2月9日に観てまいりました。
このお芝居があると知った時から楽しみにしていましたが、その制作発表の様子を見て、ますます期待が高まっていました。
その中にも書いたことですが、舞台は歌舞伎界の事なので、出演者の皆さんはそれぞれ踊りや三味線などを習いに行って、その稽古に余念がないようで、それを聞いてはその期待値の高まりを抑えるわけにはいかないことですね。
そしてその期待は裏切られることはありませんでした。
また制作発表の時、藤原のたっちゃんが市原さんの脱ぎにも期待しているかのようなことを言って笑いを取っていましたが、その期待(?)にも応えてくれましたね。
そこは敢えて脱がなくても良いのではないかと言うところで脱ぐので、演出の蓬莱さんが、「こりゃ、どこかで分かるように脱いでもらわなくちゃな。」とぶち込んできたように思えて、市原さんが上半身をあらわにした時、私はマスクの下で笑ってしまいました。
そう、楽しさもいっぱいでした。
以下に役者様の名前を書くことがあった場合は、お芝居の感想なので敬称略で書かせていただきます。
また使わせていただいた画像は、舞台の公式様のツイッター(X)が配布してくださったものです。
とにかくお芝居の中のお芝居、見応えがありました。
歌舞伎界は今でもほとんどが世襲制、つまり血の継承がなされている場所ですね。そこに何の後ろ盾もない者がのし上がっていくわけですから、半端のない努力とお芝居への情熱、そしてそこから湧き出てくる知恵と工夫がなされたのだと思います。
また出る杭は打たれるではないですが、同じ部屋の者たちの嫉妬など、苦難の連続だったと思います。
このお芝居で、私は「縁」と言うものを感じました。
今ある私は、見知らぬだれかとの出会いによって、作られているのだと深く感じざるを得ませんでした。
お芝居の感想でまじめ腐ったことを言うと、冷めたお気持ちになるかもしれませんが、かの者を見て我を思うと言うのは、映画・ドラマ・演劇、または小説などを観たり読んだりするうえで、一番大事な部分ではないかと思います。
自分を作ったその縁を、自分は気がつく事もせずに暮らしていることも間々あるなとも思いました。
仲蔵にとって、酒井新左衛門はそう言う男でしたね。
この先は、お話のあらすじには触れていませんが、さりげなくネタバレしています。
市原隼人、大変な役どころだったと思いました。
なんたってかっこ良くないといけないんですから。
すべての所作が仲蔵の目に留まり、そこから仲蔵は芝居のヒントが浮かぶのです。
彼は2回、仲蔵を助けたと思います。いや、3回ですね。
1回は命そのものを助けたのですから。
もしも新左衛門に、あなたは仲蔵を助けたねと言ったら、「ああ、川から救い出した。」と思うでしょう。
だけどかけた言葉から、仲蔵は自分が芝居をやる意義を見出し、そして重要な芝居のヒントを彼から得るのです。だけどそれはきっと新左衛門には分からないことです。
だから私は思ったのです。
見知らぬ誰かが私を作っていると。
または私自身も誰かの糧となっていたりするかもしれません。それが思わず吐き出したくなるような、そんなものではないように振舞って行かねばならないとふと思ったりもしたのでした。
また「お前、役者だな~。」と新左衛門が言います。
今まさに殺されるかもしれない時でも、じっと相手の顔を観たり所作を観たりしてしまう仲蔵に、そう言ったのです。
私はここでも、自分自身のあることに気がついて胸に突き刺さりました。
日記には書けてもブログには書けないことってありますよね。それはまさにそれに当たることかも知れませんが、時には怒りや悲しみや、失敗でさえもその人の糧になることはたくさんあると思います。
とってもしみじみとした気持ちになりました。
さてさて、もう自分の事は語りません(笑)
ストーリー的に感動したシーンですが、家出したくなるほど芸に厳しかった養母の夢は、仲蔵の名前が大看板の上に書かれること。
そんな夢を見ながら、母は亡くなっていきます。
ラストの狂喜乱舞の人々の中に、仲蔵は亡き母の姿を見つけ・・・・・
ああ、良いお芝居でした。
その物語に、演技力の高い人々が脇を固めました。
高嶋政宏は市川團十郎なわけで、お芝居の中のお芝居でも高いスキルを求められたでしょうし、市原隼人は上にも書いたようにかっこ良くなければならないし(笑)、三味線も弾きこなさなければならないわけで大変だったと思います。
今井朋彦の金井三笑にはざまあみろと思ったりもしました。
そして池田成志のコン太夫には笑わせていただきました。
彼の忠臣蔵の説明のところー。
「『世界のチュウシン蔵で愛を叫ぶ』、『助けてください。』に泣きました。」は後を引いてしまいました。
そしてなんたって長台詞。
素晴らしいと思いました。
その「忠臣蔵」で、仲蔵の役は「斧定九郎」の一段のみで今までは弁当幕と言われていた演目。しかも三笑にセリフまで削られてセリフは「五十両」のみ。
「どうする仲蔵!!」ってな感じですよね。
悩む仲蔵。思わず私、「ガラスの仮面」みたいで面白いなと思ってしまいました。
そして彼が考えた定九郎、良かったですね。
今でも藤原竜也の「五十両」の声が頭の中に響くような気がします。
また「外郎売」、凄かったです。「凄い凄い凄い」と言いながら見ていました。(心の中でね)
東京公演は明日の25日で終わりですが、この後、3月の終わりまでに5か所も回るのですよね。
けれど、毎回毎回これをやるのかと思うと、心臓に悪いなと思ってしまいました。
役者という仕事は、本当に大変だと思います。
そして素晴らしい !
買ったグッズとパンフの画像は、後で追記する予定です。