酪農家 共同で飼料製造 道内28団体建設 労力、コスト軽減
酪農家が共同で混合飼料(TMR)の製造から 供給まで行う「TMRセンタ-」の建設が道内各 地で進んでいる。<牛の給食センタ->ともい われ、酪農家はセンタ-に自分の牧草地を提 供して管理を任せ、そこから飼料を購入する。草地や生産施設の 集約化により生産効率が上がり、飼料の質も安定する利点があり、 各農家は牛の餌となるサイレ-ジ作りなどの作業から解放される。 輸入飼料の価格が高騰していることもあり、各農家が作業軽減によ る余力を規模拡大や乳質改善へ振り向けられれば、北海道酪農の 基盤強化につながると期待されている。根室管内中標津町富岡。 午後4時すぎ、飼料を積んだ配送車が「アウルサ-クル・MILKYW AY」牧場に到着。荷台の可動コンテナから飼料がバラバラと牧場の 車に移る。総量二㌧。乳牛約百頭の半日分の餌だ。同牧場の竹村 富夫さん(54)は「自分で餌をつくっていたときよりも、質は良くなった し、仕事も楽になった」と話す。不要になった牧草刈り取り機など十 数台は、すべて売り払った。同牧場に飼料を届けているのは、竹村 さんも含む18戸の農家でつくる有限会社「中標津ファ-ムサ-ビス」 (長渕重樹社長)だ。一昨年12月、供給を開始。飼料代は一頭当た り1日1000円。サイレ-ジを作るバンカ-サイロ、配合飼料やビタミ ン剤を混ぜる調整工場建設などセンタ-開設の総事業費は約七億 四千万円。このうち約半分を国、道の補助金で賄った。一戸あたり約 二千万円の負担だが、長渕社長は「大きな農家では労働時間が1日 3時間削減された。餌代も二割は減っていると思う」と利点を強調す る。建設で借り入れた三億六千万円は飼料の販売収入で償還する 計画だ。同じ中標津町の開陽地区でも2009年の稼動に向け、酪農 家15戸前後が参加してセンタ-を設立する計画が進行中。
中標津農協は「センタ-を生かせば後継者のいない農地を遊ばせ ることはないし新規就農者も受け入れやすい」と説明する。さらに根 室管内別海町の西春別農協、釧路市阿寒町の阿寒農協でも、今年 夏以降の稼動に向け、建設が進んでいる。いずれも20戸前後が参 加、事業費は十億円を超えるが、半分から三分の二を国の補助金 でまかなう。道東以外でも、留萌管内苫前町、稚内市、上川管内美 瑛町などでセンタ-建設は相次いでおり、北海道TMRセンタ-連 絡協議会(札幌)によると、道内では今年の稼動も含め28団体に上 る。センタ-について、酪農学園大の荒木和秋教授(農業経済)は 「餌の品質が安定し、農家の間で仲間意識も生まれる」と利点を認 めた上で、「かなりの投資額になるので、じっくり計画を立てないと 過剰投資になる危険性がある。更新時の補助金はないので積み立 ても必要だ」と指摘している。