★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇リパッティのシューマン:ピアノ協奏曲/ハスキルのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番

2023-10-02 09:53:20 | 協奏曲(ピアノ)


①シューマン:ピアノ協奏曲

  ピアノ:ディヌ・リパッティ

  指揮:エルネスト・アンセルメ

  管弦楽:スイス・ロマンド管弦楽団

  録音:1950年2月22日、ジュネーブ、ビクトリア・ホール

②ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番

  ピアノ:クララ・ハスキル

  指揮:カルロ・ゼッキ

  管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

  録音:1947年6月、英国

発売:1980年

LP:キングレコード K15C‐5044

 このLPレコードは、ルーマニアが生んだ二人の天才ピアニストが弾いた、シューマンとベートーヴェンの協奏曲が1枚に収められた貴重な遺産である。二人のピアニストの名は、ディヌ・リパッティ(1917年―1950年)とクララ・ハスキル(1895年―1960年)である。ディヌ・リパッティのピアノ演奏は、純粋で透明感あるピアノの音色に特徴を持ち、その技巧は洗練され、都会的センスに溢れ、特にショパンやモーツァルトの曲を得意としていた。ディヌ・リパッティがこの録音を行ったのは、スイス・ロマンド管弦楽団の定期演奏会であり、死の9ヶ月ほど前のことであった。前日まで40度の高熱を出して病床に伏していたリパッティであったが、医師の制止を振り切り、強力な解熱剤の注射により、ようやく立ち上がることができるような状態で、よろめくようにステージに姿を現し、やっとのことでピアノのところまで辿りつくことができたという。しかし、この録音聴く限り、そんな身体の状況などは微塵も感じさせず、集中力の高いピアノ演奏には驚かされるばかりである。これほど、ロマンの香りが高いシューマン:ピアノ協奏曲は滅多に聴けるものではない。何か、リパッティがシューマンに乗り移って、幻想的な森の奥深く分け入って、平穏な一時に身を委ねているかのようでもある。夢幻的な名演とでも言ったらよいのであろう。一方、クララ・ハスキルは、古典派とロマン派を得意とし、とりわけモーツァルトの演奏では他の追随を許さぬものがあり、当時最も秀でたモーツァルト弾きとして知られていた。このほかにベートーヴェンやシューマンにも卓抜した演奏を披露。室内楽奏者としてはアルテュール・グリュミオーの共演者として名高い。クララ・ハスキルのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番は、1947年6月に第2次世界大戦後初めて英国を訪れて録音したもの。ハスキルもリパッティと同様病弱で、脊椎カリエスを病んでいた。しかも第2次世界大戦中には脳腫瘍の手術を受けた。その後、健康を回復し、幸いにも演奏活動を再開することができたのだが、この時、ちょうど元気を取り戻した頃の録音である。それだけに、実に伸び伸びとしてベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番を演奏している様が捉えられている。こんなに詩的で麗しいベートーヴェンのピアノ演奏は、彼女以外のピアニストでは到底不可能とも思えるほどで、その緻密な演奏内容、とりわけ気品の高さが光り輝く名演となっている。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ◇クラシック音楽LP◇フラン... | トップ | ◇クラシック音楽LP◇リヒテル... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

協奏曲(ピアノ)」カテゴリの最新記事