近所の里川。
ここはフライフィッシング
の練習場にしていた。
もちろん、下流域なので鱒
族などは一匹もいない。ハ
ヤとウグイ程度のコイ科の
魚しかヒットしない(笑
ただ、この川はかつて天然
の鮎が遡上するので鮎釣り
師たちには多少有名な川だ
った。
ここではキャスティングと
フッキングの練習をした。
ここでのトレーニングを山
岳最上流部の渓流での実践
に下すと、かなり有効な事
が多く生まれた。
最上流渓流においても他の
人たちが3釣るところ、私
は5乃至7は釣った。
訓練はとても大切だ。
キャストも#4-5でフルライ
ンシュートを。フルライン
だと前後で40m程振り、シ
ュートでさらに10m以上投
げてバッキングまで出す。
また、短距離を叩き上がる
ような技法もここで訓練す
る。ロールキャストやスペ
イやカーブや空中ですでに
ラインをクネクネさせなが
ら狙ったピンポイントにフ
ライを落としたり。
その練習にこの開けた里川
は絶好の場所だった。
ウグイやハヤ釣りはそれは
それで手ナラシとしては面
白い。
鉤はカエシの無いバーブレ
スで、すべてリリースのス
ポーツフィッシングだ。ヘ
ラブナ釣りと同じ。
オイカワが存外美しい魚だ
った。
ここでの訓練と研究は、即
実戦的な最上流渓流での実
践に通用した。広いフライ
専用ポンドで練習するより
も効果があった。
川岸はマムシがうようよだ
けどね(笑
この流域に鱒がいないのは
酸素量の問題。それと水温。
氷河期に陸封されたヤマメ
(サクラマス)とアマゴ(サツ
キマス)、イワナは原始的な
魚なのでエラが発達してお
らず、水に溶存酸素量が多
くないと棲息できない。降
海型のギンケは海まで下る
のに。
そして、水温が17℃が限界
温度で、それ以上だと陸封
型の鱒族は生存ができない。
素手で直に魚体に触っても
火傷のようになり、やがて
白く病化して鱒は生存が危
ぶまれる。
なのでリリース前提の鱒族
を手を冷水に浸さずに直に
触るフライマンはゼロだ。
鱒族は繊細で環境変化に非
常に弱い耐性なのだ。
それゆえ、トラウトとイワ
ナであるチャーという二種
のサケ科の魚種は、河川の
最上流部でないと日常生存
ができない。
概ね大体標高600m以上の
エリアから上流部に鱒族が
棲息できる。
最上流部にヤマメ/アマゴ
がいて、渓流の源流部には
イワナがいる。
イワナは案外釣るのが簡単
だが、ヤマメとアマゴは極
めて繊細で神経質で警戒心
と学習能力、判断力が高い
ので、釣るのが非常に難し
い。
そもそもが釣果は餌釣りを
10とするなら、ルアーは6、
フライフィッシングは3と
いわれている。
だが、その西洋毛鉤で10を
釣るのが面白いのだ。
なぜか私は初心者の頃から
鱒族たちは爆釣だった。
フライフィッシングは二輪
のサスとキャブセッティン
グのような釣りで、毛鉤の
選択に極めて高度な知見を
要する。
それだけでは駄目で、キャ
スト技術とドラグ(流れに
ラインが引きずられる事)
をかけない操作等々、釣り
の中で一番高度な技法が必
要になる。
さらには、毛鉤を自分で巻
く(=作製する)知識と技
術が必要だ。
そして、何よりも魚体とし
てのトラウト類について、
生物学的な学識も無いと釣
りにならない釣りがフライ。
ビリヤードが難しすぎて流
行らないのと同じで、フラ
イフィッシング人口が異様
に少ないのは、西洋毛鉤釣
り自体が高度な知性と卓越
した技術を有していないと
全く釣りにならないからだ
ろう。
釣れないと面白くないので
そういう釣りなどしない、
という人が世の中は殆どだ。
だが、それはスポーツフィ
ッシングをやる釣り師とは
全く別な世界の事だ。
釣り師は、釣れなかったら
なぜだどうしてだと徹底的
に研究考察検証しまくって
絶対に釣り上げようとする。
そこが釣り師とレージャー
釣り人の違いだ。
海釣りも難しい種目もある
し、釣りの楽しさは一様で
はない。
だが、ソルトウォーターで
はないクリアウォーターの
最上流部の澄んだ流れの中
で狙うトラウトフィッシン
グは最高に難しく、最高に
面白い。
しかも、フッキング技術を
駆使するカエシ無しのバー
ブレスフックでバラさずに
暴れるトラウトを釣り上げ
るのが面白い。魚と格闘し
ながら。
難しければ難しい程面白い。
攻略しようという意欲がま
すます湧くからだ。
それはまさにオートバイの
走行と同じ(笑
オートバイも、ただ載って
移動するだけでいるならば
技術や見識などは一切進歩
も進展も成長もしない。こ
れはてき面にまったく。
釣りもそれで、特に最難易
度のフライフィッシングは、
見識や学識はじめ、技術的
にも身に着けないとならな
い事が多すぎるので多くの
人はやろうとしない。
でもそれでいい。
オートバイと同じく、走り
を極めようとする人のみが
走るように、フライも難易
度の高過ぎる(話にならない
程に高度)西洋式毛鉤で、し
かもカエシの無いバーブレ
スフックで、それをやろう
と挑戦し続ける人のみがや
ればよい。
ただ、フライフィッシング
には一つだけ欠点がある。
それはフライフィッシング
は「悪魔の釣り」なのだ。
まるでJAZZのように。
フライにハマると、その人
の世界観は一変し、フライ
フィッシングをする事以外
何もしたくなくなる。
麻薬以上に危険な釣りがフ
ライフィッシングなのであ
る。人生が変わってしまい、
取り返しがつかなくなった
人が数えきれない程いる。
人におすすめはできない。
ほぼ全員の正真フライマン
は、ほぼ全員が世捨て人の
ようにリバーに囚われて、
トラウトを求めて渓流を歩
き続ける。
もはや常人ではなくなる。
人には一切全くおすすめで
きない釣りが渓流でのフラ
イフィッシングなのだ。