salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・「物語」を持つこと

2008-02-10 01:42:18 | 本・雑誌
読みかけで、なかなか進めなかった本を
やっと読み終えた。

『犬のしっぽを撫でながら』(小川洋子・著 集英社)

前回に続いて、小川洋子さんの本です。
今回は、エッセイ。

映画にもなった『博士の愛した数式』を書くにあたり
小川さん自身が、どんなふうに「数字」に魅せられていったか、
(小川さんて、てっきり理系の方だと思っていたら
バリバリ文系だったんですねー)
小説を書くことに対する思いや、アンネ・フランクをめぐる旅、
子どもの頃の家族や友達の記憶、
愛する阪神タイガースへの思いなどを、たっぷり読める。

対象への「熱い思い」が、決して暑苦しくない。
感情的にならず穏やかだけど、強い愛情を感じる。

この人は、常に「物語」を感じて生きているのだなあと思う。
自分の中にある物語、そして、日々の其処此処にある物語を。
それを感じることは、すごく心豊かなこと。
特別な出来事がだけが「物語」になるのではなく
人やもの、すべてに物語は存在すると、改めて思う。

喜びや痛みややるせなさ、そういったものたちを
心に連れてくるものすべてが、
ひとつひとつは小さくても、物語になり得る。
それらに向き合うことで、小川さんの小説が生まれるんだな、とも思う。

向き合うことは苦しいときもあるけれど
心を研ぎ澄まし、日々を丁寧に見つめることで
いろんな物語をたくさん感じて
自分自身もまた、物語を紡いでいけるんだなあ、と思うと
ありふれた毎日も、ままならないあれやこれやも、
とても大切に思えてくる、そんな本です。