私は土手土手の薄カットを結構
入れるほうだと思う。
通常薄く狙って厚く外すシーン
をよく見かけるが、私の場合は
90度あたりまではほぼ入れる。
的玉が土手に着いていれば、逆
ヒネリの引っ掛けかけや手玉カ
ーブ引っ掛けでの入れもあるの
で厚みだけで見る配置取りとは
対処が異なるが、極限に遠くと
も近くとも、薄玉はよく入れる
ほうかと思う。
撞く時どこを見ているか。
人それぞれやり方があるだろう。
手玉の撞点しか見ないという人
もいるが、私の場合は異なる。
まず、配置をよく見て、アング
ルを確認して、ラインを見る。
そして、手玉の撞点は手前の
タップ接触面の撞点のみだけで
なく、手玉の向こう側の撞点の
先を見る。その手前とそこから
貫き通した手玉の向こう側の射
出口とその延長がどこに向か
うかをラインで見る。
どこか一点を見たりはしない。
大切なのは的玉の接触点なのだ
が、そんなのはぼやけて見えな
い。
だが、実によく入れる。
なぜか。
全体の手玉の進行方向を捉えて
いるからだ。
手玉の手前の撞点だけを見てシ
ョットすると突き出しがほんの
ミリでもずれたら、延長の先の
台先3メートル地点ではかなり
ずれる。
手玉のみを見てショットをする
事は私の場合はほぼ無い。
なお、近い玉で90度近い場合に
は逆ヒネリを入れてスロウを発
生させて的玉に歯車作用で回転
を与えて、穴内クッションに的
玉が当たってから的玉の回転で
滑り落ちるようなショットも
する。バスケのボードを使った
シュートでの逆ドライブをボー
ルにかけるのと同じ理屈。
この出しミスした9番への手玉
配置からの撞きがそれ。
どこを見ているかという事と
逆ヒネリでのスロウ作用とスキ
ッドによる厚め引きずられ外し
の回避とその見越し、そして
的玉への回転与えがそれ。
これはド芯の真ん中撞きでは
9番はあまり入らない。
この9番撞きは色々な技法と理
論を忠実に再現している。
手玉の前面の撞点のみなどは
見ていない。
手玉の向こう側のキュー先の
射出口とその延長を見ている。
ここで順ヒネリをかけると、的
玉の回転が穴内クッションに対
して穴の外に向かう反発になる
ので、ガコガコで外れる事があ
る。
特に渋いポケットの台の時には
的玉にどのような回転を与える
かが大切になってくる。
これは別シーンでのコンビの時
もそう。
手玉の上を撞くか下を撞くかで
コンビの2球目の安定が変わる。
2球目が変わるという事は1球目
になんらかのアクションの違い
がある為で、その違いを有効に
使う。コンビでは。
これも、穴内の的玉回転をどう
させてやるかと同じ理屈が存在
している。
キャノンの場合、順よりも逆
入れの押しが多いのも、それ
はキャロムビリヤードの技法
からの応用だ。
さらに押しを利かせて厚目に
見越して手玉をラインに乗せ
て先玉に当てて入れる方法も
場面によって併用する。
押し利きでは手玉は一度外に
出てから角度を鋭角に変えて
進むので、その撞き方でキュ
ーを切らせて運用する。
手玉が単なる直線移動はしな
いので、多角的アングルから
の手玉進行が得られて非常に
使える。
転がし玉だけでは取れない玉
も取れるようになる。
こうした細かい手玉の操作を
可能にするには、手玉の直進
性のみ特化抽出した作りのハ
イテクシャフトよりも、ソリッ
ドシャフトのほうが圧倒的に
簡単に可能になる。
これは物理的な事であり、どう
いう質性のシャフトを選んで
どう撞くかの問題。
ハイテクシャフトとソリッド
シャフトを単純比較して、論
ずるのは的外れだ。
ましてや、世間に蔓延していた
「ノーマルシャフトは時代遅
れで、ハイテクシャフトが優
れている」とかの言や発想は
論外。撞球を知らなすぎる。
そうした世迷言が今世紀初頭
からつい数年前までアホみた
いに大きな顔して跋扈してい
たが、最近はそうではないと
いう真実を伝え語るトッププロ
も増えて、撞球とキューの本質
について正しい知見を公開して
いる。
大井プロなどは典型だ。
ソリッドシャフトの質性につい
て、大井プロのように初心者に
も分かりやすく解説する傾向が
やっと増えるようになった。
2000年頃から2016年あたり
までは、ハイテクシャフト神話
という捏造された世迷言が大手
を振っており、また、多くの
撞球界の大衆たちはそれを妄信
した。
そして手玉が真っすぐに進み
さえすればそれがキューの
高性能かと大誤謬を信じ込ん
だ。
真実は高性能かどうかではな
く、ベニア空洞構造にしたら
たまたまキュー先が軽量化で
きたからトビが現象しただけ
というのが歴史的事実だ。
そして、ノーマルソリッドと
ハイテクベニアのどちらが
高性能かではなく、性質の
異なる棒材として両者は存在
している。
今世紀初頭から湧き始めた妙
な大衆による誤認は、TAD遣
いの私などのようにソリッド
シャフトを使い続ける層を全体
的に馬鹿にする空気さえあった。
カスタムキュー遣いの層全体
を小馬鹿にしていたが、実は本
物バカはカスタムキューを買っ
てシャフトのみハイテクシャフト
にするような輩たちだった。
バットのみアメリカンカスタム
を使っている。
これは、江戸前握り鮨にケチャ
ップをかけるようなもので、
愚の骨頂だ。キュー作者の尊厳
さえ損なう。
自分のキューだからとやって
いい事といけない事がある。
そういう事は大量生産のマス
プロ製品のバットでやるべき
だ。何やってもいいジャンク
フードのように。
メーカーの戦略に乗せられた
だけでなく、それのお先棒を
担ぐプロたちによって目に鱗
を分厚くつけられていた時期が
今世紀初頭から10数年間続いて
いた。
だが、今、ノーマルソリッド
シャフトは正しく見直されて
来ている。
今でも、ハイテクシャフト神話
を宣伝する企業の紐付きプロも
多くいるが、現実的な事実は
事実、真実は真実であり、物理
的な現出現象はどんなに口先で
うまいことを言って誤認させ
ようとも、現実が実際として
現れているのだから否定のし
ようが無い。
手玉直進性特化のハイテクシャ
フトよりも、ノーマルソリッド
シャフトのほうが多くの技法
を実現できるのである。これは
不動の事実なのだ。
手玉のトビが自分で制御、見越
す能力が低い人は手玉直進特化
のハイテクシャフトを選べば
よい。
ただし、その場合は、マスプロ
量産バットに連結させるべき
だ。江戸前握り鮨職人に対して
握られた仕事の鮨にケチャップ
をかける事はやってはならない。
どこにも法律になど書いてない
が、これは人の世の世界では
当たり前の事なのだ。
自分の物だからと何でもありと
考えるのは、それは銭金にしか
価値基準を見いだせない餓鬼の
ような精神だと断言できる。
アメリカンカスタムキューの
バットにハイテクシャフトや
カーボンを装着していい気に
なるのはやめたほうがよい。
別なキューでやればいい。
カスタムキュー作者を馬鹿に
する事はやめるべきだ。
カスタムキューのバットにハイ
テクシャフトを着ける身勝手さ
は、見ている本筋を根本から
間違っている。
さて、撞球ではどこを見るか。
手玉だけなど、私は見ない。
一番比重が多いのは、見るのは
的玉だ。
手玉は、撞点とその向こう側の
射出口とその延長という部分に
おいて手玉を見るだけで、撞点
のみを見つめる事などは私はし
ない。
特に撞く瞬間に手玉の手前表面
の撞点のみ見るなどというのは
まず絶対にやらない。
点ではなく線で、線ではなく面
で、面ではなく三次元的な全体
空間の把握で、というように
玉は撞く。