路隘庵日剰

中年や暮れ方近くの後方凡走

夜の煙野菊の叢に染み入れり

2012年11月02日 | Weblog


 ツラツラ省みるに、今回の古本祭り参戦は結局どうも敗色濃いと云わざるをえんな。
 打席には多く立ったが、どうも凡退多し、というところ。ちょっと肩に力入りすぎて、あれでは芯で捉えるのは無理でしょう、というところ。
 修行して出直します、というところ。

 井上章一『霊柩車の誕生』(1990 朝日選書)
 筆者デビュー作は前から読んでみたかった。
 博覧強記というか、様々な媒体から典拠を掘り起こし学問的に組み立てていくのはサスガである。
 やはり処女作は文章も丁寧。
 葬列が大正期以降車や路面電車やその他交通事情の変化によって廃れて、霊柩車の登場となる。
 そういえば最近は宮型のキッチュな霊柩車あんまり見なくなったな。「霊柩車の誕生」からさらにまた時代は変わり、人々の意識に変化が起きているのかもしれん。


                      


 俵浩三『牧野植物図鑑の謎』(1999 平凡社新書)
 牧野富太郎といえば偉人伝の定番人物。実際その業績はその世界では比類ないものなのだろうが。
 学歴無いまま東大で研究を続け、その厳密すぎる研究態度もあいまって東大教授に疎まれ、軋轢をきたす。(もっとも牧野自身77歳まで講師でいられたのだから、これは厚遇されていたとみることもできるような。)
 ともかく、かつて東大教授らが牧野に対し抱いた敵愾心を、名を上げたあとの牧野が、今度は在野の研究者(村越三千男)に対して、あたかもかつての東大教授が牧野に抱いたようにあからさまにし、その植物図鑑発行になにかとチョッカイを入れる。
 筆者は北海道の自然保護協会の会長だったひとらしいが、とっても謙虚に丁寧に探求執筆していて好感の持てる書きぶり。
 まあ、どんな世界にもメンドウな人間関係はついてまわる、ということですなあ。


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