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機関銃の登場がもたらした衝撃と革新、その歴史について

2014-10-04 21:24:58 | 軍事ネタ

その登場によって、戦場の様相を劇的に変化させた武器があった。
またその武器がもたらした変化は前線のことだけではなく、
戦争そのものの形態をも変えてしまうものだった。
今では各国にあるのが普通だが、かつてそれほどの大きな衝撃をもたらした武器。
今日は機関銃についての歴史。




機関銃・マシンガンとは言うまでもなく、トリガーを引き続ければ弾丸が発射され続ける自動火器である。
今では自動火器にも色々細分化された種別があり、機関銃という名称は具体的には据え置きで使われる重機を指すことが多いが、
本来の意味的に連射できる銃器全般を機関銃というなら、広義的には今の歩兵が持つ主力装備のアサルトライフルも全て機関銃の一種である。

機関銃が猛威をふるい、真にその威力が世界中に認識されたのは
ちょうど100年前にあたる1914年の第一次世界大戦だが、
構想自体は火縄銃が登場したルネッサンス期から既にあった。

火縄銃が出現し始めたのが1400年代、
まだ歩兵の主力となる性能を持つには至らず、
日本の戦国時代を見ても火力部隊の一種にすぎない。
それから少し進化したマスケット銃は、
特に19世紀にもなると槍や剣に代わる主力武器として、
今のように大半の歩兵が銃を持つようになる。

しかしそれでも、火縄銃もマスケット銃も装填時間に問題があった。
先進的なマスケット銃ですら1分に1発というのが常識的な発射速度であった。
そんな時代なら誰もが考える、もしも弾丸を連射できたらすごい武器になるんじゃないか?
つまり機関銃を実用化しようという構想はそれこそ1400年代から1800年代までずっとあったのだ。



ミトラィユーズ

そして年月は進み1870年、ドイツの大元となるプロイセン王国とフランスが衝突した戦争が起こった。
この普仏戦争に於いてフランス軍は初期の機関銃を実戦投入した。
ミトラィユーズというこの機関銃は、簡単に言えばマスケット銃を束にしたようなものである。
弾丸を先込めしておいた筒をひとまとめにし、ハンドルを回すとそれらが順番に発射される。
最初期の機関銃といっても良い。

想像の上では従来のマスケット銃よりも斉射で圧倒でき、強力な兵器に思えたが、
結論から言うとミトラィユーズは実戦で成果を挙げなかった。
理由はいくつかある、まずミトラィユーズの運用が歩兵ではなく砲兵扱いとされたこと。
つまり大型で運搬に手間がかかる為に、砲兵扱いの火力支援武器とされたせいで、
銃弾で狙うには相手との距離が遠すぎることが多かったので効果を発揮できなかった。
そしてこの動作方法では、たくさんの銃弾を撃つ前にそれだけの銃弾を先込めしなければならない。
一度撃ち尽くした後は再装填にも手間がかかり、また装填時間は装填手の技量に大きく左右された。

結果として、ミトラィユーズの実戦経験は評価されず、そのおかげでヨーロッパでは機関銃そのものが
「想像ではいけるかと思ったがいざ実現したら大して役に立たなかった兵器」とされた。
この経験は後に尾を引くのだ。



ガトリング砲

ヨーロッパでは機関銃への幻想が崩れる中、アメリカでは事情が違った。
1861年に発明家リチャード・ジョーダン・ガトリング氏が画期的な機関銃を発明。
束ねた砲身に装填は後装式、クランクを回せば砲身が回転し銃弾が次々と発射され続ける。
これは先込めの手間がないし、砲身数に関わらず、弾丸を用意してる分だけ発射し続ける。
つまりミトラィユーズよりも圧倒的に先進的であり、現代でも通じるこの兵器はガトリング砲と呼ばれる。
ガトリング砲は1861年のアメリカ南北戦争で猛威をふるった。

ガトリング砲に兵隊たちがなぎ倒されるので、それを補充する為に大動員をかけ、
また産業革命が起き始めていたので、ガトリング砲の量産体制も戦争に大きな影響を与えた。
中世然とした戦争から近代戦争へ、南北戦争は間違いなくその節目であった。
この戦訓から、アメリカでは機関銃が高く評価された。
ガトリング曰く「機関銃は鎌に代わる刈り取り機、縫い針に代わるミシンに匹敵する。」

1904年の日露戦争でも日本軍とロシア軍は機関銃を効果的に使い、
この新兵器は特に防衛戦に於いて、少兵力で大兵力の攻撃を退けることを実現できるものとした。
機関銃の威力は世界中に示された。
また1899年の第二次ボーア戦争でも、植民地イギリス軍は南アフリカに於いて機関銃の威力を実証した。
大勢で迫り来る現地民に対して植民地を守る少数のイギリス軍は機関銃の効果の高さを知った。


つまり、南北戦争や日露戦争やボーア戦争などで機関銃が威力を実証していたにも関わらず、
1914年に第一次世界大戦が勃発するまで、ヨーロッパ諸国は機関銃を軽視し続けた。
アメリカや日本など辺境での出来事などヨーロッパには適合しない。
先進諸国同士の戦争では条件が違うので機関銃は使い物にならない、という思想がまかり通っていた。

ボーア戦争当事国のイギリスですら、植民地軍から機関銃についての報告が上がってくると、
「辺境で土民連中との戦いで何がわかる、諸君がフランスやドイツなどと戦う本物の戦争を知っていると?」
と本土を守る軍人がまるで無知を諭すかのように握りつぶしたのだ。
先進的なはずのヨーロッパ諸国は機関銃に対しての認識がもっとも時代錯誤的であった。


ヨーロッパ諸国が現実逃避ともいえるほど機関銃を忌避したのには理由がある。
南北戦争や日露戦争の結果は当然知っていた、機関銃によりたくさんの人たちが感慨もなく死んだと。
つまり敵軍を崩し大勢の人間を殺すのに必要だったことは、
勇気あるリーダーが率いる決死の騎兵突撃かけるでも、
傑出した英雄が敵兵を何人も斬り伏せるでもなく、
ただの一般歩兵がクランクを回すだけの作業であった。

それは人間と人間がぶつかり合う戦争は終焉し、機械が戦う戦争へと変遷しつつあることを意味し・・・
長らく騎士階級が名誉であり、勇気と規律をもった軍人を敬うべきとの
長い伝統を持ったヨーロッパ諸国はこの現実を受け入れがたかった。
戦争に必要なのは勇気を誇る人間ではなく、ただの機械とその操作手などと。
ならば我々軍人の栄誉はどうなる?我々は機械を回すだけの存在となるのか?
それはそれまで人々から受けていた尊厳と尊敬、社会的優位性を捨て去ることを意味していた。
有象無象を感慨もなくなぎ倒す機関銃を認めてしまうと、兵士たちの戦場での個性や手柄を否定してしまう。


面白い話だが、第一次世界大戦まで機関銃をもっとも理解していなかったのは当の軍人たちなのだ。
保身の為には機関銃の価値を無視するしかなかったのである。
もちろん普仏戦争でのミトラィユーズの失敗の影響もあるだろうし、逃げ口上にも使われたと想像できる。
南北戦争や日露戦争の結果をもって機関銃の重要性を説く人がいたら、
「君は普仏戦争を知っているか?近代諸国同士では条件が違うので機関銃は意味をなさないだろう。」
と言った風に。
しかしそんな状況も一変する。




1914年第一次世界大戦が勃発。
この緊急事態を戦っていくうちに、ヨーロッパ諸国も機関銃の有用性に気づく。
戦争に勝つにはプライドも何も捨て去るしか無い、機関銃を大量生産するしかない。
一例としてヴィッカース社の場合、大戦前はイギリス軍から年間11丁の機関銃しか受注していなかった。
しかし大戦勃発後は需要が爆発し、たった4年間で6万丁も受注することとなった。
イギリス軍は他社製のも含めると4年間で一気に25万丁も購入したこととなり、
第一次世界大戦前までいかに機関銃を軽視していたか、
それがいかに非現実的であったかが証明されたのだ。
ヨーロッパ諸国も認めざるを得なかった、戦争は機械の時代へ移ったのだ。


第一次世界大戦による機関銃需要で、各国は工業化を推進しなければならなくなった。
産業革命が起こったといえど、実はヨーロッパの工業化はイメージに反してうまくは進まなかった。
何故なら、機関銃に対する伝統的な軍人の反抗心と同様のことが職人にも起こっていたので。

つまり伝統的に誇りをもって仕事に打ち込む職人が多いヨーロッパでは、
手作業こそが丁寧で高品質な製品に結びつき、機械が作る心も通ってない量産品など軽視されるべきであった。
また完成された製品の出来栄えには関係なく、職を失うまいとする職人層の必死の抵抗もあったろう。
自分たちがやってきたことが機械がやってくれるとしたら、俺たちの仕事はどうなる?
何年も修行して覚えてやっと作れるようになるものを、
ただの雇われ工員が機械を動かすだけでハイペースで量産できることを、
認めてしまったら俺たちは職も社会的立場も全て失ってしまうのではないか?
なので案外産業革命は効率良く進まなかった。

ヨーロッパに先んじてアメリカや日本が機関銃の価値を認めたことは驚くに値しない。
長い歴史の中でゆるやかに発展してきたヨーロッパと違い、急伸して世界情勢に台頭してきたアメリカと日本は、
ヨーロッパのようにこだわるべき伝統を持つ層が多くはいなかったのだ。
だから産業化も急激に進行したし、戦争の中で合理性を追求した為に機関銃の価値にも気づいた。


だが第一次世界大戦の機関銃需要は、もはやそんな精神的な事情の介在を許さなかった。
国家存亡の危機であったのだ、ヨーロッパ諸国は国を挙げて工業化に取り組んだ。
つまり機関銃の必要性によって、ヨーロッパは真の工業化を遂げた。
戦争は機械と産業と量産の時代に入り、機関銃は戦場だけでなく国家構造にも大きな影響を与えたのだ。

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スコットランドの独立とウクライナ情勢への影響について

2014-09-19 20:16:29 | 軍事ネタ

スコットランドの独立を懸けた住民投票は結局否決されたね。
もしかすると本当に独立するのかと思ったけども、
リスクを伴う急激な変化を嫌う層もいるから、
一番妥当な結果だと思う。

でも、なぜイギリス政府はスコットランドの住民投票に合意したのだろう。
どうせ否決されるだろうと見てのガス抜きかな?
頑なに認めないよりは認めて現実を突きつけてやろう的な。
結果的には否決されたけど、「まさか本当に独立?」と現実感が出るほどには拮抗してたと思う。
イギリスは危ない橋を渡ったわけだ。

イギリスが住民投票を認め拮抗してたことで、
グレートブリテンは政情不安定であるという印象を世界に与えたし、
またウェールズやアイルランドなどの他地方だけでなく、
世界中に独立運動の気運が飛び火しかねない事態とも言えるのに。

ヨーロッパは元々都市国家や小国家の集合体である。
歴史的に様々な民族が入り混じり、日本と違って各地方に独立運動の火が燻っている。
バルカン半島がその最たるもので、実際に民族浄化を伴う激しい内戦が起きたり、
またスコットランドと同じくイギリスに関連して、アイルランドも独立を目指した武力闘争が有名だ。
スペインもイタリアもポーランドもロシアも同様の問題を抱えている。


一等の先進国ではもはや一地方の独立なんて非現実的である。
ヨーロッパといえどユーゴ紛争は後進的な地方での内戦だし、
ロシア周辺のこともソ連崩壊という特別な事情があってこそ。
それが世界的な常識であったはず。
しかし今回のスコットランドの件でそれが揺さぶられた。
するとどうなるか。

ヨーロッパ中に燻っている火種が再燃するかもしれない。
スペインだってポーランドだってロシアだって今は政情が安定しているからこそ、
独立を志向する地方の人々もどうせ実現しないと諦める風潮があったはず。
しかしそれが覆されるかもしれないぐらいの事態だったと思うんだよね。

よって万が一本当にスコットランドが独立しようもんなら、イギリスは近隣諸国から非難が集中していただろう。
しかし今回は否決されたといえど、それでも世界中の人たちに「もしかして」と思わせることができたのには変わらず、
長い目で見たらこの件はまだまだこれで終わりとはならないかもしれない。
飛び火する可能性が高いと思うね。


あとスコットランドを巡るこの事態はウクライナにとっても不都合となっている。
スコットランドが独立しても、イギリスは経済的な封鎖をやるかもしれないが、(ポンド使わせないとか言ってたようなやつ)
軍隊を動かしはしないだろう。
しかし現在進行形でウクライナは独立を目指す東部の親露勢力である東ドネツク共和国に軍隊を動かし、
テロリスト撲滅作戦を展開して実質の内戦状態となっている。

現ウクライナ暫定政府はEUの支援を受けて、今年初めに当時の親露政権に対してクーデターを起こした勢力で、
EUやアメリカが堂々と武力クーデターと弾圧を支援している今までの状況ですらちょっとどうかなと思われてたのに、
さらにスコットランドの独立意思を尊重したEUが、東ドネツクの独立を容認しないどころか武力弾圧をしているウクライナを支援するのは筋が通らない。
表向き対テロ作戦とは言ってもね。
ヘタすれば「東ドネツクでの住民投票結果をウクライナとEUは認めるべき」となる可能性も高い。
既に東ドネツク内で住民投票は実施されてロシア派の圧勝となっているが、ウクライナはこれを「茶番だ」と退けている。
だがスコットランドと同じく東ドネツクでの住民投票も尊重されるべき、という世論が展開される事態は今後大いに有り得る。
ウクライナが東西に分裂する危機が促進してしまってるのだ。

せっかくマレーシア航空撃墜事件によって世界中でロシア派に対しての非難が集中してたのに、
今度はEU派がウクライナ東部を抑えつける大義名分を失ってしまった。


海外の反応を漁ってたらイギリス人が、
「独立が否決された原因はスコットランド人しか投票できなかったから。
イギリス人も投票を許されてたらスコットランドは独立してたよ。」
(追い出したい人がYESに入れるから)
っていう書き込みが面白かった。

とりあえずはスコットランドの独立は中止となったが、
この事件の影響は今後各方面へ波及するだろう。

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防衛省、強襲揚陸艦を調達へ。実質の軽空母の可能性

2014-08-06 07:37:08 | 軍事ネタ

強襲揚陸艦を導入へ 防衛省方針、名称変更も検討
http://www.asahi.com/articles/ASG845D1VG84UTIL02L.html


海上自衛隊が強襲揚陸艦を導入するらしい。
強襲揚陸艦とは軽空母と輸送艦を併せたような機能を持つ艦のことで、
戦車や歩兵などを上陸させながら戦闘機やヘリで上空援護するということを単艦で可能とする、
展開能力に優れた艦種である。

自衛隊は特に安倍政権になってからは南西諸島防衛に注力しており、
戦力の機動性を高めて少数兵力を効率良く運用する方針としている。
その為に自衛隊版の海兵隊を作ることも宣言されているが、
この強襲揚陸艦もその流れだろう。

確かに海兵隊を効率良く機動させるなら揚陸艦は必要である。
島嶼防衛にせよ、敵が来るかもわからない島に兵力を貼り付けておくよりかは、
敵が占領した後に奪還するほうが兵力の無駄がない。
効率の良い"取らせて取り返す"を実現するために強襲上陸戦能力は必要である。
野球で言う"打たせて捕る"的な。



ワスプ級強襲揚陸艦

ここで注目したいのが、防衛省が強襲揚陸艦に要求する能力だ。
どこまでのクラスを求めているのか?
なにせあまりイメージにないかもしれないが、日本は既に強襲揚陸艦を保有している。
おおすみ型輸送艦がそうで、これは全通甲板にヘリを搭載し、
LCAC(エアクッション揚陸艇)も2隻格納でき、300人の武装隊員を運搬する能力を有する。
今回の強襲揚陸艦に要求されているオスプレイ運用能力も、おおすみはわざわざ大規模改修してオスプレイに対応することが決定済み。

この強襲揚陸艦のニュースを見た時、始めはおおすみ型の後継艦かな?と思ったけど、
しかしおおすみがオスプレイ運用に向けてわざわざ大規模改修をすることを思い出せば、
おそらくおおすみもしばらく使われるのだろう。
ということは新しい強襲揚陸艦に求めていることは、
もちろんおおすみ型より大規模で効率良い戦力投射能力だろうが・・・もうひとつ。
おおすみ型にはできないことを求めている気がする。
そこでこの新しい強襲揚陸艦が戦闘機を運用する、実質の軽空母となる可能性も見える。


これはおそらくそう突拍子もない話でもない。
既に海上自衛隊にはいずも型などのサイズで言えば軽空母クラスの艦があるわけだし、
そこにさり気なく戦闘機が載ったところでいまさら国民はそう衝撃も受けないのじゃないかな。
おおすみ型・ひゅうが型・いずも型の3タイプ、これらは全通甲板を有する、見た目上は空母と大差ない艦である。
それが既に7隻も就役が決定してる。

海自の全通甲板艦が急増したことはいつか空母を保有するための布石という論調はずっとあるが、
俺もそれは十分に有り得ると考えるし、おおすみ型があるのにわざわざ大規模化させた強襲揚陸艦を新造するなら、
おおすみ型にはできない機能も盛り込みたいんじゃないかな。
それが戦闘機の運用能力であったとしても不自然ではない。

また強襲上陸戦で最も必要なのはエアカバーである。
だから強襲揚陸艦といわれる艦は軽空母みたいな見た目をして航空機を運用するのだけど、
強襲上陸に特化させた艦を造るのにあえて戦闘機を搭載しないなんて、
縛りプレイ的でその発想のほうが不自然に思えるぐらいである。
おおすみ型を差し置いてわざわざ専用艦を調達するのは効率の向上が目的だろう。
なのに戦闘機非搭載を前提にすることほど非効率的なことがあるだろうか。

航空自衛隊はステルス戦闘機F-35Aの導入を決定している。
そしてF-35BがVTOL(垂直離着陸)機能を有する海兵隊型だが、このF-35Bを海自も軽空母用に導入すれば、
空自と同じ戦闘機を運用することで教育・メンテナンス面の共通化メリットも享受できて効率的だ。



垂直離着陸中のF-35B

もちろん全ては憶測であるがいくつかの根拠と、周辺の状況を考えればそういう可能性も有り得そうだという話である。
強襲揚陸艦と海兵隊のことが上手くいけば、安倍政権が重視する集団安保と海外派兵能力も大きく増す。
まあそれだけに自衛隊が攻撃的な軍隊へ変貌を遂げる可能性を危惧する人もいるだろうけど、
個人的には中国とロシアの空母計画を考えれば日本が空母を含め積極的な攻撃能力を持つに至るのは自然と考えてる。

2020年までに空母を中国は3隻、ロシアは6隻の保有を目指してるからね。
もしそれが実現した場合、もはや太平洋のミリタリーバランスはアメリカのみでは荷が重く、
日本も積極的にアメリカと協調していかなければ抑止力が崩壊する可能性がある。
それは戦争を呼びこむことにつながるかも知れない。


強襲揚陸艦という名称が国民に誤解を与える可能性と書いてるけど、
まあ無難に多目的輸送艦とかになるのかな。
具体的な発表が楽しみでならないね!

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第一次世界大戦について

2014-07-28 17:26:54 | 軍事ネタ

本日7月28日は、第一次世界大戦が開戦して100周年である。
帝国主義時代の壮絶な大戦はどのようにして起きたのか。




1914年6月28日、バルカン半島のサラエボで銃声が鳴り響いた。
視察に訪れていたオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子夫妻が暗殺されたのだ。
サラエボは今で言うとボスニアの領域であり、
事件に先立ってオーストリア帝国が併合していた地域だった。
バルカン半島は様々な民族主義が対立している地域で、
小競り合いや火種が絶えなかったことから火薬庫と形容される。

フランツ・フェルディナント皇太子を暗殺したのはセルビア人青年。
大セルビア主義に傾倒していた犯人グループは、
ボスニア地域はセルビアに併合されるべきと考えていたし、
またボスニアの住民もオーストリアによる併合に対して激しく反発していた。

犯人グループは当初はセルビア政府の関与を否定していたものの、
使用機材がセルビア政府から支給されたものであることが発覚すると、
オーストリア帝国はセルビア政府に対し最後通牒を突きつけた。


事件前からオーストリアは隣国セルビアで興隆していた大セルビア主義と、
ロシアがセルビアを支援して南下政策をとっていたことを危険視していた。
1903年にはセルビア国内で親オーストリアの国王夫妻が暗殺され、
親ロシア政権が樹立するというクーデターまで発生していたのだ。

その経緯からオーストリア内の主戦派は、かねてよりセルビアを叩き潰す機会を伺っていたが、
フランツ・フェルディナント皇太子が親セルビア的な方針であったのでその意見は通らなかった。
しかし皇太子自身がセルビア政府の陰謀により暗殺されたことで、
主戦派はセルビアに攻め込む絶好の口実を得たのだ。

オーストリア帝国が突きつけた最後通牒は、
セルビア政府にとって到底受け入れられるものではなかった。
1914年7月28日、ここにオーストリア・セルビア間で戦争が勃発したのである。


当時のヨーロッパではバルカン半島に限らず、
列強国間でもいくつもの火種や小競り合いが起こっていたが、
その度に外交交渉による妥協と譲歩で大事に至らないということが続いていた。
当時の人々の間では、経済的に密接にリンクし合った近代では、
もはや列強国間で大規模な戦争は起こらないものという共通認識があった。
火種があっても経済的損失を恐れてどこの国も妥協と交渉を継続するし、
もし戦争が起こったとしても長期に及ぶ大規模な戦争を継続する国力基盤など、
どこの国にもないものとされていたのだ。

なのでオーストリアが小国セルビアに攻め込んだところで、
これも今までのようにどこかで折り合いがつくだろう、
大規模な戦争が何年も続くなんてもはや昔の話、ましてや総力戦など・・・。


オーストリアは同じ神聖ローマ帝国から生まれた若き国家、ドイツ帝国と同盟を結んでいた。
地理的・歴史的経緯によりドイツとオーストリアは住民も言語も密接に関わり合っていたし、
統一を果たしたばかりといえど1870年の普仏戦争でフランス相手に圧倒的勝利を収めたドイツ帝国を味方につけていれば、
その抑止力により他国の参戦を躊躇させるという意図があったのだ。

しかし現実には、セルビアを支援する立場にあるロシア帝国は動員を開始。
セルビアを通してバルカン半島への影響力を増すという野心があったので、
オーストリアへの脅しの意味を込めての総動員だったのである。
しかしこのロシアの動員が、ロシア自身も思わぬ形でヨーロッパ中に波及してしまう。

ロシアの動員にライバルであるドイツは過敏に反応した。
ドイツは積年の敵国であるフランスとロシアに挟まれている地勢上、
もし開戦した場合はロシアの動員が終わらぬうちに西のフランスを撃破して、
その後に東部に戦力を集中させる各個撃破戦略、シュリーフェン・プランを採用していた。
当時のインフラ環境では動員をかけて戦争準備を整えるのに何週間もの時間がかかるものだったのだ。
二正面作戦を戦いぬくにはこれしかないと信じられていた。
なのでロシアが動員を開始した時点で、ドイツには戦争準備を急ぐ以外の選択肢はなかった。
ロシアの動員が完全に終わらぬうちに、フランスを降伏させなければならない。
バルカン半島ではロシアの南下政策を恐れるオスマントルコ帝国もドイツ側に立って動員を開始した。

また当時のドイツ帝国は拡張政策をとっており、内陸国であるにも関わらず植民地主義に傾倒し、
大英帝国と激しく海軍の建艦競争を繰り広げていて、世界各地でイギリスやフランスと紛争の火種を抱えていた。
そんな情勢下でドイツが動員をかければイギリスとフランスも動員をかけざるを得ない。
またフランスは普仏戦争の敗北による領土の喪失と課せられた莫大な賠償金から、
ドイツ帝国に雪辱を晴らしたいという国民感情に押されてもあった。


つまり・・・当時の人々の間では大規模な戦争はもう起こらないと考えられてはいたが、
サラエボ事件での動員をきっかけに国際情勢を疑心暗鬼が支配してしまった為に、
それぞれが潜在的なライバル国の戦争準備に対して遅れをとるまいと警戒して、
連鎖的な大動員を引き起こしてしまったのだ。
緊張のエスカレーションである。

イギリスはドイツと激しい建艦競争をしながら、
このままエスカレートするといつかは開戦してしまうのではないかと危惧しており、
いくつもの融和と妥協案をドイツに持ちかけて何度も国際会議の場を開いた。
いつものように血を流さぬように戦争の危機を回避しようとしていたが、
そんな矢先、サラエボ事件をきっかけにその全ての外交努力が一気に台無しとなったのである。




あのころ、人々はまだ疑うことを知らなかった。
ロマンに溢れた遠足、荒々しい男らしい冒険・・・。戦争は三週間・・・。
出征すれば息もつかぬうちに、すぐ終わる。大した犠牲を出すこともない・・・。
私たちはこんなふうに、1914年の戦争を単純に思い描いていた。
クリスマスまでには家に帰ってくる。新しい兵士たちは、笑いながら母親に叫んだ。

「クリスマスにまた!」



開戦してからでさえも、人々の間では戦争はすぐに終わるものという楽観論が支配していた。
それがまさか4年も続いた上に、イタリアや日本やアメリカの参戦も招き、
この欧州大戦は後に世界大戦と呼ばれる程の凄惨な戦争となったのである。

第一次世界大戦のことを当時の人は「戦争を終わらせる為の戦争」と呼んでいたらしい。
しかしこの戦争から生じた結果が第二次世界大戦の布石となってしまったのは皮肉である。

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現代戦に汎用水上艦は必要なのか?

2014-07-06 03:30:00 | 軍事ネタ

先日のPCゲーム記事のWorld of Warshipsに期待! のコメント欄にて、
軍事に関する質問が寄せられたので、
テーマ的に長くなりそうだったので記事にして回答。
五月病期間を挟んでしまったので少し間隔が開いたけどね。
でもたまにこういう機会があるけどとても嬉しい。




空母も潜水艦も"軍艦"であるのだけど、質問者さんの意図は
駆逐艦や巡洋艦のような汎用的な水上艦のことだと思うので、
現代における汎用艦の存在意義・必要性について書いてみます。

また同じ人の別の書き込みで現代における汎用艦の実戦事例が見つからないとも書いていたので、
実戦事例についてもいくつか挙げてみようかな。
なおここでは駆逐艦・巡洋艦を限定して"汎用艦"と呼ぶことにします。
もっと一般的な"水上戦闘艦"なんて言い方をすると空母も含まれるからね。

あと核については基本的には実戦できない兵器なので、
そのことに関してはまた別の機会に書くかもしれない。




まず現代に於ける汎用艦の主な役割は、
艦隊防空
対地火力の投射
海上護衛

などが挙げられる。
まあ意外と昔のまんまだね。


まず艦隊防空について。
艦隊防空というのは複数の艦で弾幕を張り相互に援護し合うものであり、
現代では第二次世界大戦時のように各艦が高射砲を打ち上げまくるような文字通りの弾幕ではないが、
それでも複数の艦でいくらかの段階的な射程をカバーし合うことにより防空圏を形成している。
また対空ミサイルの場合、艦搭載のイルミネーター(誘導装置)の数と性能によって同時に誘導できる数が制限されており、
複数の艦を組み合わせないと多数の対艦ミサイルや航空機が迫ってきた際に迎撃能力を飽和されてしまったりもする。
この同時誘導数というのは、今でこそイージス艦1つで12目標を同時に追跡・誘導できたりするが、
少し前は1艦につき2個の目標にしか同時誘導できないという感じだったので、現代では対空ミサイルが主力で昔のように弾幕を張らないといえど、
複数の艦を一箇所に集中して互いを守り合うのが現代でも普通となっているのである。(といっても射程が長いので艦同士の間隔は数十kmに及んだりする。)

この艦隊防空の任務には当然、空母の護衛も含まれるので、
質問元の空母と潜水艦があれば汎用艦は不要、とはならないのである。
現在の米海軍の空母打撃群では、正規空母1隻にイージス艦3隻、
攻撃型原潜1隻、補給艦1隻の計6隻で戦隊を組むことを基本としている。


対地火力の投射でも汎用艦は重要な役割を担っている。
特にアメリカ海軍で顕著だが、アーレイ・バーク級駆逐艦にトマホーク巡航ミサイルを搭載し、
イラク戦争などに見るように緒戦の第一撃でトマホークを雨あられと降らせることが仕事だ。
空母の攻撃機による爆撃でも同じことができるんじゃないかと思われるかもしれないが、
攻撃機が迎撃されると機体と乗員を失うのに対し、巡航ミサイルが迎撃されても目標の破壊に失敗するだけである。
リスクが圧倒的に違うのだ。
もちろん狙える対象や任務の幅広さという点では攻撃機に分があるが、
固定目標に対する爆撃ではコストに目を瞑れば巡航ミサイルのほうがリスクがない。

また汎用艦の搭載する主砲の存在も対地射撃に於いて現代でも意外と重視されている。
これは爆弾やミサイルと違って持続射撃できるという砲そのものの特性と、コスト面で圧倒的な分がある。
なにせトマホーク巡航ミサイルが1発1億円近くするのに対し、
オート・メララ127mmの砲弾は1発が15万円前後となっている。
ミサイルや航空爆撃と比べても非常に安価で効率良い兵器なのだ。

この艦砲射撃の持続性と火力とコストに目をつけて、米海軍では湾岸戦争まで
第二次世界大戦時のアイオワ級戦艦が現役だったほどである。
もちろん軽装甲な現代艦でノコノコと主砲距離まで陸地に近づくのはリスクも伴うが、
それでも状況によっては有益なオプションとなることに変わりはない。
米海軍の従来の駆逐艦の主砲が127mmだったのに対し、次期駆逐艦のズムウォルト級が155mmの予定であり、
誘導砲弾で射程の延伸も図るとされ、ここからも意外と主砲による対地射撃を重視していることがわかる。


海上護衛については、汎用艦は海のワーク・ホースであるので、走り回るのが仕事である。
それは哨戒であったりとか対潜作戦であったりとか、シーレーン確保や海賊対策であったりとか。
そういったことにいちいち大それた護衛も必要となる空母を動かすわけにもいかず、
汎用艦は海軍の目となり足となり、様々な任務に幅広く対応する。
海上自衛隊は従来の駆逐艦以下のフリゲートサイズで40ノットの高速性を重視した、
新型護衛艦を増やすことで将来的にこの辺を拡充しようとしているね。
(DEX。海自内では相対的にコンパクトなフリゲートサイズと言われるが、排水量3000tなので他国水準ならけっこうでかい。)

実際に現代で起きた海上護衛にまつわる事件として、
昨年のトム・ハンクス主演の映画「キャプテン・フィリップス」はおすすめである。
とても面白かった。




では実戦事例について。
一方的な対地巡航ミサイルぶっぱなしを除いた、質問主さんの意図っぽい実戦事例。
すぐにイメージしたのは、やはりフォークランド紛争ラタキア沖海戦だろう。
フォークランド紛争については貴重な現代海戦の事例として、
以前にも記事で書いたことがある。 第二次フォークランド紛争?

今回の質問の答えになりそうな結果を言うと、イギリス海軍はアルゼンチン空軍の攻撃機から空母の護衛に成功している。
イギリス艦艇は4隻が撃沈され10隻も命中弾を食らうなど甚大な被害を出したが、最重要目標はイギリス空母であり、
水上艦で広域的な艦隊防空体制を敷いていたことにより、空母が存在する中枢まではアルゼンチン攻撃機の侵入を許さなかった。
もっともアルゼンチン側は対艦ミサイル「エグゾセ」を5発しか保有していなかったので、
大量に持っていたらさらに被害は拡大していたと思われるが、
それでも水上艦によるアルゼンチン機の撃墜数は21~28機にのぼるとされている。

イギリス空母から発進したハリアー戦闘機によるアルゼンチン空軍機の撃墜数は20機(対空ミサイルで16機、機関砲で4機)とされているので、
やはり現代海戦においての艦隊防空の重要性は議論を待たないだろう。
またこの時のイギリス駆逐艦は戦闘機だけでなく、対艦ミサイルに対しての迎撃も成功させている。


ラタキア沖海戦は史上初めて艦対艦ミサイルを搭載した艦艇同士が殴りあった海戦である。
とはいってもこれはイスラエルとシリアの弱小海軍同士の戦い方であり、
基本的には大所帯の海軍になるほど積極的には艦対艦で殴り合う機会はない。
艦がわざわざ互いの射程内に近づいて攻撃しても、逃げ足が遅く反撃されるリスクが高いので効率的ではないのだ。
第二次世界大戦以降、先進的な海軍国での対艦攻撃方法は、攻撃機による一撃離脱が基本となる。
しかし状況によっては、例えばイラン・イラク戦争中の小競り合いで、
アメリカ海軍のフリゲートはスタンダード対空ミサイルでイラン艦艇を沈めていたりもする。


まあ総合的に言って、現代の汎用艦の役割ってのは得てして防御的性格が強いものではあるけど、
ただ潜水艦や空母では補えない任務を多数こなすので今後も必要とされ続けるだろう。

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