業務用音響機器メーカーの雄ALTEC社は綺羅星のごとくの名機器を発表したがその中の一台「ALTEC 1520」は1953年の真空管アンプで出力管は6L6ppで35W出力、トランスはpeerless。シャーシはゆったりと大きく塗装はグレーのハンマートーンでパネルはブラック、有名なアルテックグリーンのアンプ達より一世代古い。ラックマウント可能。
ALTEC 1520は「Aタイプ」と「Tタイプ」がありAタイプは2系統のマイク入力用プリアンプを搭載している。Tタイプはプリアンプの代わりに入力トランス「4561」を搭載しているブリッジアンプで入力インピーダンスは15kΩ。。とあるがパネルにもある「ブリッジングアンプ」とは何のことだろう?
前段は初期の民生用プリアンプ同様に12AY7を使っていて当時ALTECのお気に入りだったらしい。終段は6SN7によるカソードフォロワー、固定バイアスでAB2級ドライブされる。またその対応としてチョークインプット整流回路。出力トランスの3次巻線からオーバーオールのNFBがかかっている。これで悪い音が出るわけがないと思わせる豪華な内容(?)
拙宅のALTEC1520Tは10年くらい前から居るのですがまだ稼動させたことはありません。点検してみる。
操作パネルはラックマウント時の裏板に取り付けられてアンプの顔の一部となるのが一般的な姿だと思うがこのアンプはなぜかアンプの側面に取り付けられている。ラックマウントしない場合はこの方が使いやすい。しかし場所を占領する(ラックへの固定部分、つばが大きい)のでこのパネルは後で移動してみます。幸いに固定金具はそのまま残っていてコンパチ仕様のよう。
早速電源入れてみましょう。
・電源トランス入力を105Vに設定(1と2端子)
・整流管抜いて通電してパイロットランプとヒーターの点灯を確認。バイアス用のセレン整流器出力電圧を測定(-135V)
・整流管挿して(できればスライダック使って恐る恐る電圧を上げていく)通電して終段6L6のバイアス電圧の測定(-30V、しかし実測値は+6Vだったのでとりあえずすぐにスイッチを切る)。バイアス調整ボリューム(シャーシ表面に軸が出ている)を調整してバイアス電圧を-30Vに。
・各部の電圧測定して回路図と照らし合わせる。カップリングコンデンサーはオレンジドロップに変更されていた。前段はオリジナルのままでいずれも無事だった。
ほぼ規定値に収まっています。この状態でスピーカーと入力を繋いで音出ししてみる。スピーカーは
DIATONEのモニタースピーカーP-62F(有名なP-610の先祖)を内蔵した見るからにモニター然とした骨董。通常のアンプで鳴らすと高域が寂しい感じだがALTEC 1520Tでは不思議にあまり不満を感じない。縦横揃っていてしっかりとコントロールされた音でこれは業務用アンプ特有な音味。若干ハムが載るが電源コンデンサーのメンテはしていないのでこれは致し方ないか。3本の煙突のようなブロックコンデンサーはMallory製の多分オリジナルだが発熱はないのでいきなりの爆発はなさそう(?)。
雑誌の試聴記などを読んでも概ね好意的な意見が多い。シンプルな回路なのでメンテも易しいと思われ堅牢な構造と相まって長く使えるビンテージアンプだと思います。数年後に発表される1560番台のアンプとは使用目的が異なるが高音質を目指していて遥かに物量を投入したアンプだということは素人目にもわかるし音の安定度にも現れているかもしれない。逆に1560番台のアンプから高音質を取り出すには真空管の選別やバランスの取り方などで結構なテクニックが必要かと思います。機会があれば触れてみたいが今の所縁がありません。
お読みいただきありがとうございました。
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