JBL SE400Sは画期的なアンプとしてオーディオの歴史に残る製品、という意見に異論はないと思います。発表された1960年代はまだまだ真空管アンプが主流であって、次世代アンプと言われたソリッドステートアンプは真空管をトランジスターに置き換えたような構成が多かった。トランジスターの特性を十分に生かした初めてのアンプで基本的な構成は現在でも変わっていないと言われます(実は現代のD級アンプはよく知らない)。出力は40W+40Wで当時としてはかなりの大出力だったがより高出力が求められて60WバージョンのJBL SE460が発表された。
当時の試聴記事を読むとこの2種類のアンプの音は微妙に異なっており、それはプリメインアンプのJBL SA600とJBL SA660の違いにも表れているとのこと。
JBL SE400Sのマニュアルや回路図などの資料は入手できるのですが
JBL SE460("S"は付かない)は見当たりません。しょうがないので入手できるJBL SA660のメインアンプ部の回路
電源電圧以外はほとんど同じですが初段の差動増幅部、NFBなどが異なっています。これはメインアンプとプリメインアンプの違いかもしれない。素子は同一かは実機を開けてみないとわからない。
現在の状況は一応両chとも音はでますがホワイトノイズのような雑音が混ざります。今までの修理状況は不明です。JBL SA600、JBL SA660は各々JBL SE400S、JBL SA460に簡易のプリアンプを搭載しフロントパネルをリアーに回して新たに魅力的なフロントパネルをくっつけたものでデザイナーは当然アーノルド・ウォルフ。
プリメインアンプの修復も控えているのですが底部にある入出力端子とも相成って複雑極まりない構造です。JBL SE460を十分にメインテナンスしてお勉強してその日に備えようという目論見。
下はJBL SE400でフロントパネルのデザインは一緒で(カバーの塗装色が異なる)ロゴ見ないと見分けがつかない。
しかし奥行きが異なります。これはJBL 400Sも同様です(カタログの仕様で確認)
奥行きが長いのは電源トランスが大きいため。
基板は片ch1枚づつでシンプルです。しかし電源ボードの裏には電圧かさ上げ用の(?)チューブラー型のコンデンサーが6個並びます。ここはナントしてもチューブラー型を探さなくては、、。
外装、内部ともとても綺麗で手が入った形跡はありません。一般の売買では新同、ニアミント、極上といったところ。このまま何もしない、、という選択枝もありです。いい加減な修復は許されない。
電源ボードの裏ですがぐちゃぐちゃの配置。ラグ板2枚に部品を渡してますがこれではブロックコンデンサーやチューブラーコンデンサーの交換が容易でない。美しいのが好きなJBLらしからぬ。ブロックコンデンサー用の大きな穴が開いてますのでここに複合コンデンサーを収めようとしたのかもしれない。途中で設計変更があったのか。(後にこの穴はJBL SA600などのプリメインアンプの電源用と判明)
メインの基板は2枚ですが中央に向かい合わせでリベット固定(!)されています。ブロックコンデンサーもリベットでカシめてある。修理、交換はするなという意思表示なのか絶対に壊れないと思ってたのか、、。このリベットを外すかこのままで部品交換するかは迷うところです。ガラスエポキシ基板なので裏から光をあてると透けて見えるのでなんとかこのままイケるかもしれない。
ケースを外してしばらく稼働させてみるとやはり片chにホワイトノイズが入る。片chということは電源ではないということでせっかく用意した電源のコンデンサーの交換は見送ることにします。メイン基板のパーツを爪で弾くと雑音が入る。いろいろと叩いて行くと初段のDCバランスの半固定ボリュームが怪しい。
両chともノイズが入ります。とりあえず取り外してみました。
カシメを外して分解してみると
かなりの部品数で高級品ということがわかります。抵抗体は巻線です。摺動子と端子は経年変化で黒変している。
コンパウンドで研磨しアルコールで洗浄してまた組み立てて再使用しています。また50年使えるでしょうか?
トリーマを回してスピーカー端子にDCが出ないように調整。
雑音は消えて快調です。動作も安定している。
JBL SE400と比べるとやはりかなり異なる。急に解像度が上がって現代風の音。音場が広がってステレオ感が増す。
これ以上何も必要はないのでは、はちょっとオーバーか。
オールシリコントランジスターのコンプリメンタリのアンプは今や標準仕様ですが、電源のノイズ対策や保護回路もないというプリミティブな構成が逆に良い結果をもたらしているような気がします。電源が不安ならクリーン電源につなげばいいし。(賛否いろいろですが、、)
今回は全く修理費用をかけずに完了してしまいました。集めたコンデンサー類は次回の修理に廻すことにします。オリジナル度の高いアンプだったのでこの対処となりました。
お読みいただきありがとうございました。