かんじゃまのつぶやき(海の見えるチベットより)

日本一細長い四国佐田岬半島での慣れない田舎暮らしの日常や風景、
  そして感じたこと、思い出などをひとコマひとコマ

森の神フンババを救え

2007-08-10 12:02:17 | 政治・社会
先日新聞に「世界の地表3割砂漠化」との、国連大学の調査報告が載っていた。これは大変なことである。報告によると、過剰な家畜の放牧や農地開発が原因とされており、「このままでは地球温暖化の影響も加わって砂漠化がさらに深刻となり、10年後には、世界人口の3分の1近くに当たる20億人が影響を受け、5千万人が居住地を失うことになる」と警告している。そして、国連大学は、砂漠化対策のための投資や国際援助の拡大、国の土地利用政策や農業政策の見直しなどを提言している。
砂漠化などの環境破壊は、おそらく人類の文明とともに始まったのだろう。家畜の放牧は、何も今に始まったことではなく、古代文明の栄えた地域では農耕牧畜という新しい生産方法を発明して以来、自然環境の破壊が行われている。そして、人類が巨大な都市文明を発明したときに、環境破壊はますます著しくなった。そう、シュメールの王ギルガメッシュが森の神フンババを殺害したときから。などと、哲学者の梅原猛さんは以前から指摘している。このほか、焼畑農業も砂漠化に大いに関与していると思う。
さいわい日本は、まだ国土面積の約3分の2は森林で覆われており、そのうちの4割は原生林だという。日本において、これほど多くの森林が残されている要因について、梅原氏は、農業と深い関係があると指摘する。日本に農業が移入されたのは約2千年前であり、文明の先進地帯と比べれば大変遅く、また移入された農業が牧畜を伴わない稲作農業であったことが関係しているだろうと。つまり、水稲農業は小麦農業よりはるかに多くの水が必要であり、水を確保するためには川がなければならないし、川に豊かな水が流れるためには、やはり森がなくてはいけない。それで日本では、水稲農業の神は森の神と共存して、今日でも豊かな森に恵まれているというふうに読み解いている。
私の住むこの半島も数十年前に比べれば、国道、町道、農道など生活基盤の整備が進み、森林が少なくなってはいるが、それでもまだまだ自然環境に恵まれていると思う。人間の傲慢さによるこれ以上の自然・環境破壊はもうやめにして、梅原氏の指摘するように、人類は“共生と循環”という智慧を取り戻さなければ、この危機を克服することができないだろう。
お盆が近づき、ご先祖様のことと自分のこの先を考えながら、そんなことを思っている今日この頃である。 


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