京都地方法務局が2022年4月、相談に訪れた足の不自由な男性(56)を、30分以上立たせたまま対応したとして、大阪法務局が今年1月「人権侵犯」に当たると認定していたことが関係者への取材で判明した。人権擁護を担う法務局が、別の法務局から調査を受け人権侵害行為を認定される異例の事態となった。
京都市内の男性は約10年前のけがの後遺症で左足などが不自由なため、普段から松葉づえを使っている。
京都地方法務局や男性本人への取材によると、男性は22年4月、通院先の医療機関から差別的な言動を受けたとして、同局人権擁護課の窓口を訪れた。だが、職員2人がカウンター越しに男性を30分以上立たせたまま対応。男性は松葉づえを抱えたまま、右足だけで立っている状態だったという。
男性は「座りたい」「相談室を使いたい」と職員に何度か求めたが聞き入れてもらえず、倒れ込んだ段階でようやく椅子を用意された。男性は後日、この対応について人権侵犯の被害を同局に申し入れたが「苦情」として処理されたため、今度は法務省に相談。大阪法務局が調査して今年1月、京都地方法務局の対応が人権侵犯に当たると認定し、男性に通知した。
これを受け、京都地方法務局の職員は大阪法務局が開いた障害者差別解消法の理解を深める研修を受講した。京都地方法務局は「事実を重く受け止めている。再発防止に努めます」としている。
ただ、男性によると同局からの謝罪はないままで、取材に「あまりにもひどい扱いで、非常に大きなショックを受けた。人権を守るべき法務局が人権を侵すなんて考えられないし、あってはならないことだ」と憤った。【久保聡】
2023年10月6日 毎日新聞