京都つれづれなるままに

京都好きの旅日記。お寺、神社、グルメからスイーツまで!思いつくままに。

妙心寺退蔵院襖絵プロジェクト②

2020年05月18日 00時10分00秒 | 日記
 月刊文藝春秋6月号に妙心寺退蔵院襖絵プロジェクトの記事が掲載されているのを"絵師"村林由紀さんが6月12日のFacebookに投稿されていました。早速買い求め、自分なりの感想を記事にしてみます。





今回はその二回目です。
2011年からプロジェクトがスタートし9年の歳月が流れました。
壽聖院の襖絵の完成時には退蔵院方丈の襖絵の完成もそう遠くはないと思い定期的に"退蔵院襖絵プロジェクト"のHPや彼女のブログを見ていました。
(当初、プロジェクトの予定は三年間でした。)

400年を越える伝統ある退蔵院方丈5室76面の襖絵ともなると我々凡人の想像を遥かに超える重圧があったのだと思います。

これまでの間に禅宗寺院の専門道場に入り"禅"に打ち込み、禅の勉強や坐禅に傾注していく彼女の姿があったようです。
そこから何かを見出し、作品のヒントにしようと、もがき苦しむ彼女がいました。

やがて彼女は退蔵院を離れる決心をし、石庭で有名な世界文化遺産龍安寺へと製作の拠点アトリエを移します。

その事は知っていましたので龍安寺に行く度に職員の方や学芸員の岩田さんに村林さんの近況をお聞きしていました。

このプロジェクトの趣旨には
①若手の絵師を育てる事。
②後世に技術を伝承する事。
をも主眼に置かれたプロジェクトです。

このプロジェクトに関連して最高品質の和紙をすく技術の伝承や絵筆や岩絵具や墨、建具にも最高品質の物が用意されました。
日本絵画の伝統、また、それらに関連する用具作りの伝統・技術の伝承をも目的とされているのです。







(彼女が練習で描いた雀やカエルが巻物になっています。)

今やデジタル技術を使いオリジナル作品と遜色のない高精細複写を使った"ニセモノ(?)"を見せる寺院が増えているのも実情です。
しかし、それでは"絵を描き、そして伝える"と言う伝統は継承されないのです。

そう言う意味では現代に"御用絵師"を育てる試みは大変に意義のある事だと思います。

このプロジェクトに刺激されたのか退蔵院と、同じく妙心寺塔頭大雄院(だいおういん)の試みにも共感するところがあります。





大雄院にも若き柴田是真が滞在し、その時に製作した襖絵72面を所蔵されています。
今回のプロジェクトでは工期を三期に分けて宮絵師・安川如風さんが襖絵を描かれました。
一口千円から志納を募り、お寺からは特別の御朱印を授与して頂ける方法で資金を募られていました。


(その時に授与して頂いた御朱印です。)

お寺の試みとして非常に好感の持てる方法だと思います。

また、お寺は違いますが大徳寺の塔頭真珠庵では方丈の襖絵を修理に出されるのを契機に新しい襖絵を現代を代表する4名のクリエイターの方に依頼し、400年振りに新調されました。



この時、真珠庵では二千円からのクラウドファンディングを活用し、資金を集められました。




(その時に頂いた井野孝行さんのNHKアニメ"オトナの一休さん"の御朱印帳に山田和尚ご自身の自画像も書いて頂きました。)



現代のクリエイターの方の作品が果たして禅寺の方丈に相応しいのか興味津々に訪れました。
しかし、事前の先入観を呆気なく打ち砕かれるように"方丈に合っているなぁ"と感じるのです。



(室中は漫画家北見けんいちさんの作品"楽園"です。)

破天荒な禅僧だったと伝わる一休禅師も納得されているのでは、、、と思えて来るから不思議なものですね!



お寺は長い間、学問や文化芸術の最先端の場所でした。その意味では現代のアニメ文化を襖絵の題材にするのもまた、現代の文化のひとつなのだと思えてきます。

山田和尚も今回のプロジェクトを批判する人に対して「一度ここに来て見てくれて!」と言われていました。

曽我蛇足、長谷川等伯の方丈襖絵の修理が終わり真珠庵に戻って来てからはどうされるのかは分かりませんが、定期的には方丈にはめて欲しいです。

話が脱線してしまいましたが、退蔵院方丈襖絵プロジェクトの方も二室に対して松山大耕副住職のOKがようやく出て、この三月に完成したようです。

松山副住職が唯一課題とされた"五輪"の世界がどのように描かれているのか楽しみです。

※五輪とは仏教において万物を構成されると言われる五つの要素(地・水・火・風・空)のこと。

何の力にもなれませんが今後とも彼女を応援し続けて行きたいと思っています。
そして、退蔵院方丈襖絵が無事に完成した暁には、彼女が情熱と執念の全てを傾けた作品、また、その過程を味わってみたいと思います。