★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

<クラシック音楽LP>ホロビッツのベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」/ドビュッシー:前奏曲集第2集から/ショパン:練習曲op.10-12「革命」、練習曲op.25-7、スケルツォ第1番

2023-07-06 09:38:34 | 器楽曲(ピアノ)



ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」
ドビュッシー:前奏曲集第2集から
        「妖精は良い踊り子」
        「ヒースの茂る荒地」
        「風変わりなラヴィーヌ将軍」
ショパン:練習曲op.10-12「革命」/練習曲op.25-7/スケルツォ第1番

ピアノ:ウラディミール・ホロヴィッツ

録音:1963年秋、ニューヨーク

LP:CBS/SONY 18AC 736

 ウラディミール・ホロヴィッツ(1903年―1989年)ほど神格化されたピアニストも珍しい。現在でも、あたかも全てのピアニストを代表するピアニストであったかのように語られることがあるほどだ。ホロヴィッツは、ウクライナに生まれ、キエフ音楽院を卒業後、旧ソ連国内でリサイタル活動を展開。その後、1928年にチャイコフスキーのピアノ協奏曲でアメリカデビューを果たし、これが“奇跡のピアニスト”として大々的に紹介され、世界に名が知れ渡った。トスカニーニの娘ワンダと結婚し、1944年には米国の市民権を獲得した。しかし、1953年のアメリカデビュー25周年記念リサイタル後、間もなく突然すべてのリサイタルをキャンセルすると、それから1965年まで12年もの間、ホロヴィッツは何故かコンサートを行わなかった。この理由は不明だが、このLPレコードのライナーノートで高柳守雄氏は次のように推理している。「ホロヴィッツにとってトスカニーニとの出会いは果たして幸せであったかどうか・・・どこから見ても火と水の間柄である・・・そうした火と水の間柄が不幸な結果をもたらしたのではあるまいか」と。このLPレコードは、1963年秋にニューヨークで録音されたもので、ホロヴィッツ復活の切っ掛けになった歴史的録音である。その後、ホロヴィッツは録音にも積極的に取り組んだが、ホロヴィッツを評価する人の中には、初期のホロヴィッツのピアノ演奏の凄さを指す人も多い。この録音以後は、重厚さは出てきたが、その反面初期の鋭敏さが失われた、という。このLPレコードのショパンの演奏などを聴くと、何かちぐはぐな感じがして、若き日の鋭利さを聴き取ることは難しい。しかし、ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」などを聴くと、やはり、ホロヴィッツが突出したピアニストであったことが聴いて取れる。構成が実に堂々としていて、さらに、ところどころに繊細な感覚も宿っている。ドビュッシー:前奏曲集第2集の3曲も、多彩な色彩を撒き散らすようなピアノタッチが印象的であり、この演奏を聴くとその非凡さを改めて思い知らされる。ホロビッツのレパートリーは、ショパン、リスト、シューマンなどのロマン派の作品が中心であったが、スクリャービンなど近現代の作曲家、モーツァルト、ベートーヴェンなど古典も含め、極めて多岐に及んでいた。また、ホロヴィッツがレパートリーとしたことにより、スカルラッティやクレメンティの鍵盤作品に、再びスポットが当てられるようになったことも特筆されよう。(LPC)


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