳴き行く鳥の のみし泣かゆ
 安らかな 気持ちなれんで ピイピイと 鳥鳴くみたい 泣き続けとる》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九八)
すべも無く 苦しくあれば で走り ななと思へど 児らにさやりぬ
《苦しいて あの世行こかと おもうても 子供邪魔して 死ぬこと出来でけん》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九九)
富人とみひとの 家の児どもの み くたつらむ きぬ綿わたらはも
《金持ちの 家の子供は ふくを んとってる 絹や綿入れ》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・九〇〇)
荒栲あらたへの 布衣ぬのきぬをだに 着せかてに くや嘆かむ むすべを無み
《捨てるよな ボロふくさえも ささんと 嘆いてみても どもならんのや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・九〇一)
水沫みなわなす もろき命も 栲縄たくなはの 千尋ちひろにもがと 願ひ暮しつ
《泡みたい すぐ消えるよな 命でも 長ごとおもて 暮らしてるんや》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・九〇二)
倭文手しつたまき 数にもらぬ 身にはれど 千年ちとせにもがと 思ほゆるかも
安物やすもんの 飾りみたいな このわしも せめて長生き したいおもとる》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・九〇三)
かた すえ 心休まらぬ 憶良がいる


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