ラジカセや黒電話を知らない若者が話題になる昨今だから白黒テレビを見たことがない世代が増えてるのも当然かと思う。(我々のもう少し先輩は電話のない時代、もっと上は電気のない時代を経験して来たわけでいずれもそんなに大昔の話ではない。私と同世代の山梨県出身の方は子供のころは家の中に牛がいて一緒に生活していたという。その方今はスマホを持ち歩いているわけだが長い人間の歴史で一世代でこんなに劇的に生活様式が変化したことは無かったことだろうと。)実家で初めて購入したテレビは今は無い三洋電機の真空管式だった。家電量販店ではなく街の電気屋さんから購入したわけだが各電気屋さんは特定の家電メーカーの代理店で実家の御用達は三洋電機のお店だった。だから実家はテレビ以外でも冷蔵庫や洗濯機、クーラー(エアコンではない)もすべて三洋電機製品だった。電気屋さんに「〇〇持ってきて」とお願いすると配送、設置、使い方の説明まで丁寧にしてくれた。カタログで選ぶこともあったと思うが大抵は予算を告げて適当に選んでもらってたと思う。私が子供の頃からよく来られていた店主の方は今でもご健在で、世代交代したそのお店とはまだお付き合いがあるとのこと。なんだか嬉しいしほっとする。
初めてのテレビは小学校2年生の時で名前は「日本(にっぽん)」。調べてみると白黒放送は1950年の試験放送から1977年まで続いていたらしい。試験放送といえば先日の帰省時に84歳の母親から聞いた話。故郷は新潟県の山間部なのだが山頂にある気象観測所(測候所と呼んでいた)に土曜日の夜友人と試験放送を見に行ったことがあるという。母親は1935年生まれで中学生の時というから試験放送開始の1950年であれば中学3年生で辻褄は合う。雨が降っているような画面には静止画の「イ」が見えた。。その話を聞いたときはちょっと興奮した。テレビ放送の歴史の証人が自分の母親だったとは。
永くテレビのお世話になった世代なのにほとんど知識がない。電気に興味を持ってからもテレビは自作も修理もできない遠い世界のものだった。コロナ禍のstay homeで偶然に興味を持った白黒テレビは入手してもほとんど故障していて修理するには最低限の知識が必要となり今更ではあるが学習しようと思い立った。webでは解説している記事は少なく地元の図書館でも文献は見当たらない。古書で入手したのはNHKのテキストで「カラーテレビ教科書 上下」 私のような初心者にも分かりやすく親切に解説されていて数式もほとんど登場しない。読んだのは白黒テレビに関係する所だけだが要約すると
日本のテレビ方式は走査線(横方向の数)は525本、1秒間に30枚の画像、縦横比3:4で実際は1枚の絵を走査するのを2回行っているので1秒間に60回行われる。発射された電子ビームの方向はブラウン管周囲の垂直、水平偏向コイルにノコギリ波電流を流すことで1/60秒で画面いっぱいに規則正しく並べられる。送像側と受像側の走査を一致させることを同期といい同期信号は映像信号に付け加えられている。
偏向コイルに流れる電流はノコギリ波で
グラフのように次第に電流が増えると電子ビームは横(縦)方向に移動していく。端まで行くと帰線期間で急いで戻る。この繰り返しだが水平走査のこぎり波は15,750Hz、垂直走査のこぎり波は60Hzで同時に加わるので電子ビームは斜めに並べられながら画面を埋めて行く。横方向の移動は1本あたり1/15,750秒かかり525本埋めるには1/30秒かかる。一気に埋めるのではなく1/60秒経過して一旦下までくるともう一度上に戻されて一段ずれながら後半部分を1/60秒かけて下まで走査する。これで1/30秒で1枚の画が完成する。
(白黒)テレビ信号(輝度信号)は映像信号と帰線期間の水平帰線消去信号(走線が戻る時の不要な部分を画面から消去する信号)に水平同期信号を重ねたもの。1/60秒毎に表示される画(フィールド)の境目には垂直帰線消去期間があり水平同期を安定に保ったり飛越走査(1枚の画は2つのフィールドで表示するが2枚目のフィールドの走査は1枚目の走線の間を埋めるように行われる。)のための仕掛けがある。正しく表示するためにはテレビ信号から映像信号を取り除いて(別にして)同期信号だけにしてさらに水平同期信号と垂直同期信号に分離(周波数分離)されて水平、垂直偏向回路に加えられる。ノコギリ波は各々の回路で発生させてそれを同期信号によってコントロールする。
垂直偏向回路のノコギリ波は約60Hzに対し水平偏向回路は15,750Hzとやや高いので安定を保つためのAFC回路が付いている。また水平偏向に要する電力は垂直偏向の100倍程度必要とするため出力トランジスターとダンパーダイオードを組み合わせた回路で能率を高めている。偏向コイルに並列に入っているフライバックトランスでブラウン管に高電圧をかけるほか他の電源を供給している。
実際入手してみてのトラブルは「電源が入らない」「画音何も出力しない」「ラスターは出るが受信しない」「画が安定しない」などさまざまだった。素人のできることは限られるので安全に注意しながらまず電源のチェックを行うがこれをしないと通電できない事も多い。低圧部分の平滑コンデンサーはほぼ寿命が切れていて要交換、整流素子がセレンの場合も同様で電圧が下がっている場合はシリコンダイオードのパラ接続などの対策が必要だった。これで通電してみてラスター(砂嵐)が出なかったら水平偏向や高圧回路、輝線だけだったら偏向回路の発振部の故障を疑う。画面が出なくても電波入力して音声が出れば一応チューナーやIF回路、低周波増幅回路は動いている。ラスターが出ればVHF,UHFとも入力を入れて反応をみる。2つのチューナーのうちのどちらか片方が故障していたり両方壊れていることもあり反応が無い場合はチューナー出力にIF周波数を入れてみてそれ以降の状態を判断する。チューナーはシールドの関係で分解しづらくブラックボックス状態でユニット化されている。当時もこの部分の故障はユニット交換で対応されたように思われる。米国からの輸入品はVHFの受信周波数が一部異なるので(特に多用された2ch)注意が必要。画が出ても安定しない場合は同期がされていないので信号を入れながら同期分離(振幅分離、周波数分離)の波形を観察する。ラスターが出て(IF周波数を確認して)IFから信号入力しても反応なければ電圧に注意しながら映像信号の増幅段にビデオ信号をつないで画像出力の有無を確認して不具合の場所を探る。
プリント基板の箔の断裂もあり特に基板直結のVRは力がかかりやすく発生することがある。過去に修理を試みたが途中で断念したらしいものもあり結線がされてなかったり間違っていたりで気付かずに時間がかかった事もあった。夥しい埃も溜まっている事が多くいきなりの100V通電は発火の危険がある。
今回入手した文献(古書)は上述のNHKのテキスト「カラーテレビ教科書 上下」のほか
特に「テレビの調整と故障修理 ラジオ技術社」は1958年12月初版で長期にわたって重版された名著らしい。NHKの本放送が1953年だからその5年後の出版でもちろん真空管式のみの記述。
奥付きの温かく熱意ある文章や「STAR」をはじめテレビキットや部品供給会社のCMもいくつか掲載されていて現在の家電大企業に混じって奮闘していた中小企業の頑張りにちょっと胸が熱くなる。
今回新たな(これもかなりのレトロだけど)機器を導入した。
LEADERのLSW−250 SWEMAR GENERATOR はスイープジェネレータとマーカーなのだが信号端子が見た事がない同軸コネクター。一般的なM型のネジ径とピッチは一緒なのだが中心にポツンと端子があるだけ。この端子はクリップでつまめないのでどうしてもコネクターが必要なのだがnetで調べるもわからない。お店に行って聞いてみよう、、ところが、、
しばらくぶりの近場のアマチュア無線とパソコンのお店は、、なんとすでに閉店廃業して違う業者が入っていた。数十年前にこの地に来た時にはすでにお店はあってしばし呆然としたが、ならばと隣町の大きなパーツ屋さんまで片道50分かけて行くと、、ここも定休日ではないのに電気が消えてビルの1階の窓にはブルーシートが貼ってある。隙間から覗くとガランとした室内、、すごすご帰って改めて調べるとこちらのお店は移転していた。移転先を確認してもう一度出かけると規模は数分の一かと思われたがとにかくお店はあってもうこうなったら続けてくれるだけでもありがたい。よく知らないがやはり厳しい業界なのかもしれないが勝手ながらマイナーな趣味に付き合ってくれるお店はなんとか存続してほしいと切に思う。
店員さんに端子の写真を見せるが見たことがないとの事。M型プラグの中心電極がスプリングで可動するイメージだったのだがそういうのはないらしい。仕方ないのでM型コネクターを改造して中心部を短くカットした
汎用のコネクターではなさそうだったがこれでなんとかうまくいきました。ケーブルを4本作ったが本体価格より高くなってしまった。今回購入したHantek DSO5102PオシロにVとHを入れて波形を見ると
30MHzでsweepしているのだがFrequencyは25KHz〜125KHzあたりを表示するがこれは? Vは60Hzのノコギリ波、マーカー波Dレンジは高調波なのか表示は半分になっている。このオシロは100MHzまでの測定範囲となっていてこの限度の違いで3段階の価格設定がある。ハンディタイプを除いて最廉価製品で3万円程度で購入できるのはコストパフォーマンス抜群でアマチュアにとってはありがたいのだが実際使ってみるとノイズが結構発生するようでこのあたりはしょうがないのかもしれない。テレビの調整と修理ではIF段までの調整のほか偏向回路の発振と同期信号の確認でオシロスコープは欠かせない。
現段階では思ったような波形を出せずにLSW−250 SWEMAR GENERATORは残念ながら稼働していない。なぜだろう? これはなんとかしたい。
同じLEADERのSIGNAL GENERATOR LSG-16を導入した。6レンジで100kHzから300MHzまでカバーしている。内部から1KHzの変調をかける事ができる。
テレビの修理をするのにVHFの発信機は必要だろうと思って購入したがLSW−250 SWEMAR GENERATORに内蔵されているSGでカバーできるので必要なかったらしい。しかしこの個体は新品同様な外観で動作も安定しているのでまあ良しとしよう。とても使いやすいので実際結構活躍した。
LEADERのPATTERN GENERATOR LCG-384 を購入した。
地上アナログの2chと3chに8パターン表示できる。
電池ボックスが破折していたが外部電源をコネクターの小改造で接続すると動作した。これでビデオ入力改造していないテレビにつなぐと縦横線が結構乱れている個体があり適切な調整は必要でやっぱり出画の確認だけではダメだと認識。