蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

『そして父になる』

2015-02-08 | 映画
是枝監督の映画って、なんでこう常に常に画面が汚いのかね。ひょっとして、ワザと? 現実感を出すため? しかし、リアルと汚いは別だろう。

さらに、内容もリアルじゃない。福山雅治は、逆立ちしても遣り手のビジネスマンには見えない。見えなくてもいいが、演技に頭脳シャープな男の切れがない。

一番の問題は子供の描き方だよなあ。

一般に、子供は物心つく前から暮らしてきた家と家族から切り離されると、激しい不安に襲われる。「保護」をはぎ取られて裸で放り出された気分になる。

その不安を子供は敵意によって表現する。当たり前だ。保護のない環境は、幼児にとって敵地なのだ。そこで防御本能から大人に向かって毒を吐き始める。「バカ」「死ね」「大嫌いだ」

若い夫婦は、必ずしも精神的に成熟しているとは限らない。子供の吐く言葉の毒に、特に妻の方が感情的に反応する。彼女は次第に子供を憎み出す。

子供の誕生後、直接交流のなかった親子は血がつながっていようといまいと、こうして幼児虐待の惨劇へエスカレートしていく。全部ってワケじゃないが。

映画「そして父になる」は、子供の不安な心理をお義理程度にしか描いていないために、人間の本質に迫るドラマになったはずのテーマを口当たりのいいホームドラマに矮小化してしまった。

10年前に評判になった『誰も知らない』でも、部屋代を滞納している子供たちがいつまでもマンションから追い出されないなど不自然な点があったが、この監督、ちょっと詰めが甘いんじゃないか。
コメント
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