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今何処(今の話の何処が面白いのかというと…)

マンガ、アニメ、特撮の感想ブログです。

今週の一番『アゲイン』~団長の残念女子っぷりがたまらない(`・ω・´)

2012年03月21日 | マンガ
【2月第4週:GANKON 第十八願 型破りな男】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10548.html#729
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『アゲイン』(作・久保ミツロウ)が、未知の展開というか、何と言うか……僕も長い事、週刊少年誌を読んでいるので、1つの描写を観ると、それを起点に複数のストーリーの展開パターンが頭の中に浮かんで、で、実際の展開を読んで「ああ、この展開で来たか…」みたいな感覚で読んでいたりもするのですが、『アゲイン』では、そのヴィジョンが出づらいと言うか……時間をかければ「こういう、パターンはあるかな?」みたいな事は言えるんでしょうが、ぱっと、即座にイメージが浮かぶみたいな事がなくって……要するに「先の読めない展開」になっています(`・ω・´)

『アゲイン』は友達も無し、部活も無し、何も無しで高校3年間の生活を終えた男、今村金一郎は、卒業式の日に3年前にタイムスリップしてしまう。事態を正確に把握せぬまま、今村は3年前に気になっていた人物、応援団の宇佐美良子に声をかけ、応援団に入部してしまう。応援団が宇佐美団長一人で廃部になってしまう未来を知っている今村は、その未来を何とかしようと考え始める…といった『物語』。

最初は、普通の「やりなおしモノ」にも観えて、ああ…じゃあ、この類型の物語に最終的にかかってくる倫理的な圧力というかチート人生に対する糾弾のようなものは、どうやって緩和 or 回避するんだろうか?みたいな読み方をしていて、それは以前の記事でも書います。(↓)

今週の一番『アゲイン』~今村金一郎は振り返らない

…で、その問題は、今も生きているとは思うんですが、しかし、今村が一度、元の時間軸へ戻る展開と、そこから呼び戻される展開が入る事によって、たとえばもっと複数回行ったり来たりをして、両方の時空を「何とかする」展開になるのか?とか、それでも、彼岸の時空のみを救って、今村は此岸に帰るのか?とか、なんか上手く惑わされている展開になっています。でも、面白い。

何か、ヒロイン(?)の団長のダメっぷり、残念っぷりが、回を追う事に増してきていて、そこに目が離せなくなっています(笑)「この人……なんとかしてあげなきゃ!」って思ってしまう。登場時は、誰に理解される事がなくとも我が道を行く、颯爽と、かつ孤高の人……みたいな幻想を醸しだしていたんですが…「高校生にその格はカッコ良すぎだよ」とツッコまれてしまったような。
いや、多分、団長、気持ちはそういう人なんでしょうけど……あれですね。孤高の一匹狼でいる事にもスキルがいるんだなあ…って、しみじみ、思わせてくれるような、そんな残念さが堪らないです。気持ちだけじゃダメなんですね。

アゲイン!!(3) (KCデラックス)
久保 ミツロウ
講談社


今週の一番『てんむす』~以勢日輪戦編もよかった。

2012年03月07日 | マンガ
【2月第3週:史上最強の弟子ケンイチ BATTLE464 約束】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10547.html#728
【漫研】
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『てんむす』(作・稲山覚也)、三回戦の以勢日輪高校との対戦も良かったです。『てんむす』は天性の“食べ好き”(?)である少女・春風天子が、期せずして食い道部に入部し、女子大食い競技の道を進んで行く『物語』。

今週の一番『てんむす』予選二回戦がこんな濃密でいいのかな?(´・ω・`)

(↑)以前の記事で、二回戦の長野女子体育大学付属との戦いが相当に良かったので「こんだけ、出しきった感のある戦いを予選でやって大丈夫かな?」みたいな主旨の記事を書いたのですが…ともかく、次戦、それに勝るとも劣らない対戦を観せてもらいました。『てんむす』相当いい連載になっていると思います。

基本的にはマラソン~長距離走の駆け引きのイメージで競技が進行して行く、大食い競技とはそういう感じの競技のようです。(…これ、また局面によって別の描きをしてくるのでしょうかね?)それで、食べる品目によって、そのマラソンの戦い方が変わってくる。ちょうど、コースや気候/天候のようなものでしょうけど、目の前にその挑む対象が、でん、と鎮座しているので、マンガ的に有効というか、今回の戦いの形質を体感しやすくあります。
その上で、対戦者同士の苦しい中での、駆け引きがきっちり描かれていて、緊張感があります。そうして、これまでは、予選での、ある意味、弱小チームの“がんばり”みたいなものを載せて、泣かせて来たのですが、これからは本戦を目指して、本物の強者たちとの戦いが描かれていきそうで、これもまた楽しみです。

今週の一番『ニセコイ』~王道ラブコメは不在だったか?

2012年02月18日 | マンガ
【2月第2週:魔法先生ネギま! 352時間目 百年の記憶】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10546.html#727
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『ニセコイ』(作・古味直志)が楽しいです。毎週、楽しみにしています。『ニセコイ』は、普通の高校生にしてヤクザの二代目候補の少年・一条楽と、超美人の転校生にしてギャングの一人娘の少女・霧崎千棘が、反目しあう両組織の安定のために、付合っている“ふり”をする事になる『物語』。あと、まあ、一条くんには十年前に“約束した恋人”がいて、それが誰か?というのも焦点になっていますね。

いやぁ~、やっぱ“普通のラブコメ”いいわぁ~。“普通のラブコメ”ひさしぶりだわぁ~。…と言う語り口で話をはじめてみたかったのですが、よくよく考えると、普通のラブコメってなかなか難しいですね?いや、週刊少年誌で純粋ラブコメって久しぶりに思うんですけど…じゃあ、マガジンの『君のいる町』とか『GE』とかは、ラブコメじゃなかったの?とか言うと………………どうなんでしょう?(´・ω・`)ぶも?
いや~…『君のいる町』も、『GE』も、なんかね。“重い”んですよね(´・ω・`) それはそれで楽しいのですが……こう、愛憎一歩手前くらいの重さがあって、多少、辛いんですよね(´・ω・`)ω・`) 「やぁ~!小野寺さん、かぁ~い~なぁ!こんな子に好かれちゃったら、オレどうしよう~www(←)」みたいな?ふわふわな感じじゃなくってね。…いや……もう……いいじゃん………黒川さんとか、柚希さんとか………“重い”っつ~か“気まずい”のはさぁ?(´・ω・`)ω・`)ω・`)

む。話がそれてますね(´・ω・`)ゞ まあ、恋愛には「楽しい事」と「苦しい事」があるとしたら、その『物語』の配分の問題なんでしょうね。当たり前ですが「楽しい事」が多い方が楽しい。「苦しい事」は「楽しい事」を引き立たせるための従格であるのが、ラブ・コメディとしては理想なんでしょう。
あるいは三角関係でバッティングがあるとしても、それを如何に『楽しく』描くのか?というのは、なかなかセンスがいるのだと思います。ドロドロはドロドロの『楽しさ』がありますけどね。今、『ニセコイ』を元に話したいのは逆の事ですね。

あるいはサンデーの『GANKON』とか、『はじめてのあく』とかはラブコメじゃないの?って話はあって。これには確かに“ラブコメ成分”はあって、まあ、毎週程良く摂取させてもらってはいます(`・ω・´)(←)
特に『GANKON』は、たとえば『はじめてのあく』はラブコメとバトルの“両立”を目指してる作品だと思いますが、『GANKON』はラブコメとバトルの“融合”を目指した作品になっています。これはこれで色々語りたい。
しかし、ある意味では“ちらし寿司”なんですよね。色々入っている。それはそれで美味しいのだけど、「でも、僕は、そのちらしの中にちょろっとだけ入ったイクラが好きなんだ」と。だからちらし寿司じゃなくって“イクラ丼”が食べたいんだと。まあ、そんな話でしょうか?(←)

それと、実は、自分的にはこっちが本題ですが、たとえば『ネギま!』です。あるいは『ハヤテのごとく!』とか『神のみぞ知るセカイ』でもいい。
完結を間近に迎えた『ネギま!』は素晴らしい作品に仕上がっていて、僕はその構成にケチをつける気などさらさらありませんが、それでも「ラブコメ成分の供給」としては(↓)ここで止まってしまったという観方があります。

今週の一番『魔法先生ネギま!』~並列構造の臨界


「ネギくんに本命がいる」という宣言にも関わらず、それが誰か明かされないという落とし所が取られる事によって“壁”の存在がくっきり観えた気がします。…その選ばれたヒロインは、序列の縛りは突破したのだけど、並列の縛りには取り込まれた……って事なんですよね。そして『ネギま!』は究極的な並列を志向したが故に、その縛りもまたより強固だったと。
今、フィナーレに向けての展開がトリッキーで『面白』過ぎるのですが、それもネギくんの本命をはっきりさせないという縛りの中から生まれて来たような面があると思われます。(…とか言いつつ、最後の最後にはっきりさせたりして(汗))

『ネギま!』は「用意した女の子たちを如何に均等にドラマを与えるか?」に心血が注がれた作品だと思いますが、それ故、たとえば僕が千雨ではなく茶々丸が好きだとして!!(←あ)ネギくんと、茶々丸がもっと濃厚にドラマを紡ぐような、あるいはイチャイチャを紡ぐような~正にネギくんのお父さんとお母さんの物語のような!~展開を望んだとしても「それは無い」わけです。

しかし、僕の感覚で言うと少年誌でラブコメ成分を求めた人たちは“こっち側”に流れて来ていたと思うんですよね。ここらへん『ハーレムメーカー』の議論で「時が止まる」と言う言い方をするのですが、結果として結論を霧散させてしまっている所がある。
…と言った話をしようと思ってキーを叩きはじめたら、ラブコメというジャンルのけっこう望洋とした拡がりに気づいて、あわてて色々前フリをする事になったんですが(汗)…まあ、『ラブコメ』ってジャンルと言うより成分なんでしょうね。

それで、たとえば『ハヤテのごとく!』は結論はしっかり出す『物語』に思えますが、その途中~正にそこが摂取される本体と言えますが~では「時が止まって」いるわけです。『神のみぞ知るセカイ』は、最後どうなるかは分かりませんが、スタートはこれらの話を逆手にとる事によってはじまっています。
もう一つ。今、ジャンプSQに移って一部では“神”と崇められている矢吹健太朗先生の『ToLOVEるダークネス』ですが、あれはラブコメと言うかエロコメなんですが(笑)「時が止まる」様はあれがかなり分かりやすく思います。(ここらへんの路線は『ネギま!』の終了に合わせて、終焉期というか一部それが本当に好きな人を残す縮小期に入っている気がします)

楽しいラブコメ的なものは、萌え+ハーレム的なものに流れて行き、展開主体のものは、上述したような『君町』、『GE』のような……重い…というか、リアルな?もの?(←なぜ、口が重くなる?)が残り、どっちにもついていかなかった人は、他の、少女マンガとかに移ってしまったような…。
週刊少年誌ではそういう具合に、妙にイクラ丼(←)な、“普通のラブコメ”が、ポケットになっていたような気がしていて、そこにすぽっと『ニセコイ』がはまってきたなと、そういうイメージを持っています。

小野寺さんとか、親友のメガネの女の子とか、女の子の描きも可愛く(←何か千棘ちゃんはそんな好きではないみたいだね?)、線(ペンタッチ)も非常に気を使っていて良いのですが、基本的には普通のラブコメでもあります。
しかし、今、述べたように不足していたものを摂取させてもらっているというか、「肩を揉まれて、はじめて、ああ自分、肩凝っていたんだ~って気づいて、もっと揉んで欲しくなっている」と言うか(`・ω・´)まあ、なんか毎週楽しみですね。
最近、読切でジャンプに載った『恋染紅葉』(原作・坂本次郎、漫画・ミウラタダヒロ)と言う作品も評判良かったんじゃないかと思いますが、誌面の、なんかそういう『ラブコメ成分』が上がってくるかもしれませんね。

※ この記事書いたらGiGiさんに「『鏡の国の針栖川』がスルーされている」と指摘を受けましたorz …そうでした。しかし、あれですね、どうなんでしょうね?『針栖川』は、ちょっと設定が入り組んでいて、その状況を整理するのに時間が掛かって、ラブコメ成分も、エロコメ成分も受けづらかったような気がします。しかし、最近の流れの事例としては上げてもよかったと思います。

今週の一番『魔法先生ネギま!』~並列構造の臨界

2012年02月10日 | マンガ
【ハーレムメイカー】

【2月第1週:魔法先生ネギま! 351時間目 みんな、バイバイ!】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10545.html#726
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



…うむ。ワシはこれで満足じゃよ?(´・ω・`) 『魔法先生ネギま!』(作・赤松健)が、いよいよ、あと数回を持って終了という情報が流れて来ました。いやぁ…本当に凄い『物語』になったよなあ…と思います。『ネギま!』が描いた物語の話はまた、改めて記事に書いて行きたいと思いますが、今は、ちょっと前に記事にしていた(↓)ネギくんの本命発覚と、その顛末についての話をしたいです。

今週の一番『魔法先生ネギま!』~発覚?ネギの大本命!?
■今何処予想~本命:長谷川千雨

『少年マンガ放談』の中でも述べていますが、アスナ以外で、“物語の流れ”として「好き」という感情を抱く相手は、この娘しかいないんじゃないか?…とさえ思うキャラです。別に恋愛事なので、誰をどういう脈絡で好きになっても、脈絡なく好きになっても、不思議ではないんですが『魔法先生ネギま!』は物語なので、その“物語の流れ”(僕の感じるもの)としては…ですね。
原則『ネギま!』は、美味しい所、どきどきする所は、各ヒロインにシェアされる傾向があって、その中の有力ヒロインたちから“流れ”が全く見当たらない…なんて事はないんですけど、それでもネギくんが学園の外に飛び出した「魔法世界編」において、一番、ネギくんの“決断”と“成長”に手を貸し、見届けていたのは千雨だったと思います。

基本的にはネギくんの“本命”は「分からない」という然るべき落とし所に落として来たのですけど…まあ、ぶっちゃけ僕は「やはり、千雨だったか!(`・ω・´)」と思っています(笑)
この顛末で、最後にネギくんが微笑みかけたであろう“容疑者”はアスナの申告では5人。龍宮、葉加瀬、エヴァンジェリン、美空、千雨の誰か。まあ、葉加瀬、美空は、まあ論外で龍宮もないだろう。そうするとエヴァンジェリンか、千雨のどちらか…という事になりますが、やはり物語的にも、両想い法則的(※ここまでのヒーローが両想いじゃないのは有り得ないだろうという法則)にも(?)、千雨だろうなと。

…と!喜び勇んで書いていますが、無論、この描写をスルーする事もできる。まず、読者は、アスナの申告を無視できる。自分方向に向いていたのを照れ隠しで“外した”のかもしれない。ネギくんの視線は、アスナ、このか、あるいは刹那に行っていたのかもしれない。
そもそも、ネギくんが視線を向けた事に意味を見出さない選択が読者にはできる。「そっち見て笑ったかもしれないけど、本命に向けたって分けでもないでしょう。師匠(エヴァ)に視線をよこしただけかもしれないし」とか。そう、恋愛感情とは別に、ネギくんがあのシーンで視線を向けるかもしれない相手としてはアスナとエヴァンジェリンは妥当な線なんですよね。
要するに、絞り込みたい人は絞りこめばいいけど、スルーしたい人はスルーして、自分のお気に入りのキャラの可能性を考える余地を与えているって事です。赤松先生、さすがというか、ここらへんはソツがない。しかし、同時にこの“落とし所”の選択はなかなか興味深くもあります。

■『並列構造』の障壁

この件について僕自身は、ラジオなんかで「『ハーレムメイカー』として“序列構造”を突破する意味で、千雨に行って欲しい」という話をしていました。…何だか自分語の羅列で恐縮ですが翻訳すると「従来のラブコメ路線に沿えば「どうせ、本命はアスナだろう」という話になる所を『ネギま!』は違う道を見せて欲しい!」という話です。
僕はそれをヒロインの“序列の壁”と言った語りをしていて、けっこうそこかしこ語ったりしているのですが、ここで、手短に、改めて整理しておこうと思います。

ヒロインの序列構造って何かというと、ラブコメなんかのファーストシーンや、話の運びで「あ、この娘と最後くっつくな?」というのがすぐに分かって、その後に出てくるヒロイン(二位ヒロインと呼んでいますが)が、どんなに可愛くても、話を盛り上げても、その最初に決めた“序列”が覆らない。少なくとも非常に強力にその“呪縛”を受ける状態の事を言っています。



実はこれについては赤松先生の出世作である『AIが止まらない!』(1994年~1997年連載)で、非常に典型的な現象を確認できます。『AIとま』は、プログラムが得意な主人公が作ったAIプログラムの女の子“サーティ”がある日落雷により実体化して、本物の彼女になるという『物語』で……当然、サーティが序列一位のヒロインです。
そこに、プログラムであるサーティという彼女に対して「じゃあ、主人公に本物の人間の彼女ができたら?」という命題をひっさげて登場してくるのがシンディ(↑)です。(二位ヒロインというか…最終ヒロインという感じなんですが)新装版で作者が相当愛情たっぷりに語っている事からも分かるように、非常に作りこまれた、よくできたヒロインで……そうすると「まあ、こっちの娘の方が良くない?」って話になってくるんですよね。実際、それくらい肉迫する事を目指して設計されたキャラでもありますし。
しかし、結局は主人公はサーティを選び、シンディは失恋する事になります。この時の事について、新装版のオマケのインタビューで赤松先生が興味深い事を述べています。
~でも、シンディに勝たせたかったって気持ちもあるんですか?

赤松氏「新装版6巻のキャラクター紹介でも書いていますが、シンディは漫画家への愛情を一身に受けたキャラなんでね(笑)勝たせたい気持ちはありましたよ。ただ、勝たせることはできないんで(笑)それに一度、勝っちゃったところまで行ったんで。相当盛り上がりましたよ。たぶん、私的にこの巻が一番盛り上がった時期だったと思いますね」

(『AIが止まらない!』新装版6巻巻末より)

勝たせることはできないんで(笑)…と、さらりと言っていますが、これって実はあまり根拠がある話ではないんですよね。そりゃ、何の積み上げもない娘とくっつきました…なんてやると物語としての体裁が崩れるとは思いますが、この頃のラブコメって、読者に「どっちが選ばれるのだろう?」とはらはらさせる為に、対抗の女の子にも充分な“積み上げ”をするのは当然の手法となっていました。
にも、関わらず“それ”をする事はタブー視されていた。物語破壊と同義のような、作り手の敗北のような、そういう恐れにも近い縛りが存在していた。…迷信みたいなもの…と僕は言ってしまいますが(笑)それが「対抗の女の子がどんなに可愛くても、ドラマが積まれていても、そっちは選ばれない」という、序列の壁です。

この序列の壁は概ね、昔のラブコメになる程、強くはたらいていたはずです。逆に最近のものになればなる程、その働きは強固ではなくなっています。先程、迷信と言ったように、繰り返し繰り返し演じられるうちに、序列の壁~最初に決めたプロット通りの女の子を選ばなくてはならない~は、思ったほど絶対のものではないと分かって来た。ただし、物語破壊との兼ね合いは存在すると言えば存在するので、ある程度は序列の縛りも存在し続けています。

これに対応して伸長してきたのがヒロインの並列構造化です。いわゆるハーレムというやつで、このブログではこの構造の系譜をずっとウォッチして記事にしているはずです。これは恋愛アドベンチャーゲームが発生し、それによってある種ラブコメ読者の夢だった「別のヒロインを選ぶ」という選択肢が実装された事から発展してきた面も大きいです。
赤松先生の作品『ラブひな』もこのハーレム構造(及び並列化)が志向されていた代表的な作品であり、また恋愛ゲームの影響も少なくない作品だと思います。同時に、まだ序列の縛りが生きていて、基本、この物語はメインヒロインである成瀬川一択が守られた話になっています。とは言え、複数のヒロインにラブコメ的な展開を割り振り、それぞれにファンを付けていった意味は大きい。

そして本件の『魔法先生ネギま!』です。これは31人という前代未聞のヒロイン数の挑戦からはじまり、ラブコメ的展開の割り振りも前作『ラブひな』以上、序列の縛りもほとんど感じさせず(とっかかりの一位として置かれたアスナは、ヒロイックな方向に向かう事で、ヒロイン構造の序列からは解放される)物凄い事に、在るがままに物語は流れて行ったように思います。

そろそろまとめますが。『魔法先生ネギま!』の物語の積まれ方を観て行って、僕は『ラブひな』では果たされなかった序列の突破をここで見たい…という思いを持ってこの物語を眺めていた所があります。…それは果たされたのか?
果たされたと思います。ネギくんが誰を選んだという事ははっきりさせなかったんですが「アスナではない」という事が繰り返し強調された事によって、序列構造は突破されていると言っていいでしょう。アスナの目をハッキリ断つわけでもないのは、序列があるからではなく、アスナも並列の一部だからと言えます。

しかし、同時にこの顛末によって並列の壁の存在がハッキリ見えた気がします。…そうか。序列の壁を突破した先には並列の壁があったか…。
そう言えば多くの並列構造を志向したハーレム系の物語は、特に最近は「誰も選ばない~このままが幸せじゃん?」な結論に到るものが増えたような気がします。あるいは最終的には誰かを選ぶとしても今ではない。あるいは誰かを選んだとしても、他のヒロインが「もう、あたし結婚しない!」とか……まあ、これは並列と言うよりハーレムの縛りと言うか別の議論か(汗)
「ネギくんに本命がいる」という宣言にも関わらず、それが誰か明かされないという落とし所が取られる事によって“壁”の存在がくっきり観えた気がします。…その選ばれたヒロインは、序列の縛りは突破したのだけど、並列の縛りには取り込まれた……って事なんですよね。そして『ネギま!』は究極的な並列を志向したが故に、その縛りもまたより強固だったと。
今、フィナーレに向けての展開がトリッキーで『面白』過ぎるのですが、それもネギくんの本命をはっきりさせないという縛りの中から生まれて来たような面があると思われます。(…とか言いつつ、最後の最後にはっきりさせたりして(汗))

じゃあ、その先はどうなるか?…って。どうも最近の時流を眺めていると、ハーレム的なものは、けっこう行き着くところまで行っちゃってて、純ラブコメに志向が回帰している気がします(汗)
あるいは男女1対多ではなく、もっと比率を同数にして構造を組むような…まあ、それって普通のドラマって事なんですけど(汗)まあ、そちらの話もぼちぼちして行きたいですが……ラブコメ~ハーレム系への流れは、大きく一段落つけて眺められる時期が来ているようです。
そこらへんも、ぼちぼちと語って行きたいですが、『ネギま!』の終了と、ハーレム系ラブコメの(一旦の)終息の時期が重なるかもしれないと言うのは、なかなか感慨深いものがあるかもしれません。


DVD付き初回限定版 魔法先生ネギま!(37) (講談社キャラクターズA)
赤松 健
講談社

今週の一番『ハンザスカイ』~ぐだぐだの勝ちを拾う尊さ

2012年02月04日 | マンガ
【1月第4週:ハンザスカイ 第99話・牙 届かねど】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10544.html#725
【漫研】
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野田「ちょ…バカ、おいっ!!?逃げんなよ!!時間ねぇんだ、勝たなきゃいけねぇんだ。せめて機会くらい、くれぇ――っ!!」

『ハンザスカイ』(作・佐渡川準)の御門vs要陵の野田の次鋒戦が良かったです。これまでの『ハンザスカイ』の一戦の中で一番良かった…か、どうかは分かりませんが(汗)思わず、そう口走ってしまうくらい感動しましたね。
『ハンザスカイ』は、元不良で、かつてはケンカに明け暮れていた半座龍之介くんが、高校入学で出会った女の子・藤木穂波にぶっ飛ばされた事が切っ掛けで空手部に入り、周囲に認められ、支えられながら空手道に邁進する『物語』。今、インターハイの地区大会をやっている所ですかね。

現在、地区大会の決勝で御門高校はそこまで勝ち上がってきたワケですが、この次鋒の野田くんが、それまで一勝もできていなかったんですよね。そして、この決勝、先鋒の半座が個人戦全国制覇の吹越に対して大善戦を見せるも敗退し、野田の次の中堅は、それまで勝ち星を上げてきた番場が負傷して補欠と交代している。ここで、自分で、どうしても一勝が欲しいという局面。
…まあ、『物語』的にも、ここで野田が勝たない目は考えづらい。これまで「負け続け」という話を積んで来た野田が負けて、補欠で入った南が勝ちました…とかなったら、どんだけ厳しい現実のマンガなんだ?って話になると言うか…(汗)だから、“マンガ読みの擦れた目”で『読む』と「まあ、野田が勝つんだろうねえ…」と、すでに予想してしまっている。

…でも、「勝たなきゃと思って戦ったら勝ちました」って、世の中そんなに簡単なの?という思いもあるワケですよ。主人公の半座が、王者・吹越に対して“ウソ臭い程の善戦”を見せた直後だけに、野田はそのハードルがかなり高くなっている所もありました。
必死になったら勝ったって…じゃあ、それまで野田は、必死じゃなかったの?と。…本当の本当の必死ではなかったのかもしれない。でも、相手は必死じゃないの?
あるいは、野田に策があったり工夫があったり……要するに必死という気持ち以外の勝因、なんらかの芸があったとして、それは最初からやるべきものじゃないの?つまり、この時点で野田は「ただ必死」になる以外の芸を持ちあわせてはいないんじゃないの?と思ったりするワケです。

そして案の定、この時、野田は何もなしに「ただ、必死に突っ込む」という戦法だけで突っ込んで行きます。それはこれまで次鋒戦で負け続けて来た戦法です。少なくとも「マンガ的に分かりやすい勝因」なんて、どこにも生まれようがない。…でも、この時、野田は勝ちを拾う。その描きが良かったと思っています。

王者・吹越の“虚竜”や、御門の大将・青柳の“バベル”なんて、勝ちパターンのあるフォーム…必殺技なんて野田は持っていない。ほとんどの人間はみんなそうで野田もその一人。だから本当の本当に必死になるしか“やる事がない”。
相手もそれは同じで、だから、ばたばたと一進一退の、なんだか分かりづらい攻防が続く。現在、どういう状況かもよく分からないなかで、どうも相手の方が少しポイントリードしているらしい。時間終盤で、相手がポイントリードからの逃げに回る…。

野田「ちょ…バカ、おいっ!!?逃げんなよ!!時間ねぇんだ、勝たなきゃいけねぇんだ。せめて機会くらい、くれぇ――っ!!」

……ちょっと、話を広げますが、スポーツマンガって多くは「努力の尊さ」をテーマとして掲げるものが多いと思いますが『物語』や演出の仕組みで「じゃあ、相手は努力してなかったの?」みたいは方向の補填が、けっこう難しい所があります。
相手も同じように努力し、同じように必死であれば「じゃあ、やっぱり勝負を決めるのは才能なんじゃん?」…みたいな話が、既にかなり多くの『観客』に露見してしまっている面があります。かと言って「“ご褒美”がなかろうとやる」…というような語りで満足を得られる層も、そう多くはないように思います。

けれども、「やっぱり才能じゃん」って勝ちは、ドラマチックでカタルシスのある勝利を描くために顕れてしまうものでもあるんですよね。野田の勝利は、それとは逆に、バタバタとした勝ちなのかどうなのか分からないような勝利で。本人の野田自身も全然実感がないもので。
チームに戻って、皆に祝福されて初めて勝った事を確認する。たとえば天才・吹越は誰の祝福を得なくても、自分で「勝ち」を確信できる戦果を上げてきたわけで、それとは対照的な「誰かに褒めてもらわないと分からない勝利」と言えます。

だが、それがいい。「結局は才能じゃん」じゃない“勝ち”がそこにあると思う。野田みたいな才能が無い奴(才能が無い、足りないと言ってしまいますが)は、こうやって手足をバタバタさせて、相手の必死にも付き合わされて、ぐだぐだになって、時間切れで、今回は自分の勝ちだった“らしい”ことが告げられる。そこに才能を感じる余地はない(笑)
万人にすぱっと分かるカタルシスが無い描きだけに、あまりやるとマニアックな『受け手』だけに伝わる話になってしまう恐れもありますが…。とまれ、この野田の勝利の一戦は、負け続けたという『積上げ』含めて、そのカッコ悪さが最高にカッコいいという一戦でした。

そしてこの後の二戦、財前と青柳はいよいよ負けられなくなっているのですが、副将の財前は、つき合い・因縁浅からぬ能登との対決が待っているんですよね。僕はこの能登くんがけっこう好きで、僕の贔屓補正がかかっているとは言え、財前くんでは能登くんに勝てるイメージが持てません。正に、才能が上の者vs才能が下の者(贔屓補正あり)の対決になりそうで、非常に楽しみです。

今週の一番『ハンザスカイ』能登良雅くんが良いです。

今週の一番『べるぜバブ』~すぐニヤニヤする自分の単純さが笑える

2012年01月28日 | マンガ
【1月第3週:家庭教師ヒットマンリボーン 標的368 第二射】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10543.html#724
【漫研】
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『べるぜバブ』(作・田村隆平)のベヘモット師団編というか…悪魔野学園編?…が一段落ついて、今、後日談みたいなフェーズにあると思うのですが、ジャバウォックに連れ去られて、サラマンダーによって記憶を消されてしまったヒルダさんの記憶がまだ戻らない状態で……それにかこつけてか、何か、“イチャイチャ編”が展開していますね(笑)

『べるぜバブ』は、怠惰な魔王の思いつきで、人間界を滅ぼす使命を受けた魔王の赤ん坊“ベル坊”が魔力の触媒となる男・男鹿辰巳に取り憑く。人間界の番長バトルと魔界のバトルが地続きに交錯する『物語』。今はベル坊の兄弟で魔王候補の“焔王ぼっちゃま”の親衛隊“ベヘモット34柱師団”が、男鹿たちにちょっかい出してきていた所でした。
…で、まあ、団長に就任していた現時点最強の敵・ジャバウォックをぶっとばして、連れ去られたヒルダを救い出した所まではいいんですが、そのヒルダは焔王に仕える侍女悪魔となるために記憶を吹き飛ばされていて、それがまだ回復していない。そこで以前から勘違いしていた男鹿の家族は、その勘違いのままに「あなたは辰巳の嫁よ!」と伝えてしまう。他に寄る辺も無いヒルダはそれを受け入れて、ぎこちないながら“男鹿の嫁”として振舞おうとする…みたいな展開なんですけどね。

いやぁ……『楽しい』なあ(*^ω^*) 自分の単純さに笑えてしまうのですが、読み返す度にニヤニヤが止まらない。ツンデレ…というか、ヒルダは元の状態でツンデレの気があって~正確にはクーデレなのかな?ちょっとよく分からない~キツめの言動の隙間々々で、チラリとデレ(らしきもの)を見せるという事はやっていたので、これは意外性の“ギャップ萌え”というやつでしょうか。
右も左も分からない状態での振舞いなので、これがヒルダさんの本性なんでしょうと言うか、ともかく取り繕っていないヒルダであると考えると、いろいろ楽しいです(笑)また、男鹿とベル坊、ヒルダの三人の以前からの関係として、記憶が無いながらも、受け入れやすい何かが有って、それが残っていたのかな?とか考えたり。
…まあ、サラマンダーの儀式完了後の少しの間、記憶が残っていたりしましたし、直に回復するんでしょうけどね。いっそ、このままってのも面白そうなんですが、それはちょっと厳しいでしょうね。

あと、ベヘモット師団編では、待ち受ける敵本拠地を、それぞれのポイントに幹部が待ち受けて団体戦などをこなす、いわゆる『死亡遊戯』の“五重塔化”が完成されないまま、準備の足りないまま、男鹿がベル坊と二人で奇襲をかけて(あとから仲間たちが追っかけてきて)そのまま突破してしまうという展開をしていて、そこは興味深かったです。
敵将にどうも五重塔化の計画を担当していた奴がいて「こうなるはずだったのになあ~」みたいな雰囲気が出てたりするんですよね(笑)まあ、『べるぜバブ』って、以前の展開とかでも、ふいにすっと端折ったりする所はあったんですどね。
そのため、決着がつくはずだったモノが、未決着で終わったりしています。邦枝さんをライバル視していたアギエルって悪魔娘がいて、この人(?)裏切ったんですが、この後、どうなってるのかなあ?とか。いや、すぐ描写されるんでしょうけどね。ヒルダさんの記憶喪失が後日談的に引っ張られているのも、この(未決着の)余波と言っていいでしょう。

敵の準備などお構いなしに…「一週間後だ、一週間待ってやる」と言ったお決まりのセリフからはじまった特訓フェーズを「一週間前に切り上げて」(結果として)敵の戦闘態勢が整えられる前に敵地に乗り込んでゆく。結果、混戦模様が深まり、他の仲間たち、敵幹部たちとの戦いをシーケンスに処理する事なく、速攻で男鹿がボスキャラに辿り着いて速攻で倒してしまった。アギエルの事や、ヒルダの記憶喪失が残ってしまっているのは、その顕れ。
…というのは少年マンガの展開として興味深く、僕としては『面白く』もあるのですが、同時に、分かりやすいステータス~五重の塔の今三階目と言った進行状況把握~、分かりやすいカタルシスを失している面もあったかもしれません。ここらへんは上手く両立できるといいんですけどね。
まあ、何か思いつきか、事情があって舵切り直したのかもしれませんけどね。舵の切り方自体、展開の方向性自体は、僕は嫌いではないですね。また、このヒルダさんの記憶喪失と、あるいは回復の話が、今後の物語にどう影響するかでベヘモット師団編というエピソードの意味づけも変わってくると思います。


べるぜバブ 14 (ジャンプコミックス)
田村 隆平
集英社

今週の一番『はじめの一歩』(また)その画力にまんまとねじ伏せられてしまう快感

2012年01月23日 | マンガ
【1月第2週:聖闘士星矢 冥王神話 NEXT DIMENSION Part40 歩み】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10542.html#723
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



説明不要のボクシングマンガ『はじめの一歩』(作・森川ジョージ)の板垣対冴木のスピード対決に思わず観入ってしまったり。一歩の後輩にして、一歩とは対照的な“天才児”である板垣くんの活躍は、以前から加速を続けていて、最早、一歩の宿命のライバルである宮田くんを凌ぐ、「第二の主人公」と言っていい程の『格』をまとっていると思ったりもします。

…まあ、それは宮田くんが再び本格始動しはじめると、どうなるか分からないんですけどね。しかし、『はじめの一歩』の中で“主人公っぽい”戦いを見せるキャラは他に鷹村さんと宮田くんがいるワケですが、いずれも一歩の為にいる『従格』のキャラという面は大きく感じます。鷹村さんは一歩の“兄貴”として“先を行く者”として君臨し続けるのがその意味でしょうし、宮田くんも一歩の宿敵として置かれ、彼の背負うドラマは一歩の物語の昇華のためにあるのでしょう。

言ってしまえば鷹村さんにもし何かの出来事が起きる時、あるいは宮田くんが何かしら動く時、というのは『はじめの一歩』という“物語自体が動く時”であり、それ故、彼らは大きく動く事が“抑制”されている状態にある。
その中で板垣くんは、彼らほどの“縛り”を受けないキャラと言える。彼がどう物語を組もうが、一歩と対決しようが、大局的に「一歩の物語」としては、大きくはない山であり、その分フリーに動ける。
かつ、一歩と好対照のそのキャラクターの『面白さ』が相俟って、それこそ、一歩が鷹村という“兄貴”を見上げる事よりも、もっともっと劇的に一歩という“兄貴”を見上げる物語を構築してしまっているのですよね。その主体性とフリーさを含め、もう、かなり、相当、主人公をしている…と思うんです。


そんな中での、この板垣対冴木のスピード対決ボクシングなんですが、森川先生の画は相変わらずもの凄いですね(汗)(↓)以前も同じような意図で、一歩対ウォーリーの記事を書いたりしているのですが…

今週の一番追記「はじめの一歩」その画力にまんまとねじ伏せられてしまう快感
本当にこんな戦い方ができるボクサーなんか居るわけがないのに、やったとしても青木みたいなちょっとビックリさせてペースを崩させるくらいの事にしかならないだろうに。このトリッキーな動きで一打一打にとんでもない破壊力を込められる…そんな奴がいるかも!?と思わず信じさせてしまう。動線、斜線、残像、擬音といったマンガでは当たり前の技術の積み重ねだけで、そう思わせてしまう。マンガの醍醐味がここにあると思います。

…今回は、ある面ではこれ以上というか「超人」が二人いるわけで、一つの局面の頂上決戦を、本当に楽しく『面白く』描いてしまっている。一枚画で魅せる力も然ることながら、二人の暴風に巻き込まれて身動きが取れないレフェリーを間に挟む妙、頂上決戦における「空間の制圧」の説明など多角的な演出で、この一戦を盛り上げています。



それと今回、僕はこの対決に『サイボーグ009』の“加速装置戦”を視たりしていました。森川先生がイメージしているかどうかっていうのは分からないですが、二人だけのゾーンに突入して、周りを置いてけぼりにしている感覚が近かったり。描写的にも被る所があったりもしますしね。
それにゾーンに入っている板垣くん、ちょっと009っぽかった(笑)髪栗色だし。…いや、まあ、どうでもいいんですが(笑)



しかし、板垣くんを「第二の主人公」とか、持ち上げたりしましたが、まあ彼はどうなるんでしょうね?(汗)普通に考えると、やっぱり一歩の物語に収斂されて行きそうではあるんですよね。しかし、主人公とかじゃなく、単にライバルキャラとしても彼のキャラの『積上げ』は宮田くんと比肩し得る所まで来ていると思います。
もし、これが互いに絡み、一気呵成に決着をつけ始める事があるなら、それはものすごいカタルシスが生まれると思うんですけどね。………それはどうなるんでしょうね(笑)やっぱり小さく切り崩して行くのでしょうかねえ?(´・ω・`)ショボーン …まあ、気を長~~っくして、ゆっくりゆっくりしながら、見守って行こうと思います。


はじめの一歩(98) (講談社コミックス)
森川 ジョージ
講談社

今週の一番『GANKON』が楽しい~最近、サンデーは良い誌面

2012年01月19日 | マンガ
【1月第1週:トリコ グルメ170 メテオガーリック実食!!】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10542.html#722
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『GANKON』(作・菅原健二)が楽しいです。『GANKON』は、小さな神社の神様・イサナが勘違いから「お前を(嫁に)欲しい」という願いを聞き届けて“美少女”として女の子好き彼女欲しい少年の多賀守新太の元に嫁いで来て、神様の領地争いの戦いに巻き込んで行く『物語』…なんですが。スタート時はバトル主体でキャラクターと世界観を整えて行って、今回、ようやくと言うか遂に、ライバル・ヒロインにあたる三峰椿さんが置かれて、少年サンデーらしい(?)ラブコメ+バトルなマンガの体制が揃ったなという感じです。

三峰さんは第1話から登場している再登場が約束されたヒロインだったんですけどね。…まあ、新太くんにピンチを救われて、何となく好きになってしまって、でも新太くんとイサナさんは既に“夫婦”なので、諦めようとしていたんですけど、イサナさんの“本体”を知って「これは新太が幻惑されて囚われている!」と勘違いして、新太を助けるために立ち上がっている……あれ?何か話す順番間違えましたね(汗)
イサナさんは普段・美少女の姿をしているのですが、本来は巨神というかデカブツでマスクをしている神様の姿(『未来日記』のゼウスみたいな感じ)で、さらに本性は別のものらしい(八百万の神で、多分、人型じゃなさそう)のですが、三峰さんは、この巨神のモードの時のイサナさんを見て、これは何か怪しいというか裏がある!と睨んだみたいです。

今のところ三峰さんは、バトルに対するスキルを何も持っていないのでバトル・フェーズには入ってこれないように思えますが……んん?新太をイサナさんから引き離そうとしている犬姿(?)の神様・マガミと何か契約するかな?…それはともかくとして、現状でも、新太を奪う(助ける)気満々で動いているので、それなりに『強い』位置は占めてくれそうです。何より可愛いし。(`・ω・´)
また、イサナさんも、三峰さんも、基本“勘違い“から、新太くんに接近しているんですよね。そこは、それなりに意味がありそうな気がしています。

非常に瑞々しい作品だと思います。結婚もので初々しいと言ってもいいけど。…ぶっちゃけ、主人公はほぼ下心丸出しで頑張っているだけなのですが、丸出しだろうと何だろうと「その子のために頑張っている」のは間違いない。その気持ちが、ヒロインの心を少しずつ動かして行くのが楽しい。頑張る根性みせる~継続的な努力と言うより、その場の瞬発力のような大見得の~嬉しさが顕れているなあと思います。
…まあ、ここまで読んで分かると思いますが、特に設定やキャラクター等に奇抜なものがあるワケではない、他愛のないラブコメ+バトルものですよ?(´・ω・`)でも、良いです。僕が、こういうのず~っと飽きない人間という事もありますが。元気をくれる。最近、サンデーは、新連載攻勢をかけていて、こういう瑞々しい、若々しい感じの誌面になってきていますね。

今週の一番『バチバチ』~苛烈なる兄弟対決!!

2012年01月14日 | マンガ
【12月第4週:バチバチ 第126話/決着!】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10541.html#721
【漫研】
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『バチバチ』(作・佐藤タカヒロ)の同部屋対決、主人公の鮫島vs白水が素晴らしく熱かったです!これで、後に控えた阿形vs吽形の前哨戦だと言うんだから「胸が熱くなるな」とはこの事か!という感じです。『バチバチ』は、かつて関取だった大関・火竜の息子として悪名をひっさげながら角界に身を投じる物語。父の火竜は無類の強さを誇り綱取り目前だったが、ある日暴力事件の汚名を着せられて角界を追われ、そして自動車事故によって死んでしまっています。

今、足の故障によって、おそらく今場所で二度と相撲を取る事ができなくなる鮫島の兄弟子の吽形が、最後の意地の取組として阿形との決勝戦を望み、吽形の足の事を知っている同期弟子の阿形は、彼の死水を取らんとばかりに悔いのない止めを刺してやろうと鬼の形相を崩さない。
そうして鮫島の兄弟子にして、吽形たちの弟弟子にあたる白水さんは、吽形が去った後、空流部屋を支える力士となれるよう、弟の鮫島の大きな壁となれるように自らを覚醒させて行きます。…今はこの白水さんがすげえです。ものすげぇえです!(`・ω・´)

元々は空流部屋のギャグ要員みたいなハゲた三頭身半なセンパイだったんですけど(…と言いつつ、入門したての頃の鮫島のぶちかましに持ちこたえていた)…それが、いつの間にそんなガタイのいい力士に!?ってくらい様子が変わってしまいまして…。
この感動…どう伝えればいいのか…「『はじめの一歩』で、青木が覚醒してフェザー級になって、一歩の歯が立たない存在になったら」ちょっと驚きますよね?まさに、そんな感じなんです!!(`・ω・´)白水さん!ちょっと覚醒しすぎ!!…ギャグっぽく書いていますが、ウソみたいな格の上がり方に圧倒されてしまいます。しかし、それで“本番本命”は、この後の、阿形vs吽形の取組なんですから…!

今週の一番付記「バチバチ」気合いを込めてぶつかるだけの熱さ

今週の一番『バチバチ』~遠い、遠い、遠い物語の瞬間の火花

(↑)以前、『バチバチ』について書いた記事ですが、この“火花が散る”ような瞬発の勝負の良さに足して、同部屋という…“家族”の…兄弟(弟子)の…相克のドラマが付加されて、一層の…これ兄弟の相克って言うんですかね?いや、もう愛憎(?)というか潰し合いというか…兄弟の相克というには、あまりに苛烈で凄惨と言ってもいいドラマが展開されています。

しかし、それを以てなお、吽形さんは相撲取りを辞めるでしょうし、白水さんもまた……阿形や鮫島ほどは“遠く”へは行けないと、僕は『観て』います。阿形さんは、かなりの所まで行きそうですが…大関、横綱までは…どうなんでしょうね?そのドラマの予感を持ってして、今、この幕下の取組のこの熱さというのはもう……凄いなと。“胸熱”のマンガです。


バチバチ 12 (少年チャンピオン・コミックス)
佐藤 タカヒロ
秋田書店

今週の一番『最上の明医』~世界を救う難しさ

2012年01月07日 | マンガ
【12月第3週:めだかボックス 第126箱「人の心に大切なのは」】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10540.html#720
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『最上の明医~ザ・キング・オブ・ニート~』(取材原作・入江謙三、漫画・橋口たかし)のアフリカ編がそろそろ終わろうとしているようですが…やはり、と言うべきか、この無秩序の世界を如何とも為さず、如何とも為せず、ただただ去って行く事になりそうです。いや、もしかしたら少年マンガ的に、何かの希望のかけらのような描きを入れるかもしれませんが、そこが限界で、主人公たちがこの問題の解決を本当に目指そうとしたら、ストーリー自体を大きく変更させる必要があります。…しかし、それはせずに日本に帰る事になりそうに見えますね。
『最上の明医』は、医療マンガ『最上の命医』の続編で主人公は、前作の真摯な青年医師だった西條先生に変わって、最上義明といういい加減で自己中心的な性格(しかし、意外に仲間思い)な高校生になり、半ば引きこもりのニートと化していた生活から、幼馴染の伊達を救命措置で救った事がきっかけで医師を目指すようになる『物語』。今は、義明も伊達も医大生をやっていて、彼らを見込んだ医師たちの思惑もあってケニア・ナイロビの留学メンバーとなっています。そのアフリカ編の“重さ”は以前の記事で書きました。(↓)

今週の一番『最上の明医』~ザ・キング・オブ・ニートとか言っている場合じゃないアフリカ編
このアフリカ編、アフリカに入る前から「あちらでは医師はあらゆる不正に手を染め職務も怠慢…道具や設備も手入れ不足で、壊れているのが当たり前」とか「アフリカで生き残る秘訣」の話とかをしているし、アフリカについたらついたで「アフリカでは処女と交配すればHIV(エイズ)が治るという迷信があり、二歳児でもレイプされる」とか「スラム内では人口の三割以上がエイズだとも言われる」とかキツい話を繰り返す。
その上で、後はただただ、医療設備に劣悪さを描いて行く。白衣は汚れたものしかなく、日本から持ってきた私服の方がましだとか、手術室の窓にガラスが入っていないから手術中に羽虫が大量に入ってきたりとか、それでも、彼らは機転を利かせて子供の患者を救うんですけどね。その子たちが退院したら、部族間抗争に巻き込まれて死んじゃった…とかね。

もう、医者がどうにかできる状況を超えている話なんですよね。完全にアフリカの社会問題で。

この週の話も、塀の外の目の前で男女が犯罪者たちから暴行を受けて、おそらく殺されるであろう状況で、誰もが見てみぬフリをする。塀の守衛は保安上、積極的にそうしている、という状況で、主人公の義明が、我慢ならずに塀の外に飛び出して行きましたが、それは……そんな安易に飛び出してしまう(日本に居る感覚の)寓話を描いていいのかどうか?と迷ってしまう程、圧倒的な状況の悪さがあります。

『最上の明医』という、いい意味での“いい加減さ”がウリだった物語が、なんでこんな問題に手を出したのか?という謎はありますが……というか、何かの“勢い”の話だったんでしょうけど(汗)
しかし、医局という閉鎖された空間内で、自分の思いを何の方法であれ軽く通していた、なかなか上手くいかない時もあれ何らかのオチ(落着)を見せていたこの物語の、そういうヒーロー属性の主人公・義明が、この問題に対面する~そして、おそらく大した事はできずに去る~のは『面白い』事かもしれない思っています。

それは奇しくも、「世界を救う難しさ」が描かれているって事です。多くの物語は、特に子供向けの少年マンガは「コイツを倒せば万事解決」というか、そういう状況を悪くした象徴的存在があって、それを「何とかすれば」あとは「めでたし、めでたし」に落ち着くと、そういう明快なる“形”を求められて、それが描かれるワケです。そこに、どんな破壊があっても、どんなに人が死んでも「善と悪」、「光と闇」などで語れるなら、それは秩序だった世界であり、改善できる世界だと言えます。本物の“混沌”に比べたら。
「独裁者がいたとして彼のために千人の人々が殺されている。しかし、独裁者が倒されいなくなれば、この世界は万人の人々が死ぬ事になる。じゃあ、独裁者を倒すのか?」…という例示はまだ“単純”な方で、略奪と自衛が限りなく同義のもので、律して生きる事、真面目に生きる事に“報いる社会”が構築されていないから、人は無秩序に溶ける。教育も無意味。その教育を学ぶによって得られる“社会”が虚ろだから。迷信を学ぶ方が、まだ一律の“社会”を享受できる。だか、迷信を退けようという“宗派”も外から現れて侵略をしてくる。
マクロが壊れた世界でマクロを整えると言うのは、はっきり言ってキレイ事じゃない。「ミクロで人が死なない(死にづらい)状態を作るためにマクロで人を殺す」と言ってもいい。

…まあ、アフリカ(一部のアフリカ)が、それ程、どうしようもなく無秩序な状態なのか?というのは、僕は観ても経験してもいない事なので分からないです。ネットなどで情報を集めると、相当、酷い状況であると“想像”されるだけの事なので、そこは気をつけて欲しいですが…。

さて、それを僕がどうこうしようって話ではないんですが…(←)今、マンガや、アニメの“英雄譚”的な物語の中で、そういう「世界を救う事の難しさ」にたどり着いている物語が散見されていて…それが主流になるかどうかは別として、一定の話題と力を持って来ている状態だと思うんですよね。このブログでも、いくつか記事を取り扱っています。
『最上の明医』がその途上にある作品かどうかは分からない…というかそうではないと考えていますけど、偶発的にせよ、この問題に遭遇し、その作風から取材が為される過程でかなり事細かな問題の描きに至っているのは、一つの成果であり、他の(世界を救う?)物語への参照として良いものかな?という事で取り上げました。

「そんなのは大人になれば分かる事だ」…って思う人もいるかもしれませんが、どうなんでしょうねえ。“抵抗勢力”とか“政権交代”とか、…その他、諸々の対立問題を観ても~今、僕はどこの意見に与する話もしませんが~この社会は大人になっても相変わらず「英雄譚的単純さ」で世界を分けるのが好きなように観える気がしないでもない(汗)
そのある種のテキストである子供向けの英雄譚、あるいは元型(アーキタイプ)としての英雄譚が、それを語り出し解法を見出そうと行動するのは、相応の意味があるのかなと…。いや、別に意味がなくてもいいんですが。『面白い』なと。(ん~、もうちょっと書き足したい事があったのですが、ここまで。また機会があれば…)