銃弾サイズについて。殺すよりも負傷させた方が効果的?

2012-06-06 22:43:21 | 軍事ネタ

軍事に関する有名な雑学で、
「敵兵を殺すことよりも負傷させた方が、敵はその救護に人員を取られるので効果的。」
という話がある。

確かに対人地雷などではあえて殺傷力を抑えてそうしてるものもあるので、
そういう事実があるのも確かだ。
しかし威力を抑えた兵器の全てがそういう目的ではない。




上記の話とよく関連付けられるのが、銃弾の口径だ。
例えば昔はライフル弾といえば7.927.62など7mm級の口径が主だったが、
最近は5.455.56など5mm級で、昔よりもワンサイズ小さいものが主流となっている。

一見敵を殺すよりも負傷させる話と関係ありそうなので、始めの話と関連付けて、
「銃弾のサイズが昔より小さくなったのは敵を殺すよりも負傷させる為。」
として語る人が多いのだが、実は銃弾のサイズが小さくなった目的と殺傷力を抑えることは全く無関係である。


というのも、米軍で5.56mm弾を用いるM16小銃が実戦投入されたのはベトナム戦争であった。
当時の米軍はM16が配備される前は7.62mm弾のM14小銃を制式装備としていたが、
M14の7.62mm弾では反動が強く、フルオートで連射するには向かない銃であった。
そこで7.62mmよりもサイズを落とし5.56mm弾にすると、反動が抑制され連射時の集弾性が向上した。

サイズを落とすと当然威力も落ち、遠距離射撃時の命中精度と射程も短くなるというデメリットはあるが、
当時の米軍が直面した戦場はベトナムのジャングルであったので、
それ以前の戦争と比べると近接戦闘が多く、射程や命中精度は大きな問題ではなかった。
それよりも近接戦闘時の取り回しと連射火力を求めたのである。


ベトナム戦争が終わった後でも現代の戦場は都市部が多くなり、
第一次や第二次大戦のようにだだっ広い平原で敵と遠距離で対峙し真正面から弾幕を張り合うような戦闘は減ったので、
要するに昔と比べると現代の歩兵戦は近接戦闘の機会が増えたので、
取り回しの良い小口径弾が主流となっているだけの話である。

ここにわざと敵を殺さないようにしてるだのの判断は介入しておらず、
せいぜい小口径弾にしたことによってそういう効果もあった程度の話なので、
決して小口径弾が主流になった理由が敵をあえて殺さないようになどといった事情ではない。

現在の米軍歩兵装備ではM16やM4やM249などで5.56mm弾を、
M14やMk17(SCAR-H)やM240などで7.62mm弾を併用し、
遠近どちらにも対応できるようにしている。




最近の米軍が直面したイラクやアフガンのような砂漠戦では、
主力の5.56mmでは射程が短いデメリットが露呈したので、また7.62mmや、
もしくは中間をとった6mm級弾丸なども開発され注目を集めている。
しかし既に普及している弾丸のサイズを新たに置き換えるとなるとそれは膨大な量となり、
そのコストは計り知れないので、米軍ですらなかなか6mm級の制式採用には踏み切れないのが現状だ。
それがベストな選択肢という確信もない以上、果たして今後どうなることやら。

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