「あなたはよく漢字をご存知なのでお聞きしますが、この字は何と読むのですか?」
「・・・ラン」
「いずれ鳥の名前と思うのですが、ランなどという鳥がいるのですか?」
「・・・そういえば知らないね」
ここで止めておけばよかったのですが、教養の無い二人は脱線して、読み方で盛り上がってしまいました。
オオムだのヒバリだの好き勝手を言ってその度に辞書を引き、間違ってはお互いを責めておりました。
とうとう夫が子機を持って来るように言います。
まさかと思ったら電話を掛け始めました。
「今日家内がそちらへ食事に出向いたのですが、漢字の読み方が分からないと言います。教えてやって下さい」
とても感じのよい応対で、その方は説明されました。
スピーカーにしていましたので、わたくしにもよく聞こえます。
「ハイお客様。それは“ラン”と読みまして、鳳凰を意味する鳥の名前でございます。幸福の時に舞い降りる鳥と言われておりまして、フランス語の店名、<ル・アン>とランを掛けてこの字を使わせて頂いております」
完璧な説明を受け、グーの音も出ませんでした。
「聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥と言うだろう。君はこれでまたひとつ賢くなったね」
「・・・はい」
わたくしはこの日、食事会に神戸迎賓館須磨離宮<レストラン ル・アン鸞>に出向いたのでした。
大正時代の貿易商の邸宅で、神戸市の有形文化財にもなっている建物です。
妹に誘われて久方ぶりの三姉妹での食事会です。
いつもはこんな肩の張るところには行きませんが、たまにはいいかと言うことになりました。
なにもかもが大層なところです。
まず長いアプローチを上がり、エントランスに到着 。ロビーの華の歓待を受け、客待室に通されます。そこで暫く庭園を観賞しながら名前を呼ばれるのを待ちます。
さすが食事は見事なもので、女心をくすぐります。
オードブル
ジンジャー入りスープ
本日のお薦め鮮魚(鯛)を軽くポワレ☆旬の茸類の煮込みを酢橘のフレーバーで
デザート
こんなところは絶対に夫とは行けません。
何杯飲むのかと思うと食事どころではありません。
そうなのか。そう言えばランよね。幸福の時に舞い降りる鳥、鳳凰。
“親鸞上人”のお名前も実はそんな意味があったのだ。
名僧が一気にあざやかなものとなって、イメージ出来ます。
テーブルについた時、メニューが乗っていたあの見事な赤いお皿は鳳凰の羽根なのかも知れない。
色んなことが後から解って来て、夫の積極性でひとつ賢くなって、本当に良かったこと。
たまには外に出ないといけないなぁ。
と思った一日でした。
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夫の姉。つまりわたくしのお義姉さんの家には柿の木があり、吊るし柿用の立派な柿が成ります。
「今年も豊作だから取りにおいで」と言われ、夫は大好きな吊るし柿作りを始めました。
服が汚れるのを嫌い、野球の練習の後を作業時間に当てました。
クルクルと上手に剥いて行きます。
これをまたテラスの屋根下に器用に吊るして行きます。
わたくしが一年に一度だけ夫を見直す日です。
今日で104個出来たようですが、後もう100個作るそうです。
何個でもいいですが、わたくしが感心するのを楽しんでいるようです。
男の人はどうして妻に認められると嬉しいのでしょう。
テラス中、吊るし柿だらけにされても、この風景はいいものです。
今年は実りの秋も短いようですね。少し気持ちが焦りますが、柿暖簾の下で、残り少ない“今年という日”を大事にしていかなければと思いました。
一年(ひととせ)の 今日のひと日が 連なりて
暦のように 干され行く柿
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今日はわたくしにとって記念すべき日になりました。
記事日記が100号になる日です。
少し前から何を記念記事にしようかと思っていましたが、平凡な主婦にはこれといって華やかしいものはありません。
日常を切り取ることしか出来ません。
わたくしが長年見続けて来たもの、大切にしてきたものを感謝の意味も込めて、記念号にしようと思いました。
本日、10月25日(月)は生憎の小雨の降る日になりましたが、実はわたくしにとっては、またとない雨になりました。
金・土曜日とお天気の良かった日、庭の手入れをし、土を少し入れ替え、頑張ってくれた草花達にお礼肥を与えました。
そこに雨が降り、しみいるように、花達に届くのではないかと・・・
大変な夏でしたね。
耐え抜いた花達です。
「ありがとう ありがとう」一言ずつ声を掛けながら施して行きました。
深く秋色に染まりかけた草花に、自分の年代を重ね合わせ、春などに決して戻りたくない我が心境をよしとし、これからをしっかりと見定めようと、己が小さき成長を喜んだのでした。
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10月17日(日)午後
快晴に恵まれた、ハラハラドキドキの若狭路の旅はいよいよ終盤に向かおうとしています。
若狭に来て、何としても食べたいものがありました。
宿の支配人に、ここぞと言う所を紹介頂き、本場「小浜」に向かっていざ出発という段になって、よくよく資料を見てみますと、何と日曜日は「お休み」になっています。
残念。
「あなた。がっかりしないで下さいよ。きっとありますよ。どこでもありますよ」
「そうだね。きっとあるよね」
お待たせしました(笑)
実は若狭にとって、切っても切れない <焼きサバ> を食いしん坊のわたくし達はどうしても食べたかったのです。
小浜を諦め、通称「鯖街道」と言われた地に降り立ちました。その昔、若狭と京都大原をつないだ食料の流通道です。
鯖街道
街道沿いにはかつて栄えた宿(しゅく)がありました。
熊川宿です。
昔がどのようなものだったのかは想像の範囲ですが、独特の佇まいは、行き交う人々が写し出されるようでした。
お昼を大分回っていましたが、わたくし達はそぞろ歩きました。
付き当たり、折り返していたところ、写真下段右手のおばあちゃんにお出会いしました。
「こちらで食事が出来るところはありませんか?」
「おや。うちでどうぞ」
とてもお食事の出来るお店に見えませんでしたが、案内された奥にはそれらしきお部屋がありました。
何とレトロな。
まるで昭和の初期の世界にもぐりこんだような不思議な空間です。
そこでわたくし達は、またとないものに出会ったのです。
ここは焼き鯖をお土産に焼いておられ、希望であれば奥のこのレトロな部屋で食べてもいいのだそうです。
勿論焼き鯖を注文しました。
お土産用
一匹を二人で分け合って食べても充分です。
鯖街道のど真ん中で、待望の食事にめぐり会い、満足したのは言うまでもありません。
自宅から三時間で着く、近場の旅でしたが、思い出深いものになりました。
旅は出会いとよく言われますが、本当にその通りですね。びっくりするような高級旅館でなくても、心のこもったもてなしであったり、地の方々とのちょっとした会話にも人柄が見えたりすると嬉しいものです。
「また行ってみたいな」と思うのは、案外こうしたものなのかも知れません。
さて、出がけに付ける予定だったタイトルを何と致しましょうか?
決まりました。
「旅暦・秋の若狭路見聞記」 お付き合い心より感謝申し上げます。
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10月17日(日)
白みかけた、福井県若狭三方五湖は、人の心もかくありなんと、穏やかに、たおやかに、その姿を見せ始めました。
今日はこの湖を遊覧致します。
「僕は乗らないからね!」
昨夜からそう言い張っていた夫も、あまりの穏やかさに心が動いたようです。
宿にお別れをした後、部屋の窓から見えていた若狭町観光船「レイクルーズ号」に乗り込みました。
・ガタッ・
出航のため船が一瞬揺れました。
「あ~~ッ 揺れる!」
夫がこわばり始めました。
「あなた。今だけですよ。波はありませんよ。空を見ててね」
私の夫は船も恐いのです。
・ボ~~~~
爽やかな風を受け、今日も快晴の中、船は三方五湖を巡り始めます。
綺麗ですね。
約40分の船旅は無事終わりました。
無事でなかったのは夫だけのようです。
「さぁ 気を取り直して、楽しみなレインボーラインに行きましょう」
「そうだね。早くさよならしよう」
わたくし達は湖を上から見るためにドライブウェイに乗り上げました。
夫の恐怖は実はここからが本番だったのです。
可哀相なことをしました。
上から見る五湖はまた違った美しさで、生きる力や、希望さえも与えてくれそうな景観美です。
バラ園もあり、恋人たちが愛を誓った“永遠の鍵”がそこかしこに掛かっています。
<そうか。ここはそういう場所なんだ>
極度の緊張で、目を閉じたまま、丁度ま真ん中のベンチで身動きしない人がいます。
どちらかに偏ると下が見えて、この真ん中にしかいる場所のない我が夫です。
「待っててね あなた。もう少しだけ写真を撮らせてね」
今私たちはケーブルに乗って、こんな場所にいたのでした。
178㎝・78k、「こいつだけは死なない」と野球部の先輩を言わしめた闘魂の男 “J ” は高所恐怖症だったのです。
楽しみにしているわたくしをガッカリさせたくない一心で、この恐怖のケーブルに乗り込んだのでした。
たった2分の乗車時間もどれほどの恐ろしさだったことでしょう。
ごめんなさいね。
あなたが目を閉じている間にこんなプレゼントを用意しましたよ。
天空のバラ園に咲いていました。
「もうこれが最後だからね」
ケーブルを飛び降りた夫は、一目散に車に飛び乗りました。
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裏庭の雲
10月16日(土)
朝から美しい雲が広がった今日、私達は珍しく県外へ小さな旅に出る事になっていました。
いつものように夫は車を綺麗に洗っています。
これがこの人の旅行に出掛ける前のひとつの儀式のようです。
さあ洗い上がったようです。
午前10時30分。出発致します。
目的地は福井県若狭町、三方五湖周辺です。
野球仲間の方が、30年利用されている民宿を紹介されました。
「さぁ あなた。今日のタイトルを頂けません?」
「そうだね。若狭へ行こう!・小浜へ行こう!・三方五湖へ行こう!」
<どうも考えが足りませんね。その内わたくしが考えることに致しましょう>
~~~
さして急ぐ旅でもなく、夕方に宿に入ればいい気楽さです。
小浜西まで続く舞鶴若狭自動車道を、舞鶴で降りることに致しました。
ここに土日祭日だけ見学出来る、海上自衛隊の駐屯基地があるのです。
シベリアからの引き上げ船が帰って来た、あの有名な舞鶴港です。
記名チェックを受けた後、こんなものをぶら下げて、管轄は違いますが、“海猿”の世界に突入です。
護衛艦 「しらね」
今日私達が見学を許されたのは少し小さい「みょうこう」です。
しかし立派なミサイル艦です。
しっかりと海猿の道具を撮影しました。(アッパレ)
国事法等の難しい問題は分かりませんが、日本の国を海側から守る自衛隊や保安庁の存在は、こういうものを拝見すると頼もしく思いました。
「日本が日本を守る」このことの意味を考えて見たいと素朴に思いました。
そうこうしている内に先を急ぐことになりました。
福井県が誇る名勝、三方五湖の湖畔の宿にも丁度良い時間に着きました。
波も穏やかで、海好き、水好きのわたくしには嬉しい景観です。
当地が梅の名産地ということも、来て見て初めて知りました。
道中は梅の木でいっぱいです。
お風呂も梅のエキスが、ポトポトと落ちるようになっています。
爽やかないいお湯でした。若いスッタフの皆さんも感じのよい人達ばかりです。
少々風邪気味の夫は、酔いにまかせてすぐ眠りに落ちました。
さてこれからが、わたくしの試練の場です。
今日はベットで動かす事が出来ません。
どんな事があっても一日中、ずっと運転をしてくれた夫に文句を言うのは止めよう。
朝、その言葉を聞いても、湖に飛び込むのはよそう。
かくしてまんじりともせずに、夜明けを迎えました。
ガオ~ッ。 ガオ~ッ。
<気が変になりそうです>
~~~
「おはよう。眠れた?」
「ええ とても」
「僕はちっとも眠れないなぁ。だめだね」
嘘が上手なわたくしと、嘘が下手なこの人と、もう随分長く付き合ってきましたわ。
つづく・・・
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昨日のパソコン教室で、こんなものを作って来ました。
CDのジャケットと、レーベルです。
プリンターの中のソフトを使って、文字を変形させたり色を付けたりして学びました。
これで二度目ですが、家で少しも練習しないので、すっかり忘れました。
名刺を作ったり、便箋を作ったり、封筒も作りましたが、忘れました。
これも明日には忘れそうです。
何事も復習をしたり、練習をしないと身に付かない中、たったひとつ奇跡のように、身に付いたのが、ブログの掲載操作です。
繰り返し繰り返し練習をしました。
今でもいっぱい失敗をします。
でも めげずに頑張りました。
こんな事は過去にはあんまりなかった事です。
ジャケットもレーベルも是非ものにして、仕上げたいCDがあるのです。
あきらめないで頑張ってみようかしら。
挑戦することが、大事なんですよね。
自分を励ますのはとても大変なことだけど。
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天高く 今日はサンマを喰らいけり
10月11日の空は快晴で、昨夜帰省した娘のために何かしてやろうということになり、
今夏は暑さが厳しくて、庭でのバーベキューも無く、それではそれをということで、夫が全てを設営して、午前中は寝ると言っていた娘が起き出して来るのを待ちました。
夫が調達して来た中にチョット変ったものがあります。
サンマです。
これは我が夫ながらいいところに目を付けました。
厚揚げもありますよ。
少し茹でておいたじゃがいもや人参、そこに生(な)っている秋茄子やピ-マンなど、あり合わせの野菜を使ってさぁ焼いていきましょう。
幸せですね。娘といる秋。日に焼かれながら右手をかざし夫は何を考えているのでしょう。
私たちを守るために力いっぱい働いてきた背中です。
「お母さん あんまり飲ませたらだめよ」
「そうね」
私はそう答えながらも、<今日はいいのよ。貴女のためにお父さん、朝から頑張って下さったのよ。今日だけじゃない。ずっとずっとお兄ちゃんや貴女のために頑張って来たんだから>と心の声をつぶやいていました。
二人でいる時は批判的なわたくしも、子供がいると夫の頑張りが身に沁みて感じられるのはどうしてでしょう。
同士愛なのでしょうか。
「お母さん 甘いんだから」
そう言われながら、右手をかざし、何かを考える夫に、冒頭の一句を献上しました。
ありがとう。 あなたも今日は幸せなのね。
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2010.10.10(日) 8:00p.m
いくつになっても故郷の祭りがいいのでしようか、めったなことでは帰らない娘が、祭りを見たいと言う事で、急遽帰省致しました。久方ぶりに会った親子は、連れ立って、太鼓の音が響く、地元三木市大宮八幡宮の秋季大祭を見に行きました。
昨日のお湿りで、お天気のいい日は砂ぼこりが立ち上がる境内も今日はそれがなく、空気も澄んでいるように思いました。
八台ある屋台の一台が降りたくらいで、本宮の宮出に間に合いました。
当地のお祭りは、二トンは超えると言われる屋台が、80数段ある急階段をかき手に担がれて、昇降するのが見どころのお祭りです。
わたくし達は一台の屋台にスポットを当てて何枚かの写真を撮って参りました。
田舎のお祭りですが、ブロ友の皆様にも是非ご紹介したいと思います。
前日は生憎の雨でしたが、今日は階段下にも多くの人垣ができ、屋台が無事降りてくるたびに歓声と拍手が起こります。
担ぐ人見る人が一体になる瞬間です。
夫も若い時はこの階段をかき手の一人として登りました。
背が高いものですから、棒鼻という一番前をかき、肩に食入る痛みに耐えながらも登ったようです。
法被の肩に何枚もタオルを縫い付けた思い出がわたくしにもあります。
来週は同じような数の屋台がわたくしの生まれ育った地域を練り歩き、在所の神社に宮入します。
三木市はここ数週間、打ち手の練習のために夜は太鼓の音が、あちらこちらで鳴り響いています。
この音が稔りへの感謝と共に、多くの子供の記憶に沁みこみ、遠くに離れても、父母を思い出し、友、縁者を思い出す「ふるさとの音」になっていくのだろうと思います。
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一夜明け今日の地元紙朝刊です
三連休の初日、一日中雨の降る日になりました。
わたくし達の住む町では、大きなお祭りのある日ですが、この雨では見物も二の足を踏むことになります。
野球の練習も中止なった夫はバッテングセンターに出掛けました。
わたくしのゴールデンタイムです。
頂いたコメントのお返事に集中出来ます。
楽しんでいた時、携帯が鳴りました。
夫です。
「君が嫌なら止めるけど、おでんを作ってもいいかなぁ」
少しも美味しくないおでんをわたくしが食べないものですから、夫のおでん作りはここ暫くありませんでした。
彼がこの世で唯一出来る調理がおでんなのです。
「嫌だな。でも作ってもらったら、夕飯が助かるし、その分パソコンに向かえるかも知れない。私は食べなければいいんだし・・・」
こんな長い魂胆を瞬時にして、
「いいですよ。全てお願いします」と言って電話を切りました。
調達した材料で、ガタゴト夫は調理に取り掛かりました。
鼻歌も聞こえます。「楽しいんだなぁ この人・・・」
専業主婦で、構い過ぎで、何も出来ない夫にしてしまった責任はわたくしにもあります。
誉めて育てて、一人になっても困らないようにして上げるのも大事なことです。
「美味しくなくても食べなけりゃ。<まずいね!>と夫が言っても<そ~お?>と、とぼけて上げなくちゃ。美味しくないのは本人が一番分かっているんだから・・・」
二度味見をして欲しいとお匙を持って来て、少し指図をして、後はお任せにしました。
わたくしも昨日のマッタケで炊き込みご飯をして、味比べをすることになりました。
妻対夫の一騎打ちです。
負けました。完敗です。
<妹よごめん>マッタケは匂いもなく、天然出汁で作ったわたくしの得意分野は形無しでした。
アク取りをしたようで、澄んだお汁で炊かれ、わたくしに二度味見させたおでんは成功です。
「美味しいわ」「うん いけるね」
外はシトシト一日中雨の降る休日。
わたくしが先に逝っても、なんとか生きていけそうな夫がいて嬉しかった。
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少し昔、西側に黄色の実のなるものを植えると、風水学上金運が上がると、近所の奥様にお聞きして、すっかり真に受けたわたくしは、悩んで悩んで、そのものずばり<金柑>を西側に当たる裏庭に植えました。
その年は甘い美味しい金柑が二個成り、欲深いわたくしはとてもとても喜びました。
その後、実らしきものはなっても、少しも大きくならず、お金は出ていくばかりでした。
「やはり迷信なんだわ」見るでもなく、引き抜くでもなく、一向に実も成らず、さして成長もしない木をそのままにして置きました。
久しぶりに目をやると、小さい実や比較的大きい実が八個付いているのに気付きました。
大きい実をひとつ摘まんで口に入れて見ました。
金柑は冬に食べ頃になる実のようで、少しも美味しくありません。
自分の卑しい口を棚に上げて、「我が家はやっぱりお金には縁がないんだわ」とちらっと夫の顔思った時、玄関のチャイムが鳴りました。
「君の妹から」と言って、手にこんなものをぶら下げて帰りました。
わたくしははたと気付きました。
「今までも妹からだけではなく、近所の皆様や、親、子、友人 、知人と色んな方から、たくさんの親切・愛情・物を頂き、ありがたいものに満たされていたではないか。
お金持ちでなくても、愛持ち、人持ち、大切なものを持っていたでしょう?
お嫁さんも来てくれて、秋には孫まで生まれるのよ。
金柑を植えても植えなくても、気付けば色んなものに恵まれているのよ」
分かっているようでも、しっかり自覚するということはとても大切なことです。
<金柑>はそれを象徴する木だったかもしれない。
風水は幸せになる学問です。
しかし幸せに気付かない限り、人は幸せになれないのです。
届けられたまったけは、少しも匂いませんが、妹の優しい心が、漂って来ます。
「ありがとう。明日あなたの気持ちを頂くわ。」
外は雨ですが、どうぞこの雨が恵みの雨でありますように・・・
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10月2日(土) ~10月3日(日)
二ヶ月振りに山陰・浜坂の海にやって来ました。
波はすでに高く、近付くとさらわれそうな勢いです。
海の好きなわたくしは、それでも波打ち際で、爽やかな風と、打ち寄せる波の音を楽しんでいました。
深い青い色はどうしてこんなに魅力的なのでしょう。
「あなたもいらっしゃいよ~」
随分離れた所で、仁王立ちになって、携帯をいじっている夫に声を掛けました。
「嫌だ~!」
今日もこの人は、靴に砂が入るの嫌がっているのです。
優しいのですが、どこか変わっています。
砂なら払えばいいのに。
<しかたがないわね>
「お魚でも見ましょう」 わたくしは夫が一番行きたい場所に誘いました。
浜坂漁港は種類も豊富で、勿論新鮮でお買い得なのですが、二人暮らしにはどうしても食べられる量ではありません。
こういう所は目を輝かせて見て回る夫をなだめて、保存の効く干物と、お土産用のビンのりを買って、宿に入ることに致しました。
宿はわたくしのブログをお訪ね頂く皆様にはすっかりお馴染みの、隣接する湯どころ七釜温泉「あかね荘」さんです。
さあ、まもなく約束の時間です。足を速めて、若女将の優しい声を聞く事に致しましょう。
どうして同じところばかり?
変り映えしない旅を、不思議に思われるかも知れませんね。
遊び下手? きっとそうなのかも知れません。
夫もまだまだ忙しく時間の制約もあり、かく言うわたくしも何処へ行っても気疲れするタイプで、今までも気心の知れた疲れない環境で、少しの時間を楽しむという、心身のリフッレシュ方法を取って参りました。
“疲れない”このことがわたくし達の旅の、核をなしているように思われます。
可愛い若女将がお部屋に入るまでの道すがら、こう囁いてくれました。
「お部屋は二つご用意しております」
わたくし達が一緒に寝ないことを、彼女はすっかり承知していてくれるのです。
当漁港ではすでに紅ガニが解禁になり、わたくし達にも今宵、カニのお刺身を用意して下さいました。松葉には負けますが、ほんのり甘い味わいが、来月からの本格的なカニ漁の始まりを告げます。茹でるとその名の通り、際立つ紅色になり、こちらも肌を染めて、「おひとつどうぞ」と誘い掛けてきます。
八寸、今日のお魚、焼きたての<のどぐろ>と女将の心づくしが、二人の来しかたを慰めます。
「明日からまた頑張ろう」 星の光しか煌めくものもなく、虫の声しか聞こえるものもなく、よって何処に出掛けるのでもなく、ただ力を抜いて、心いくまで湯を楽しむ、そんな遊びを、少し下手でも続けて行けたらと思います。
雪が降るともう夫は、雪の降る地方には出掛けません。
雪で靴が濡れるのが嫌だそうです。
「僕は綺麗好きなんだ。分かるだろ?」
分かりにくいですが、誰にでも変なところがあるものですから、それは咎めずに置きましょう。
「またホタルイカの季節に」そう言うわたくし達に、頭を下げて見送る女将の姿が、車のミラーから遠のくのを、じっと見つめていました。
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