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「意識の脳科学「デジタル不老不死」の扉を開く」渡辺正峰

2024-08-21 22:33:42 | 読書
講談社ではあるが、意外と今回はブルーバックスではなく、現代新書というのが興味深い。とは言え前著書も中公新書だ。
初めに著者の方向性を示している。意識の謎の解明とその副産物として意識のアップロードからの不老不死。意識の謎に関しては、ハードプロブレムというところを踏まえているのでまがい物ではない。
前作は2011年出版なので既に3年経っている。そして大体内容は似ている。今これを読んでみて、初めて知ったと感慨に耽っていたら、既に前作で同じ内容が書かれていた。記憶力の悪さに辟易する。
12章
フィンランドの神経科学者、アンティ・レボンスオの意識の仮想現実メタファー。Virtual Reality Metaphor of Consciousness。睡眠中の夢は自らの脳が作り出しているにも関わらず、第三者が登場しその考えていることが分からない。皿を落とすと物理法則通りに落下し、割れる。
13章。
脳に関して、ヒトはシワシワで表面積が多い。対して、マウスはツルツルで、マカクザルの脳はそれよりシワがあるがヒトには及ばない。
14章。AIに意識は宿るか
この思考実験は面白い。1回読んだだけでは理解はできないが、興味深い考察。
サールの中国語の部屋。記号接地されていない。つまり体験と言葉が結び付いていないから、ただ言葉と言葉の相関を返しているにすぎない。まだ理解しきれていないのだが、人工知能の中に仮想世界を置き、言葉の入力をその仮想世界と比べるということで意識のようなものが生じるのではないかという。ロボマインドの田方篤史氏の意識の仮想世界仮説と類似しているという。仮想世界仮説と言うのが今一つ理解できなかった。ホムンクルスの無限後退っぽいからだ。しかし改めて483回の動画を見返すと少しは理解できるようになった感じはする。
15章
主観の時間について。丁度ロボマインド483回の動画にも出てきた。物理学で扱う時間と、自分が感じる時間は違うものだという。さておき、ここでは主体的な時間としては10Hz程度の遅さ。ここに1Hz辺り200ヘルツの周波数を補完している。人間の中にクロックがあるという。夢の中の時間。長い夢の最後にギロチンにかけられ首を落とされるとき、現実世界のベットの上の天蓋から木片が剥がれ落ち自分の首に当たって、目が覚めたというエピソード。これはよくあることだ。実際は木片が首に当たって目が覚めるまでの一瞬に、長い夢を逆回しに辿ったのではないかということ。これは自分も感覚として同意する。夢は逆走している(こともあるし)
順走していることもあるどちらの感覚もある。
あとは、過去と未来の時間的違いは何かというと、過去は経験したこと、未来は経験していないことと思う。
著者は意識の機能主義、脳のシナプス等を同じ働きをする人工物で置き換えていく、そこにも意識は宿ると考える。反対にジョン・サールは生物学的自然主義で、(よく理解していないが恐らく)、生物学的な組織があってこその意識であって、人工物に置き換えた途端意識は消え去る。
意識の解明、意識のアップロードを達成するのは、金銭的にもマンパワー的にも厳しい現状だ。海外の研究機関の費用の巨大さと研究スタッフの人数は桁違いだ。これでは著者の夢は叶えられない。海外の研究機関に先を越されてしまう。逆に、海外並みの資金と人員を得られれば、20年後には実現可能とも言える。そのために国は手厚い出資をして欲しいと、プレゼンをしているようになっている。
確かに大部分の内容は、研究テーマをどう実現しうるか、理論的に解説されている。ただその手段がはっきりしない。本には著していないだけで実際には実験方法も考えられているかもしれないが。素人からしても、どのように自分の半脳と機械を繋げるか、その機械の方もどのように人間並みの構造に作り上げることができるのか、それこそ実現不可能なのではないかと思ってしまう。だから資金と人と言っているのはわかるが。
ではあるが、なんとか実現して欲しいものだ。夢がある。
 
20240712読み始め
20240821読了

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