現代の突撃砲、機動砲システム

2012-12-22 18:19:52 | 軍事ネタ

ドイツ軍のIII号突撃砲

第二次世界大戦時には突撃砲という兵器があった。
装甲化された自走砲で、歩兵支援用に大口径榴弾砲を搭載し、
陣地攻撃や野戦時において直接火力支援を行うもの。
だが大戦後期のドイツ軍では歩兵戦闘の支援ではなく、
対戦車砲を載せて駆逐戦車的な役割が多くなった。

こういった突撃砲や駆逐戦車が活躍できたのは、
固定砲塔故に同世代の戦車よりも高火力な大口径砲の搭載が容易であったからだが、
当然利便性という点では回転砲塔の戦車に圧倒的に劣る代物でもあった。

第二次世界大戦後にこのような突撃砲や駆逐戦車が廃れたのは、
戦車自体の火力が増大したので固定砲塔の駆逐戦車に頼らなくても高火力を発揮できるようになったのと、
歩兵携行対戦車ミサイルや歩兵戦闘車(IFV)といった新兵器の登場によるものだろう。

しかし昨今の戦闘事情では、再び現代の突撃砲ともいうべき兵器が登場している。


チェンタウロ戦闘偵察車ストライカーMGS

それは米軍のストライカーMGSやイタリア軍のチェンタウロ、フランス軍のAMX-10
そして我が国の新兵器である機動戦闘車などがそうだ。
これらの兵器は軽装甲だが戦車に準ずる105mm砲を搭載しており、
市街地など戦車にとっては入り組んだ地形でも柔軟に歩兵に火力支援が行えるようになっている。
戦車と装甲車の間の存在で、こういった兵器を現代では機動砲と呼ぶことがある。

従来の歩兵戦闘車(IFV)とこれらの機動砲はパッと見似ているが、大きな違いは兵員輸送スペースの有無である。
IFVは6人~10人程度、つまり1個分隊の輸送能力があり、基本は兵員輸送車(APC)なのである。
現代では昔と違って最前線と後方地域の境界が曖昧で、どこでも襲撃され交戦する可能性があるので、
APCそのものに交戦能力を持たせたものがIFVである。

この点で、機動砲は始めから直接火力支援のみを目的にしているので、通常は歩兵輸送能力を有しない。
しかし米軍のストライカーにしてもイタリア軍のチェンタウロにしても、タイプによってAPC型またはIFV型も存在している。

また通常はIFVは20mmか30mm程度の機関砲と対戦車ミサイルを搭載しており、
機動砲は逆に対戦車ミサイルを有せず105mmの主砲と副武装として機銃がついている。
105mmの榴弾威力は絶大で、これが常に歩兵とともにあれば十分な火力支援を行うことができる。
ただし武装についてはロシア軍のBMP-3は1個分隊の輸送能力を有しているIFVだが、
100mmの主砲に30mmの機関砲、そして対戦車ミサイルも搭載しているという重武装ぶりであり、
ロシア軍に於いては西側諸国で言う機動砲とIFVの境界が無いものとなっている。


こういった機動砲の基本コンセプトは前線で105mmの火力支援を直接歩兵に届けるというもの。
ともすればこれは第二次世界大戦時の突撃砲の再来であり、
対戦車ミサイルを有しないので駆逐戦車的な意味での有効性は落ちるが、
歩兵への直接火力支援という本来の突撃砲の思想と同様の兵器システムであるといえる。

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