月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

理想の未来を決める

2022-07-23 | 癌について
1年9ヶ月ぶりにOクリニックへ。
診察というよりはカウンセリングのようなもので、私が話し、O先生が聞き、質問されたことに答え、それに対するアドバイスを先生がメモしていく。
順序立てて話していくので、自分の心の中が整理されていく気がした。
体調がどう変化してきたのか、主治医の意見はどうなのか、今何に悩んでいるのか。

今、なぜこんなに気持ちが落ち込んでいるのか。
それは「がんの進行」よりもむしろ「痛み」があるからで、それが不安と恐れを引き出している。
だから、新薬を受けるかどうかを悩んでいる。
「でも、痛みをとるだけなら、別の方法もありますよ」とO先生。

それから、これは再発した時からずっと訊かれてきたことだが、「がんを治して、どうしたいのか、どうなりたいのか」ということをまた訊かれた。
私は、それを訊かれると、なぜか頭が真っ白になってしまう。
「もとのように元気になりたい」
それしか出てこない。
でも、本当に必要なのはその先なのだ。
元気になって何をしたいのか、どうなりたいのか。

一生懸命絞り出した答えは、「物書きを続けたい。仕事の内容を自分の書きたいものにシフトしていきたい。家事と仕事の割合を変えて、家事にもっと比重を置いた生活をしたい」だった。

それを聞くと、先生は「それって、自分の『変えたいところ』ですよね。つまり、『反省』ですよね」と言った。
過去や現在からの未来ではなく、「行き先」となる「未来」を決めることが大事なのだと。

「あなたが言っているのは、『have to~』ばかり。そうではなく『want to~』だけを考えて」
「行き先となる未来は、現状の外に考えないといけない。妄想級のものでOK」
「考える時に、時間やお金、他人の意見は無視していいから。お金がないからできない、時間がないからできない、他の人がダメだというから、他の人の迷惑になるからとか、そういうことは考えなくていい」
「ゴールとなる未来は、できるだけたくさん、満遍なく、バランスよく考えて」

そして、その妄想級のゴールとなる理想の未来を、書き出すこと。
そんな宿題を出された。

今の私は不安や怖れに支配されていて、それが無意識のうちに「良くない未来」をイメージしてしまっているという。
確かにそうだ。自分の行き先は決して明るいものではなかった。
無理に明るいものに変えようとしても、結局先生の言うように、過去と現在の反省からくるものでしかなく。
私はこれがダメだったから、こう変えないといけない。
私はこれができていないから、こうしていかないといけない。
いつもいつも「have to~」の人生。
心の底からやりたいことって何なんだろう。どんな生活が理想なんだろう。

O先生は、新薬を「したほうがいい」とも「やめたほうがいい」とも言わなかった。
ただ、「理想の未来を決めたら、自ずとどうすればいいか結論は出ますよ」とだけ言った。
不安や怖れからイメージする「良くない未来」を払拭するために新薬を使っても意味はないということなんだろう。
もしそれが、私が本当に望む「理想の未来」のために必要だと思ってやるのなら、きっと意味はある。
逆に、必要ないという結論になるかもしれないし。

午後はN先生の「お手当て」を受けた。
よもぎ蒸しをしてから、びわの葉エキスを使った温灸をしてもらった。
これがすごく気持ちが良くて。
ストーンや瞑想もしたから、13時半スタートだったのに、すべて終わったら18時になっていた。
「びわの葉」ももらった。痛いところに当てるといいという。

帰りの電車の中で、理想の未来、ゴールについて考えていた。
久しぶりに不安や怖れから逃れられている自分に気づいた。
「感情に病気は乗っかる」とN先生が言っていたことがよくわかる。不安や怖れがなくなったら、体の芯の部分に力が入ってきた。温灸で体が軽くなっていたこともある。
痛みをとるだけなら方法はあるんだなと思った。むしろ新薬の副作用で苦しむよりもいいかもしれない。

少しだけ明るい気持ちで家に帰れた。