医療裁判傍聴記

傍聴した観想など

文科省汚職 「ブランド力落とした」2人起訴の東京医科大

2018-07-24 22:08:09 | 医療界
 文部科学省の私立大学支援事業を巡る汚職事件で、東京医科大の臼井正彦前理事長(77)と鈴木衛前学長(69)の2人が贈賄罪で24日、在宅起訴された。トップ2人の刑事責任が問われることとなった東京医科大。「裏口入学リスト」とみられる内部資料の存在も浮かぶなど教育機関としての公正性が疑問視される事態を招いた。高校生向けの進学説明会を延期するなど、創立100年以上の名門大学の混乱が続いている。

 臼井前理事長は眼科医。1966年に東京医科大を卒業し、87年に同大教授に就任。2003~05年に東京医科大病院長、08年から同大学長。13年から理事長を務めた。

 同大のある元教授は、臼井前理事長が学長になった際のエピソードとして「東京医科大は同窓会の力が強かったので、教授会の存在感を示すための『改革の旗手』として臼井さんを送り込んだ。そうした意味では学内で期待された人材だった」と話す。

 一方、別の大学関係者は「下が提案しても、『これでいく』とはねつけるワンマンタイプ」と評する。今年に入って臼井前理事長の意向で、これまで2期6年だった理事長の任期に関する定款は3期9年に延長されたという。

 鈴木前学長は耳鼻咽喉(いんこう)科医。74年に同大を卒業し、広島大学医学部助教授(当時)などを経て、97年に東京医科大教授に就任。14年から学長を務めていた。周囲からは「真面目」「忠実で、上から言われたことにノーとは言えない」といった評が漏れる。

 臼井前理事長は特捜部に対し、事件の動機について「(文科省の助成対象となることで)大学のブランド力を上げたかった」と説明しているとされる。ある同大幹部は「ブランド力を上げるつもりでしたことが、皮肉にも大学のブランド力を落としている。前理事長らはまず学内に謝罪し、うみを出し切って大学を再生させなければ」と話した。

 文科省への批判も漏れる。同大OBは「もちろん不正は許されないが、悪いのは文科省側だ。私学に対する生殺与奪の権限を持っている監督官庁の官僚から『息子を頼む』と言われて、現実的に断れるのか。パワハラのようなものだ」

 同大は20日、ホームページで今月28日と8月25日に開催予定だった高校生向けの医学部医学科進学説明会の延期を発表した。24日には起訴を受け「ご迷惑、ご心配をおかけしております皆様に改めて深くおわび申し上げます」と陳謝するコメントを掲載。現在進められている内部調査について「まとまり次第、公判に影響のない範囲で公表させていただく」としている。【酒井祥宏、福島祥】

2018年7月24日 21時30分(最終更新 7月24日 21時30分) 毎日新聞