日々雑感

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神谷美恵子に思う4-50

2010年07月20日 | Weblog
神谷美恵子に思う

誰に勧められたのかはもう忘れたが、神谷美恵子の「こころの旅」
読んだところ、想像もしない感動を受けた。
神谷美恵子。前田多聞元文部大臣の娘で、医師。
岡山県のハンセン病療養所長島・愛生園で患者の治療に当たる。
その時に読んだ患者への思いの詩
「何故私たちでなくてあなたが?あなたは代わって下さったのだ。
代わって人としてあらゆる者を奪われ地獄の責め苦を悩み抜いて下さったのだ」
普通の人はこんな事は思わない。そう言う業病にかかったのだから仕方がない。と言う程度の受け止め方で通り過ぎてしまう。ところが神谷さんは違う。

本来だったら私が受けてもいい業病を、あなたたちが代わって受けてくれているのだと受け止める。まるで自分が負い目を負っているかの感覚である。そのような受け止め方をする人の心情はいかなる者であろうか。おそらく患者の一言一句を全身全霊で受け止めたことだろう。そしてそう言う心がけの人が、どういう思いで、患者に接したか。
悩み苦しむ患者に共感して我の疲れも忘れてる。
「神谷さんと一緒にいるだけで至福の時間がずっと続いていくと思う人が多かった。」と高橋理事長は言うが、多分そうだっただろう。
社会的に弱い立場の人への深い理解や愛情にあふれ、悩み、病み、苦しむ人と同じ目線で、共に歩む。それは魂の救済者、魂のカウンセラーと呼ばれる人だ。

神谷先生の先輩に当たるのが、お里沢一で有名な壷坂寺・中興の祖・故常盤勝憲師だ。同じく長島愛生園の光田園長の話を聞き、この悲惨な現状を見て何とか救いたいと立ち上がり、自坊に慈母園を作り、京大の宮崎博士が日本航空のニュデリー事故で亡くなられた跡を継いで、インドでハンセン病患者1000万人の救済に立ち向かい実行しつつ過労のため58才でこの世を去られた人類の師匠だ。マザーテレサとも交流され、彼女のノーベル賞受賞を心から喜んでおられた。

かって私は師の計らいで、慈母園で唄と講演をする機会があった。
聴衆は60才以上盲老人50名。
唄は患者さんが若い日に覚えた童謡やラジオ歌謡を選曲して演奏したが
途中で声楽家が涙にくれて、唄が止まってしまった。勿論ピアニストもストップ。一瞬困ったなという思いがよぎったが、患者さんのみならず職員も皆泣いている。次の瞬間ぐっと涙がこみ上げて私も泣いた。話が言葉にならない。
この会場にいる人全員が感動の涙を流したのだ。どんな話をしたのか、今は思い出せないが、ほんの一瞬でもこれだ。

そう言う自己体験と神谷さんの本の味わい深い言葉や常盤先生の淨行を重ねあわせると、私は死ぬまで2人の先生を決して忘れることはないだろう。