
働き者の鍛冶職人が寸暇を惜しんで、食べたものに“鍛冶屋鍋”と言われるものがあり、ナスビと蛸を入れるのが定番になっています。
明石に近い土地柄、名物明石蛸が使われたと言われています。
Jが持ち帰った花見弁当にも、当地の料理店らしく蛸が使われていました。

「一緒に食べよう」
わたくしにすれば思い掛けない言葉に驚きました。
常に体を動かしていますので、食には貪欲な夫からこんな言葉が掛かることなどまずないことです。
「いいの?」
「いいよ。好きなの取って」
そう言われても戸惑うものです。二つあるものを選んで少し小皿に取りました。
あっ。美味しい!
もう少し欲しいなぁ。
でも欲しいと言えない。夫ももっとどうぞと言わない・・
見ないほうが良かったかも知れない春の弁当に、それでもあいつにひとつと思ったところの味わいに、この春一番のありがとう。


扉の向こうに小さな椅子が