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『ギルティクラウン』~“守られた主人公”は英雄になれるか?

2012年02月15日 | アニメ
【反英雄譚】



『ギルティクラウン』のストーリーが佳境に入って来ました。『ギルティクラウン』は、アプカリプス・ウィルスの突発的な感染拡大によって一時無政府状態になり、超国家組織GHQの統治下に置かれた日本で、主人公・桜満集に偶然(?)人の心を武器道具に変えるヴォイドの能力が宿り、レジスタンス組織“葬儀社”に関わって行く『物語』。
それまでちょっと立ち上がってはすぐ転ぶような半ヘタレの主人公だった桜満集くんは、自分を好きでいてくれた少女・祭(はれ)を失って、はじめて自らに宿された“王の能力”を存分に、酷薄に振るい始めます。…どうなるんでしょうね?この集くんの目を覚まさせ得る、と思える一番のキャラは今は亡く、他の候補はいくぶん怪しい…というか、ここで集くんの精神を「元に戻す」行為は、そのまま死亡フラグが立ちやすそうなイメージなんですよね(汗)

桜満集が非常に守られた主人公だと言う事は、これまで『ギルティクラウン』を見てきた人には分かると思います。設定的には、先に偶然(?)と書きましたが“ヴォイド”の能力を身につけるのは半ば予定調和だった事は明らかになっています。また、集が憬れる……と言うか、かなり、やっかんでいた涯も、彼との関わりの中で生きてきた者だという事が分かっている。
シナリオ的にも、途中何度も躊躇し、転び、うずくまっていたにも関わらず、彼は最後は「間に合う」。あるいは間に合わなかった部分は(軽微な事故として)不問にされる。かなりの“ご都合”が彼に渦巻き、『物語』全体が彼を主人公であれかしと支えている構造になっている。『物語』とは元々そういうもの…だとしても、凡そ過度と言っても支えられ方をされていると思います。

たとえば、集くんは涯に最初に“葬儀社”に誘われた時、それを断って日常を選んだ。…そうすると、次の日、正ヒロインのいのりが転校して来るんですよね(笑)まるで『ギルティクラウン』という物語自体が、彼を自らのフレームの真ん中に収め直そうと、移動したかのよう、物語は彼を追いかけているかのようです。
逆に言うと、彼が何回、選択ミスをしても、くじけても、失敗しても『ギルティクラウン』という物語は彼を主人公として承認し続ける…と、そういう事のように思えます。
さらに言うと、彼はそのくらい危うい主人公~『ギルティクラウン』の主人公となれる、英雄となれる権利を、簡単に手放してしまいそうになる、そういうボーダーな主人公なんです。

…しかし、それだけ設定に“守られ”、シナリオで“間に合い”続けた主人公だけに、最後には彼を問答無用に守っていた設定自体が“罰”に変じ、そして最後の最後、本当に間に合いたい時に間に合わない展開が待っていたりするかもなあ…というイメージも浮かんできますが、まあ、それは余談として…。
この構造は、『受け手』に「劇的なる展開が訪れた時、僕らは本当に英雄になれるのか?」という命題を投げかけているようです。「そんなの、なれるわけない(`・ω・´)」と、即答してしまう人は、逆に集くんの事も分かるんじゃないかと言う気もするんですけどね?なんかネットとか見ていると集くん、けっこう嫌われているみたいなんですが…(汗)
集くん「英雄になれないとしても、これくらいはがんばりたい……多分、自分に『三国無双』みたいな能力があったら、これくらいは……がんばれると思ってもいいよね?……でも、これ以上は、ちょっとウソ臭いかもね?」みたいな、いいい波長出していると思うんですけどね。上手く行ってもあんまり集くんが「しっかりしたから」という感じがせず、やはり“守られている”感じが出るはず。(…ああ、そこが嫌われるのかな?)

ここらへん(↓)以前の記事で扱っていた『反英雄』の話と接続できそうな気がしています。描きは多少、違っていますが「上手くやれるはずない」という呪縛において方向的にはおそらく近しいものを感じます。

間違えた道のヒーローとヒロインたち~『Fate/Zero』とか『めだかボックス』とか…
彼ら、彼女らは、「間違えた道のまま突っ走っている」事が共通していると言えそうです。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、球磨川禊、衛宮切嗣、暁美ほむら、立華かなで、そしてベアトリーチェは、間違った判断をし、間違った決断に至り、しかし強い信念のもと「自らを信じて」一心不乱にその物語を駆け抜けている。
しかし、「元々、間違った判断なので、いつまで経っても、どんなにがんばっても、自分たちの望む場所にたどり着けない」のですよね……そういうキャラたちだと言えます。

(中略)

たとえば『風の谷のナウシカ』のナウシカ、『キャプテン』の谷口(イガラシでもいいかも)、『コードギアス』の枢木スザク(僕は彼は最後に折れたと思っていますが、少なくともルルーシュと敵対しているスザクは)といったキャラがそうです。
彼らはまず、即断即決と言っていい、極めて短時間で“正しい判断”を下します。そして、その信念に基づいて一心不乱にひたすら行動で示します。そうして元々、正しい判断だったので、(時に彼らの行動は、最初は、大変まだるっこしい遠回りに見えたりもするのだけど)結果として予想外の短期間で「望んだ結果」という果実をもぎ取ります。

…完全に上に上げた、「間違えた道のまま突っ走っている」“彼ら”、“彼女ら”とは違う存在、ともすると、それだけで強い憎悪を持たずには居られないようなキャラだと思います。

この記事で上げている“彼ら”は少なくとも、決然と行動を起こしそれによる失敗を自らに引き受けているワケですが、この話のある側面(あくまである側面ですが)としては、集くんの決然とする事すら躊躇があるような在り様の方が、より目指したものに近い……と考える事もできます。

どう言いましょうね?「桜満集くんは、本来の球磨川くんなんだよ?」とか言うと伝わりがいいですかね?「球磨川くんは、何だかんだ言ってカッコいいよね?」という彼への指摘は、本来ダメな奴なハズなのに、意志力は強い→カッコいい→ダメな奴になっていない→という矛盾から来ているものですが、それさえも薄いとどうなるかと言うと…集くんみたいになってくるはず。(´・ω・`)
集くんは、確かに「チート能力で無双なオレ」というストーリーの主人公を演じてはいる。演じてはいるけれど、彼を主人公たらしめているモノはその「設定」しか無い事は、けっこうしつこく、繰り返し描かれていると思います。

それで最終的に、集くんが主人公(英雄)としての何かを発現し得るのであれば、今話している事(反英雄の話)は、基本おじゃんで(汗)まあ、『マブラブ』の白銀武ちゃん…みたいな感じの『物語』だったねという話に落ち着くと思います。
“そっち”じゃないなら……桜満集は英雄性を遂に手に入れる事はなく、その為に何かしらの“罰”を受ける事になるんじゃないかと思っています。
…まあ、どうなんでしょうね。決めたような事言っていますが、解釈の話ですしね。たとえば集くんがその身を投じて世界を救えば、彼は英雄である事と罰を両方受けている…という解釈もあり得るようになるしね。…まあ、分かりません(汗)
とまれ、集くんのダメっぷりはけっこう僕の琴線に触れますね。これだけ主人公として守られているのに、大した事ができない、そのちっぽけさが痛かったり、不思議と癒されていたりもします(汗)


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2 コメント

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Unknown (taida)
2012-02-17 14:38:50
はじめまして。
最近では珍しいくらい嫌われてる主人公ですね。
シンジくんは世界の危機的状況においてもウジウジして行動しない事が嫌われる要因でした。
しかし集さんは行動していながら嫌われる。むしろ行動した所為で嫌われてしまうんですよね。
力だけあっても英雄にはなれない事を集さんは証明してくれました。力ある者はそれを正しく使う仕組みが出来ていないなら、下手に使うべきではない。
扱えもしない力を持ってしまったから、ここまで可哀想な目にあった気がします。
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Re:taidaさん (LD)
2012-02-17 20:53:28
> 力だけあっても英雄にはなれない事を集さんは証明してくれました。

集くん振り回されてますねえ(汗)
今、王の能力を持った事のしっぺ返しのような状態になっていますが、もう一つ、集くんに過ぎたものとして、「ずっと好きでいてくれるヒロイン」がいますよね。こっちはどうなるかな?とか思って観ています。(まだ最新話観ていませんが)
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