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新喜びも悲しみも幾歳月

2006年01月09日 | 木下恵介
新喜びも悲しみも幾歳月
1986年 昭和63年 松竹、東京放送、博報堂
監督 木下恵介
出演者 加藤剛, 大原麗子, 紺野美沙子, 植木等

加藤剛とその妻大原麗子、加藤の父親の植木等、加藤の3人の子供達の生活を描く。主役は植木等のじいさんか。
じいさんは小学校の元教師で転勤が多い息子の勤務先に旅行し写真に写すのが楽しみ。旅先で傷心の女紺野美沙子と出会う。自殺しようとしていた彼女だが、灯台の岬から飛び込むのが怖くなり、自殺はやめる。

経ヶ岬灯台・経ヶ岬レストハウス

彼女は加藤剛の部下の同じ燈台守の男と結婚する。彼が勤める海の上の小さな岩の島の水ノ子島灯台は凄いと思った。

水ノ子島灯台(水の子島灯台)・写真満載九州観光

じいさんは養子だったが、妻と上手くいかずに老年にして籍を抜く。彼は晩年を息子夫婦と過ごすことになる。夫婦の長女は海上保安庁のヘリコプターのパイロットと結婚する。ある日、家族や友人たちと久しぶりに食事会が開かれる。全員勢ぞろいしたところで、写真を写せと言うじいさん。じいさんは事あるごとにお嫁さんを褒めます。じいさんは『最後に見たかった安芸の宮島』を船の上から見て、この時は『写真は写すな』と言う。『最後に全員で撮った写真があるだろう』と。その後にあの世へと旅だつ。

世界文化遺産宮島

長男は海上保安庁の船員になる。海上保安庁のパレードに船員として参加した息子を見た母親は『戦争に行くんじゃなくて、良かった』とこぼします。
じいさんと同じ啄木好きの最年少の息子は、『少し変わったのがいたほうが、面白くて良いのよ』とお母さんに思われている。『啄木の良さが判るなら、これをお前に預ける。悲しい思い出になるから、わしが死んだら燃やしてくれ』と言われていたじいさんのアルバムをじいさんの言葉どおりに浜辺で焼こうとする。『これは僕のだ』と言って焼くのをやめる。このシーンで映画は終わります。

高度成長後の日本を映し出した木下監督74歳の作品。
しみじみと良いなあと思える作品でした。昭和を撮り続けた監督の作品は、過去から物語が始まり映画を作成した時点にたどり着いてラストシーンを迎えるものが多いようだ。初期の『陸軍』にしてもそうだし、老人の回想で語られる『野菊の如き君なりき』も。だからその時代を生きていない人が見ても、その時代の雰囲気が何となく理解できるのだろう。


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