★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇バリリ四重奏団の弦楽四重奏曲第10番「ハープ」/第11番「厳粛」

2020-08-24 09:41:56 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番「ハープ」
        弦楽四重奏曲第11番「厳粛」

弦楽四重奏:バリリ四重奏団

発売:1965年 

LP:キングレコード MR5094

 これは、往年の名カルテットのバリリ四重奏団が録音した、ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集のLPレコードの中の1枚で、弦楽四重奏曲第10番「ハープ」と弦楽四重奏曲第11番「厳粛」が収められている。バリリ四重奏団は、1954年に創設された弦楽四重奏団であり、第1ヴァイオリンは、ウィーン・フィルのコンサートマスターを務めたワルター・バリリ、第2ヴァイオリンは、ウィーン・フィルの第2ヴァイオリンの首席奏者を務めたオットー・シュトラッサー、ヴィオラは、創設時のモラヴェッツから、ウィーン・フィルのヴィオラの首席奏者を務めたルドルフ・シュトレンク、そして、チェロは、創設時のクロチャックさらにエマヌエル・ブラベッツがそれぞれ担当している。いずれもウィーン・フィルの有力メンバーであり、彼らが演奏するスタイルは、ウィーン情緒たっぷりなところが大きな特徴となっている。しかしながら、単にウィーン情緒に流されることはなく、その曲の持つ本質をずばりと言い当てる能力は、他の弦楽四重奏団を大きく凌駕していた。弦楽四重奏曲第10番「ハープ」は、第1楽章の随所に現れるピッツィカートの動機から「ハープ」という愛称を持つ。この幸福感に満たされた作品をバリリ四重奏団は、本来持っているウィーン情緒をふんだんにちりばめた内容の演奏を繰り広げる。しかも、表面的なウィーン情緒とは無縁な奥深い感情が込められた演奏なので、この作品が持つ伸びやかさが鮮やかに表現尽される結果となっている。一方、ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番「厳粛」は、1810年5月に劇音楽「エグモント」を完成させた後に着手された。何故「厳粛」と名づけられたかというと、草稿に「真面目なる四重奏曲。1810年10月ズメスカに捧ぐ。10月その友人これを書く」ということから来ているようだ。もっとも「真面目なる(セリオーソ)」という言葉は出版に際しては削除されたという。この曲は、規模は小さいものの、「内容の充実度ではベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中でも一番」とする評論家がいるほど優れた作品に仕上がっている。第10番「ハープ」の後に続けて聴くと、第11番「厳粛」の内省的で厳格さとの落差に驚かされるが、こちらの方が本来のベートーヴェンの弦楽四重奏に近い性格の曲だ。ここでのバリリ四重奏団の演奏は、第10番「ハープ」の大らかな演奏をがらりと変え、ベートーヴェンの内省的で激しい闘争心を的確に捉え表現する。それでも、ぎすぎすした感情表現ではなく、深淵さを感じさせるところはさすがバリリ四重奏団である。(LPC)


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