★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(20)

2011年10月26日 | 短編小説「彗星の時」
 すると、三人の体から薄皮がはがれるように透き通った人型が離れていき、影の薄い三人がもう一組出来上がった。ヤーコンはもう一回杖を鳴らした。その音と同時に、影が薄かった新しい三人組の姿が徐々にはっきりしていき、その分本物の三人は影が薄くなっていった。
「こんなものかな」
 ヤーコンが杖を横に振ると、まるで本物の人間のようになった影三人組みは、音もなくするすると動き出した。
「あれは、覇道39番で作り出した影法師です。よーく見ると判りますが、普通に見ただけでは人間そのものです。サルサが遠方から探っても我々本体の気配を薄くしたので、だまされるはずです」
 ヤーコンはそう言うと、杖を左右に少し傾けた。影三人組は杖の動きに応じて左右に蛇行する。
「よし、いいだろう」ヤーコンは、杖を大きめに傾けた。
 影の三人組はまるで歩くように(足は動いていないが)移動していき、門の中に進みこんだ。
 と、その時、一番手前の建物の影から、鎧を着た数人の兵士が飛び出してきて剣の柄に手をかけたまま叫んだ。
「『天の国』のケイン殿一行とお見受けいたす。ご同行願いたい」
 影三人組は一瞬立ち止まったが、そのまま音もなく兵士たちと反対側に動き出した。
 兵士たちはあわてて影三人組を追いかけ始めた。しかし、影三人組の動きは尋常ではない。
 音もなく、一糸乱れずすごいいきおいで滑っていく。


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