私にはできないが、コンピューターならうまく処理できることは数多くある。真夜中を過ぎても営業している近所の寿司屋のリストを一瞬で作ることもそうだし、シカゴ・オヘア国際空港で航空機の離発着を調整することや、磁気共鳴画像装置(MRI)を使った検査で電磁波を3次元の画像に変換することもそうだ。
一方で私は、握手をしたときの手の握り具合や付き合っている仲間、どんな敵がいるか、どんな外見かによって、それなりに人となりを判断することはできる。
私たちは一瞬のうちに人の社会的な地位を見極めたり、ほんの一瞬だけ見せたふとした表情からその人がどんなふうに感じているかに気付いたり、他人の視点から物事を見たりする。人の性格を見極めてから、誰を友達や同僚、人生の伴侶にしたいかを決めている。
それは不思議なことではない。われわれ霊長類には顔を認識したり、他人の立場に立って考えたり、声の調子から意図を見抜いたりすることを専門に扱う脳の領域がある。人間の前頭葉は巨大だ。霊長類学では、人間の前頭葉が大きくなったのは増大し続ける社会的な複雑性に対処するためであることが証明されている。だから、賢いコンピューターに囲まれていても、少なくとも社会的な知性の扱いは人間のほうがうまい。そうだったはずだ。
二つの論文がその一つの答えかもしれない。スタンフォード大学のマイケル・コジンスキー氏、ケンブリッジ大学のデービッド・スティルウェル氏らが2013年と今年初めに科学誌「米科学アカデミー紀要」に発表したものだが、その答えに人間の自尊心はさらに傷つくことだろう。
最初の研究にはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手フェイスブックの5万8000人を超えるアクティブユーザーが被験者として参加した。被験者は自分の人口統計学的な情報を提供し、さらに、寛容性、誠実性、外向性、同調性、神経過敏の5つの項目について自分の性格を評価する標準検査を受けた。
研究チームは性格検査の結果と、被験者がフェイスブック上でクリックした「いいね!」の関連付けを行った。「いいね!」の数は被験者1人当たりの平均で227あった。人間は「いいね!」がいくつかあれば、特定の種類の人たちとの関係を容易に見抜くことができる。「ねえ、こういう性格の人は詩やクリンゴンオペラ(訳注:SFドラマ「スタートレック」に出てくる異星人が歌うオペラ)が好きみたいだね」というふうに。
コンピューターでは被験者の性格や人口統計学的な情報と「いいね!」を照らし合わせて、同様の関連付けを大規模に実施したところ、驚くべきコンピューターモデルが明らかになった。それは、フェイスブックのデータを使えば、人種を95%の確率で、ジェンダー(社会的性別)は93%の確率で正確に予測できるというもので、性的、宗教的、政治的指向や、知能、薬物乱用の可能性、標準検査に基づく性格についても正確に予測した。
このコンピューターモデルは人間と比べてどの程度正確なのだろうか。新たに8万6220人の被験者に同じ性格検査を受けてもらい、友人や家族に被験者の性格についての簡単なアンケートを実施した。研究チームの狙いは、ある人の性格をコンピューターが最も親しい人より正確に評価するには「いいね!」がいくつ必要かを解明することだ。
その結果、「いいね!」が10個あれば、同僚よりもコンピューターのほうが被験者の性格を正確に当てることができた。コンピューターが友達に勝つには70個、親戚に勝つには150個が必要で、300個の「いいね!」があればコンピューターは配偶者より正確に被験者の性格を把握できた。研究チームの最新の論文のタイトルは「コンピューターに基づく性格評価は人間による性格評価より正確」だった。
人間の能力を擁護するなら、コンピューターが勝てるのは完全なバイナリーデータを大量に与えられたときだけで、実際の人間の行動に対応することは不可能だと主張することもできないわけではない。しかし、これまでの技術の進歩を考えると、私はこの反論が正しいとは思えない。確かにコンピューターはフェイスブックの「いいね!」から人間の性格を予測することはできるだろうが、感情はどうなるんだと言う人もいるかもしれない。確かに、コンピューターが感情に基づいて人間に好意を寄せることはない。しかし、最近公開された映画「Ex Machina(エクスマキナ)」に登場した従順なロボットが示すとおり、コンピューターが善良な詐欺師である限り、人間に好意を持つかどうかはどうでもいいことだ。
こうした非常に興味深い研究結果の中で私が特に面白いと思ったのは、「いいね!」がいくつかあれば、出来事や友人のヘアスタイル、踊る猫の写真についてある人がどう思っているかを予測できるということだ。驚くべきことに、パターンを探すことが得意なコンピューターは、何の脈略のないこうした「いいね!」から、私たち一人ひとりの個性を点描画のように詳細に描き出すことができるのだ。
一方で私は、握手をしたときの手の握り具合や付き合っている仲間、どんな敵がいるか、どんな外見かによって、それなりに人となりを判断することはできる。
私たちは一瞬のうちに人の社会的な地位を見極めたり、ほんの一瞬だけ見せたふとした表情からその人がどんなふうに感じているかに気付いたり、他人の視点から物事を見たりする。人の性格を見極めてから、誰を友達や同僚、人生の伴侶にしたいかを決めている。
それは不思議なことではない。われわれ霊長類には顔を認識したり、他人の立場に立って考えたり、声の調子から意図を見抜いたりすることを専門に扱う脳の領域がある。人間の前頭葉は巨大だ。霊長類学では、人間の前頭葉が大きくなったのは増大し続ける社会的な複雑性に対処するためであることが証明されている。だから、賢いコンピューターに囲まれていても、少なくとも社会的な知性の扱いは人間のほうがうまい。そうだったはずだ。
二つの論文がその一つの答えかもしれない。スタンフォード大学のマイケル・コジンスキー氏、ケンブリッジ大学のデービッド・スティルウェル氏らが2013年と今年初めに科学誌「米科学アカデミー紀要」に発表したものだが、その答えに人間の自尊心はさらに傷つくことだろう。
最初の研究にはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手フェイスブックの5万8000人を超えるアクティブユーザーが被験者として参加した。被験者は自分の人口統計学的な情報を提供し、さらに、寛容性、誠実性、外向性、同調性、神経過敏の5つの項目について自分の性格を評価する標準検査を受けた。
研究チームは性格検査の結果と、被験者がフェイスブック上でクリックした「いいね!」の関連付けを行った。「いいね!」の数は被験者1人当たりの平均で227あった。人間は「いいね!」がいくつかあれば、特定の種類の人たちとの関係を容易に見抜くことができる。「ねえ、こういう性格の人は詩やクリンゴンオペラ(訳注:SFドラマ「スタートレック」に出てくる異星人が歌うオペラ)が好きみたいだね」というふうに。
コンピューターでは被験者の性格や人口統計学的な情報と「いいね!」を照らし合わせて、同様の関連付けを大規模に実施したところ、驚くべきコンピューターモデルが明らかになった。それは、フェイスブックのデータを使えば、人種を95%の確率で、ジェンダー(社会的性別)は93%の確率で正確に予測できるというもので、性的、宗教的、政治的指向や、知能、薬物乱用の可能性、標準検査に基づく性格についても正確に予測した。
このコンピューターモデルは人間と比べてどの程度正確なのだろうか。新たに8万6220人の被験者に同じ性格検査を受けてもらい、友人や家族に被験者の性格についての簡単なアンケートを実施した。研究チームの狙いは、ある人の性格をコンピューターが最も親しい人より正確に評価するには「いいね!」がいくつ必要かを解明することだ。
その結果、「いいね!」が10個あれば、同僚よりもコンピューターのほうが被験者の性格を正確に当てることができた。コンピューターが友達に勝つには70個、親戚に勝つには150個が必要で、300個の「いいね!」があればコンピューターは配偶者より正確に被験者の性格を把握できた。研究チームの最新の論文のタイトルは「コンピューターに基づく性格評価は人間による性格評価より正確」だった。
人間の能力を擁護するなら、コンピューターが勝てるのは完全なバイナリーデータを大量に与えられたときだけで、実際の人間の行動に対応することは不可能だと主張することもできないわけではない。しかし、これまでの技術の進歩を考えると、私はこの反論が正しいとは思えない。確かにコンピューターはフェイスブックの「いいね!」から人間の性格を予測することはできるだろうが、感情はどうなるんだと言う人もいるかもしれない。確かに、コンピューターが感情に基づいて人間に好意を寄せることはない。しかし、最近公開された映画「Ex Machina(エクスマキナ)」に登場した従順なロボットが示すとおり、コンピューターが善良な詐欺師である限り、人間に好意を持つかどうかはどうでもいいことだ。
こうした非常に興味深い研究結果の中で私が特に面白いと思ったのは、「いいね!」がいくつかあれば、出来事や友人のヘアスタイル、踊る猫の写真についてある人がどう思っているかを予測できるということだ。驚くべきことに、パターンを探すことが得意なコンピューターは、何の脈略のないこうした「いいね!」から、私たち一人ひとりの個性を点描画のように詳細に描き出すことができるのだ。
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