★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
良かったら感想をお聞かせください。

義腕の男2(16)

2014年05月28日 | 短編小説「義腕の男2」
 俺は、三人と軽く握手をし作戦内容の確認に入った。
 壁面に作戦内容が映し出された。
 作戦の内容は次の通りだ。
 救出するターゲットは N市の郊外にあるCビルという研究施設の地下5階にいる。
 我々は、運搬業者とイスラン軍兵士に変装し、運搬業者のマークが入ったトラックで空爆予告発表まで待機。予告が発表されると、Cビルは動かせるものを全て移動させようと大混乱になる。それに紛れ運搬業者として建物内に浸入し、博士を救出後ビルから脱出。そのまま北部にある海岸部まで異動し海岸に隠してあるボートで沖合いに移動、そこにはノスリルの潜水艦が待っている、という手はずだ。
 ターゲットであるクリス博士の顔写真が映っている。
 年齢42歳、赤毛の美女だ。とても100年に一人の天才科学者には見えない。映っている写真は白衣を着ていて化粧気がない顔だが、メイクアップしドレスを着て夜の街にでれば売れっ子になりそうなほどの色気が漂っている。直接会うのが楽しみだ。

義腕の男2(15)

2014年05月25日 | 短編小説「義腕の男2」
 アジトは街の中心から少し外れた倉庫郡の中の、比較的大きな建物の中に設置されていた。急遽作ったにしては、外からは判りにくく、入ってみると十分な広さを持った隠れアジトだった。さすが技術の国ノスリルということか。
 待っていた人間は4人。
 ユーリ連邦側の連絡員が一人、それにノスリル側の人間が3人、そのうちエージェントは二人のようだ。
 我がユーリ側の連絡員は、黒髪美人のサヤカだった。
「お待ちしておりました」
「久しぶりだね、サヤカ。少々アクシデントがあってね。予定より遅れてしまった」
「そのようですね。ご無事でなによりです。もっと遅れるかと思いました」
 ミサイル攻撃の話は、もうここまで伝わっているらしい。説明する手間が省けた。
 俺は、サヤカに軽くあいさつをして、ノスリルのメンバーに視線を戻した。
 サヤカが紹介してくれた。
「彼が今回のミッションに参加するユーリ連邦軍のMr.Kです」
 基本的に他国との合同作戦の時は、名前は明かさない。他国の連中が敵に捕まった際に、情報が漏れるのを防ぐためだ。
 身元の確認は、連絡員同士が公式にコンタクトをとってからお互いのエージェントを紹介するという形をとっている。
 今度はノスリルの連絡員が握手のために手を伸ばしながら紹介した。
「私はノスリル共和国の連絡員、リリーです。こちらの二人がエージェント、Mr.BとMr.Jです」
「よろしく」
 リリーは、サヤカに負けず劣らず美人の部類に入る、ブロンドのグラマーだ。
 なぜか、どの国も連絡員は美女が多い。もちろん、連絡員も特殊工作員の一人で、その能力は常人よりも抜きん出ている。例えば、サヤカは一見おっとりしているように見えるが、ナイフ術の使い手で、さらに底なしの酒豪らしい。語学にも堪能で、8ヶ国語を自在に使い分ける。その特性から、先発隊の連絡員として現地に先に潜入していることが多い。
 Mr.Bは、小柄で格闘技か何かをやっているようながっしりした体格の黒人だが、黒縁のめがねをかけている姿は、IT関係も強そうな感じがする。
 反面、Mr.Jはでかい白人だ。2メートル近くもあろうか。背の高さを気にしてたせいか若干猫背になっているので、背筋を伸ばしたら2メートルを超えるかもしれない。

義腕の男2(14)

2014年05月21日 | 短編小説「義腕の男2」
 昔はもっと大きかったようだが、オアシスの水量が徐々に減ってきており、町自体が少しずつ砂漠に侵食されてきている。その証拠に、町に入る手前の砂漠には、昔の建物が廃墟となって半分砂に飲み込まれ墓標のように建っているのが散見される。
 俺は、その建物の一つにオフロードバイクを隠し、そこで夜になるのを待ってから徒歩でN市に侵入した。
 我が国と戦争状態にあるイスラン公国なのだが、特に戒厳令等は布かれてはおらず、銃を持った兵士の姿がやたらと目に付くものの、街燈等も普通に点いていて、戦時下という緊張感はあまり無い。
 最近の戦争はこんな感じが多いらしい。
 ユーリ連邦の立場は、独裁者に対する反体制組織側の味方で、時折、予告攻撃を実施するという感じが定着している。イスラン公国体制側では、国内での反体制派への弾圧は厳しいものがあるが、ユーリ連邦への直接攻撃が行われたことはない。ユーリ連邦が本気になったらひとたまりもないことを知っているのだ。
 イスラン公国の国民も、その辺りはなんとなく理解していて、町の雰囲気もそれほど張り詰めてはいないようだ。

 俺は、闇夜に乗じてノスリル側のエージェントと合流するアジトへ向かった。赤道が近いこの国では、日中は50度を越える暑さだが、夜になれば頬に当たる風が気持ちいい。
 街燈の明かりを避け、兵士の監視から逃れるように街の中を進んでいく。
 街並みにはなんの緊張感も無い静かな空気が漂っているが、明後日に空爆予告が発表されれば蜂の巣をつついたような大騒ぎになるはずだ。