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今週の一番『魔法先生ネギま!』~並列構造の臨界

2012年02月10日 | マンガ
【ハーレムメイカー】

【2月第1週:魔法先生ネギま! 351時間目 みんな、バイバイ!】
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【漫研】
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…うむ。ワシはこれで満足じゃよ?(´・ω・`) 『魔法先生ネギま!』(作・赤松健)が、いよいよ、あと数回を持って終了という情報が流れて来ました。いやぁ…本当に凄い『物語』になったよなあ…と思います。『ネギま!』が描いた物語の話はまた、改めて記事に書いて行きたいと思いますが、今は、ちょっと前に記事にしていた(↓)ネギくんの本命発覚と、その顛末についての話をしたいです。

今週の一番『魔法先生ネギま!』~発覚?ネギの大本命!?
■今何処予想~本命:長谷川千雨

『少年マンガ放談』の中でも述べていますが、アスナ以外で、“物語の流れ”として「好き」という感情を抱く相手は、この娘しかいないんじゃないか?…とさえ思うキャラです。別に恋愛事なので、誰をどういう脈絡で好きになっても、脈絡なく好きになっても、不思議ではないんですが『魔法先生ネギま!』は物語なので、その“物語の流れ”(僕の感じるもの)としては…ですね。
原則『ネギま!』は、美味しい所、どきどきする所は、各ヒロインにシェアされる傾向があって、その中の有力ヒロインたちから“流れ”が全く見当たらない…なんて事はないんですけど、それでもネギくんが学園の外に飛び出した「魔法世界編」において、一番、ネギくんの“決断”と“成長”に手を貸し、見届けていたのは千雨だったと思います。

基本的にはネギくんの“本命”は「分からない」という然るべき落とし所に落として来たのですけど…まあ、ぶっちゃけ僕は「やはり、千雨だったか!(`・ω・´)」と思っています(笑)
この顛末で、最後にネギくんが微笑みかけたであろう“容疑者”はアスナの申告では5人。龍宮、葉加瀬、エヴァンジェリン、美空、千雨の誰か。まあ、葉加瀬、美空は、まあ論外で龍宮もないだろう。そうするとエヴァンジェリンか、千雨のどちらか…という事になりますが、やはり物語的にも、両想い法則的(※ここまでのヒーローが両想いじゃないのは有り得ないだろうという法則)にも(?)、千雨だろうなと。

…と!喜び勇んで書いていますが、無論、この描写をスルーする事もできる。まず、読者は、アスナの申告を無視できる。自分方向に向いていたのを照れ隠しで“外した”のかもしれない。ネギくんの視線は、アスナ、このか、あるいは刹那に行っていたのかもしれない。
そもそも、ネギくんが視線を向けた事に意味を見出さない選択が読者にはできる。「そっち見て笑ったかもしれないけど、本命に向けたって分けでもないでしょう。師匠(エヴァ)に視線をよこしただけかもしれないし」とか。そう、恋愛感情とは別に、ネギくんがあのシーンで視線を向けるかもしれない相手としてはアスナとエヴァンジェリンは妥当な線なんですよね。
要するに、絞り込みたい人は絞りこめばいいけど、スルーしたい人はスルーして、自分のお気に入りのキャラの可能性を考える余地を与えているって事です。赤松先生、さすがというか、ここらへんはソツがない。しかし、同時にこの“落とし所”の選択はなかなか興味深くもあります。

■『並列構造』の障壁

この件について僕自身は、ラジオなんかで「『ハーレムメイカー』として“序列構造”を突破する意味で、千雨に行って欲しい」という話をしていました。…何だか自分語の羅列で恐縮ですが翻訳すると「従来のラブコメ路線に沿えば「どうせ、本命はアスナだろう」という話になる所を『ネギま!』は違う道を見せて欲しい!」という話です。
僕はそれをヒロインの“序列の壁”と言った語りをしていて、けっこうそこかしこ語ったりしているのですが、ここで、手短に、改めて整理しておこうと思います。

ヒロインの序列構造って何かというと、ラブコメなんかのファーストシーンや、話の運びで「あ、この娘と最後くっつくな?」というのがすぐに分かって、その後に出てくるヒロイン(二位ヒロインと呼んでいますが)が、どんなに可愛くても、話を盛り上げても、その最初に決めた“序列”が覆らない。少なくとも非常に強力にその“呪縛”を受ける状態の事を言っています。



実はこれについては赤松先生の出世作である『AIが止まらない!』(1994年~1997年連載)で、非常に典型的な現象を確認できます。『AIとま』は、プログラムが得意な主人公が作ったAIプログラムの女の子“サーティ”がある日落雷により実体化して、本物の彼女になるという『物語』で……当然、サーティが序列一位のヒロインです。
そこに、プログラムであるサーティという彼女に対して「じゃあ、主人公に本物の人間の彼女ができたら?」という命題をひっさげて登場してくるのがシンディ(↑)です。(二位ヒロインというか…最終ヒロインという感じなんですが)新装版で作者が相当愛情たっぷりに語っている事からも分かるように、非常に作りこまれた、よくできたヒロインで……そうすると「まあ、こっちの娘の方が良くない?」って話になってくるんですよね。実際、それくらい肉迫する事を目指して設計されたキャラでもありますし。
しかし、結局は主人公はサーティを選び、シンディは失恋する事になります。この時の事について、新装版のオマケのインタビューで赤松先生が興味深い事を述べています。
~でも、シンディに勝たせたかったって気持ちもあるんですか?

赤松氏「新装版6巻のキャラクター紹介でも書いていますが、シンディは漫画家への愛情を一身に受けたキャラなんでね(笑)勝たせたい気持ちはありましたよ。ただ、勝たせることはできないんで(笑)それに一度、勝っちゃったところまで行ったんで。相当盛り上がりましたよ。たぶん、私的にこの巻が一番盛り上がった時期だったと思いますね」

(『AIが止まらない!』新装版6巻巻末より)

勝たせることはできないんで(笑)…と、さらりと言っていますが、これって実はあまり根拠がある話ではないんですよね。そりゃ、何の積み上げもない娘とくっつきました…なんてやると物語としての体裁が崩れるとは思いますが、この頃のラブコメって、読者に「どっちが選ばれるのだろう?」とはらはらさせる為に、対抗の女の子にも充分な“積み上げ”をするのは当然の手法となっていました。
にも、関わらず“それ”をする事はタブー視されていた。物語破壊と同義のような、作り手の敗北のような、そういう恐れにも近い縛りが存在していた。…迷信みたいなもの…と僕は言ってしまいますが(笑)それが「対抗の女の子がどんなに可愛くても、ドラマが積まれていても、そっちは選ばれない」という、序列の壁です。

この序列の壁は概ね、昔のラブコメになる程、強くはたらいていたはずです。逆に最近のものになればなる程、その働きは強固ではなくなっています。先程、迷信と言ったように、繰り返し繰り返し演じられるうちに、序列の壁~最初に決めたプロット通りの女の子を選ばなくてはならない~は、思ったほど絶対のものではないと分かって来た。ただし、物語破壊との兼ね合いは存在すると言えば存在するので、ある程度は序列の縛りも存在し続けています。

これに対応して伸長してきたのがヒロインの並列構造化です。いわゆるハーレムというやつで、このブログではこの構造の系譜をずっとウォッチして記事にしているはずです。これは恋愛アドベンチャーゲームが発生し、それによってある種ラブコメ読者の夢だった「別のヒロインを選ぶ」という選択肢が実装された事から発展してきた面も大きいです。
赤松先生の作品『ラブひな』もこのハーレム構造(及び並列化)が志向されていた代表的な作品であり、また恋愛ゲームの影響も少なくない作品だと思います。同時に、まだ序列の縛りが生きていて、基本、この物語はメインヒロインである成瀬川一択が守られた話になっています。とは言え、複数のヒロインにラブコメ的な展開を割り振り、それぞれにファンを付けていった意味は大きい。

そして本件の『魔法先生ネギま!』です。これは31人という前代未聞のヒロイン数の挑戦からはじまり、ラブコメ的展開の割り振りも前作『ラブひな』以上、序列の縛りもほとんど感じさせず(とっかかりの一位として置かれたアスナは、ヒロイックな方向に向かう事で、ヒロイン構造の序列からは解放される)物凄い事に、在るがままに物語は流れて行ったように思います。

そろそろまとめますが。『魔法先生ネギま!』の物語の積まれ方を観て行って、僕は『ラブひな』では果たされなかった序列の突破をここで見たい…という思いを持ってこの物語を眺めていた所があります。…それは果たされたのか?
果たされたと思います。ネギくんが誰を選んだという事ははっきりさせなかったんですが「アスナではない」という事が繰り返し強調された事によって、序列構造は突破されていると言っていいでしょう。アスナの目をハッキリ断つわけでもないのは、序列があるからではなく、アスナも並列の一部だからと言えます。

しかし、同時にこの顛末によって並列の壁の存在がハッキリ見えた気がします。…そうか。序列の壁を突破した先には並列の壁があったか…。
そう言えば多くの並列構造を志向したハーレム系の物語は、特に最近は「誰も選ばない~このままが幸せじゃん?」な結論に到るものが増えたような気がします。あるいは最終的には誰かを選ぶとしても今ではない。あるいは誰かを選んだとしても、他のヒロインが「もう、あたし結婚しない!」とか……まあ、これは並列と言うよりハーレムの縛りと言うか別の議論か(汗)
「ネギくんに本命がいる」という宣言にも関わらず、それが誰か明かされないという落とし所が取られる事によって“壁”の存在がくっきり観えた気がします。…その選ばれたヒロインは、序列の縛りは突破したのだけど、並列の縛りには取り込まれた……って事なんですよね。そして『ネギま!』は究極的な並列を志向したが故に、その縛りもまたより強固だったと。
今、フィナーレに向けての展開がトリッキーで『面白』過ぎるのですが、それもネギくんの本命をはっきりさせないという縛りの中から生まれて来たような面があると思われます。(…とか言いつつ、最後の最後にはっきりさせたりして(汗))

じゃあ、その先はどうなるか?…って。どうも最近の時流を眺めていると、ハーレム的なものは、けっこう行き着くところまで行っちゃってて、純ラブコメに志向が回帰している気がします(汗)
あるいは男女1対多ではなく、もっと比率を同数にして構造を組むような…まあ、それって普通のドラマって事なんですけど(汗)まあ、そちらの話もぼちぼちして行きたいですが……ラブコメ~ハーレム系への流れは、大きく一段落つけて眺められる時期が来ているようです。
そこらへんも、ぼちぼちと語って行きたいですが、『ネギま!』の終了と、ハーレム系ラブコメの(一旦の)終息の時期が重なるかもしれないと言うのは、なかなか感慨深いものがあるかもしれません。


DVD付き初回限定版 魔法先生ネギま!(37) (講談社キャラクターズA)
赤松 健
講談社


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