科学教材社 0-V-2 について

 多感な子供時代に読んでいた「子供の科学」や「模型とラジオ」「初歩のラジオ」には大きな影響を受けた。そして巻末の科学教材社のキットカタログは適当なケースに収めたような怪しいもの(失礼!)から真空管が多く並んでいていかにも高級そうなものまで色々あっていつも価格を見てため息をついていた。その中でも本誌の記事にも幾度か取り上げられていた再生ラジオの「0-V-2」は特に気になっていた。バンド切り替えがプラグインコイルで広帯域の受信が可能、スーパーラジオに比べて2球という簡単な回路なのに「世界の声がキャッチできる」と書いてあって純真な少年の夢は広がった。「科学教材社の0-V-2」は長く販売され非常に有名なのだが今まで実物を見たことがない。私が子供の頃にはすでにゲルマニウムラジオ以外でも2石レフレックスラジオ、6石スーパーラジオなどトランジスタのキットが売られていたが(思い出すのは母親が都会のデパートでこのゲルマラジオのキットをお土産として買ってきてくれたこと。「売り場で試聴したらよく聞こえたから」と購入したわけだが私の田舎は山間部で放送局や中継局からも遠くやゲルマニウムラジオにはちょっと厳しい受信環境だった。)中学生になっても真空管はまだまだ現役で送信機の終段だけ真空管というハイブリッドなリグもあったが再生ラジオの時代はすでに過ぎていた。

 写真で見る0-V-2はパネルや全体のバランスが良くてとても美しく魅力的な姿だった。同じ科学教材社でも0-V-1には全く興味が湧かなかったことから私の中身より見た目のカッコ良さが最重要という嗜好は当時から変わっていないようだ。ケースはなく何の変哲もない鉄板パネルのラジオなのだがバーニヤダイヤルとスイッチ付き再生ボリュームと豆コンの2つのツマミの配置、そして(これが最重要)横スリットのスピーカーの穴に胸がときめいた(変な子供だったかもしれない)。なぜ美しいのだろうかと考えるがよくわからない。パネルの縦横比は黄金比ではないようで若干横が長い。パネルとシャーシの縦横の大きさは一致もしくは近い数値。

 現在ではオリジナルを入手するのは殆ど不可能なようで諦めている。今回コピーを製作しようと思い立ったのは現在では販売していないサトーパーツのプラグインコイルが偶然に入手できたことから。webを眺めるとやはり同じ思いで自作されている方もいて参考にさせていただきます。

 

パネルとシャーシの製作

 科学教材社の0-V-2のパネルは少なくとも2種類あったようでスピーカーの横スリットの数が異なるのだがコピーするのは絶対に12穴でなければならずここは譲れない(左写真)。寸法はモニター画面の写真に物差しを当てて測定し、わかっている36mmのバーニヤダイヤルのネジ穴の間隔から縮尺を計算し決定した。多分誤差があるだろうが既製シャーシとの関係も考慮してパネルは幅200mm X 高さ110mmにした。パネルの穴の位置決めも同様に割り出した。オリジナルは厚さ0.5mmの鉄板だが加工のスキルがないので厚さ1mmのアルミ板に妥協した。やはり横スリットを開けるのが大変らしくwebでは3Dプリンターで製作した樹脂製のものまであった。オーソドックスに丸穴を開けてダイヤモンドカッターで横に切ってヤスリで形を整えた。

 シャーシはできれば折り曲げ機を入手して一から作りたかったのだがパネルと同じ幅200mmのシャーシ(リード製、裏蓋なし、板厚1mm)を購入し奥行きをパネルと同じ大きさに加工した。横の三角板はシャーシとパネルの固定部分を直角に曲げなくてはならないので傷つかないようにアルミサッシのLアングルを介して万力で挟んで行ったが1mm厚程度だと何とかなる。手持ちのスポットウェルダーでは溶接はできなかったので見えないところは接着剤も使う。

  

 使われているネジは多分旧JISのマイナスかと思うが幸いにも以前入手した立派な鉄ネジのストックがある。少し長いのでダイヤモンドディスクでカットして使った。

 

 何度か手直しをしながら仮組みしてみる。まだシャーシ穴は開けていないが嬉しくなってバーニヤダイヤルだけ取り付けてみた。

   

 部品も少しずつ集まってきたのでシャーシの加工にかかります。参考にしたのは写真と昭和の技術雑誌名物の実体配線図。

  

 この実体配線図を眺めているだけで自分で作ったような気分になれたし回路図と照らし合わせることでとても勉強になった。専門の絵師さんがおられたのだろうが毎回わかりやすく丁寧に描かれていた。記号によるパーツの配置図やワイヤリングはよく見るが実体配線図はパーツの凹凸、ワイヤーの被覆やハンダ付けの見本まで表現されていて立体的。部品の形が理解できたしこれなら自分でも組み立てられそうと思わせる。この絵が子供たちに与えた影響はとても大きい。下の実体配線図は初期のものでイヤホンが高インピーダンスとなっていてクリスタルイヤホンやマグネチックヘッドホン対応となっている。そのほか細かな違いもあって興味深いが描いているのは同じ方かもしれない。

 スピーカーは入手できていないので真空管ラジオシャーシの特徴的な切り欠きはまだです。パーツを仮付けしてみる。

 

 まだ入手できないパーツは真空管を含めてそれらしきものを取り付けています。ヒューズボックスは適当なものが入手できす現行パーツを当時の形に近づけるように加工した。写真のバリコンは200+20pFで多分表示帯域をカバーできないと思うので何とか探してみましょう。

 6BM8  6AU6、ボリューム、スピーカー

 

 小型のアルニコスピーカーなどはどこにでも転がっていそうなのにいざという時はなかなか適当なものは見つからず、あってもフェライトが多いのだがここは見た目でぜひアルニコ製を使いたい。入手したのは口径8cmでパネルにあてがってみると困ったことにちょっと大きいではないか!取り付け穴は既に開けてしまっていてネジ穴が半分隠れてしまう。金具まで製作していたのにこのままでは取り付けできずスピーカーの加工が必要になってしまった。スイッチ付きボリュームは運良くB型が見つかったのだがM7の取り付けナットが付属していなかった。仕方ないので別購入したがワッシャーと共に25個(!)セットしか見当たらない。また不良在庫が増えていく。。

 単連バリコン、箱入りの新品(当時もの)を購入したのは初めてかもしれない。ALPS B15 (10.5pF〜348.2pF)

 ネジや取り付け金具なども本体同様に油紙に大切に包まれていて箱も洒落ている。当時の価格は140円、重くしっかりした精密な造りで使うのがもったいないくらい。TRIOのコイルパックもそうだったが当時の日本のもの造りの素晴らしさには感動する。

 出力トランスは手持ちのものを使う事にしてこれでようやく主だった部品が揃い(CR類は未だ)シャーシの穴あけも完了した、、と思ったら

 

 なんと!バリコンの羽がシャーシに当たってしまうではないか!この向きで取り付ける場合はシャーシに穴を開ける必要があった。付属のゴムブッシュは劣化していたので交換した。

 これでようやく部品の取り付けまで完了した。すでに取り組み始めてから1ヶ月近く経過していて相変わらずの亀速です。

  

 

  

 新旧(と思われる)2つの回路図を比べてみると規格変更によるコンデンサーの数値の違い、6BM8の3極管部のグリッド抵抗値、π型平滑回路の入力コンデンサーの値が異なっているほか回路図には無いがAC100Vの片方が0.002μFでシャーシアースされているのだがトランスの100Vと0Vからと異なっている。ヒーター片方のシャーシアースも初期型の回路図にはなく興味深い事に実体配線図では消した(?)ような痕跡がある。そして初期型配線図のイヤホンジャックの記号はどうも間違っている(矢印が内部で下を向かないといけない)。また同調コイルも初期型はプラグインコイルを意識したような描き方で興味深い。再生ラジオの動作はなかなか分かりづらく各段毎に整理されている後期型回路図の方が理解しやすい(偉そうに書いてるが本当は自分もよくわかってなくて宮甚商店さんのyoutubeで勉強します)。後期型に比べ初期型は昔の回路図という趣きがある。

 出力トランスはたまたま手元にあったWestern Electric WE100Eの残骸から取り出したものなのだが引き出し線が傷んでいたので分解してリード線を交換する事にした。外枠を外すと

 

ばらばらとEコアが外れて落ちてきて焦ったがなんとか錫メッキ線(+エンパイアチューブ)を繋いで組み立てる。まだ揃わないパーツがあるが電源回路と低周波増幅段だけ配線した。折角の実体配線図を無視して行ったが高周波段の配線は低周波段とは様子が異なるので参考にします。通電して動作を確認したが回路図には各部の電圧の記載がない。平滑回路の抵抗はありあわせの5kΩで(趣のある大きな巻き線抵抗器を使いたかったので採用した。回路図では3kΩ)B電圧は140Vでこれでは低すぎる。5kΩの抵抗器で100Vの降下があるため電流は20mA。未配線の前段は数ミリアンペアだと思うがもう少し電圧を上げてみましょう。

 しばらくパーツが届くまで待つ事にします。

 

 昨夜突然gooブログの終了がアナウンスされました。gooブログgoogleとは関係なくNTT(〜Docomo)が主催していて21年間続いたのだそうです。多分利用者は300万人以上居られると思うが困った事になりました。ブログという形態そのものが時代と合わなくなってきているのかもしれないなどと思います。大家から「アパートを取り壊して駐車場にするから出て行ってほしい」と退去を迫られた住人と同じ状況だが異なるのはずっと無料で居座らせてもらった事で文句も言えません。今年(2025年11月)には閉鎖とのことで引っ越し先を探さなくてはならない。ブログデータは4/16から引き出せる(この機能は有料会員限定だった)とのこと。それでも復帰するまではかなり時間がかかる予感しかしない。この際きっぱりとやめてしまうという選択もあるが私にとっては備忘録的な役割も大きいので何らかの形で残すつもりです。ブログ主が亡くなっても記事は幽霊のようにweb上で存在し続けるものかと思っていたがこうやって消滅されるということがわかりました。300万アカウントのうちどれくらいがデータを引き出して引っ越しするのか興味がありますが発表されるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

Victor IDOL MQ-5 について(2)

 なかなか修理の目処が立たない 「Victor IDOL MQ-5 その1」だが最近もう一台入手した。

 「その1」はギアの破損複数カ所やアンプ部も不具合があり無駄な足掻きと感じながらギアを再生したところまでだった。今回入手したものも当然動かないがヘッドホンを繋ぐとホワイトノイズは聞こえるのでアンプ部は働いている様子。「その1」も最初は「ホワイトノイズは出ている」とあるから途中で壊してしまったのかもしれない。

 早速分解してみる。この機種は比較的分解しやすいのでとても助かる。裏表のパネル、必要な箇所のハンダ付けをはずして基板にリード線を固定しているテープを剥がす。メカニズムに固定してある回転検出基板を外すと基板とメカニズムを並べて展開できる。

   

   

 ベルトは2本で手持ちを探すがカウンターベルトの在庫がない。仕方ないので修理中の「その1」から借用する。ここでまずいことに気がついた。

 「その1」もそうだったが同じギアが破損している。20T 0.4Mで改めて探してみるがやはり見つからない。仕方ないのでフリーハンドで削り出した「その1」のパーツを取り付けた。再度組み立てて自作ギアによる初めての試運転はとくに問題なく動作した。これでケースに組み込んで様子を見ながらしばらく聴いていたが突然モーター音だけで動作しなくなってしまった。再度分解して確認するとフライホイールに直結するギアが固着して動かない。

 

 このプラスチックギアは中心の金属部分がシャーシに固定されその周りをプラスチックギアが回転する構造で金属とプラスチックが固着していた。IPAに漬け込んでいる間にここも「その1」から移植したがその後固着は外れてくれた。(アルコールはプラスチックを侵すことがあってやってはいけないらしい。気をつけます。)こういった固着もギアが破損する原因の一つかと思う。

 また仮組みして動作させるとモーターを原因とするようなハムが聞こえる。両ch、ボリュームを絞ると小さくなる。録音時のモニターではハムは聞こえない。

  

 ワウフラッターは及第、音質はナチュラル、メタリックなデザインは高級感があって好ましい。豪華なハードケースにヘッドホンなどの周辺itemと共に収まっている姿は所有欲をくすぐる製品だったと思う。Victor唯一のマイクロカセット製品のためかはわからないがメカニズムは複雑すぎて「やりすぎ感」が半端ない。巻き上げ軸駆動にギアを6枚介していたり材質に問題があったのか交換できない部位のギアが破損しやすかったりと現在残っている製品で正常に動作している個体は少ないのではないだろうか?「その2」に続いて「その1」もそのうちなんとか復帰させたいがこの製品の再生はなかなか困難で手を出さないのが無難と感じました。

 

お読みいただきありがとうございました。

後日談

 その後再生時のハムの原因がわかりました。再生以外の録音時はモーターが作動してもノイズは乗らず悩みましたが原因は録音/再生切り替えのスライドスイッチの接触が不十分だったということでした。今までもここが原因で再生時に大きなノイズが入ることがありましたが今回はモーター音だったので判断が遅れた。何回か録音ボタンのON,OFFを繰り返して(ごまかして)正常に戻りました。

 

National RN-GZ7 について

 National(現Panasonic)は1980年台初頭にマイクロカセットデッキ2機種を発売していてマイクロカセットオーディオに比較的熱心に取り組んでいたと思われます。1981年にはマイクロステレオラジカセのマイクロminic RN-Z600と組み合わせるハンディステレオ再生専用機RN-GZ7を発売した。色はパールブルー、パールピンク、うるし調の3色、価格は39,800円(うるし調は42,000円)

  

 コンパクトカセット再生専用機は1979年発売開始のSONYWALKMANシリーズが有名だが「マイクロカセットWALKMAN」は海外でのみ発売された(右写真 出典不明)。RN-GZ7は国内唯一のステレオマイクロカセット再生専用機で(これは誤りで少なくとももう1機種あったらしい)Nationalはマイクロカセットデッキやステレオラジカセでミュージックテープを作成しRN-GZ7で持ち運ぶというWALKMANと同じ戦略をマイクロカセットで展開したかったようだ。しかしマイクロカセットはコンパクトカセットの1/4(面積比)だが残念ながらプレーヤーの大きさはさほど小さくすることは困難だったようでWALKMANのようなカセットテープのケースサイズ!などという狂気のような製品展開に完全に遅れをとり後継機は現れなかった。

 RN-GZ7は再生とFF/REWのみ、カウンター、スピーカーなし、metalテープ対応、2.4cm/s固定、電源は単3電池2本もしくは外部電源3Vというシンプルな構成。入手した個体は外観は良好、電池を入れて通電するとモーター音はするが動作しないという定番のトラブル。気になるのはmic(マイク?)スイッチをON,OFFすると両方ともマイクが外界の音を拾う。これはどうした?

 

 ネジ7個はずすと裏、表のパネルが外れる。

  

基板はペラペラのフィルムで「折り返しをしないで」などと書いてある。また数本のネジ、基板に貼られたテープの一部を外すと基板とメカが分離する。バッテリーコードのハンダ付けは外しておく。

 

 実はハブの回転検出基板のリード線も外したのだがここは基板ごとでないとフライホイールがはずれないのでそのままの方が良い。ゴムベルトは伸びてスリップしていたが幸いフライホイールにこびりついていない。手持ちのストックと交換した。

 

 メカはあまり汚れや摩耗はなく簡単な清掃と注油を行った。フライホイールは軽量で径も小さいがギアのモジュールは大きく堅牢そうで安心感がある。

 

 録音回路、発振回路、録音再生切り替え、スピード切り替えスイッチ、消去ヘッド、入力端子が無くシンプルな構成。出力もヘッドホンだけなので小さなICが左右2個、電解コンデンサーの多さがやたらに目立つ。ボリュームも左右2個で幸いにガリはなかった。

   

 心配したとおりmicスイッチの位置に関わらずマイクが働いて外部の音を拾う。接触はチェックしたが問題ない。このスイッチは初代WALKMANでは2つのヘッドホンで音楽を聴いていた恋人たちがボタンを押して会話するためのスイッチ(ヘッドホン端子は1つだが)、もしくはヘッドホンで音楽鑑賞中に誰かに話しかけられたらこのスイッチをONにして音楽を止めてマイクに切り替えて会話するため、、かもしれないがそうであれば絶対に必要なさそう。マイクだけカットしてみたが無音時に少しノイズが混じる(入力オープンなのであたりまえか?pauseスイッチとして使えるかもしれない。)ワウフラッターは及第、姿勢を変えても動作は安定している。マイクの問題が未解決だがこのまま動作させると周波数帯域は狭くメタルテープでもノーマルポジションで聴きたくなる。

 RN-GZ7は国内未発売のSONY マイクロWALKMANととてもよく似ている外観。機能を絞った構造はシンプルで故障も少なくメンテナンスもしやすいだろうと感じた。録音機能がないのでカタログ同時掲載のマイクロステレオラジカセRN-Z600とコンビ使用が前提と思われるが価格が39,800円と44年前の製品としてはかなり高価でそれにマイクロラジカセが加わるわけで内容はシンプルなのだからもう少し廉価でも良かったのでは。ケースパネルは薄板板金の金属製だったりうるし調(!)を用意していたりと高級路線を狙ったのだろうがその割にデザインや質感はもう一歩と思う。

National マイクロminic RN-Z600と

お読みいただきありがとうございました。

 

後日談 

 その後やはり気になってもう一度中身を取り出した。マイク入力をショートしてみようと思ったが電位があってコンデンサーマイクのよう。そしてmicスイッチをみるとネジが1本欠損していて以前分解した様子もある。多分マイク音が混じってしまうというトラブル修理をチャレンジしたと思われる。今回もマイクをカットしただけ!という姑息な手段で対処したわけだが将来回路図が入手できたらもう少しなんとかしたい。(実は回路図の一部、出力IC周辺と電源回路分は入手できている。micスイッチをONするとモーターのドライブ回路がOFFになることだけはわかった)

 

 

AIWA CS-W7 について(2)

  AIWA CS-W7をもう一台入手したがすこぶる状態が悪い。外観は角が破損したらしく外側からL字アングルで補修してある(ずいぶん思い切ったもんだと感心した!)、スイッチツマミが2個欠品(代替品と交換されている)で軸が曲がっている、コンパクトカセットのリッドが破損など。さらに悪いことに中途半端な修理、改造がされている。100Vで通電すると操作しないのにモーター音がする。もちろんコンパクトカセット、マイクロカセットとも不動、FM受信しないなど。これ以外も不具合が山のように出てくる予感しかしない。一般的には完全にゴミ箱行きだろう。

 外観の問題点

 

 Lアングルは角が割れている訳ではなく裏蓋を止めるネジの不具合で大胆にも外から固定したらしい。。そして最大の問題点、コンパクトカセットのリッドの根本部分が割れていて以前接着剤でくっつけようとしたらしい跡がある。破断面の面積は小さく外部との間隔も狭いため補強が難しい。本体のヒンジ部分も改造されていてさてどうするか。。

 古い接着剤を断面が荒れないように気を遣いながら取り除き新たに購入したハイテク接着剤(?)で仮止めした。ピンバイスで細いドリルから徐々に太くしていき0.9mmまで拡大したらこのドリルを補強線として接着剤で埋め込む。硬化してからダイヤモンドディスクでカット、これを2カ所で行った。

  

 前回うまくいかなかったサブフレームごとの取り外しができました。(原因は中央の奥まったところにあるネジの外し忘れ)

 写真は先日整備したCS-W7をもう一度分解して失われているコンパクトカセットのヒンジ部分を観察した時のもの。比べて見るとかなりパーツが失われていてヒンジ部は新たに作らないといけないようだ。隣にあるビス受けも折れていたので位置を確認し仮固定し一緒にプラリペアで形を作る。可動部の固定は着脱を考えて金具のビス留めとした。

 

ヒンジとリッドの修理再生ができたがこの部分にはスプリングが入る。ホームセンターでスプリング買ってきて加工して取り付けて完成。力が加わると位置がわずかに動いてしまいスムーズに動作せず微調整に時間がかかった。また修理したリッドをさらに補強した。

 

 

 サブフレームにコンパクトカセット、マイクロカセットのメカニズムとメインの基板が固定されとてもメンテナンスしやすい。

 

 不動のコンパクトカセット部

  

 今回初めてパネルを外して内部を覗いてみると歯車やアームなどのメカがぎっしりと詰まっている。1個のソレノイドはオートストップ時に動作するだけの役割りらしくヘッドブロックを持ち上げたり首振りギアを動かしたりするのはメインのフライホイールに組み込まれたギアの勘合でされている。スイッチが押されるとそれぞれのギアが動き動力が伝達される。そしてハブ軸の回転はフライホイールからのゴムベルトで常時回転するプーリー(赤い矢印は逆のまちがい)による。したがって動作が中途半端で止まってしまうととても厄介なことになる。

 シャーシが削られていたりノイズに悩まれたのか不思議なアース線が取り付けられていたり、、とちょっと理解できない改造がされている。掃除、注油しながらメカニズムの動きを確認していく。通電すると操作しないのにモーターが回るトラブルはスイッチの接点を掃除して解決した。その際に接点ブライトを初めて使ってみた。水拭きが必要とあるので酸なのかと思ったら中性と書いてある。FF/REWスイッチが固定されないし動作しない、play時の巻き上げができない。

   

 play時の巻き上げの不具合は介在するアイドラーがスリップしているため。アイドラーゴムを計測すると内径4.8mm 外径8.8mm 厚さ2.5mm 、代替品を探すが発見できずさてどうするか。仕方ないので再生を試みる。100%アルコールで脱脂して適当な軸に固定しリューターで回転させながら平ヤスリを当ててみる。一応これで解決した。

 FF/REWはギアドライブで動作する。FF/REWの不具合の改善のためにメカニズムの解析を試みるがとても複雑。そのうちコイルスプリングの紛失に気付いた。修理が長引くと往々にしてこういったトラブルが増える。四つん這いになって探したが見つからずボールペンのスプリングを改造して代用したが後日めでたく発見し元の場所に収まった。

 モーター軸のプーリーをよくみると

 

 再生スピードが遅かったらしく絆創膏を貼り付けて径を大きくしていた。すべてではないが何とか動きを理解して動作するまで時間を要した。スプリングの位置のチェック、金具が所定の位置に収まっているか、ジョイント部は結合しているか、、など。ようやく動作した時は嬉しかった。あらためて清掃してプラスチック部はシリコングリスで潤滑。

 こういったメカニズムは一般的なのだろうか?フライホイールのギアによって回転モーメントの力を借りながら動作することは再生時にはフリーになるとはいえワウフラッターの低減が最重要のテープデッキでは考えられない。ラジカセなどのテープレコーダーではよく採用されるのだろうか?モーターやソレノイドが少々増えても機構を単純化する方があらゆる点で有利ではないかと思うが。特に途中でジャムるとカセットの取り出しすらできなくなる恐れがあり今回もそれが原因で無理に取り出そうとして破損した可能性が高い。

 

 そのほかの問題点

  

 ひび割れ(ヒンジの再生前の状態)、ネットのサビ、ビス受けが??になってる所が幾つか、、とすることに事欠かない。ひび割れは接着してもすぐに再発するので接着+金属ワイヤーを加熱して補強線として埋め込んだ。サランネットは錆落として塗装した。

 マイクロカセットにかかります。ベルトは3本ですべて残骸状態で時間をかけてフライホイールにくっついているのを落とす。そしてやはりピニオンギアが割れていた。

 このギアが使われている製品すべて(3台だけだが)割れていた。多分市中にあるAIWAのラジカセでこのパーツが原因のトラブルが頻発していると思う。このギアは後でなんとかするとして(一応噛み合っている)ベルトの交換して通電してみるがモーターは回転しない。電圧を測るとモーターのスイッチで途切れる。早速分解して接点を掃除したが組み立てる時に2個ある板バネの一つを紛失してしまった。すぐそばに落ちた気がしたがかなり探すも見つからない。このスイッチは特別な形態なので困ったことになった。

 色々考えたが紛失した板バネを再生することにした。もう一つを参考に適当な弾力のある薄板(大型リレーの接点)をリューターとダイヤモンドディスクで削って形を作る。

  

 紛失してから暗い気持ちだったがなんとかリカバリーできてホッとした。自分のミスで状態を悪化させると非常に落ち込みます。この辺りのハンダ付けも手が入っていたのでなにか問題があったのかもしれない。カウンターの動きが悪かったので丁寧に掃除してシリコンオイル、シリコングリスを注油した。ギアは未解決だがメカニズム関係は動作するようになった。

 押しボタンが割れていたのでプラリペアで修復。しばらくしたらマイクロカセット、コンパクトカセット両方が不動になった。(相変わらず近接撮影が慣れない)

  

 見るとマイクロカセットは修復したスイッチレバーが折れていた。自作した板バネが強すぎたわけだが樹脂の劣化も否定できない。プラスチックのヒンジの代わりに弾性のある薄板に置き換えて板バネも幅を狭くして作り替えた。コンパクトカセットはモーターの配線が外れていたためだったが紛失したスプリングが見つかって早速取り替えたら全く不調になった。全くやることに事欠かない。

 

 備忘録

 AIWA CS-W7のコンパクトカセットのメカニズムは難解ですべてを把握するのは困難。最後の裏蓋を閉じる時は裏蓋単体にして(側面のスライドプレートは1ヶ所のスプリングを外して分離して先に組み込む。組み立て後にスプリングを再セットするが紛失しないようにゴム系の接着剤で固定しておく)各スプリングとギアがしっかり収まっているか(ギアの黒いポストの先端がしっかりと出ていることを確認する)チェックしてから蓋を閉じること。

 マイクロカセットのヒビの入っているピニオンギア

 AIWA製品ではほとんど割れていると思われる10T 0.4M 穴径1.4mm のプラスチックピニオンギアだがなかなか見つけることができずようやく発見したところに注文したら送られてきたのは全く異なったものだった。すぐに連絡すると反応は良かったがこの製品の在庫はなさそうで返金になってしまった。これは国外だったが国内でもかつて販売していた個人の方に問い合わせたがやはり在庫はない。いずれは出てくると思うので時々検索することにします。

 仮組みして苦戦しているコンパクトカセットをしばらく聴いてみる。ワウフラッターは及第、ストロークの短いソフトタッチのボタンも快適だがロジックコントロールだと思っていたら究極のアナログからくりメカだった!マイクロカセットは当初は盛大なワウフラッターだったが次第に安定してきた。その後も何度か分解しリッドの開閉など問題が出ないように微調整した。低音を強調するスイッチがあるのだがONすると右スピーカーが歪む。ヘッドホンでもそうなので回路もしくは接点に問題がありそう。

 

 ここで懸案のピニオンギアを発見し海外の業者に注文した。到着までしばらく時間がかかりそうなので一旦蓋を閉じて待つことにします。

 しばらく待って届いたピニオンギアは全く違う製品(T8 M0.5)で二度目の今回もはずれだった。仕方ないので返品交換を申し出たが返金処理するという。たくさんの種類が発売されているピニオンギアだがこの規格(10T 0.4M 穴径1.4mm)は無視されているらしい。中国にこちらから返送する場合「着払い」はできない。郵便局で内容を「書類と物品」と申請すると郵送もだめでEMSになるという。料金は郵送は100円、EMSは封筒込みで1500円と大きく異なるしもちろん元払い。そして1年前から宛先の住所名称はキーボードでの打ち込み(プリンター印字)に限るとなったらしい。書かれている相手の住所は中文で全く読めない。仕方ないので一旦帰宅し翻訳ソフトで英語表記に変換し再び出向いて窓口で打ち込んでEMSで返送した。料金は返金と比べてもほとんど変わりなかったが手元から早く消したかったというのが本音。

 

 暫くぶりに再度開けて様子を伺う。すっかり忘れているので動作確認から。

 以下備忘録

 ・Cカセット

   ベルトは緩く外れやすい。→ 適切なサイズで再度注文する。

   リッドが開きづらく開口量も少ない。→ 調整すみ

   FF/REWがロックしない。 → 調整すみ

   REWが動かないことがある。→ 調整すみ

   PLAY時に巻き上げが止まる → カウンターベルト交換、アイドラーの脱脂、表円処理、注油 すみ

 ・Mカセット

   出音しないことがある。

   止まる。

 ・ラジオ

   全てのバンドで出音しない。

 ・ボディ

   割れ、ビス穴あり → 修復

   再生ツマミ未塗装 → 塗装

 かなり手こずったがCカセットの目処がついたので懸案のMカセットにかかります。AIWAのマイクロカセット定番のトラブルのギア割れで今までは割れたままで一応稼働していたのだがいよいよ限界らしく巻き上げしなくなった。「軸径1.5mm T10 M0.4 (厚さ2mm) 」はやはり見つからなかったので手持の軸径1.5mm T10 M0.5 厚さ5mmからまたフリーハンドで削り出した。M0.4ギアの外径は4.9mm  谷の直径は3mm だったので山の高さは約1mmになる。M0.5ギアの外径は5.9mmで1mmほど大きいがまず谷を削り込んでから外径を揃えたほうがよい(最初に外径をあわせると形状が崩れてしまう)。外径を揃えた後はヒゲが残っているのでマイクロスコープで見ながらサンドペーパーで表面を整える。

 

 未経験だが3Dプリンターで強度のあるギアが作れるものなのだろうか?特注を受けてくださるところもありそうだがコストが気になる。同規格の製品の情報をご存じの方は教えたいただけたら幸いです。

 早速取り付けてみるとマイクロカセットは特に問題なく動作した。そのうちコンパクトカセットのPlay時の巻き上げが不動になってしまった。原因はアイドラーでこちらも以前からの懸案。

 アイドラーゴムを再度研磨して少しスプリングを調整した。コンパクトカセットのリッドの再固定をプラリペア+金属で行いヒンジの位置を移動した(コンパクトカセットの操作ボタンと干渉していたため)。マイクロカセットのスイッチボックスの接点の形態を改造し信頼性を向上(?)した。

 

AIWA CS-W7 について

 コンパクトカセットとマイクロカセットのダブルラジカセはSANYOとAIWAから各々1機種ずつ発売されていた。その他にはTechnicsから据え置きデッキのRS-M212があったがこの形態の製品はその3機種だけではないかと思う。AIWA CS-W7 Tandemの価格はSANYO WNR-CMと同じ69,800円、発売も同時期の1982年で両者は当時としてはかなり高価のラジカセだった。SANYO AIWAともに第2弾がなかった事からあまり売れなかったのかもしれない。この分野の全ての製品に言えることだが発売されてから45年近く経過しているわけで正常に動作するものはほとんどない。SANYO WNR-CMは大型の余裕のある筐体だったのでいつもの「極小スペースの中にいかにして収めるか、、」みたいなメンテナンスではなくゆったりと作業できた一方でメカニズムがダブルということに加えて接続の切り替えの複雑さなどで結構手間取ることになった。内部の構造はとても良くできていてマイクロカセットのメカニズムも豪華で消去ヘッドがACだったりと贅沢な造りだった。

 

 幸いAIWA  CS-W7のservice manualは入手できた。

 

 

 裏蓋を開けてからマニュアルにしたがって分解しようとするがうまくいかない。サブフレームごと前面パネルから分離できるはずなのだが。。(後日中央の奥まったところにあったネジの外し忘れが原因と判明)

コンパクトカセットのフライホイールには劣化した平ゴムベルトがこびりついている。方針を変えてサブフレームからメイン基板を外してからメカを取り外して清掃。

  

 コンパクトカセットのカウンターはメカニズムから離れたサブフレームにあるのでサブフレームを外さずに長さのわからないベルトを装着するのはかなり困難かと思ったがなんとかうまくいった。ベルトは狭い隙間を向きを変えて走行するので途中にプーリーが2個介在する。樹脂のプーリーは掃除しやすいが金属プーリーやフライホイールに張り付いたゴムを除去するのは面倒で時間がかかる。金属の器具での掃除は傷をつける恐れがあるので爪楊枝、IPAなど駆使して辛抱強く行なった。

 平ベルトは千石通販さんから入手できるがサイズは直径表示されている。おおよその見当で古いゴムベルトを314mmで切って糊代で接着して仮にかけてみると少し緩いくらい。この場合の直径は100mmなのでそれより少し小さめのものをサイズを変えて何本か注文した。

 

 コンパクトカセットには3本、マイクロカセットにも3本のベルトが使われているがすべて原型をとどめていなかったので残りの5本は手持ちのものから試行錯誤して取り付けた。途中スプリングやパーツが脱落するたびに焦るが多くの写真(数十枚)と動画を撮っているのでなんとか元の場所に戻すことができた。サービスマニュアルの図解も参考にするがやはり写真が一番わかりやすい。スプリングの引っ掛けるところは接着剤で固定してあったので習ってゴム系ボンドで脱落しずらいようにしておく。機構はとても複雑だが動作に不具合がある時は時間をかけて解析しないと解決しない場合があるが一応稼働しているところはなるべく手を抜いて掃除と注油だけで済ませたい。「全バラして全てのパーツを洗浄しました」というような報告をよく見るが感心してしまう。自分は正しく組み立てる自信がまったくない。せめて状況をより悪化させないように気を使うのがせいぜいです。

 平ベルト以外は手持ちのベルトを取り付けてメカニズムの掃除と注油、結束を解いたワイヤーハーネスの走行が絡まっていないか十分にチェックする。マイクロカセットのカウンターに回転センサーが付属していてオートストップ基板のセンサーで状況を感知する。その距離はマニュアルでは0.5mmになっている。基板を戻すときにはラジオ基板のバリコン軸、コンパクトカセット、マイクロカセットともPLAY/REC切り替えスライドスイッチとの結合を確認する。縦横に走っている配線コードが太いのでハンダ付け部で脱落しにくいのは非常にありがたい。

 平ベルトが届きました。90x0.5x5を使うことにします。

 6t

 これでベルト交換は完了したのでとりあえずメカニズムを組み込んで動作させてみる。、、と問題が多数発生。最近話題の家電修理の達人今井さんみたいに一発で治って豪快に笑いたいが現実は厳しい。これから泥沼の手直しが待っている。

 コンパクトカセットのフライホイールは無骨だが大きく重い。軸にはスプリングがあって常に沈み込む方にテンションがかかっている。垂直での稼働が原則なのでこうして軸受に加重させているのだと思う(この形態が通常のカセットデッキはほとんど触ったことがない)。上を向けての使用は問題ないが裏返しての使用は明らかに問題が出る構造(誰もそんな姿勢にしないだろうが)、そしてスプリング受けの関係でS/Nは影響は出ないのだろうか?と思ってしまう。

 マイクロカセットのSankyo製のモーターは見たこともないくらい大きい。おまけにモーター軸のベルトプーリーまで巨大でフライホイールになっている。

 

  

 メカニズムの動作は両者ともソレノイドによるオートストップだがよく理解できていない。

 途中省略するが一応コンパクトカセットは稼働するようになってミュージックテープを聴いてみる。特に問題はなさそう。

 しばらく聴いていたら問題が発生しました。今までなんとか動いていたマイクロカセットのREW/FF PLAY時の巻取りができなくなった。また取り出してみると

 

 ギアが割れて軸から離れている。このパーツはフライホイールからのベルト駆動で常に回っていてPLAY、REW/FF時に首を振って左右のハブに回転を伝える役割り。軸径1.5mm 10T M不明 ギア直径4.9mm なのだが軸径1.5mmの製品は少ない。Mも不明なのでとりあえず軸径が1.4mmより小さい製品を入手して比較してみましょう。

  

 下が今回破損したギア、上3個が軸径が1.4mm以下の製品で軸径が2mmは多いがそれより細いものはなかなか見つけることができなかった。向かって上左からM0.5 8T     M0.4 9T    M0.3 12T で歯の大きさを比較すると破損したのはM0.4ということがわかった。M0.4 T10は発見できずM(モジュール)を合わせないとギア同士は勘合しないので上の中央の穴径1.0mmをピンバイスで1.4mmに拡大して仮組みしてみたがやはり外径が足りず首を振ったときに相手のギアに届かない。

 調べると一応プラスチック素材のピニオンギアの特注を受けてくれる業者さんは存在する。NCで削り出す設備を持っている個人の方や3Dプリンターを駆使してとんでもなく複雑なフィギアを製作してしまう方もおられたりとなかなか楽しそうで奥が深い。さてどうするか。手持ちのギアをもう一度さがすと以前入手していた軸径1.4mm T10が見つかった。ただしM0.5でこのまま使えずまたフリーハンドで削り出すことにした。

 オリジナルの直径4.9mm(外径)に揃えてからリュータービットやディスクで削っていく。

  

 こんな感じになったがなんとも情けない。精密なギアはバックラッシュを少なくするためか歯が垂直に立っている。拡大してみると全く形状が異なっていたしヒゲがあって面も荒れていた。気を取り直してさらに弦の溝を掘る精密ヤスリやサンドペーパーで形と面を整えていく。

 

 つばは省略し高さもぎりぎりまで大きくして破折しないように配慮した。実は全く同じ形状のギアの破折をAIWAのマイクロカセットで経験している。共通の弱点となっているので材質もしくは設計に無理があったかもしれない。練習を兼ねて何個か作るつもりだったが結構時間がかかりとりあえずこれを取り付けてみる。

 手直しはあったが幸いマイクロカセットは問題なく稼働するようになった。

 しばらくラジオ、コンパクトカセット、マイクロカセットを動作させて様子を伺います。

・コンパクトカセットの動作に不具合が出ることがある。→ オートストップの機能の関係かと思うがイレギュラーな操作をしなければ大丈夫そうなので仕様なのかもしれない。

・姿勢を変えるとコンパクトカセットのフライホイールに雑音が混じることがある。→ 軸のスプリングなどのあたりからだと思われる。水平使用には問題はないのでこれも仕様か?

・マイクロカセットのpauseでピンチローラーが離れた時巻上げ軸のトルクが大きくテープが動くことがある。→ モータートルクもしくは伝達経路での調整代はあるのだろうか?

両方向のダビング切り替えの操作はいまいちよくわからないが機能しているようだ。コンパクトカセットに比べてマイクロカセットの操作ボタンは重くストロークも大きくあまり快適ではない。

 相変わらず測定はしていない(できない)ですが聴感上の印象は両者ともワウフラッターは及第、周波数特性は少し高域が淋しい感じ(特にマイクロカセット)でTONEコントロールで補正して聴いています。今回はオーディオ回路は手付かずなのでひょっとすると劣化などがあるかもしれません。立派なボディと大きなスピーカーのおかげで迫力のある音が楽しめました。

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

 

HITACHI TRK-4600M PERDISCO について

 ステレオマイクロカセットを搭載したラジカセ、HITACHI  TRK-4600M PERDISCOは日立家電サービス技術認定店資料 サービスブック によると1981年頃の製品

 入手した個体は汚れ、欠け、パーツの欠品もありなかなか手強そう。ACアダプターを接続するもラジオ、テープ共に反応がない。ところがヘッドホンを接続すると低周波回路のホワイトノイズが聞こえる。

 

 早速開けてみると

  

 どうやら左右のスピーカーは断線している。よくみると端子から伸びているリッツ線が錆びてぼろぼろ。

 

 直径50mm 厚さ12mmというスピーカーはポケットラジオなみの大きさで「これで音楽聴くか〜!」というレベル。それにしてもこんな酷い劣化は初めてみた。幸い同寸の製品は流通していて注文して翌日には届いて交換した。マイクロカセットのベルトはドライブベルトとカウンターと回転検出センサー駆動ベルトの2本だが両方とも寿命が尽きていて交換。

  

 フライホイールも小さい。これでマイクロカセット、FM.AMを聴いてみるととても小さい音量、ボリュームも反応なくこれはどうした、、?

  

 原因はまた音量調節ボリュームだった。この平型2連ボリュームの不良率は高く同じ構造のトーンコントロールボリュームも機能していない様子。一応分解掃除して組み立ててみるも芳しくない。同型の代替部品も見当たらないのでまた手持ちのボリュームを改造することにします。

  

 音量調整、左右バランス、音質の3ダイヤルが一列に並ぶ。ダイヤルはオリジナルを使い他と位置を合わせる必要あり。抵抗値は目を瞑り仮配線して出音を確認してからなんとかダイヤルを取り付けてハンダで基板に固定する。

 他にもツマミの欠損、角の欠け、スピード切替スイッチの接触不良などがあったが今回はスルーした。アラーム機能付きのデジタル時計は別電源のボタン電池。しかし液晶は寿命がきているらしく薄く見づらい。あとはメッキ磨いて気の済むまで掃除して

 極小のスピーカーでは低域は最初から諦めていると思うが現代のスマホのような大きさでもあの音響が得られることを考えるとありきたりの表現だが技術の進歩には感心する。代替ボリュームは将来本来のパーツが入手できたら交換したいし不十分な部分はいずれ手を入れたいと思います。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

SANYO MR-88 について(2)

 SANYO MR-88はステレオマイクロカセットハンデイ機が本体にドッキングするというユニークな機構をもつステレオラジカセで以前に修理にチャレンジして一旦復旧して動作していたが再度不調となりそのまましばらく時間が経過していた。不調は主に子機で

 ・電源を接続すると(電池を入れると)操作しないのに勝手に通電してモーターが回転する。

 ・速度切り替えで2.4cm/sが動かない。

というものだった。特に勝手に動作するトラブルはこの機器では頻発しているようだ。幸いに同回路と思われる(製品の名称は異なる)サービスマニュアルが最近入手できたので再び原因を探ってみる。

 マニュアルにはオートストップ機能についての詳しい解説まで掲載されていて素人にとっては非常に助かります。

 モーターの制御基板は1.2cm/s 2.4cm/sの切替も含んでいるので2.4cm/sが動作しないことから最初はこの部分のトラブルだと思っていたのだが

 外部から3.0Vを直接この基板に通電すると特に問題なく稼働する。この基板はブラックボックスで回路図には書かれていない。面白いことに他の機器も同様の扱いで、、、ということはこの辺りの信頼度は高くトラブルは考えなくて良いらしい(ホントか!)。

 電源の流れはQ703をSCR701で制御している。まずこのあたりの電圧を測定してみるとサイリスタのG(ゲート)の電圧は回路図と大差ないがA(アノード)はON/OFFでもほとんど変化がなくQ703は常に導通状態。これはサイリスタが逝ったのかもしれない。早速外してチェッカーにかけてみると

 

 特に問題はなくがっかりする。ついでにQ703トランジスターもチェックするもこちらも大丈夫そう。そこでこの基板の電解コンデンサーを交換した。外したコンデンサーの22μFをチェックすると4個すべてが不良だったのでこのコンデンサーは欠陥品なのかもしれない。これで通電すると何もしないのに動作してしまうのは解決したが、2.4cm/sはやっぱり動作しないしオートストップがかかってしまうようになってしまった。それにしても電池の液漏れの影響は大きく作業しているとリード線がポロポロ外れる。その度にやる気がそがれてしまいこの際すべて交換したくなるくらいだ。回転センサーの信号がちゃんと届いているか、モーター制御基板にしっかり電圧が供給されているかのチェックが必要。

 外部入力6V→3Vのダウンコンバーター Q711は回路図PNPだが実機ではNPNに変更(もしくは元々違う設計)になっていて極性が反対になっていて頭が混乱する。ここを切りはなして直接3Vを加えて各部を再度測定すると問題ありで調べると単純な配線の不具合が原因。意を決して度重なるハンダ付けで荒れて美しくない配線をやりかえることにした。傷んでしまったワイヤーは新たなものに置き換えたりハーネス状のところは心線をしっかり処理してまた基板の接続部分も清掃して新鮮なハンダを盛って。

 

 これで勝手に動作するのは改善されオートストップ、FF/REWも動作するようになった。ところがやはり2.4cm/sは動作しない(ぎこちない)。モーター制御基板に直接給電すると問題ないのだが同じ3Vでも電源回路を経由すると不具合が生じる。これはなぜだろう?わからないのでとりあえずモーター制御基板の電解コンデンサーも交換してみると一瞬2.4cm/sで動作したがすぐに沈黙で変わらず。

 ここからしばらく進展がなく困ってしまった(困るのは何回目だろう?)。制御基板の回路図がないのでせめてICの規格を調べてみるがNational G518で検索しても見つからず。(写真は未整備のMR-88)一時は別回路で作るか?まで考えたが何回か基板のハンダ付けを繰り返すうちに突然改善した。理由は不明だがハンダもしくはパターンの断裂があったのかもしれない。1.2cm/s 2.4cm/sともに半固定でDCモーターにかかる電圧を変更して回転数の微調整をしているのだが確認すると良好に調節できている。

 

 外部電源の6Vのダウンコンバーターも配線を確認して結線するとこちらも問題なくこれでようやくまともに動作するようになった。。と喜んでしばらく聴いていたら1時間ほどでまた2.4cm/sが不動になった。また振り出しに戻ったようだ。

 

その2

 「その1」が行き詰まってしまったのでしばらく考えることにして次にかかります。症状はほとんど(全く)同じで電源を繋いだだけでスイッチが入ってモーターが回りアンプにも火が入るというもの。回路図のQ703のEcは殆どフルにでてしまっている。ところが再生ボタンを押してもテープは走行しないので目先を変えてベルト交換から行います。

   

 アンプや電源ばかり気を取られてメカニズムに手を入れるのは久々。基板とメカニズムを分離するときに回転検出基板とリードスイッチははずしておくと展開でき作業しやすい。フライホールの直径は大きく安定走行が期待できる。モーターの支持は少し変わっていて薄板のベルトカバーにゴムでフローティングされている。カウンターゴムベルトは交換がちょっと面倒そうだったのでスルーしメインベルトだけ実行した(径が小さくちょっときつい。大量にあったゴムベルトもかなり消費した)。

 これで走行系は動作するようになったので勝手に巻き上げ軸が回っている状態でテープを挿入して再生してみると特に問題なく出音される。ワウフラッターは及第、音声出力は少し小さめ。

 また電源部に戻ります。回路図を見るとサイリスタの制御の不具合で電流が流れてしまっている。原因は回路にあるカップリングコンデンサーの漏洩と思われる。22μFが4個使われているので早速交換します。

、、、ところが改善しない。各部の電圧は一部を除いて近似値を示している。サイリスタとQ703をはずしてチェッカーにかけてみると両方とも問題ないと出る。Q703を基板に戻しベース電流を加えるとちゃんと動作する。そこでやはりサイリスタが怪しいと踏んで同じ製品を検索、注文した。

 サイリスタの品番は03P05Mで検索すると僅かにヒットする。価格は108円/個だが送料がその数倍かかる。

 

 早速交換すると幸いにも正常に動作した。チェッカーでは問題なかったがやはり故障していたということになる。Q703のスイッチング後の出力電圧Ecを測定するとOFF直後は0.50Vほどあるが約30秒で0.00Vになった。並列に電解コンデンサーが入っているのでこれは仕様なのだと思う。この機種で頻発しているトラブルは電源基板の電解コンデンサーとサイリスタの不良が原因のようだ。

 以前も一旦復帰したのちに症状が再発しているのでしばらく稼働させて様子を見たが安定しているようなのでケースに納めます。

 ワイヤリングは最初の写真を参考にできるだけ忠実に再現します。ただ基板にはスポンジが貼り付けてあったが経年劣化するので今回は通常のテープに置き換える予定。

 

 実は本体は未整備なのだが特に問題はなさそう

 

 はじめて完動状態で聴いたがあまり大きな迫力のある音は出ないのは小型のスピーカーだから仕方ない。ラジオの感度は良いがFMのステレオが外れやすいのは共通の弱点か。親機は手が空いたら少し手直ししたいところもある。

 

その3

 その2と同じカラー。本体、子機ともに問題がある。まず子機から

 勝手に電源は入らない。操作するとモーター音はするが回転しないという定番トラブル。早速掃除しながら分解してみる。

   

 電池の端子に液漏れの跡がある。幸い重症ではないのでスプリングを外して磨いて対処した。基板とメカニズムを分離してゴムベルトを交換して聴いてみると

 

 再生開始後に0.5秒ほどで停止する。これはREW/FFも同様の症状。停止が非常に早く原因はオートストップの異常か?しかしQ703の出力電圧Ecを測定すると停止時でも0.5Vあるのでやはり問題が発生している。その2と同様にまず電源回路の電解コンデンサーとサイリスタを問答無用で交換することにします。

 取り外したコンデンサーとサイリスタ2台分

  

 全てチェックするとコンデンサーは全滅、サイリスタは「Thyristor」と表示される。でもサイリスタはそれでも不良。

 交換して無事動作するようになった。またこの状態でしばらく試聴してみましょう。気になるのはQ703のEcで動作時は2.8Vだがストップ直後は0.5Vその後次第に低下するのに結構時間がかかるのと0.02Vまで下がってからなかなか0にならない。

 動作は大丈夫そうなのでケースに組んでみるが

 

 残念ながら回転の安定が不足しているようで向きを変えるとワウする。これではダメなのでまた取り出して検討だが一発で決まらないところにプロとの大きな差を感じてもどかしい。分解するたびに細いワイヤーが脱離してその始末に時間が取られる。ドライブゴムベルトを少し大きなものに交換して落ち着いた。ベルトはきつくても回転に影響を与える(当たり前だがモーターが非力だと特にその傾向が強い)。改めて組み立てて乾電池で聴いてみると

 

 回転は安定している。どの器機でもしっかりと性能を出すためには調整が必要だがマイクロカセットは調整域が狭くとてもクリチカルなのだと思う。

 本体と合体すると安定して再生している。良く言えば可愛らしい音だがこの装置に迫力を求めるのは無理。本体はAMはいいのだがFM放送を受信せずでこちらも修理が必要。