★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
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義腕の男2(2)

2013年04月08日 | 短編小説「義腕の男2」
 それにしても、鉄道での移動は久しぶりだ。
 俺が乗っている列車は、はるか地平線まで続く砂漠の真ん中を走っている。周りには砂と能天気に晴れ渡った青空以外何もない。多分、この列車を中心に半径100キロ圏内には、生きているものは俺と列車の運転手2人しかいないはずだ。
 俺が乗っているこの列車は「ウルトラトレイン」と呼ばれる貨物専用列車で、車両が約100両程繋がっていて全長は3キロメートルにも及ぶ。一度に大量の物資が運搬できるので、ここイスラン公国の物流の一翼を担っている重要な交通手段となっている。
 だが、乗車人員は運転手しかいない。
 本当のところ、2158年の現在の技術では遠隔操作によるフルオート運転で無人化は簡単なのだが、非常時用として最低限の人数だけ乗せているらしい。まあ、実際の運行は遠隔制御で機械が勝手にやっているのだから、運転手は寝ていてもいい。
 もっとも、そのおかげで積荷に対する監視が甘くなり、俺のような密入国者が意外と簡単に紛れ込むことができる。

義腕の男2(1)

2013年04月07日 | 短編小説「義腕の男2」
タターン・タターン・・・
 座り心地の悪いパイプ椅子から、鉄道特有のリズミカルな心地よい振動が伝わってくる。
 催眠術のように強烈に夢の世界へといざなう、眠気を誘う揺れだ。
 だが、俺はここ数日寝てばかりいるので、とりあえず今は睡魔は襲ってこない。しかし、俺のいる空間は寝る以外ほとんど何もできないほど狭い。そのうちまたすぐに眠くなってしまうだろう。
 この狭い空間に閉じ込められて、もう三日になる。
 同じ姿勢を長時間続けていると運動不足どころかエコノミー症候群で命に関わることにもなってしまう。
 この狭い空間の隙間を最大限に使い、そう、タコのように器用に全身の筋肉や関節を何とか伸ばして血行を促しておこう。