当ブログの軍事カテゴリ、自衛隊の敵地攻撃能力の保有について の記事に最近ついたコメントにて。
記事自体が1ヶ月以上前のものだし、レス内容も大きくなりそうなので、
テーマも面白いし、今回はこれについて書いてみようと思います。
まず日本の防衛条件の前提として、第一が日本は島国であること。
国の周囲は海で守られており、他国と地上で接する国境線がない。
要するに敵国勢力から本土を防衛しようと思えば海と空を守れば良いわけで、
空自と海自で強力に防御して、敵に上陸されなければ陸自の出番はない。
だから陸自は不要でその分の予算を空自と海自に・・・
といった意見は実は根強くよくいわれていることです。
しかし、本当に陸自は不要なのか?と問われれば、
俺個人の意見としては絶対的に否であり、
陸自は必要な戦力であると断言します。
その根拠を以下に述べます。
まず陸自の存在理由として、第一義的には"抑止力" が挙げられます。
有事の際に陸自が実際的に敵勢力と交戦する状況があるかどうかは実は最重要ではなく、
陸自は存在するだけで、日本に上陸しようと企図する敵勢力にとっては大きな障害となっているのです。
例えば、日本に陸自ほどの陸上戦力が存在しない場合。
如何に強力な空自と海自で守られていようと、それさえ突破してしまえば、
小規模な兵力でも日本への上陸を成功さえすればあとは本土で破壊的に暴れまわることが可能となります。
しかし陸自が存在することによって、まず上陸部隊にとっては陸自を撃破できなければ目標を達成することは困難となり、
つまり陸自を撃破することが可能なだけの、大兵力や重火器を揚陸する必要性を敵に強要することができるわけです。
小規模な歩兵部隊だけを載せた船団はコンパクトであり、それだけ隠密性が高くコストもかからず、
もしも五月雨式にそれらの小部隊をいくつも送り込まれ続ければどこかしらは突破され上陸される可能性が高い。
しかし重火器や一定の兵力を持ち合わせた部隊は大船団にならざるを得ず、
またそれだけの大船団による上陸作戦をいくつも準備することは困難であり、
しかもその作戦行動は目立つものにならざるを得ないので迎撃もしやすい。
陸自が存在することによって、この"一定兵力の揚陸の必要性" を敵に強要することができ、
故に陸自が実際的に交戦するか否かではなく、存在するだけで敵の上陸作戦の障害となっており、
結果的に空自や海自と同様、敵の本土上陸を未然に防ぐことに一役買っているのです。
制空権や制海権は確かに重要で、日本の地勢的条件ならば第一に考慮されるべき案件ですが、
有事において日本の長大な海岸線を絶対的に全周防御することが可能かと言われれば非現実的であるといわざるをえず、
そもそもの抑止力として、そして最後の盾として、陸自は日本の防衛において必要不可欠な存在であるといえます。