1952年、昭和27年 松竹
監督:木下恵介
主演:高峰秀子
カルメンの続編は白黒映画でしたが、映画の画面はそれまでの松竹-小津安二郎的なタッチ(でもないか…)とは異なりとても実験的で、カメラは殆どの場面で登場人物達を斜めに映し出します。
東京に戻ったカルメンは浅草のストリップ劇場で踊っています。相棒の女性は既に子持ちで、女剣劇師として九州とかを回った経験がありますが、途中で男に逃げられてしまいます。長屋のような集合住宅で二人は暮らしていますが、赤ん坊の泣き声がうるさいなどの苦情を受けて、子育てにうんざりしてしまいます。この彼女たちの住んでいる部屋での会話シーンのカメラアングルもへんなアングルが多く、斜め、ベットの下から寝転がったカルメンを写す等構図等、ほとんどヘンです。
結局、彼女達は国会議事堂の近くで、目覚まし時計付きで子供を捨ててしまいます。目覚まし時計が鳴り出し、捨てた場所の前の家の人に直ぐに拾ってもらいますが、この家が変な家で、息子は前衛芸術家(キュービズムぽい)でアトリエはヘンなオブジェがたくさんあり、流れる音楽も前衛音楽をバカにしたようにヘンテコです。お手伝いさん(原爆で身内を亡くしている原爆恐怖症の人)やお母さんといった女性陣の家族達はホルスタイン模様のヘンな服を着ています。心改めた母親は赤ん坊を連れ戻しにこの家を訪問し、赤ん坊を育てる決意をするのですが、カルメンはその前衛芸術家に恋心を抱いてしまします。芸術家のほうは心の中ではカルメンを馬鹿にしています。
この芸術家には婚約者がいるのですが、この三好榮子さん演じる婚約者の母親(熊子)が日本映画史上最強かとも思える強烈なキャラクターです。陸軍大尉かなんかの未亡人の女性で、口と顎にちょび髭を生やし、胸に日の丸を付けて君が代を歌い、衆議院選挙に立候補する政治家の設定です。彼女の登場後はカルメンも彼女に食われてしまう印象がありました。婚約者の娘は男遊びがひどく、芸術家のほうも彼女の資産が目当てで彼女と結婚することに決めているようです。彼には子供を生ませた別の女もいます。
カルメンは彼の絵のモデルになったりして彼に恋をしてしまいますが、やがて彼の絵のモデルやストリップショーで裸になることが恥ずかしくて出来なくなってしまいます。ある日ストリップ小屋で裸にならず、舞台をメチャクチャにしてしまいクビになってしまいますが、カルメンはバレエの練習を初級クラスの子供達と一緒にしたりして、真の芸術家をめざします。収入が無くなったカルメンは『とにかく生きていくしかないよ』と生活の為に仕事をしますが『パイパンだけはやらない。あれは女の屑だ』と言います。
稼いだお金で彼にプレゼントをあげたりするカルメンですが、熊子に説得されて彼から身を引く決意をします。熊子はカルメンを芸術家の子を生んで彼に付きまとっている女と勘違いをして、手切れ金を払うなどと言いますが、もともと純なカルメンはそれを拒みます。カルメンも「芸術家も私のことが好きだが事情があって私とは一緒にはなれない」と勘違いをして、一人で恋物語の中にいます。
ある日カルメンは、日本の再軍備を主張する熊子の選挙演説に、バイト中のカエル?のヌイグルミ姿で引っ張り出されてしまいます。熊子の応援演説をいい加減にしてして野次られシドロモドロになっていた芸術家を、彼女は『ステキな人です』と弁護したりします。
結局、熊子は衆議院に当選してしまいますが、カルメンは相変わらずヌイグルミ姿で街を歩いていて、熊子に首にされた芸術家の家のお手伝いさんに『あなたなにやっているのよ!』と突っ込まれた所で映画は突然『第2部完』『カルメンがんばれ!』のテロップと共に終わってしまいました。
『野菊の如き君なりき』などの文芸作品とは180度違うドタバタコメディーで、軍部、GHQに縛られずに自由に映画を作成出来るようになって、遊んでいる感じがします。『戦中、戦前から完全に脱却してやる!』の決意があるかのような。考えすぎかもしれませんが、画面が斜めなのは、『戦争が終わったのに、我々はこんなことをしていて良いのか?、おかしいぞ。』と製作者が首をかしげているかのようにも思えます。『相変わらずバカなことをやっている奴等がいるぞ。』みたいな。
この作品の続編は大変残念ながら作られなかったそうですが、発表当時観客に受けたのかなど、知りたくなってしまいました。
*GHQアメリカ軍占領:1945年敗戦後~1952年4月28日
http://ja.wikipedia.org/wiki/GHQ
キネマ旬報 1952年度 5位
監督:木下恵介
主演:高峰秀子
カルメンの続編は白黒映画でしたが、映画の画面はそれまでの松竹-小津安二郎的なタッチ(でもないか…)とは異なりとても実験的で、カメラは殆どの場面で登場人物達を斜めに映し出します。
東京に戻ったカルメンは浅草のストリップ劇場で踊っています。相棒の女性は既に子持ちで、女剣劇師として九州とかを回った経験がありますが、途中で男に逃げられてしまいます。長屋のような集合住宅で二人は暮らしていますが、赤ん坊の泣き声がうるさいなどの苦情を受けて、子育てにうんざりしてしまいます。この彼女たちの住んでいる部屋での会話シーンのカメラアングルもへんなアングルが多く、斜め、ベットの下から寝転がったカルメンを写す等構図等、ほとんどヘンです。
結局、彼女達は国会議事堂の近くで、目覚まし時計付きで子供を捨ててしまいます。目覚まし時計が鳴り出し、捨てた場所の前の家の人に直ぐに拾ってもらいますが、この家が変な家で、息子は前衛芸術家(キュービズムぽい)でアトリエはヘンなオブジェがたくさんあり、流れる音楽も前衛音楽をバカにしたようにヘンテコです。お手伝いさん(原爆で身内を亡くしている原爆恐怖症の人)やお母さんといった女性陣の家族達はホルスタイン模様のヘンな服を着ています。心改めた母親は赤ん坊を連れ戻しにこの家を訪問し、赤ん坊を育てる決意をするのですが、カルメンはその前衛芸術家に恋心を抱いてしまします。芸術家のほうは心の中ではカルメンを馬鹿にしています。
この芸術家には婚約者がいるのですが、この三好榮子さん演じる婚約者の母親(熊子)が日本映画史上最強かとも思える強烈なキャラクターです。陸軍大尉かなんかの未亡人の女性で、口と顎にちょび髭を生やし、胸に日の丸を付けて君が代を歌い、衆議院選挙に立候補する政治家の設定です。彼女の登場後はカルメンも彼女に食われてしまう印象がありました。婚約者の娘は男遊びがひどく、芸術家のほうも彼女の資産が目当てで彼女と結婚することに決めているようです。彼には子供を生ませた別の女もいます。
カルメンは彼の絵のモデルになったりして彼に恋をしてしまいますが、やがて彼の絵のモデルやストリップショーで裸になることが恥ずかしくて出来なくなってしまいます。ある日ストリップ小屋で裸にならず、舞台をメチャクチャにしてしまいクビになってしまいますが、カルメンはバレエの練習を初級クラスの子供達と一緒にしたりして、真の芸術家をめざします。収入が無くなったカルメンは『とにかく生きていくしかないよ』と生活の為に仕事をしますが『パイパンだけはやらない。あれは女の屑だ』と言います。
稼いだお金で彼にプレゼントをあげたりするカルメンですが、熊子に説得されて彼から身を引く決意をします。熊子はカルメンを芸術家の子を生んで彼に付きまとっている女と勘違いをして、手切れ金を払うなどと言いますが、もともと純なカルメンはそれを拒みます。カルメンも「芸術家も私のことが好きだが事情があって私とは一緒にはなれない」と勘違いをして、一人で恋物語の中にいます。
ある日カルメンは、日本の再軍備を主張する熊子の選挙演説に、バイト中のカエル?のヌイグルミ姿で引っ張り出されてしまいます。熊子の応援演説をいい加減にしてして野次られシドロモドロになっていた芸術家を、彼女は『ステキな人です』と弁護したりします。
結局、熊子は衆議院に当選してしまいますが、カルメンは相変わらずヌイグルミ姿で街を歩いていて、熊子に首にされた芸術家の家のお手伝いさんに『あなたなにやっているのよ!』と突っ込まれた所で映画は突然『第2部完』『カルメンがんばれ!』のテロップと共に終わってしまいました。
『野菊の如き君なりき』などの文芸作品とは180度違うドタバタコメディーで、軍部、GHQに縛られずに自由に映画を作成出来るようになって、遊んでいる感じがします。『戦中、戦前から完全に脱却してやる!』の決意があるかのような。考えすぎかもしれませんが、画面が斜めなのは、『戦争が終わったのに、我々はこんなことをしていて良いのか?、おかしいぞ。』と製作者が首をかしげているかのようにも思えます。『相変わらずバカなことをやっている奴等がいるぞ。』みたいな。
この作品の続編は大変残念ながら作られなかったそうですが、発表当時観客に受けたのかなど、知りたくなってしまいました。
*GHQアメリカ軍占領:1945年敗戦後~1952年4月28日
http://ja.wikipedia.org/wiki/GHQ
キネマ旬報 1952年度 5位
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