あとだしなしよ

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香華

2006年01月08日 | 木下恵介
香華
1964年 昭和39年 松竹
監督 木下恵介,
出演者 岡田茉莉子, 乙羽信子, 加藤剛, 田中絹代, 三木のり平

芸者に身売りされた岡田茉莉子演ずる娘の人生。半玉というらしい。母親の乙羽信子は男にだらしなく、妻を務める辛抱も無いので女郎屋に売りつけられたりする。三回結婚した。娘は最初の夫との子供。娘は幼い頃に芸者家に売られ芸を仕込まれる。母親も女郎小屋に売られたりする。美人の娘は芸者として身請けされて東京へ。パトロンのおかげで経済的に安定するが、パトロンは彼女の三味線を聞くだけで肉体関係は無い。母親は娘の部屋に居候するがだらしないので娘は嫌がっている。また、陸軍学校の青年と付き合うようになる。母親のだらしない生活を見てきた彼女はストイック。好きになる男もストイックである。関東大震災で住んでいた家は壊れてしまう。ここで第一部完。
震災後にパトロンに宿屋を建ててもらい、女将として自立する生活を始める。この辺は芸者システムのいい所か。母親は娘に寄生していたが、尋ねてきたかつての芸者小屋?の男(三木のり平)と再婚し大阪に行く。娘が愛した軍人大学の男は彼女と結婚を望むが、興信所が彼女の母が女郎屋にいたことを突き止める。芸者はOKだが、女郎の娘はNGなので、彼女との結婚話はご破算となる。彼女は母親をいっそう憎むようになる。彼はその後に別の女と結婚して子供を作る。
太平洋戦争が勃発。短いシーンだが空襲のシーンの迫力と、破壊しつくされた街で焼け残った屋敷で、生き残ったお母さんと”お茶漬け”を食べるシーンは印象的。しばらく防空壕に住んでいたが、焼け残った値打ちものの食器で食べ物屋さんを商うことを思いつく。母親は尋ねてきた再婚相手と大阪に娘を残して行ってしまう。お店は成功して、大きな店を構える。このあたりはいかにも有吉の作品らしく、ちんけな言い方だが女性の経済的自立を描く。母親は大阪が嫌になりすぐに娘の家に戻って、あれこれとわがままを言う。終戦後、戦争犯罪者となったかつての恋人。彼女は面会をしようとするが、血縁者ではないので、なかなか会えない。ある日、面会者に欠員が出て彼女は、彼の家族の後ろから彼の姿を見て名乗り出る。そんな彼女を彼は全く無視する。その後、彼は銃殺。遺骨は米側で処理され、家族の元へは帰らなかった。彼女は大きな仏像を買い、仏間に奉納する。軍人の彼やなくなった彼女の母親の父違いの姉妹等を供養する。
ある日子宮ガンで倒れた彼女。彼女は子供を産めない体になってしまう。母親は彼女が倒れた時に、あわててかけつけようとしてジープに轢かれてついに死亡してしまう。
母の骨は母親の再婚相手と娘が半分ずつ引き取ることになる。彼女は母親が望んでいた最初の夫の墓に入れることを先方に頼みに行くが、無下に断られる。
彼女は養子を育てつつ、昭和39年を迎えてお話はお終いとなる。

日本の前近代がどういうものだったのか、なんとなく判るような気がする内容でした。結局孤独のまま一生を終える話になってしまうのは、実世界の反映なのか。いまや男も女も同じ様な悩みを持つ。

キネマ旬報 1964年度 第3位


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