★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
良かったら感想をお聞かせください。

移民船ブルードリーム(22)

2010年09月30日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
『(ザッ・・よし、では計画通り実行しろ。ザッ・・段取りはわかっているな。ザッ・・)
 ああ、まず45個のボックスを13ユニットに移動させ、残り5個になったら8番ボックスと前方の外壁に例の機械を取り付けスイッチを押す。
 爆発が収まったら、コントロールルームのキャプテンユーリへ連絡してから、8番ボックス以外の4個を13ユニットに移動させる。・・・本当に壊れるのは8番だけなんだな。
(ザッ・・そうだ、ほかの4個はかすり傷程度だ、ザッ・・隕石衝突で1個だけ大破では不自然だろう・・ザッ・・)
 それより、本当に娘は、エリーザは手術を受けられるんだろうな。
(ザッ・・ああ、約束する。間違いない・・ザッ・・通信はこれで終わりだ、・・ザッ・・通信記録も確実に消去しろ、いいな・・ザッ)』
「これで一つ目は終わりだ。二つ目も再生するか。」
「ああ、聞いてみるか。」

移民船ブルードリーム(21)

2010年09月29日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
 見る見るうちに、あの巨大な「ブルードリーム」は一本の輝く針になった。その細く鋭い輝きは、胸にチクリと刺さるような奇妙な刺激を残した。

「行ったな」
「ブルードリーム」のある一室の窓から、カトウは遠ざかる「マゼラン」を見ていた。
 同僚のジョンは、部屋の隅にあるロッカーをあさっていた。その部屋のドアには『マツイ』と表示してある。
「あった。これだ。マツイに渡していた超時空通信機だ。」
 ジョンはそう言うと、ロッカーの中からちょっと厚めの銀色のノートパソコンのような装置を取り出し、蓋を開け電源を入れた。
「どうだ?通信記録は残っているか?」
 カトウは、ジョンに近寄り、一緒にディスプレイを見ながら言った。
「二つ残っている。」
「やっぱり残っていたか。再生してみろ。」
 ジョンはカトウに言われ、スタートボタンを押した。
『(ザッ・・マツイか・・ザッ・・ザザッ・・)ああ、わたしだ、マツイだ。』
 相手の音声はかなり雑音が多いが、聞き取れなくは無い。マツイが誰かと話しているようだ。

移民船ブルードリーム(20)

2010年09月26日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
「ああ、今回の犠牲者の履歴よ。技術者に教師、皮肉なことにこの8番ボックスの人はベアトリックス社の元社員なのよ。」
「そうなんですか。・・・報告書は出来たんですか。」
「ええ、なんとかね。」
「カトウさんたちはどうなるんですか」
「そうねえ。形式的には偽証罪とかで立件されることになると思うんだけど、本人たちの希望で「ブルードリーム」に残って他の欠陥部分を調査修理することになったの。だから実質的にはお咎めなしで、ガイアで第二の人生ということになると思うわ。・・・一生、亡くなった6人の十字架を背負ったままね。もちろんベアトリックス社に対しては責任を追及していくつもりよ」
「・・・そうですか」
 僕はそう言って、どんどん離れていく「ブルードリーム」が見える窓のほうを振り返った。

移民船ブルードリーム(19)

2010年09月25日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
 しばらくカトウを見つめていたマリーは、カトウから視線をはずすと自分が持ってきた成分分析機の方に向き直った。
「ふうぅ、事故調査委員としては、今の話は聞き流せないわね。報告書を作成しなくちゃいけないから、後でもう一度教えてちょうだい。」
「・・・・・・わかりました」
 カトウは、消え入るような声で答えた。

 数日後、マリーは「マゼラン」の自分の部屋の窓から遠ざかる「ブルードリーム」を見ていた。「マゼラン」は、ついさっき「ブルードリーム」を離艦し、新たに45人を収容して帰路についていた。
 僕は、マリーの部屋のドアをノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
 僕は、夕食を持ってマリーの部屋に入った。
「食堂にいらっしゃらなかったので、夕食をお持ちしました。」
「あら、ごめんなさいね。ありがとう。乗客が増えたのに気を使ってもらって悪いわね。」
 僕は、パンとチキンの照り焼き、卵スープの乗ったトレイをテーブルの上に置いた。
 テーブルの上には、蓋が開いてディスプレイが映きっぱなしになったパソコンがおいてある。画面には、人の顔写真と細かい文字が並んでいた。
「これは・・」

移民船ブルードリーム(18)

2010年09月24日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
「バグだったんだ、、。設計コンピュータのほんのちょっとしたプログラムバグなのに、、スリープ装置が爆発するなんて・・」
「やっぱり・・。隕石と衝突というのはうそだったのね。」
 すっかりあきらめた様子のカトウは、淡々と語り始めた。
「・・・宇宙船に詳しいマリーさんならご存知かと思いますが、宇宙船の建造には無数のコンピュータが使用されます。特に設計段階では、コンピュータはなくてはならないものです。しかしコンピュータをプログラミングするのも使っているのも人間です。残念ながらミスも発生してしまいますので、何度もチェックし間違いを防ぎます。ところが、この「ブルードリーム」にはその何重ものチェックを通過してしまった欠陥があったのです。
 我々がその欠陥に気付いた時点では、すでに「ブルードリーム」が移民を乗せて出発し半年近く経っていました。」
「会社はそのことを知っていたの?」
「はい、我々は欠陥に気づいてすぐに会社に報告し、リコールして急いで修理に向いたかったのですが、会社からなかなかOKが出ませんでした。会社では、どれだけの被害がでるのか検証しないと許可をしないと言ってきたのです。多分欠陥を公にした場合のイメージダウンと事故が発生した場合の補償額を天秤にかけたのでしょう。そんなことをしているうちに今回の事故発生の連絡を受けました。残念ながら最悪の事態が発生してしまったんです。我々は、とにかく修理に向いたいと会社に申し出ました。すると、会社からある条件と引き換えに修理の許可が出ました。」
 そこで、マリーが言葉をはさんだ。
「事故現場に『ゼリウム132』を持ち込んで隕石に衝突したと偽装するように・・・と」
 カトウは、『ゼリウム132』が付着した右手を見つめながらうなずいた。
「・・はい。」

移民船ブルードリーム(17)

2010年09月22日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
「これは、、」
 僕はどういう状況なのか判別が付かなくて言葉が続かなかった。
「もしこれが外からの隕石が原因なら、まず船体の裂目に大量に付着しているはずなのに・・」
 僕が発するはずの言葉をマリーが続けてしゃべってくれた。
 確かに、ディスプレイ上に表示されている裂目には、ほとんど青い光がない。裂目には、『ゼリウム132』はほとんど付いていないということだ。つまり隕石がこの裂目を作ったのではないということになる。
 ならば、この青い光はなぜこんな風についているのか。隕石とかの既成概念を全て拭い去って、改めて考えてみればとても単純だ。
 ―――カトウが持ち込んだのだ。
「でも、なぜ・・」
 僕がそこまで到達したことに、マリーは気づいたらしく僕の方を振り返って言った。
「さて、そこは聞いてみないと判らないわね。ねぇ、カトウさん?」
 キーボードの操作を止めたマリーは、カトウの方に向き直って聞きなおした。
「どういうことなの?ベアトリックス社のMr.カトウ?」
 ベアトリックス社とはこの移民船の製造メーカーだ。
 きつい目をして正面に立ったマリーに気圧されたカトウは、2,3歩後去ると同僚のジョンの方を見た。ジョンはしばらくカトウを見つめていたが、やがて全身の力が抜けたようにガクリと下を向いてつぶやいた。

移民船ブルードリーム(16)

2010年09月20日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
 マリーは、持ってきた銀色のアタッシェケースを部屋の中央に置いて蓋を開けた。
 ケースの中にはノート型のパソコンのような装置が入っていた。マリーは装置に電源を入れて操作し始めた。すると、ケースの隅からアンテナのような棒状のものがスルスルと登りだし、天井近くまで伸びて止まった。アンテナの先端にはゴルフボール程の黒い玉がついている。
「それは?」
 カトウは、マリーが操作している装置のディスプレイを見ながら聞いた。
「これは、まだ試作機なんだけど、最新型の物質成分調査機よ。今の成分調査機は、あなたが持ってる『GX120』が一般的だけど、それだと装置を向けた箇所の成分しか分析できないわよね。この装置はその点を改良して広範囲を一気に調べられるようにしたのよ」
 マリーはそう言うとスタートキーを押したらしく、アンテナの先に付いた黒いボールが黄色にひかりはじめ、一瞬強い閃光のような輝きを発したかと思うと、次の瞬間には黒いボールに戻っていた。
マリーは、またキーボードの操作を始めたが、5分ほどで止め、ディスプレイを見つめて言った。
「カトウさん。あなた達、どこか触った?」
「えっ・・」
 カトウは一瞬言葉につまり、ジョンのほうを振り返った。ジョンは軽く両手を挙げて首を振った。
「いや、どこにも触れていないはずだが、無意識に触ってしまったかな」
 カトウは戸惑いながら、言い訳した。
 僕は、マリーが見ているディスプレイ画面が気になって、マリーの肩越しに覗いてみた。
 画面にはこの部屋の中が立体的に映っているが、実際の色とは違う様々な色に光っている。
「・・・確かに『ゼリウム132』が反応しているけど・・これはどういうこと?・・」
 マリーは再びキーボードを操作しながらつぶやいていた。
「マリーさん、どうしたんですか」
 気になった僕は聞いてみた。
「え、、ああ、この青い部分を見てみて。これが『ゼリウム132』よ。それ以外は元々この宇宙船に使われていた物質ね。さっきも言ってたように『ゼリウム132』はピケアステロイドベルト特有の物質だから、これがあるということは隕石が原因の衝突事故としてほぼ間違いないわ。でも、『ゼリウム132』の付き方がおかしいのよ」
「付き方?」
「ええ、今までの分析器だったら判らなかったけど、この装置だと付着した箇所まで瞬時に判定できるの。それでいくと、、よく見て。青く光っている部分が『ゼリウム132』よ」
 画面を見てみると、いくつかの部分がボウと青く光っているが、かなり偏った部分しか光っていない。しかも一番強く光っているのはカトウの右手だった。僕たちが入ってきたハッチの淵にも青い手形が付いている。

移民船ブルードリーム(15)

2010年09月19日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
 先に来ていたのは、宇宙船製造メーカーの二人だった。たしか、名前は「カトウ」と「ジョン」というエンジニアだ。日ごろあまり話をしない相手だったので先回りされたことがなんとなく面白くなかった。
「あなたたち早かったわね。許可はちゃんと取ったの?」
 マリーがちょっと強い口調で言った。僕と同じように思っているらしい。
「ああ、私らは技術者だからね。早く現場を見たかったんだよ。もちろん許可は取ってある」
 二人のうち上司らしいカトウが言った。
「そう、で、どうなの。何か判った?」
 マリーはもう気持ちを切り替えたらしく、部屋の中を見渡しながら聞いた。
「いや、特に目新しいものはないようだ。助けられなかった人の装置が残っているだけで何も無い。報告書に書いてあったとおりのようだね」
 カトウもマリーの動きにつられた様に、部屋の中を見渡しながら答えた。
 50個のコールドスリープ装置が設置してあった約10m四方の部屋は、救済できなかった5台のひしゃげた装置以外は何も無く、ガランとしていた。
「残留物質の成分確認もやったの?」
 マリーは、カトウが持っている携帯電話を少し大きくしたような装置を見て言った。
「ああ、報告書どおり、『ゼリウム132』が検出された。ご存知のとおりPアステロイドベルトに多く含まれる特殊物質だ」
 Pアステロイドベルトとは、事故が発生した付近にある小惑星帯のことで、最大でも数十センチ位の細かい岩石が帯状に散らばっているところで、そこから迷い出た岩石が度々宇宙船の事故の原因になっている。

移民船ブルードリーム(14)

2010年09月12日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
 約二時間後、僕たちは宇宙服を着て宇宙遊泳をしていた。僕の宇宙空間遊泳B級ライセンス取得のための実技訓練を兼ねた事故現場調査のためだ。
 13ユニットのハッチから外に出て、事故のあった12ユニットへ向かう。実際には光に近い速度で飛んでいるのだが、何も無い宇宙空間では速度感はまったく無い。
 右手でコントローラーを操作し、背中についている小型ジェットノズルの出力を細かく調整すると、面白いようにふわふわと進んでいく。それでも移動のスピードは歩くよりも遅い。ちょっとくらいジェットノズルの操作を誤っても暴走しないためだ。
「もうすぐ12ユニットの外壁よ」
 先を行くマリーが無線で話しかけてきた。
 目の前に続いている銀色に輝く滑らかな移民船の外壁の先に、黒く汚れギザギザに破損した部分が見えてきた。
 近づいてみると破損箇所は意外と大きい。外壁の切れ目は縦10m、横5m位で透明なプラスチックのようなもので覆われている。全体から見ると、まるで絆創膏を張っているような感じだ。このプラスチックは、破損した船体の破片が航路に散らばらないようにするためのもので、特殊な樹脂でできている。通常はジェル状だが、特殊な光を当てると硬化するのでどんな形にもフィットするという便利な緊急用品だ。しかもかなりの強度があるので、宇宙空間であればこのまま旅を続けられるらしい。
 よく見るとその樹脂の下部には、人が一人やっと通れる位の丸いハッチがついている。調査立ち入り用に特別取り付けたハッチのようだ。
 僕とマリーは、ハッチの扉を開けて事故現場の部屋に入り込んだ。
 部屋の中の電源は全て死んでおり、本来真っ暗なはずだが、宇宙服のヘルメットの額部分にあるサーチライトの光線が僕たちの分も含め4本、暗闇の中を踊っていた。先客がいる様だ。

移民船ブルードリーム(13)

2010年09月11日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
「次に連絡があったのは5分後くらいでした」
 キャプテンユーリはそう言ってキーボードを操作した。
『今。12ユニットの外にいる。外壁が破損し穴が空いている。結構でかい穴だ、ザザ―・・穴から12ユニットに入ってみる。ザザ―・・あぁ、まだ生きているボックスがある。くそっ、・・・よし・・一台づつ外から回して13ユニットのハッチから中に収納するザザ―・・』
 また通信が切れたようだ。
「このボックスというのは、コールドスリープしている人間が入っている装置のことで、一台づつ切り離せるようになっています。基本的には、宇宙空間でもある程度はその機能を維持できます。マツイは、破損し隔壁で隔離された12ユニット内にまだ機能しているボックスを発見し、救出作業を開始したようです。次の通信は、約20分後でした」
『保安員はまだか、ザザー、【今10ユニット付近まで行っている、後少しだ】判った、こちらは45個までは回収できたが、残り5個は既に壊れている、、だめだ、あ、ガガッピー、、【マツイ、マツイ、どうした、ザザー】』
「マツイとの交信はこれが最後でした。この5分後に保安員が到着しました。これがその時の映像です」
 そう言ってユーリは手元のキーボードを操作すると、正面のメインスクリーンに映像が映った。
 それはまさに事故現場の映像だった。12ユニット内と思われる空間の空中には大小の破片が漂い、その中に人間らしい形の浮遊物が他の無機物と同じように浮かんでいる。その傍らには、大きくひしゃげた楕円形の繭のようなボックスが5個並んでいた。
「あれが、、マツイさんね。報告書では爆発に巻き込まれ死亡となっているけど、、」
 悲惨な映像に眉をひそめたマリーは手元の資料を見ながら質問した。
「はい、保安員が到着した時には既にマツイは死亡していました。最後の交信の直後に発生した小規模の爆発に巻き込まれたようで、宇宙服が破損していました。マツイは自らの命と引き換えに45名の命を救った英雄です」
 キャプテンユーリはキーボードを操作し、メインスクリーンの事故現場映像を消しマツイの個人ファイルを映し出した。スクリーンには英雄マツイの顔写真が大きく映し出された。

移民船ブルードリーム(12)

2010年09月06日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
 「あの時、障害物アラームが突然鳴り響いた時は、私はこのコントロールルームにいました。」
 「ブルードリーム」の今のキャプテンであるユーリが言った。全旅程が20年の移民船にはキャプテンが10人いる。交代でコールドスリープから目覚めて2年づつ務めるやり方だそうだ。確かに狭い移民船の中に20年間醒きていたくはない。
 僕らは、コントロールルームでキャプテンの状況報告を聞いていた。本来この仕事はマリーの範疇であり、僕なんかは完全に門外漢なのだが、なぜかマリーは僕の同席を許してくれた。どうやら後学のためらしい。
「音も衝撃も特に感じませんでしたが、メインモニターに危険区域を示す船内マップが自動的に表示されました。それによるとNO12のユニットにアラームランプが点滅していて何かしらの障害が発生しているようでした」
 ユーリキャプテンは、コントロールルームのキャプテンチェアに座り、手元のキーボードを操作しながら言った。
「その、ほんの数秒後、当直のマツイから連絡が入りました。これがその音声です」
 ユーリキャプテンはそう言うと、キーボードのENTERキーを押し、目線をちょっと上げた。コントロールルームのスピーカーに録音された音声が流れ出した。
『Aブロック担当のマツイだ。今、NO12ユニットの近くにいる。なにかよく判らないが隔壁が閉じていて12ユニットに入れなくなっている。NO13の作業用ハッチから外に出て状況を確認する』
『キャプテンユーリだ。了解した。保安員をそちらに向かわせるが、30分位かかると思う。気をつけて作業するように』
 一旦ここで会話が途切れた。

移民船ブルードリーム(11)

2010年09月05日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
「報告書によると、もう少し先ね」
 マリーは、天井のモニターに映し出された「ブルードリーム」の巨体を見つめながらキャプテンに言った。
 実際には、自分たちの船が移民船の周りを回っているのだが、僕たちの操縦室のモニターには、「ブルードリーム」がまるでのたうつ竜のようにグルグルと回りながら後方に進んでいるように見える。
「キャプテン、ちょっとスピードを落として・・」
 マリーの言葉に反応するように、移民船の動きが緩やかになった。
「これね・・」
 操縦室にいた全員が、そこが映し出されているモニターを見つめた。
 船首からほんの少し後ろの一箇所が、メタリックシルバーに輝いている他の部分と違い薄黒く汚れており、使用済みの銀紙のようにクシャクシャになった外壁の一部がはみ出していた。それでも、その破損箇所の大きさは、船全体からすれば、ほんの蚊に刺された程度の大きさでしかないように見えた。
「報告書によると、破損の影響を受けたのはNo12ユニットだけで、既に隔壁は閉鎖されており航行には支障なし、とのことです」
 宇宙船製造メーカーの一人が言った。たしかジョンとかいう人だ。
「そうだったわね、じゃあ次ね、「ブルードリーム」に乗り込んで内部状況も調査しましょう。キャプテンお願いします」
「はいよ」
 キャプテンが操縦席の副キャプテンに指示を出すと、スピーカーから副キャプテンの声が聞こえてきた。全艦に流している音声のようだ。
「当機はこれより「ブルードリーム号」にドッキングします。乗組員は全員直近の対ショックシートに着座の上シートベルトを締めモニターを注視してください。ドッキング時刻は約20分後の予定です。繰り返します。・・・」
 音声に従って、他の皆と同様に僕もシートに座ってシートベルトを締めた。
操縦席の副キャプテンには乗組員がシートに座ったかどうか判るらしく、
「全員の着座確認、これよりドッキングコースに入ります」
とキャプテンに告げた。
「マゼラン」は「ブルードリーム」の最先端まで螺旋運航し、移民船全体をカメラに納め終わってから、一旦後方まで戻り移民船のドッキングポートへ接近していった。