★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ルドルフ・ゼルキンのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番/第2番

2024-04-22 09:51:09 | 協奏曲(ピアノ)

 

 

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番/第2番

ピアノ:ルドルフ・ゼルキン

指揮:ユージン・オーマンディ

管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団

録音:1965年1月14日

LP:CBS/SONY 18AC 747

 ベートーヴェンは、全部で5曲のピアノ協奏曲を遺しているが、この中で第3番、第4番、第5番が有名であり、演奏会でもしばしば取り上げられている。それらに対し、このLPレコードに収録されている第1番と第2番は、人気の点でもイマイチであり、演奏会でもそう取り上げられることも無い。どちらかというと日陰の存在の曲とでも言ったらいいのであろうか。ところが、改めてこの2曲をじっくりと聴いてみると、何故人気が無いのかわからいほど、内容が充実しており、何よりも若き日のベートーヴェンの心意気がストレートにリスナーに伝わってきて、聴いていてその良さがじわじわと感じられるのが何よりもいい。このことは、宇野功芳氏も「新版 クラシックCDの名盤」(文春新書)の中で、「たしかにベートーヴェンの個性は第3番で花開いているが、魅力の点では第1番、第2番の方が上だと思う」と書いていることでも分ろう。作曲されたのは第2番が最初で、その後に第1番がつくられたと言われているが、曲の雰囲気は2曲とも似ており、いずれもモーツァルトのピアノ協奏曲を彷彿とさせるようなところがベースとなり、その中に後年のベートーヴェンを思わせるような、強固な意志の強さが各所で顔を覗かせる。つまり、モーツァルトのピアノ協奏曲が典雅な趣と憂愁の美学に貫かれているのに対し、このベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番と第2番は、その上にさらに男性的な強固な意思の力強さが全体を覆う。このLPレコードで演奏しているルドルフ・ゼルキン(1903年―1991年)は、そんな2曲のピアノ協奏曲を演奏するのに、これ以上のピアニストはあり得ないとでも言ってもいいような充実した演奏を披露している。あくまで背筋をぴんと伸ばしたような演奏であり、新即物的表現に徹し、決して情緒に溺れずに、ベートーヴェンの持つ力強さを余すところ無く表現し切っている。ユージン・オーマンディ(1899年―1985年)指揮フィラデルフィア管弦楽団も、メリハリの利いた伴奏でこれに応える。この2曲を聴き終えて、久しぶりに若き日のベートーヴェンの世界を、思う存分満喫することができた。ルドルフ・ゼルキンは、ボヘミアのエーゲル(ヘプ)出身。1915年、12歳でウィーン交響楽団とメンデルスゾーンのピアノ協奏曲を共演してデビュー。1939年、アメリカに移住、カーティス音楽院で教鞭をとる。1951年、マールボロ音楽学校と同音楽祭を創設した。(LPC)


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