チャチャヤン気分

《ヘリコニア談話室》後継ブログ

「火星の砂」読了

2024年06月09日 21時36分53秒 | 日記
中さん、膀胱癌だったみたいですね(→こちら)。びっくりしました。
私は定期健診なるものを、前職を辞してから今日まで、30年ちかくも受けたことがない、いやそれどころか、1996年に歯医者に通って以来今日まで、医者というものに掛かったことがない、いわば健康保険証のゴールド免許保持者なのですが、ここは節を屈して一度受けてみるべきでしょうか。
あ、勘違い。去年とつぜん39度の高熱を発し、すわコロナか、と、検査を受けてしまったのだった。実際は陰性で、なんの処置もしてもらったわけでもなく(一体何が原因だったかいまだに不明のまま)、無念にも保険証の連続不使用記録は途切れてしまっていたのでした。そのことをすっかり忘れていました。嗚呼。
しかし、そのかわりといっちゃなんですが、先月の運転免許の書き換えでゴールド保持者となりました。
いやこれもなんら誇ることではありません。ただ単に車にあまり乗らなくなったことの証明でしかないのですからねえ。嗚呼。嗚呼。


それはそうと――
クラーク『火星の砂』をKindleで読了しました。(今日はこれを書きたいために書き始めたのに、例によって端から迷走してしまいました。噫。)
読み始めたのはずいぶん以前で、3月3日の投稿「梅田地下オデッセイ」をたどる」で少し触れたランチ会で、いま読んでいることを喋った記憶がありますので、読み終えるまでに、少なくとも3か月はかかったことになります。
なに、近年では唯一の電車乗り時間である京都行きの往路でしか読まないので(帰路は酔っ払って爆睡している)、そんなものかもしれません。
いや想像以上に面白かった。初読は多分中学生だったと思いますが、そのときよりもずっと面白く読了しました。
前半は火星へ向かう宇宙船内部での話で、このパートでは、いわゆるハード(リアリズム)SFの醍醐味を満喫。
《ダートは重力のない世界でも充分に楽しめる
とか、
無重力ではビールをストローで飲まなければならなかったことに飽き飽きとしていたクルーが、火星に着くや、まず、ビール缶を1フィートほど上から傾けてコップにつごうとし、ビールがじわじわと12秒ほどかけてコップに達するシーンなど、こんな描写が読みたくて、われわれはSFを読み始めたのであったことを、あらためて思い出させてくれて、嬉しくなりました。
後半は火星での話。
このパートは、まさに「植民地小説」の風格。クラークの頭の片隅に、ヴァージニア植民地があったのは間違いなく、火星総督の佇まいはまさにピューリタンを髣髴とさせるものです(ただしこの世界のインディアンは従順そのもので、総督も非常に物わかりが良い。このへんは本作の弱点)。地球の火星植民地に対する厄介者意識も、当時の状況が反復されているのでしょう。
SFとは言い条、根底にはやはり英国小説の伝統が伏流しているのでありました。


しかし本作、現代ではあんまり読まれてないのじゃないですかね(私の直感が確かならば)。
それはあまりにもったいない。
というのが読後感でした。


《昔の小説は、みんなあれだから困るんですね。昨日のサイエンス・フィクションほど始末の悪いものはありませんよ。おまけにヴェルヌなんていうのは一昨日のものですからね》


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