あとだしなしよ

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衝動殺人 息子よ

2007年08月26日 | 木下恵介
衝動殺人 息子よ
1979年、昭和54年
監督:木下恵介
出演者:若山富三郎、高峰秀子、田中健、大竹しのぶ

映画の舞台になった京浜工業地帯の生麦は、わたしの実家の近所なので子供時代に見慣れて知っている風景が写り少し驚いた。汚らしい工場街だけれど…お墓のロケ地は三ツ沢の神大寺の近くの墓地であろうか…そんな都会で動機がはっきりしない刺殺事件が発生し、息子が殺されてしまう。このような刺殺事件は平成になってから多くなったような錯覚をうけるが、昭和40~50年代でも似たような事件が多発していたことがわかる。この映画での犯行者も未成年である。木下監督の映画界復帰以後の作品はほとんど見ていなかったのだが、この作品は社会派監督の面目躍如といった感じでした。キャストも高峰秀子さん(と田村高廣さん)以外は往年の木下映画に出ていた人は少ないように思えたが、吉永小百合さんを筆頭に日本映画の黄金時代のスター達が端役で大勢出演されていたのは木下監督の実力の賜物なのであろうか…殺人犯への判決時に動転する父親の心理を反映するようなたたみかける映像や、不合理な殺人現場の犯行シーンは、リアリズムや実験的な映像までこなす木下監督らしく、恐ろしさがひしひしと感じられた。ここでの女性をメッタ指しにする大地康雄さんは変態的でとても怖かった。吉永小百合さんの夫が集団リンチに合い殺されるシーンも、袋だたきにあい殴り殺される人の視線の加害者の影の映像が頭に残る…激しい時代を生き抜いた人生の終わりに、受け入れがたい現実に遭遇してしまった夫婦の一代記にも見えて、かつての「喜びも悲しみも幾く年月」などの大ヒット作を連想してしまった。