渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

『七人の侍』 ~クロサワに見る侍設定のカラクリ~

2016年10月26日 | open

以前にも触れたネタだが、世界のクロサワ
=黒澤明監督の作品
について。

クロサワの作品で不朽の名作とされるのは
『七人の侍』だ。

現代人で武士と同じ装束で何かをやって
いる方々には是非一度
ご覧になってもらい
たい映画作品だ。

この作があったからルーカスやスピルバーグ
が映画の道に進んだ
のだし、シュワルツネッ
ガーをはじめとする多くのハリウッド俳優が

役者になろうと決意した。
『七人の侍』は、野伏せりから農民を守る
七人の剣士の傭兵
物語である。

その『七人の侍』の中では「薪割り流を
少々」と言ってた林田平八が
なかなか味が
ある。七人の侍の旗を造ったのも彼だし、
傭兵チーム
のムードメーカー的な存在だっ
た。



ところで、名作映画『七人の侍』(1954年)
は世界初の傭兵映画作品
なのだが、登場
する七人の傭兵はリーダー以外全員名前が
数字と
関係してるというのはご存じだろう
か。
名前に数字が隠されているのは事実なの
だが、その真意の意図については詳らか
にはされていない。
これはクロサワの隠し砦に観客を招き入れ
るトラップ作戦のような気がする。

『七人の侍』は製作討議段階で、まず
勝四郎のキャラから設定された。
最初は三船敏郎がその役として想定して
脚本練りが進められたが、後に新キャラ
を三船に与えることになる。このあたり
は映画マニアは詳しいことだろう。
私は、クロサワとその一味による、キャラ
作りの際の発想の連綿性と数字の連鎖と
いう作品の作り手の手法に着目したい。
キャラクタ設定の検討段階でまず数字の
4の名前から命名したのも、当初その役
に充てようとしていた三船敏郎が3の数字
を持つ者ゆえ、そこからの展開のように
思えるのだ。

そしてその三船の役名に千を持って来たの
は千秋実(平八役)
からの連綿だったりする
ことが窺える。この二人のキャラはとて
も密接な心の繋がりとして作品で描かれる。

それくらいの名前に含まれたトリックの
カラクリは、クロサワならば隠し味と
して組み込みそうだ。
平八は作品の中で、百姓出身の菊千代
(三船)を最初は一番からかっていたが、
やがて半分農民半分侍として認めて旗に
描いたのだった。
物語は、七人の傭兵の中で一番最初に
ムードメーカーだった平八が死亡する。
だが、落胆するメンバーを鼓舞して今度
はムードメーカーになったのは平八が
からかいながらも一番気にかけていた
「できそこない」の菊千代だった。
そして、菊千代が最後に死ぬ。
この人的相関性は、脚本の中で描いた
クロサワの心の絆のバトンとチームワーク
というロジックとしてのトリックだった
ろうと私は読んでいる。

<七人の侍たちの名前の数>

・島田勘兵衛・・・リーダー(数無し)
・菊千代(三船敏郎)・・・1000
・岡本勝四郎・・・4
・片山五郎兵衛・・・5
・七郎次・・・7
・林田平八(千秋実)・・・8
・久蔵・・・9


バルブオイルの普及 & 炭素鋼の焼き入れ

2016年10月06日 | open



自作焼き入れ刃物の炉について電脳波乗りしていたら見つけた。
こちらのブログ ⇒ こちら

へ~、この人もバルブオイル使ってるんだとか画像見て思ったら、
ぬぁんと、参考にしたというサイトは、たぶんおいらのこの渓流カフェ
日記でしょ(笑

このナイフ、めっちゃカッコいい。


日本刀の強度確保の造形を採り入れている。いい!



焼き入れについては、理由は長くなるから省くけど、備長炭は駄目
で、松炭がベスト。でも松炭は入手し難いので、楢炭でもまあいける。
そして、最大限に大切なことは、火のムラを無くすために炭は親指の
関節大に小割りにすることだ。
私などは、さらに火力に微妙なムラができないように、一度火消し
壺で作った消し炭をナイフなどの小物の焼き入れには使っている。
手間を惜しんでは良い焼きは入らない。
焼き入れは刀身に命を吹き込む瞬間なので、刃物作りの世紀の瞬間
なのだ。そこに向けてすべての作業がコツコツと行なわれてきたの
だから、焼き入れには細心にして最大の心血を注ぐ。

そして、このサイトにもあるデンガク炉のような物では特に有効だが、
完全に炭の中に刀身を埋没させてじっくりと焼くとうまくいく。
送風をし過ぎて炉内温度を上げ過ぎると、切先が溶けてしまうので
注意を要する。

冷却時の温度は、鋼材にもよるが、A1変態点を少し超えたあたりの低温
領域
で冷却を開始させる。(炉から出した瞬間と入湯直前では温度差
があるので注意)

これは、冷却液に入れる寸前の温度のことだが、加熱時も高温で焼き
を行なうと鋼が馬鹿鉄になって内部粒子が粗大化して脆くなるので高温
に加熱しすぎは避ける。

さらに、冷却液は、水の場合は30℃以上の冷却液では焼きは入らない。
また、油は逆に60℃以上に熱していないと焼きは入らない。
この条件を外しても焼きが入る場合は、それは灼熱の刀身により表面
接触した液体がその適正温度に達した際に表面上に焼きが入っている
だけのことだ。
そのため、刀身全体をまんべんなく包むようにするために冷却液には
冷却促進剤となるいろいろな物が添加されたりする。
試しに水の場合は、海水や温泉水(冷泉)で焼き入れをすると、とても
焼き入れ性が高くなるのだが、これにも科学的な意味がある。
また、日本刀の焼き入れの場合でも、刀工各人により様々な添加物が
入れられていたりする。場合によっては半ゲル状液体にする場合もある。
気をつけないといけないのが、水の場合には、石鹸などの表面活性
剤などが混ざると一切焼きは入らない。

焼き入れが成功すると、必ず焼き入れ成功の知らせが音として伝わって
くる。これはいろいろあるが、炭素鋼の場合はジョォオォ~ンだったり、
ジョワァアァ~ンだったりする。
チュンというのは、大抵は焼きが入っていない。冷えた油などに刀身を
入れた場合の焼き入れ失敗などは、このようなチュンという短い音がする。

焼き入れの際に刀身に焼刃土(大村砥の粉、松炭の粉、土の粉末)を塗る
のは、毛細管現象で焼き入れ水が浸透して早く冷却する意味と、厚塗り
により冷却を遅くするための二つの意味がある。
また、焼き入れは冷却液に浸けた場所から瞬時にマルテンサイト変態が
開始され、525℃で完全変態するので、液に浸けた部分から硬化が始ま
る。
ということは、刀身全体をドボンではなく、刃先から上手に入湯させれば、
プログレッシブな刀身硬度を付与させることもできるということだ。
これを利用して日本刀は映りなどを出すことができる。乱れ映りは焼刃
土の置き方と引き土のやり方にこの入湯方法をミックスすることで出す。
完全ドボンの場合には、焼刃土の置き方が決め手になる。

要するに、熱管理をどのような意図でどのような目的の指標をきちんと
自分の中で組み立てて持って行くかだ。
行き当たりばったりでは絶対に狙った焼きは入れられない。

あと、刃切れが起きることを回避することとしては、刃の面取りをして、
刃先を丸めてやればかなりフォージングエフェクトによる膨張負荷に
堪えられるので刃切れが生じにくくなる。これはいろいろ試してみれば
すぐに実感できる。
焼き入れ前の鑢仕上げの際に、エッヂの角を立てていたりすると焼き
割れなどが入り易い。これはエッヂの角はR状ではないため、負荷の
分散ができずに応力などが一点に集中し、それに耐えきれなくなったら
そこから組織結合の損壊が始まるからだ。なので耐えきれなかった
一点から崩壊する。堤防決壊を想像してもらえばイメージが掴み易い
かもしれない。

一度、正しい理論的な裏付けで正しい行為で要領を掴むと、以降は
ほとんど初歩的な失敗は起きない。
失敗とするならば、「狙ったところに持って行けてはいない」という内容
的に狙った目標到達点の可否という高度なレベルの段階に一歩進ん
いる筈だ。
自作鍛造刃物焼き入れに挑戦する同好の士の皆さんの健闘を祈る。

平成7年の私の処女作。超ウルトラど素人にしては、そこそこ出来て
いると思う。事前理論学習はかなりした。削り出しではない鍛造打ち。


ヤマハバルブオイル最強伝説 ~レジェンド~ 

2016年10月05日 | open



週のうち、ほぼ毎日刀術稽古をする友人の剣士からの報告では、
毎年これまで何年も夏を越す際には刀術で使う真剣に出錆が
みられて難儀していたらしい。
ところが、今年の夏前からバルブオイル(ビンテージグレード)を
防錆油として使用しはじめて手入れをしたら、一切出錆が認め
られなかったという。「合格」とのことだ。

私も2年近く使用して、「これはいける」という判断に至ったので
あくまで自分が使っている「航空機にも持ち込める刀剣代替油」
としてバルブオイルを当ウェブ日記で紹介した。
すでに6年近く継続使用しているので、十分タイムプルーフによる
検証はできていると思う。
錆の出方が普通の刀剣油よりも極度に驚くほど低い。

とにかく100%化学合成であることと、添加された防錆剤により
頗る錆に強いのがよいので、刀剣油として十二分に使用できる。
そして、このオイルの良いところは、防錆力、武用刀の刀身の
サラサラ感(ベタつき感一切なし)での抜刀納刀の円滑性の確保、
等々よりも、「旅客機に持ち込める」ということが一番のメリットだ。
そもそも旅客機に持ち込める刀剣油を長年探していて私はバルブ
オイルにたどり着いたのだが、副次的に得られる効力は多数あり、
これはかなりのラッキーヒットだった。
一般刀剣油は一切機内どころか、手荷物預けでも飛行機には持ち
込めないのが現行の現実だ。
また、ネルに染み込ませた油も飛行機搭乗の際には持ち込み×で
あるので、このヤマハ・バルブオイルは真剣日本刀を運搬する人間
に光明をもたらすものだと私自身は感じている。
私は管楽器は演奏しないが、たぶんトランペット等の防錆や円滑性
確保にも高い効果を発揮しているのではなかろうか。


ヤマハ・バルブオイル最強!最高の効果で、630円は安い!
お求めは楽器屋さんで。
ノズルは密封されているため、ボトルのノズル口に針で穴を開けて
からご使用ください。

ただし、バルブオイルの使用は自己責任で願います。

※画像のボトルは、左がヤマハミュージックトレーディング株式会社
  時代の透明ボトル。現在は手に入りません。
  右はヤマハ株式会社の現行タイプ。
  透明ボトルのほうが便利なのですが、ヤマハグループの組織再編
  の際にこのビンテージタイプのみボトルが透明から白色ボトルに
  変更になったようです。中身は同じ(問い合わせ済み)。
  多分ヤマハ発動機が自社製品に使用するレーシングオイルと同じ
  会社が作っていると思うのですが、どこの製油会社が原生産して
  いるのでしょうね。