モーツァルト:ホルン協奏曲全集
ホルン協奏曲ニ長調K.412
ホルン協奏曲変ホ長調K.447
ホルン協奏曲変ホ長調K.417
ホルン協奏曲変ホ長調K.495
ホルンのためのコンサートロンド変ホ長調K.371
ホルン:アラン・シヴィル
指揮:ルドルフ・ケンペ
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
発売:1975年
LP:RVC GGC‐1129
このLPレコードは、モーツァルトの有名な4つのホルン協奏曲とホルンのためのコンサートロンドを、ホルンの名手であったアラン・シヴィル(1929年―1989年)が、名指揮者ルドルフ・ケンペ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の伴奏で録音した、記念すべき一枚である。アラン・シヴィルは、イギリス出身のホルン奏者。指揮者のトーマス・ビーチャムによって、デニス・ブレイン(1921年―1957年)の次席奏者としてロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団に入団。そしてデニス・ブレインがフィルハーモニア管弦楽団に移籍すると、首席奏者を引き継いだ。1955年に、シヴィル自身もフィルハーモニア管に異動するのだが、1957年にブレインが自動車事故で死去すると、今度はその後を継いで首席ホルン奏者に就任した。デニス・ブレインは、天才的ホルン奏者として伝説的な存在であったが、このようにアラン・シヴィルは、天才デニス・ブレインと深い関係によって結び付けられていたことについては、デニス・ブレインのファンである私にとっては考え深いものがある。そしてアラン・シヴィルは、1966年には、BBC交響楽団の首席ホルン奏者に就任し、1988年に引退するまでその座にあった。1985年には、大英帝国勲章を授与されるなど、現役時代、アラン・シヴィルは、ホルン奏者の第一人者として、その名を広く世界に轟かせた。このように、このLPレコードは、登場プレイヤーが全て一流なので、聴く前から胸が時めく。最初のニ長調K.412のホルン協奏曲の演奏が始まると、この期待が現実のものとなって耳に飛び込んでくる。優雅なオーケストラ伴奏に乗って、アラン・シヴィルの演奏する、愛らしくも軽快で、しかも奥行きのある色彩感溢れるホルンの響きが、何とも心地良い。ホルン協奏曲はモーツァルトに限らず、一般的に牧歌的で清々しいものであるが、モーツァルトが書くと、それに加え、こんなにも芸術的に格調が高くなるものかと感心する。このLPレコードを聴き、久しぶりにホルンの伸びやかな音色を存分に味わうことができ、至福の一時を過ごすことができた。なお、指揮のルドルフ・ケンペ(1910年―1976年)は、ロイヤル・フィル首席指揮者、ミュンヘン・フィル首席指揮者、BBC交響楽団常任指揮者などを歴任したドイツの名指揮者。それにしてもホルンの持つふくよかな音色は、何といってもLPレコードで聴くのが一番だ。(LPC)