玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

日本SFの50年

2007年10月22日 | テレビ鑑賞記
最近「SF」という言葉を聴くと旧友にめぐり合ったような懐かしい気持になる。

21世紀を夢見た日々~日本SFの50年~
世界中の若者を魅了するアニメやマンガ、ゲームなどのジャパニーズ・サブカルチャー。その源流をたどって行くと、戦後独自の発展を遂げた日本のSF文学に突き当たる。この夏、横浜で開かれた大規模なSFの国際大会でも、日本のSFにあらためて注目が集った。

日本にSFのファンクラブが生まれて50年。伝説的なSF作家たちのグループ、「SF作家クラブ」が結成されて45年。星新一、小松左京、筒井康隆、手塚治虫など、SF作家クラブのメンバーは、文学の枠にとどまらず多方面で縦横の活躍を果たし、黄金の60年代と呼ばれるようになる。鉄腕アトムやウルトラシリーズなどがそこから生まれていった。彼らが育んだSFの「遺伝子」は、70年代半ばから音楽、映画、小説、アニメへと、さまざまなジャンルに広がり、世紀末を挟んで「オタク文化」の豊穣な世界を作り上げて行った。

高度成長期の日本に生まれ、半世紀を経て世界に認められるようになった、日本SF。その50年にわたる歴史をたどりながら、育まれた遺伝子がどのように発展し現代日本文化を生み出したのかを浮き彫りにする。


私が意識してSFを読み始めたころ(嗚呼なつかしき昭和)、書店には星新一・小松左京・筒井康隆(いわゆる御三家)の作品がたくさん並んでいた。特に各社(早川・新潮・角川・中公)の文庫本が充実していて若年ファンにはありがたかった。
ところが最近は御三家を含めた日本SF、いや海外を含めたSF小説全般の棚がずっと狭くなっていて悲しい。なんだか80年代中ごろのレコード店を思い出す。CDが普及するにつれてアナログレコードの棚が狭くなっていきやがてほとんど消滅した。プロパーSF小説のあとを「継ぐのは誰か?」といえば涼宮ハルヒシリーズのようなライトノベルなのかもしれない。

そんな淋しい話はこれくらいにして、NHKが一時間半にまとめた「日本SF50年史」は懐かしかった。
私の実体験は「浸透と拡散」(70年代半ば)以後のことだが、それ以前のSF史は筒井康隆のエッセイなどで読んでいる。「宇宙塵」から「大阪万博・TOKON5」までの十数年は日本SF創世記であり神話時代の英雄譚といっていい。当時のSF作家は文壇から「子供だましのおとぎ話」と差別され一般社会から「頭のおかしな人たち」と偏見の目で見られがちだったが、それだけにかえって高い意欲と使命感を抱き団結していた。
当時のSF作家たちの親密な交流(いわゆる蜜月時代)、初期のアニメや特撮への協力、月着陸の特別番組、「未来学」、そしてクライマックスとしての大阪万博とTOKON5。どれもSF者の基礎知識だが、写真や動画を見せられ当事者の話を聞くとずっとリアリティがある。自分が生まれる前の話なのに懐かしく興奮する。SFファンの旧友(みんなどうしているだろう?)と山珍居に行ってみたい。エンチャン、ラオーバ、ヒーワン食べたい。

なんだかすっかり回顧モードになってしまったが、日本SFの豊かな資産をもとにした「世界中の若者を魅了するアニメやマンガ、ゲームなどのジャパニーズ・サブカルチャー」は私ごときが何も言わなくても果てしなく発達していくことだろう。まさに日本SFは世界に浸透し拡散しつつある。日本SFとその「子供たち」の未来に幸あれ。


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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-10-31 09:26:58
筒井はともかく、星新一がそんなことを言っていたなんて・・・。

ちょっとショックですね・・・。

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コメント有難うございます (玄倉川)
2007-10-31 02:02:23
>nomadさん
総合テレビじゃなくて「ETV特集」ですからね。ニッチ狙いなのは間違いありません。
回顧的で建設的じゃないといわれるのも当然ですが、温故知新というか古い豊かな文化を知ることで新しいものを生むエネルギーが生まれることもあります。
年季の入ったSFファンには懐かしく、過去を知らない若者には新鮮だったのでは?

>男系派左派さん
悠仁親王の健やかなご成長を願っております。

「2001年宇宙の旅」は、公開時には日本のSF作家の間で不評だったようです。筒井康隆と星新一が「つまらなかった」と書いているのを読みました。たぶんもっとわかりやすい物を期待していたのでしょうね。
おっしゃるとおり、三島由紀夫なら哲学的な意味を読み取って評価したことでしょう。
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Unknown (男系派左派)
2007-10-29 22:39:21
まあ、千明様(栗山千明)を使っていると事から見てある「特定の層」に愛想を考慮している事は判った。

それと、あの小山薫堂とかいう、番組プロデューサー(TBS世界遺産とか)は、ああ見えて結構ワルなのかな・・・? まあ、これからも世間を啓蒙するセンスいい番組を期待するんですけど・・・。
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Unknown (男系派左派)
2007-10-29 22:26:17
俺は、玄倉川さんと同じ、「男系派左派」なんだが、(左派だからといって、女系はダメでも、女帝はOKなんて、甘っちょろい事は言わない。玄倉川さんとも、どこぞのネット戦場で、伴に有象無象どもと戦った事もあるやも知れませんね、、、。)最近気になる事がある・・・。

それは、この番組の冒頭でもでてきた「三島由紀夫」が、「2001年宇宙の旅」を「見たか」?ということです・・・。「三島由紀夫映画論集成」にも、その事は一つも触れられていない。しかし、航空自衛隊のF-104戦闘機に体験搭乗して、高度1万メートルの成層圏を超音速し、独自の宇宙論といえる体験記「F104」を著した三島が、あのFS好きで、アーサー・C・クラークの著作は余さず呼んでいる三島が、見ていないはずは無い!!!
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日本SF (nomad)
2007-10-24 00:00:54
僕も見ましたが、少々物足りなかったですねえ。
オッサンの回顧談ですわね。ずいぶんニッチな人たちに向けて作られた番組でした。
コレを見て、なるほどと思うようなのは40代、50代でしょ。しかもSFファンwww
そんな絶滅種を喜ばしても建設的じゃ無いんじゃないですかね。銭湯の二代目の繰言みたいなもんで。
過去を振り返り現代を切り取る番組構成にして欲しかったな。せっかく若手の作家をナビゲータとして「SF作家クラブ誕生の地」に呼んだんだからさ。
「また大伴からかよ」って僕なんかは思っちゃうわけで、第一世代の作家ばかりを取り上げるんじゃなくて鏡明、かんべむさし、横田順弥あたりから新井素子、笠井潔、谷甲州、夢枕獏と続き森岡浩之、谷川流と繋げてもらいたかったな。
「70年の万博を契機にSF作家クラブは変わっていった」ってクマゴローが言ってたけど、そんな40年前に終わっちゃったことを念入りに取り上げるのはどうなんだろう。
これじゃ第一世代の作家への鎮魂歌って感じ。
まあ「SF作家オモロ大放談」の元テープが聞けたのは収穫でしたが。
現代ではこうした放談は「と学会」に役割を移したんですねえ。

いまどき、こういう番組が作られた意図は何だったんですかね。
せめて3ヶ月前に放送されていれば横浜のワールドコンに間に合ったのに。
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