ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート

「神話探偵団~スサノオ・大国主を捜そう!」を、「ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート」に変更します。雛元昌弘

155 スサノオ・大国主建国論の方法論

2024-06-07 18:35:28 | スサノオ・大国主建国論

 考古学は遺跡・遺物の「物」からの帰納法により古代史を推理し、歴史学は主に「文献」から古代史を解明しますが、私はそれらに加えて現代に継承されている「文化・伝承」から古代史を仮説演繹的に推理してきました。

 前2者は科学的とみなされますが、限られた「発見物」「文献」からの推理という大きな限界があり、「未発見物」への推理を欠くことから、「新発見物」により容易にそれまでの定説がパアになる危険性があります。

 一例をあげると、出雲にめぼしい遺跡がないことから記紀に書かれた出雲神話は8世紀の創作とされてきましたが、荒神谷遺跡・加茂岩倉遺跡でのかつてない大量の銅器(銅槍・銅矛・銅鐸)の発見により、記紀に書かれたスサノオ・大国主一族の建国が物証により裏付けられました。八百万神信仰により「銅槍圏(通説は銅剣圏)・銅矛圏・銅鐸圏の統一」がなされたことが明らかになったのです。

 この「荒神谷・加茂岩倉ショック」により考古学者は自らの方法論の限界を反省し、歴史学者は天皇中心史観の記紀分析をやりなおすべきだったのですが、未だに大勢としては従来の物からの帰納的推理の「ただもの(唯物)史観」がまかり通っています。シュリーマンのように神話から大国主や大霊留女(アマテル;卑弥呼)の墓の発見を目指すような考古学者は現れていません。

 「八百万神」神道のこの国では、死者の霊(ひ)は全て神として子孫や人々に祀られるのであり、「神話=霊話=人話」なのです。記紀神話には天上の「高天原」神話のように一見すると荒唐無稽な内容が見られますが、一方ではその場所を「筑紫日向橘小門阿波岐原」と具体的な地上の地名として書いています。記紀は表面的には天皇家建国の歴史を空想的に書きながら、その裏では巧妙にスサノオ・大国主建国史を書き伝えているのです。

 私が「現代人の生活・文化・DNA」から遡り、「スサノオ・大国主建国史」を演繹的に推理してきた例としては次のようなものがあります。

 私の岡山・兵庫の田舎の両祖父母の家には「大黒柱」があり、柱に添って「神棚」が設けられていました。祖先霊を「仏壇」に「仏」として祀る以前は「神棚」に「神」として祀り、天から大黒柱を通って招き、送り返していた可能性があります。そうすると、そのルーツは出雲大社の「心御柱(しんのみはしら)」の「大国柱」の可能性があり、その「心御柱」のルーツは祖先霊の依り代である「神籬(ひもろぎ:霊洩木)」に遡り、神名火山(神那霊山)信仰から派生してきた可能性があります。

 さらに、そのルーツは東アフリカの万年雪を抱くルウェンゾリ山やケニヤ山、キリマンジェロから死者の魂が天に上るとした「神山天神信仰」にあり、ナイル川を下って平野部では人工の神山として上が白く下が赤いピラミッドとなり、Y染色体D型人により日本列島に運ばれ、諏訪地方の阿久・阿久尻縄文遺跡の石棒から円錐型(神那霊山型)の蓼科山へ向かう2列の石列や、蓼科山へ向いた19の巨木建築が示す蓼科山の「ヒジン(霊人:女神)」信仰へと繋がり、御柱祭は「天神信仰」の「神籬(ひもろぎ:霊洩木)」の可能性がでてきます。

 私の祖父母時代に見られた「大黒柱」や「お山信仰」(神名火山(神那霊山)信仰:女神信仰)などは、紀元1・2世紀のスサノオ・大国主時代に遡り、さらにはY染色体D型の縄文人のルーツであるアフリカに遡る可能性があるのです。

 スサノオ・大国主建国は、これまでもっぱら天皇家の建国との関係で論じられてきましたが、7万年前にアフリカを出たY染色体D型の縄文人からの内発的発展としてまずは検討するとともに、スサノオの御子の大年(大物主を襲名)の美和国、少彦名亡き後の大国主・大物主連合による大和国(おおわのくに)、大国主の筑紫妻の鳥耳の御子の穂日・夷鳥(日名鳥)親子が大国主を国譲りさせて継承した出雲王朝、筑紫の鳥耳から10代の筑紫王朝と邪馬壹国の全体的な関係をまず明らかにすべきと考えます。

 そして、一神教による侵略戦争以前に全世界に普遍的に見られた母系制社会の霊(ひ)信仰(八百万神信仰)は、命(霊(ひ)=DNAのリレー)を何よりも大事にする宗教思想として、今こそ世界遺産登録を目指すべきと考えますが、どう思われるでしょうか? 

 1万数千年の「縄文社会」の文化・文明をベースにしたスサノオ・大国主建国史から、たかだか2千年あまりの農耕・工業・戦争の文化文明の行き詰まりの先を展望すべきと考えます。 雛元昌弘

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ・大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ・大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記・播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ・大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ・大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ・大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

帆人の古代史メモ(~115まで)      http://blog.livedoor.jp/hohito/

 帆人の古代史メモ2(116~)      https://hohito2024.blog.jp/

 ヒナフキンの邪馬台国ノート       http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論                 http://hinakoku.blog100.fc2.com/



最新の画像もっと見る

コメントを投稿