salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・人生はあなたが思うほど…

2008-10-06 00:52:07 | 本・雑誌
自分があれこれ書いている時期に入ると
本を読む時間がとれなくて
手帳にメモする
「読みたい本リスト」ばかりが増えていく。

やっと一冊読みました。
全然、新刊ではないですけど。

『ブラフマンの埋葬』(小川洋子・著 講談社)

小川さんの作品には、いつも音楽が鳴っている。
実際に音楽の話が出てくるとかではなく
読んでいると後ろで旋律が聴こえてくる。
これもそんな小説。
バイオリンの音が、風に乗って届いてくる感じ。
それを弾く子どもの姿が浮かぶ。

この話は、生と死、来るものと去ってゆくもの
それを静かに見つめ、彼自身は留まり続ける
「僕」の、ひと夏の物語。

今、腕の中にあるものの温もりを確かめつつ
今はなき人、ものたちの息づかいをも感じる「僕」。
失われることを恐れるわけでもないその姿は
諦観を抱きしめているように見える。

現実の世知辛さゆえ、小説に「救い」を求めるとしたら
この話の静かな喪失は、救いがないかもしれない。
けれど、あるがままを淡々と受け入れる「僕」の姿
そして、最後まで正体が謎の動物「ブラフマン」を通し
「そう悪くないのかも」と思ったり。

で、ストーリーや話の“カラー”と
まったく関係ないけれど
最近CMで流れている『元気を出して』の
「人生はあなたが思うほど悪くない」という
フレーズが、駆け巡ってしまったわけです。